故障・修理
更新日:2021.12.27 / 掲載日:2021.12.27

ブレーキフルード交換は必要?規格や種類、交換時期について解説!

ブレーキフルード交換は必要?規格や種類、交換時期について解説!

車検や定期点検のときに整備士に「ブレーキフルードの交換が必要です」と言われ、なんのことかわからず、困惑した経験はないでしょうか?

そこで当記事では、「ブレーキフルードとは何か」役割や仕組みについてご紹介します。ブレーキフルードにも種類や規格があり、交換するタイミングの目安もさまざまです。ブレーキフルードについて知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

ブレーキフルードとは?

ブレーキフルードとは?

ブレーキフルードとは、「油圧式ブレーキ」に使われるオイルのことを指します。ほかにも「ブレーキオイル」「ブレーキ液」「ブレーキの作動油」など、さまざまな呼び名があるのも特徴です。

ブレーキフルードの役割

ブレーキフルードは、ブレーキペダルを踏み込んだ力(油圧)をブレーキキャリパーまで伝える役割があります。ブレーキシステムの仕組みは以下のとおりです。

1.ドライバーがブレーキペダルを踏む
2.マスターシリンダーに圧がかかり、ブレーキフルードが圧縮される(油圧が発生)
3.ブレーキキャリパーがブレーキフルードの油圧によって押し込まれる
4.ブレーキローターがブレーキパッドで挟まれる(摩擦でブレーキがかかる)

ブレーキフルードの性質

ブレーキフルードの特徴的な性質として、以下の点が挙げられます。

・粘り気が低い
・体積の変化が起こりにくい
・-50度で固まらない
・200度でも沸騰しない

加えて、ブレーキフルードは空気中の水蒸気を吸い込む「吸湿率」が高い性質があります。ブレーキフルードが水分を吸うと、沸騰する温度(沸点)が下がり劣化するため、定期的な点検・交換が必要です。

ブレーキフルードは規格ごとに「ドライ沸点(新品状態の沸点)」「ウェット沸点(吸湿したときの沸点)」2つの沸点を表記しているので、車の使用環境に適したブレーキフルードを見極めて選びましょう。

ブレーキフルードのタンクはどこにある?

ブレーキフルードは、「リザーバータンク」と呼ばれる半透明の容器に入っています。リザーバータンクはエンジンルームにあるため、ボンネットを開ければブレーキフルードの汚れ具合や残量の確認が可能です。

ブレーキフルードのDOTとは?種類と規格について

ブレーキフルードのDOTとは?種類と規格について

ブレーキフルードには種類と規格があり、それぞれ異なる性質を持っています。ブレーキフルードを選ぶときに迷わないよう、何が違うのかを把握しておきましょう。

ブレーキフルードの種類3つ

グリコール系 グリコールエーテルというアルコール系の成分を主剤にしたフルードで、一般的なブレーキフルードは、グリコール系を指し示す。
シリコーン系 沸点が高くレース車やバイク(ハーレー)など、ブレーキを酷使する車両に使われることが多い。ほかの素材との混用は厳禁。
鉱物油系 欧州車で使われる車両があったが、使用率は低い。

ブレーキフルードは、おもに「グリコール系」「シリコーン系」「鉱物油系」と3つのタイプに分かれています。

「グリコール系は一般車両」「シリコーン系はレース車」といった具合で、車の使用環境に応じて使い分けされているのが大きな違いです。鉱物油系のフルードを使う車両は少ないため説明を割愛します。

また、グリコール系の主成分は、グリコールエーテルと呼ばれるアルコール系の素材を含み、鉱油を使わないことから「非鉱油系フルード」という別称があります。対してシリコーン系は沸点が高く、過酷な走行下でも気泡が生まれにくい性質を持っているのが特徴です。

ブレーキフルードの規格2つ

ブレーキフルードには、「日本工業規格(JIS)」「米国連邦自動車安全基準(FMVSS)で定められたDOT規格」と2つの規格が存在します。一般的に認知されているのはDOT規格のほうでしょう。

ただし、DOTの認証を得ていないブレーキフルードは「DOT」の表記を使用できないため、純正品であっても「DOT3」を「BF-3」「NR-3」のように別表記で記すことがあります。どれが何かわらかないときは、正規ディーラーに直接確認するのが安全で正確です。

