パーツ取付・交換
更新日:2025.08.20 / 掲載日:2021.01.01

ランフラットタイヤとは?仕組みやデメリット、価格などを網羅的に解説

「もし走行中タイヤがパンクしたら……」そんな不安を解消してくれるのが、ランフラットタイヤです。

空気が抜けても一定距離を安全に走行できる仕組みは、BMWなどの高級車を中心に広く採用が進んでいます。

一方で、価格や乗り心地、修理対応など事前に知っておくべきポイントが多数あります。

この記事では、ランフラットタイヤの仕組みや特徴、価格相場、メリット・デメリット、交換時期や見分け方まで徹底解説します。

導入を迷っている人も、すでに使われている人もぜひ参考にしてください。

1. ランフラットタイヤとは

ランフラットタイヤとは、パンクして空気が抜けた状態でも一定の距離を走り続けられるタイヤです。

通常のタイヤは浮き輪のように内部の空気圧で形を保っています。そのため、釘を踏んだりすると、空気が抜けタイヤが潰れて走行できなくなってしまいます。

こうした弱点をカバーするために開発されたのがランフラットタイヤです。万が一パンクしても、タイヤが潰れず形を保つため、安全な場所まで走行できるように作られています。

それでは、ランフラットタイヤがどのような仕組みで走行を可能にしているのか、通常タイヤとの違いも交えて詳細を解説していきます。

(1) ランフラットの仕組み

ランフラットタイヤは、サイドウォール部分を通常よりも厚く補強することで、空気が抜けてもタイヤの形が潰れにくい構造になっています。

内部の補強ゴムが車両の重さを支え続けてくれるため、パンクが起きてもすぐに停止する必要はありません。一定の速度・距離で走行を続けられるため、安全な場所まで移動できます。

とくに高速道路や交通量の多い道路では、路肩でのタイヤ交換作業が大きな危険を伴います。その点、ランフラットタイヤはこうした緊急時でも安全に走行できるよう開発された頼もしいタイヤです。

(2) 通常タイヤとの違い

ランフラットタイヤと通常タイヤ(ラジアルタイヤ)では、安全管理の仕組みに大きな違いがあります。

通常のタイヤは空気が抜けるとすぐに潰れてしまうため、パンクに気づきやすいのが特徴です。

一方でランフラットタイヤは、空気が抜けても潰れにくいため、パンクに気づかず走行を続けてしまう恐れがあります。

この特性から、ランフラットタイヤを装着する車にはTPMS(タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム)の搭載が義務付けられています。

TPMSは常にタイヤの空気圧を監視し、異常を検知すると警告灯でドライバーに知らせてくれます。空気圧の低下に早めに気づくことで、安全に停車や整備へと移ることが可能です。

(3) 高級車やスポーツカー向けに開発されている

ランフラットタイヤは、もともと高級車やスポーツカー向けに開発が進められてきました。高速走行中の安全性を高める目的で、パンクしても走行を継続できる構造が重視されています。

また、スペアタイヤが不要になることで車両の軽量化や荷室スペースの確保にもつながり、スポーツカーの運動性能向上にも貢献しています。

現在は多くの高級車や輸入車(BMWなど)で、積極的に採用・推奨されるケースが増えています。

2. ランフラットタイヤのメリット

ランフラットタイヤには、安全性と利便性を大きく向上させる複数のメリットがあります。

1. パンクしても走行できる安全性
2. スペアタイヤが不要になる
3. 環境の負荷を軽減できる

順にご紹介しましょう。

(1) パンクしても走行できる安全性

ランフラットタイヤの最大のメリットは、万が一パンクしても安全に移動できる点です。

走行可能な距離は時速80kmで最大80km程度とされており、高速道路や交通量の多い道路でも、慌てずに安全な場所や修理工場まで移動できます。

実際、JAFによるとタイヤのパンクはロードサービス出動理由の上位に入っており、こうしたトラブルを未然に防げる点でも安心感があります(参照:2024年度 JAFロードサービス出動理由TOP3|JAF)。

(2) スペアタイヤが不要になる

ランフラットタイヤは、スペアタイヤの搭載が不要になる点もメリットです。車両重量を軽く抑えられることで燃費の改善につながり、経済面でも効果が期待できます。

さらに、スペアタイヤを積まない分だけトランクの収納スペースに余裕が生まれ、荷物の積載量も増やせます。普段から荷物が多い人にとっては、実用性の高いポイントです。

(3) 環境の負荷を軽減できる

環境負荷の軽減も、ランフラットタイヤが持つ特徴のひとつです。スペアタイヤを省略できることで、製造や廃棄に必要な資源やエネルギーを減らせます。廃棄タイヤの量が減り、リサイクル負担も軽くなるのです。

