輸入車
更新日:2021.04.30 / 掲載日:2021.04.29
【試乗レポート プジョー 3008ハイブリッド4】EV走行も可能なフレンチコンパクトSUV

プジョー 3008ハイブリッド4
文●岡本幸一郎 写真●ユニット・コンパス
2008で完成度の高い純EVを披露したプジョーは、3008のフェイスリフトとともに矢継ぎ早に初のプラグインハイブリッド4WDの「3008ハイブリッド4」をラインアップに加えた。
3008は2016年のグローバルローンチ以来、80万台以上が生産されたほどのヒット作で、2017年の欧州COTYを受賞したほど高く評価されている。日本市場も2017年3月のデビュー以来、4年弱で累計8309台が販売された。
内外装の変化も一目瞭然

3008ハイブリッド4 エクステリア
新旧の見た目の変化は見てのとおりだ。「GT」ではコーナリングライトの付くフルLEDヘッドライトが与えられ、宇宙の広がりを想起させるべくドットを配したフレームレスグリルの両脇には、ライオンの牙をモチーフにしたというLEDデイライトを備える。さらに、三条のLEDが赤く光る立体感を増したリアコンビランプに、流れるシーケンシャルインジケーターを採用したのも新しい。
インテリアは、すでにおなじみとなった独自の「i-Cockpit」による小径ステアリングホイールの上に配されたメーターパネルには、プラグインハイブリッド化をふまえた表示がいくつか追加されている。
今回、全車のシートが刷新されたことにも注目で、GT HYBRID4には、アルカンタラ&テップレザーのライトグレー基調のシートが標準で付き、レザーパッケージオプションが用意されている。
車内のつくりでの既存モデルとの違いは、リアシートを前倒しした際に微妙に前側が高くなることぐらいで、居住空間や荷室容量に差がないあたりは、電動化を踏まえて開発された軽量高剛性のモジュラープラットフォーム「EMP2」の強みに違いない。

3008ハイブリッド4 エクステリア

3008ハイブリッド4 インテリア
3008ハイブリッド4 フロントシート
3008ハイブリッド4 リアシート
3008ハイブリッド4 ラゲッジルーム
3008ハイブリッド4 ラゲッジルーム
3008ハイブリッド4 ラゲッジルーム
刺激的な速さとEV走行性能を両立

3008ハイブリッド4 パワートレイン
パワートレインは、既存の2.0リッターのBlueHDiディーゼルと1.6リッターのPureTechガソリンターボのエンジンに今回のプラグインハイブリッド4WDモデルを加えた3タイプが対等に選べることもコンセプトのひとつだ。
GT HYBRID4は、より高回転域を伸ばすべく20ps増の200ps/300NmにチューニングされたPureTechガソリンターボエンジンに、8速ATのトルコンを多板クラッチに換えたPHEV専用トランスミッション「e-EAT8」とともに、110ps/320Nmのフロントモーターと、独立した112ps/166Nmのリアモーターに、13.2kWhのバッテリーを組み合わせることで、歴代のプジョー市販モデルで最強となるトータル出力300ps/520Nmを実現した。バッテリーは200V/6kWの普通充電により約2時間半で満充電となる。
ドライブモードは、「4WD」、「SPORT」、「HYBRID」、「ELECTRIC」の4つで、システム始動時にはデフォルトでもっともエネルギー効率に優れるHYBRIDモードとなり、バッテリー残量があれば、発進時はリアモーター駆動となる。そして運転状況によりエンジンとモーターがフレキシブルかつスムーズに切り替わる。
前後どちらのモーターで回生するかは、状況により車両が適宜判断しているが、4WDモードはフロントのみで回生し、SPORTモードでは旋回性を高めるためリアをメインに回生していることが見て取れる。
ごく普通に走らせても、アクセル操作にリニアに応答するモーターならでは加速力、巡行時のなめらかで静かな走りが心地よい。踏み増すと200psに引き上げられたエンジンに前後のモーターによるアシストによる瞬発力はかなりのもの。さすがは0-100km/h加速タイムが5.9秒(欧州参考値)と、6秒を切っているだけのことがある。SPORTモードを選ぶと、より力強さが増す。人工サウンドによる演出もまた楽しい。
一方で、ELECTRICモードを選択すると、バッテリーが残っていれば、よほどアクセルを深く踏み込まない限りエンジンはかからず、ゼロエミッションのEVのまま最高速度135km/hまで粘る。EV走行換算距離はWLTCモードで64kmを達成するなど、刺激的な速さと環境への優しさを巧みに兼ね備えている。
新たな価値を身につけた3008

3008ハイブリッド4 エンブレム
フットワークの仕上がりもなかなかのものだ。ひきしまっていながらも、しなやかにストロークして路面からの入力を巧みに受け止める足まわりはプジョーならでは。乗り心地の快適性は申し分なく、攻めた走りでもクルマの挙動が素直で掴みやすい。さらにGT HYBRID4には、リアモーターの駆動により旋回をダイナミックにコントロールできるというこれまでにはない価値を加えたことにも注目だ。
フラッグシップモデル508と同等レベルの最新世代の先進運転支援システムも全車に標準されたのもありがたい。二輪車や歩行者、夜間検知にも対応するアクティブセーフティブレーキなどの基本機能はもとより、レーンポジショニングアシストが一般的には左右両車線の中央をキープするところ、プジョーのシステムは左右車線内のドライバー任意の位置を無段階で選べ、白線から一定の距離を保った状態で走れるようになっているのが特徴。このほうがシステムが不適切に作動する可能性も少なく、使いやすいと感じる人は多いはずだ。
プジョーでは未来へのビジョンとして、“UNBORING THE FUTURE(退屈な未来は、いらない。)”を掲げている。こうして3008の走りに新風を吹き込み、新たな魅力をもたらしたGT HYBRID4は、それを現状でもっとも具現化したモデルといえそうだ。
執筆者プロフィール:岡本幸一郎(おかもと こういちろう)

自動車ジャーナリストの岡本幸一郎氏
1968年、富山県生まれ。幼少期に早くもクルマに目覚め、学習院大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの企画制作や自動車専門誌の編集に携わったのち1998年にフリーランスへ。軽自動車から高級輸入車まで幅広くニューモデルの情報を網羅し、近年はWEBメディアを中心に寄稿。ドライビングスクール等のインストラクターも務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
プジョー 3008 GT HYBRID4(8速AT)
■全長×全幅×全高:4450×1840×1630mm
■ホイールベース:2675mm
■車両重量:1850kg
■エンジン:直4DOHCターボ+モーター
■総排気量:1598cc
■エンジン最高出力:200ps/6000rpm
■エンジン最大トルク:30.6kgm/3000rpm
■モーター最高出力前/後:110ps/112ps
■モーター最大トルク前/後:32.6kgm/11.8kgm
■サスペンション前/後:ストラット/マルチリンク
■ブレーキ前/後:Vディスク/ディスク
■タイヤ前後:225/55R18