規格 主成分 ドライ沸点 ウェット沸点 使用用途
DOT3 グリコール系 205度以上 140度以上 一般用途
DOT4 グリコール系 230度以上 155度以上 一般用途~スポーツ走行
DOT5.1 グリコール系 260度以上 180度以上 寒冷地やレース用途
DOT5 シリコーン系 260度以上 180度以上 ハーレーなど一部の車種

※ドライ沸点=吸湿率が0%の沸点
※ウェット沸点=吸湿率が3.7%時の沸点

DOTやJISといった規格では、ブレーキフルードの沸点特性を定めています。表を見てのとおり、規格の数字が大きくなるほど沸点温度が高くなるのが特徴です。ブレーキへの負荷が大きい車両ほど、規格の大きいブレーキフルードを選びましょう。

ちなみに、DOT規格に適合しているものであれば、一般車両にレース用途のブレーキフルードを使用しても特に問題はありません。

ただし、DOT規格に適合していないレース専用のものは注意が必要です。沸点を上げるために低温時の流動性が犠牲になっている場合が多く、低温時にABSがうまく作動しないリスクがあります。

ブレーキフルードを交換しないとどうなる?

ブレーキフルードを交換しないとどうなる?

ブレーキフルードを交換しないまま放置していると、ブレーキシステムに支障が出ます。使用歴が長いほど吸湿率も高くなるため、ブレーキフルードの性能が十分に保てず危険です。最悪の場合には、「ペーパーロック現象」によりブレーキが効かなくなるリスクも発生します。

ペーパーロック現象とは、ブレーキを使ったときに生まれる摩擦熱でブレーキフルードが沸騰し、気泡によって油圧がうまく伝わらずブレーキが効かなくなる現象のことです。

ペーパーロック現象のおもな原因は、ブレーキフルードの劣化(沸点の低下・液量不足)なので、交換を怠っている車ほどリスクが高くなります。

ブレーキフルードが劣化しているサイン

ブレーキフルードの劣化状況は、リザーバータンクを覗いたときに「残量」「色(劣化具合)」で判断できます。

ただ、頻繁に覗き込むことは少ないと思うので、ブレーキを踏み込んだときに「フカフカする」「踏み心地が安定しない」といった感覚があるときは点検してみましょう。

余談ですが、排気量250cc未満の車両はブレーキフルードの交換義務がなく、劣化サインに気付きにくい傾向にあります。条件に該当する車両(おもにバイク)に乗っている人は、車よりも小まめに日頃から点検しておくのがおすすめです。

ブレーキフルードの交換時期を見分ける方法

ブレーキフルードの交換時期を見分ける方法

ブレーキフルードを交換するタイミングは、車種や使用頻度、使用状況によって異なります。ただ、ブレーキフルードの存在を普段から気にする人は少なく、車検のときに交換するケースが多いようです。

とはいえ、早めに交換するに越したことはないので、気になったタイミングで確認しておくのが適切な判断といえるでしょう。交換するタイミングの目安となるチェック項目が4つあるので、ぜひご確認ください。

使用期間が「2~4年」

一般車両は、2~4年がブレーキフルードの寿命となる目安です。ただ、DOT5(BF-5)といった規格を使用している場合は、吸湿率が高い性質から1年おきの交換が推奨されています。

走行距離が「1万km前後」

2~4年を経過していなくても、走行距離が1万km前後に達したときは、ブレーキフルードの交換を視野に入れましょう。走行距離が多い分、ブレーキシステムにかかる負荷も大きくなっているためです。

特に2万km以上も同じブレーキフルードを使い続けていると、故障の原因にもなりえるので、早めの交換をおすすめします。

フルードの色が「濃い茶色」「黒色」

新品のブレーキフルードは、薄い黄色や飴色をしています。黒色や濃い茶色をしているときは、ブレーキフルードが酸化によって古くなっている証拠です。「色が濁っているな」と気付いたときは、使用期間や走行距離に関係なく、ブレーキフルードを交換しましょう。

フルードの量が「下限ラインに近い」

ブレーキフルードが入っているリザーバータンクには、上限・下限にそれぞれラインが記されています。ブレーキフルードの適正量は上限・下限ラインの中間です。

ボンネットを開けてタンクを確認したとき、下限ライン近くまで減っている場合は、ブレーキパッドが消耗している可能性もあります。ブレーキフルードだけではなく、ブレーキパッドのも一緒に点検・交換しましょう。

ブレーキフルードの交換費用はいくら?