また、最近では転がり抵抗を抑えた省燃費タイプのランフラットタイヤも登場しており、CO2排出量の削減にも貢献しています。こうした環境性能の向上も、普及が進む理由のひとつです。

3. ランフラットタイヤのデメリット

ランフラットタイヤには多くのメリットがありますが、導入前に把握しておきたいデメリットもあります。

1. 価格や交換費用が高い
2. 乗り心地が悪化する可能性がある
3. 取扱店が限られる

順にご紹介しましょう。

(1) 価格や交換費用が高い

ランフラットタイヤの代表的なデメリットは、価格の高さです。内部の補強構造や特殊素材を使用しているぶん、通常のタイヤより本体価格が高めに設定されています。

たとえば、同じタイヤサイズ(225/50R17)で比較すると、ランフラットタイヤはノーマルタイヤに比べて1~2万円ほど高くなります。交換作業にも専用の工具や技術が必要となり、工賃も割高になります。

とくに4本同時に交換する場合は出費が大きくなるため、予算を考慮したうえで検討する必要があります。

(2) 乗り心地が悪化する可能性がある

サイドウォールを補強している分、路面からの衝撃を吸収しづらく、突き上げ感が出やすい傾向があります。そのため、段差や継ぎ目で乗り心地が硬く感じられる場合があります。

もっとも、近年は改良が進み、以前ほど大きな差は出にくくなっています。ただし、従来のノーマルタイヤと比較すると違いを感じる可能性がある点は理解しておきましょう。

(3) 取扱店が限られる

ランフラットタイヤは特殊な構造のため、交換や修理には専用の設備や技術が必要です。すべての店舗で対応しているわけではなく、取扱店が限られる点もデメリットといえます。

また、パンク修理も難しく、基本的に新品への交換対応となります。万が一の際に備え、対応可能な店舗を事前に確認しておくことが重要です。

4. ランフラットタイヤの見分け方

ランフラットタイヤは見た目だけでは通常タイヤと区別しづらいため、正しく判別するポイントを知っておくことが大切です。ここでは確認方法を3つ紹介します。

(1) サイドウォールのマーク・刻印で判別

もっとも簡単な見分け方は、タイヤの側面(サイドウォール)にある刻印を確認する方法です。各メーカーは、ランフラットタイヤ専用の略称や記号をタイヤに表示しています。

たとえば、ブリヂストンは「RFT」、ミシュランは「ZP」、ヨコハマは「ZPS」といったように、メーカーごとに異なるアルファベットが刻まれています。

また、タイヤの回転方向マークによく似た、国際規格ISOのランフラットマークが入っている製品もあります。

(2) メーカー別の呼び方・表記一覧

具体的な各社の表記は以下のとおりです。

・ブリヂストン:RFT(Run-Flat Technology)
・ピレリ:r-f(Run Flat)
・コンチネンタル:SSR(Self Supporting Runflat)
・グッドイヤー:EMT(Extended Mobility Technology)
・ダンロップ:DSST(DUNLOP Self-Supporting Technology)
・ミシュラン:ZP(Zero Pressure)
・ヨコハマ:ZPS(Zero Pressure System)
・トーヨータイヤ:TRF(TOYO Run Flat)

(3) 車両取扱説明書や販売店で確認する

わからない場合は、車両の取扱説明書や購入時の販売店でも確認できます。

手元に取扱説明書がない場合は、メーカーの公式サイト等から電子版(PDF)でダウンロードできる車種もあります。

どうしてもわからない場合は、ディーラーやタイヤ専門店に車両情報を伝えれば、現在装着されているタイヤがランフラットかどうかを確認してもらえます。

5. ランフラットタイヤの寿命・交換時期

ランフラットタイヤも通常のタイヤと同様に消耗品です。安全に使い続けるためには寿命の目安や交換のタイミングを把握しておく必要があります。

(1) 一般的な寿命目安

ランフラットタイヤの寿命は、基本的に通常のノーマルタイヤと同程度と考えられています。目安となる走行距離はおおむね2〜4万km、長く使えても3〜5万km程度が交換のタイミングです。

