故障・修理
更新日:2021.08.12 / 掲載日:2021.08.12

MINI ONE“コンロッドベアリングトラブル”解決レポート

 これまで多くのメンテナンスを手掛けてきているハリー山崎。今回はそんなハリーが辿ったメンテの歴史の中から、ドラマチックな症例をピックアップ。山あり谷ありの珍メンテの数々をお楽しみください。
●文&写真:Harry Yamasaki

今回のクランケ:MINI ONE(R50)

2013年に実施したエンジンOHの作業中にコンロッドベアリングを入れ忘れる痛恨のミスを……。今回のトラブルも、ここから始まっていた可能性が高い……。

片側のコンロッドベアリングが無い状態で20分ほど回転してしまったため、クランクのロッドジャーナル部は深刻なダメージを受けてしまった。

北米ショップの手によりクランクシャフトは、ロッドジャーナルは0.5mm、メインジャーナルは0.25mmに研磨されてしまった。加工精度はバッチリだったが……。

OH時にオイル通路は洗浄したが、残留異物によるポンプの摩耗を原因とする油圧トラブルの可能性もありそう。

メインはガソリン用を流用し、ベアリングのタブを研磨して装着。ベアリングがずれて、オイル通路を塞いだのかも?

トヨタの補修ベアリングは0.25mmまで対応するが、形状が同じガソリン用の0.5mmオーバーサイズのベアリングを流用した。

 普段のアシとして活躍している改造ディーゼルミニにトラブルが発生。エンジンから「カカカカ」という典型的なロッドノックに襲われてしまったのだ。

 実はこのミニは、欧州仕様のミニにトヨタ・プロボックスに搭載されていた1ND-TV(1.4Lディーゼルターボ)が搭載されていた個体。不具合が発生した際に、企画として日本のプロボックスの中古エンジンと英国仕様のミッションを合体させて構造変更を行った経歴がある。

 今回発生したトラブルの遠因として考えられるのが、企画の終盤に行ったエンジンOH作業。うっかりミスでコンロッドベアリングを入れ忘れてしまい、エンジン始動したという、信じがたいミスをやらかしてしまったのだ。

 さらにリカバリーのために必要なクランクシャフトのリグラインド施工を、加工料金の安いアメリカで実施(約7000円)したところ、トヨタの補給部品の限度を超えた0.5mmまで研磨されてしまったという、笑えないおまけまで……。

「絶対に削りすぎ~」と思いつつも、現地の知人の「たぶん大丈夫」というアドバイスもあって続行したが、その後、約2万キロでコンロッドベアリングが逝ってしまったわけなのです。

 いわば黒歴史がいっぱいのクルマだけれども、そのぶん愛着もひとしお。今回のトラブルの原因は定かではないけれど、できれば理由は突き止めておきたい。萎える心を奮い立たせて分解検証を行うことに。レッツゴー。

復旧レポート1「怪しい箇所をチェック!トラブル原因を確認」

昨年、約2万キロを走行した後、ロッドノックが再発。オイルパンを外すとストレーナーにはアルミの破片が。オイル交換もちゃんと行ってきたのに不思議(編集部一同:どうしてそう思うの?)。

オイルポンプの傷が目立つ。ベアリングの破片による摩耗なのか、前回の洗浄不足なのか判断ができないが、油圧自体は正常だった。ただ、摩耗したポンプがエアを吸うと、キャビテーションの原因にはなり得る。

虫に食われたような異様なコンロッドベアリング。よく見るとオイル穴から回転方向に伸びている剥離と、横方向の大きな剥離が確認できる。回転方向の剥離はキャビテーションの可能性はあるが、横方向の大きな剥離はキャビテーションが原因とは考えにくい。ガソリン用ベアリングは、耐荷重はやや低いが、耐回転に対して強化され、ディーゼル用は耐荷重重視。ガソリン用のベアリングがディーゼルの荷重に耐えられず金属疲労で剥離と考えるのが妥当か。なおメイン側はまったく問題はなかった。

復旧レポート2「痛恨のプラグ破損!予想外の大惨事に……」

パーツ選定ミスの責任は感じるが、基本的な組付けミスではなさそう。再びメンテのモチベーションがアップしたので、中古エンジンでミニ君を復活させることにした。

グロープラグを専門工具を使って交換。最初の一本は無事抜けたが二本目で抜き取りに失敗。結局ヘッドは使い物にならず、中古の腰下と元のヘッドを載せる作戦に変更する。

走行距離が不明の中古エンジンなので、ピストンリングまで分解したいが、最近は自らのメンテにやりすぎ感も感じているので、我慢してこのまま使うことにした。

コンロッドベアリングの状態も点検。摩耗が進んで銅色の地肌が出ているように見えるが、ゲージで測定すると基準値以内だった。上の写真のガソリン用とベアリングのベース素材が明らかに異なる。

復旧レポート3「中古エンジンでリカバリー。結果的にオーバーホール」

バンパーやラジエーターを外すとエンジンルーム前方からエンジンを出し入れできるので、エンジン脱着の作業性は良い。エンジンの傾きを微調整できるロードレベラーは便利。

ヘッドボルトの締め付けトルクは高く、一人の作業ではエンジンを押さえながらヘッドボルトを強く締め付けられない。そこでエンジンを載せる前にある程度締め付けて車体に載せてから、本締めを行った。

一瞬、廃車にする考えもよぎったが、まだまだMTで一緒に走り続けたい。奮発してエンジンマウントはマイレ製の新品に交換。ちなみに劣化マウントは液漏れしており、エンジン取付位置も5mm沈んでいた。

無事に作業完了!?

新生ミニ、三度目の火入れの儀式。なんとか無事に始動できてひと安心。その後もスムーズに走行している。ベアリング破損の原因は不明(ということにしたい)だが、廃車にせず復活できて良かった。

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