ブレーキフルードの交換費用はいくら?

ブレーキフルードは、「カーディーラー」「自動車整備工場」「カー用品店」「ガソリンスタンド」など、最寄りの店舗で点検・交換が可能です。依頼する店舗によって価格差はありますので、ここでは大まかな目安をご紹介します。

交換工賃は4,000~5,000円程度が相場

ブレーキフルードの交換工賃は、4,000~5,000円が相場です。車検のときに交換すると、割引で安くなるケースもあります。ブレーキフルードの状態に余裕がある場合は、車検時期にあわせて交換するのもおすすめです。

ちなみに、交換工賃があまりにも安すぎる場合は、リザーバータンク内のブレーキフルードのみを交換している可能性があります。ブレーキホース内など、オイルラインすべてのブレーキフルードを交換しているのか、確認してから依頼しましょう。

ブレーキフルードは1Lあたり1,000~2,000円程度が相場

ブレーキフルードは500ml缶や1L缶で売られていることが多く、純正品でも2,000円程度、高性能なタイプだと3,000~5,000円程度で購入できます。

ブレーキフルード本体の費用も店舗によって価格差がありますが、これはDOTが違うのがおもな理由です。正規ディーラーではDOT4を使用していることが多いですが、DOT3を使って(規格を下げて)価格差をつけている店舗もあります。

ディーラー以外に依頼するときは、「どの規格のブレーキフルードを使うのか」まで確認するとより安心でしょう。

ブレーキフルードの交換方法は?DIY交換はおすすめしない理由

ブレーキフルードの交換方法は?DIY交換はおすすめしない理由

ブレーキフルードの交換は、ブレーキシステムに関わるすべての経路で行なう必要があります。ブレーキフルードが貯まっているリザーバータンク内だけではなく、マスターシリンダーやブレーキホース、ブレーキキャリパーなども含めての作業です。

さらに、ブレーキフルードの交換作業ではジャッキアップをしたあと、タイヤを取り外し、車内でブレーキを踏み込む動作(エア抜き)を必要とします。

ブレーキを踏み込む「エア抜き」を怠ると、ブレーキフルードを交換しても気泡が邪魔をしてブレーキがうまく作動しなくなります。ブレーキフルードを交換するときは、業者並みのスキルと環境が用意できない限り、プロに依頼するのがおすすめです。

DIY交換をおすすめしない理由

上記の理由だけでもすでにDIY交換はおすすめできないのですが、さらに問題なのがブレーキの故障だけでは済まない可能性が高いことです。

ABS(コンピューター制御)を搭載した車は特に、知識が不足したまま交換作業に入ると、思わるトラブルを引き起こす可能性があります。ほかにもブレーキフルードがボディに付着し、長時間経過すると塗装面を痛めてしまうことも。

ブレーキフルードの交換は、あらゆる知識を持っていないと難しい作業が多いため、挑戦気分でDIY交換はしないでおきましょう。ブレーキフルードの交換に優れた業者は、グーネットピットで検索できます。業者選びで困ったときは、ぜひご活用ください。

https://www.goo-net.com/pit/

まとめ

ブレーキフルードとは、油圧式のブレーキシステムに欠かせないオイルのことをいいます。ブレーキフルードにおいて、摩擦熱に耐えられる「沸点の高さ」がブレーキを正常に動かすために欠かせないポイントです。

摩擦熱に耐えきれず気泡が発生すると、ペーパーロック現象によりブレーキが作動しなくなってしまうので、交換するタイミングを見逃さないように注意しましょう。

また、ブレーキフルードの交換は基本的に業者への依頼がおすすめです。DIY交換には、さまざまな危険がともなうため、普段から整備工場で作業をしている経験者以外は、むやみに触らないのが鉄則です。業者選びで迷ったときは、ぜひグーネットピットをご活用ください。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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