(2) 交換時期のサイン・判断方法

交換時期を見極めるには、以下のポイントを確認します。

スリップサインの有無

タイヤには「スリップサイン」と呼ばれる安全限界を示す突起があります。残り溝が1.6mm以下になるとスリップサインが露出し、道路交通法上も使用が禁止されます。

残り溝の深さ

実際には残り溝が4mmを切ると制動距離が急激に伸び、雨天時のスリップやハイドロプレーニング現象のリスクも高まります。安全運転のために、残り溝4mmを交換目安にすると安心です。

ひび割れ・偏摩耗・傷の有無

トレッド面にひび割れやキズ、偏摩耗が見られる場合は溝の深さに関係なく交換が必要です。内部の補強構造まで損傷している可能性もあるため注意しましょう。

外観では確認しづらい箇所もあるため、定期的に販売店や整備工場で点検を受けることもおすすめです。

6. ランフラットタイヤの価格相場と費用

ランフラットタイヤは性能面で優れる一方、価格や交換費用が高めです。ここでは購入から交換までにかかる費用の目安を整理します。

(1) 新品価格の相場

ランフラットタイヤの価格はサイズやメーカーによって異なりますが、ノーマルタイヤに比べて1本あたり1〜2万円程度高くなります。4本セットで購入する場合、ノーマルタイヤに比べて4〜8万円の差が出るため、かなり高額になります。

さらに、大径サイズを採用する高級車では4本で20万円を超えるケースもあります。とくにBMWやメルセデス・ベンツなどではこの傾向が顕著です。

(2) 交換工賃・作業費用

交換費用も通常タイヤより高めです。特殊な構造により専用設備や技術が必要になるため、工賃が上乗せされます。

相場は1本あたり3,000〜8,000円程度で、通常のタイヤ交換(1,500〜3,000円程度)より倍以上になるケースもあるのです。

4本同時交換の場合、工賃だけで1〜3万円程度を見込んでおきましょう。

費用を抑えたい場合はネット通販でタイヤを購入し、持ち込み交換に対応する店舗を利用する方法もあります。

7. ランフラットタイヤに関してよくある質問

ここでは、ランフラットタイヤに関してよくある質問をまとめて解説します。

(1) ノーマルタイヤに戻せる?メリット・デメリット

ランフラットタイヤを標準装着していても、通常のラジアルタイヤへ変更は可能です。ただし、交換前にメリット・デメリットを理解しておく必要があります。

ノーマルタイヤはランフラットタイヤに比べてゴムが柔らかく、衝撃を吸収しやすいため、乗り心地が良くなるケースもあります。さらに、選べる銘柄が増え、交換コストを抑えやすくなる点もメリットです。

一方、ランフラットタイヤ特有の「パンクしても走れる安心感」は失われます。

そのため、スペアタイヤやパンク修理キットを常備し、万が一の際は迅速な対応が必要になります。

(2) ランフラットタイヤにスノーチェーンは使用できますか?

ランフラットタイヤにもスノーチェーンを装着できます。

ただし、自動増締め式チェーンの使用が推奨されます。これは、空気圧が大きく低下しても適切に締め付けできるためです。

装着時は車両ごとの適合確認が必要となるため、事前に販売店やディーラーに相談しておくと安心です。

(3) ランフラットタイヤはパンク修理できる?

基本的に、ランフラットタイヤはパンク修理できません。

内部に補強ゴムを備え、空気圧ゼロでも走行できる構造ですが、パンク後の走行で内部損傷が進んでいる可能性があるためです。

補強層までダメージを受けていた場合、修理して再利用すると破裂の危険が伴うため、新品交換が原則です。

ただし、パンク後に「ランフラット走行」(空気圧70kPa以下)をしていない場合は、限定的に修理できるケースもあります。最終的な判断は専門店に任せましょう。

8. タイヤに関することはグーネットピットにお任せください

ランフラットタイヤは、パンク時でも走行を続けられる安全性や利便性が大きな魅力です。すでに装着している人はもちろん、これから導入を検討している人も、特徴や注意点を理解しておきましょう。

なお、ランフラットタイヤは特殊な構造を採用しているため、取り扱い実績のある整備工場に依頼することをおすすめします。

グーネットピットなら、お近くの整備工場を簡単に検索できるほか、ランフラットタイヤの交換やパンク修理の実績も確認できます。

対応店舗を探す手間も省けるので、迷ったときはぜひグーネットピットをご活用ください。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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