車の最新技術
更新日:2021.04.13 / 掲載日:2021.04.13
自動運転レベル3はどこが凄い!?【ニュースキャッチアップ】
文●ユニット・コンパス 写真●ホンダ
(掲載されている内容はグー本誌 2021年3月発売号掲載の内容です)
2021年3月にホンダが発表した新型レジェンドは、世界で初めて自動運転レベル3の機能を搭載する市販車となった。自動運転レベル3とはいったいどのようなものなのか。そこに搭載される技術を含めて紹介する。
ホンダが世界で初めて自動運転レベル3を市販
まさにレベル違いだ。2021年3月、ホンダは世界で初めて自動運転レベル3の機能を搭載する新型レジェンドを発売した。自動運転の技術は、その内容によって0から5まで6段階に定義されているのだが、レベルが1つ上がるだけで、求められる要求技術は格段に上がる。それゆえに、多くの自動車メーカーは、あえて自動運転レベル2にその機能をとどめる方針をとってきたのだ。
では、レベル2とレベル3では何が違うのか。いちばんは、運転の主体にある。レベル2までの運転の主体が「ひと」だったのに対し、レベル3以降では、運転の主体が「システム」となる。日本は2020年4月に世界に先駆けて法律を改正し、自動運転レベル3のクルマが公道を走ることが可能になった。
自動運転レベル3では、システム作動中、ドライバーは運転以外の行為ができるようになる。ステアリングから手を放すだけでなく、目線を前方から外したり、DVDを観ることだってできてしまう。
ただし、レベル3ではシステムが作動する領域は限られており、責任もドライバーにある。そのため、レベル2とできることの差はあまりない。
だが、新型レジェンドが世界で初めて「自動運転」を実現させた記念すべき1台であることは間違いない。
[CLOSE UP]自動運転レベル3ができること
新型レジェンドは、自動運転レベル3の型式指定を取得。それにより、高速道路での渋滞時にドライバーに変わってシステムが運転操作を行うことが可能となった。これまでも似たような機能はあったが、それらが「運転補助システム」であったのに対し、本当の意味での自動運転となる。ただし、責任の所在はドライバーにあり、自動運転レベル3の機能が作動する領域も特定条件に限られる。
システム作動中は、ドライバーはステアリングから手を離すことができる。また、加減速についても車両が制御する。
渋滞中は、テレビやDVDが視聴可能になる。これまで退屈で苦痛だった渋滞中の過ごし方が快適なものに変わる。
走行中、同一車線に追い越し可能な車両を確認した場合、ドライバーに告知したうえで、車両が自動的にウインカーや車両の操作を行い、車線変更を実施する。
「レベル3」を実現するための技術
従来から使われてきたカメラやレーダーに加え、レーザー光を使って距離や形状を感知するライダーを採用する。
全球測位衛星システムGNSSによる高精度な情報と高精度3D地図データを組み合わせて自車位置を正確に導く。
ドライバーがシステムからの操作要求に対応できるかどうかを、近赤外線ライトを内蔵したカメラで検知し、判定する。
安全対策はこうなっている
システム作動終了時には警告音とオレンジの表示灯を使うなどして、ドライバーに運転操作を要求する。
実車と巨大なスクリーンを活用したドライビングシミュレーターを使い、ドライバーの反応や動きを検証した。
開発時には、実証実験車によるのべ130万kmもの走行テストを全国で実施。ブレーキなどのシステムは二重化した。
自動運転の時代がいよいよ始まろうとしている
自動運転レベル3の機能を搭載する新型レジェンドの価格は1100万円。従来の感覚からすれば非常に高価ではあるが、それはこれまでの新技術も通ってきた道。そして道を切り拓いた先に未来はある。市販化を決断したホンダに拍手だ。
自動車ジャーナリストの石井昌道氏
自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。