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更新日:2019.01.06 / 掲載日:2017.11.28

トヨタの最新PHVスポーツ TEスパイダー800、走る!!

TE-Spyder800、通称「テスハチ」独占試乗

東京オートサロンで話題沸騰現代に蘇ったヨタハチを独占試乗!!

東京オートサロンで話題沸騰現代に蘇ったヨタハチを独占試乗!!

【本記事は2014年8月にベストカーに掲載された記事となります。】TE-Spyder800、通称「テスハチ」はトヨタ技術会が開発したライトウェイトミドシップPHV。トヨタの次世代スポーツカーの提案ともいえるこのクルマを独占試乗で走らせた!!

こちらは今年の東京オートサロン出展時のTE-Spyder800。ショーモデルにありがちなハリボテではなく、パワートレーンも実装していたのだ

こちらは今年の東京オートサロン出展時のTE-Spyder800。ショーモデルにありがちなハリボテではなく、パワートレーンも実装していたのだ

東京オートサロン会場で、一際存在感を放っていたテスハチことTEスパイダー800。ミドシップの2シーターオープンというクルマ好きには堪らないコンセプトに加え、PHVという先進性も併せ持つこのモデル。開発したのはトヨタ技術会なのだが、単なるショーモデルではなかった!!聞けば「パワートレーンも実装しており、試乗もできる」(トヨタ広報部)というかなりの本気度。しかも、MR-SをベースにパワートレーンはプリウスPHVのシステムを踏襲。つまり、既存のトヨタの技術をもってして充分、実用化が可能なモデルなのだ!!ということで、今回、BCはこのTEスパイダー800を独占試乗。乗ってわかった走りの実力やメカニズム、そして、トヨタ技術会とは? といった点をハンドルを握った鈴木直也氏にレポートしてもらった!!

技術会のプロジェクト

TE-Spyder800のベースはMR-Sだが、エンジンからデザイン、サイズ、に至るまでさまざまな部分でMR-Sとは異なる部品や設計となっている

TE-Spyder800のベースはMR-Sだが、エンジンからデザイン、サイズ、に至るまでさまざまな部分でMR-Sとは異なる部品や設計となっている

ついに累計生産600万台に達したトヨタのハイブリッド車だが、ひとつだけ面白くない点をあげるとすれば、それはユーザーや外部のチューナーがパワートレーンに手を入れられないということだ。最近のクルマは多かれ少なかれコンピュータ制御で動いているが、駆動/回生/充放電を全部ソフトウェアで制御するトヨタのTHSは、システムがとりわけ複雑怪奇。「ちょっとエンジンをパワーアップ……」なんて考えても、制御にかかわるハードとソフト両方の情報にアクセスできないとムリ。つまり、外部の人間には手も足も出ない。ところが、そんな改造不可能なTHSを大幅にモデファイしてミドシップに搭載したカスタムカーがあるという。正直いって半信半疑で取材に出かけたわけであります。取材現場にやってきたメタリックグリーンのミドシップ2シーターは、その名もTEスパイダー800。デザインの完成度はモーターショーなんかに出品されるコンセプトモデルのレベルで、きわめてプロフェッショナルな仕上がり。このまんまプロダクションモデルとして生産されてもまったく不思議じゃない。「これだけの完成度とオリジナリティを持ったクルマで、しかもパワートレーンは改造版のTHS。いったいどうやって造ったんですか?」好奇心が抑えられなくなってクルマを運んできた謎のスタッフに質問しちゃいましたよ。「ご説明しましょう」と、差し出されたのはトヨタの名刺。ユニット統括部主幹、服部正敬さんとある。「え、トヨタの人。じゃトヨタの社内プロジェクトですか?」とボク。「いや、私はトヨタの社員なんですが、このクルマは会社の業務とは無関係なんです」「どういうこと……?」という感じで取材がはじまったわけだが、かいつまんで説明すると、このTEスパイダー800というクルマは、トヨタの社員による一種の“課外活動”で造られたものなんだそうだ。じつは、トヨタには1947年創立という歴史を誇る「トヨタ技術会」という団体がある。これは、運動部や文化部と同じようなサークル活動なのだが、目的がエンジニアの技術研鑽という点がユニーク。運動部なら他チームとの試合、文化部なら演奏会や講演会、同じようにトヨタ技術会は、日ごろの研究活動の成果が、このTEスパイダー800というカスタムカーに結実しているというわけなのだ。「でも、クルマを開発している人が、課外活動でまたクルマの開発ですか?」「仕事となると必ずしもやりたいことばかりできませんが、技術会のプロジェクトは好きなことができるのが醍醐味です。たとえば、今回車体の取りまとめをやった久米川くんは、ふだんはテールランプの設計をやってます」「TEスパイダー800の全体コンセプトを説明しましょう」ということで、今度は第2ボデー設計部、久米川達矢さんと名刺交換。「このクルマは、MR-SをベースにプリウスPHVのパワートレーンをミドに搭載したハイブリッドスポーツとして企画しました。車名のTEはトヨタ技術会のイニシャル、800は乾燥重量800kgを目標にしたことに由来します。軽量に仕上げることと、ミドシップならではの運動性能が技術的なテーマ。そのために、PHVのバッテリーをセンタートンネル部分に搭載するなど、パッケージングにかなり苦労してます。エンジン/パワートレーンについては、上川さんから……」てな具合に、つぎつぎ名刺交換をしつつ、TEスパイダー800各部分の開発を担当した方々に話をうかがったのだが、ページが足りなくなっちゃうので、要点をザックリまとめましょう。

迫力あるエンジン音

TE-Spyder800はプリウスPHVのシステムを踏襲したプラグインハイブリッド車。

TE-Spyder800はプリウスPHVのシステムを踏襲したプラグインハイブリッド車。

ぼくの見るところ、このTEスパイダー800でもっとも興味深い点は、門外不出のはずの制御ソフトウェアを大胆に改造していることだ。まずエンジンだが、プリウスPHVをベースにしながらも、軽量化とパワーフィールの改善を目的に、エンジン本体を1.8Lの2ZRから1.5Lの1NZにダウンサイジングしている。しかも、アクア用のアトキンソンサイクル1NZ-FXEではなく、オーリス用の1NZ-FEを選び、さらに吸排気系やカムをいじってパワーアップとスポーティなドライバビリティを目指している。開発中のエピソードを聞くと、制御ソフトウェアの変更には社内の専門チームが協力し、ハイブリッド専用ベンチなども活用してセッティングを煮詰めていったとのこと。“課外活動”といっても餅は餅屋で、外部のチューナーなどでは想像もできないほどディープな技術データと開発設備にアクセスしているのだ。また、少数のスタッフでクルマ全体を仕上げていかなければならないため、専門外の仕事もガンガンこなす。たとえば、TEスパイダー800はPHVだから、フロントに置いたPCU、センタートンネルのバッテリー、ミドマウントのモーターなど、高圧配線もすべてゼロからやり直しなんだけど、これを担当した永岡達司さんの本来の業務は、半導体の開発。ふだんはミクロンオーダーの配線をやってる人が、太い高圧電気配線と格闘するというのも、“課外活動”ならではのエピソードといえる。今までのトヨタ製ハイブリッドとは一線を画す軽快な走りで、TEスパイダー800の走りっぷりだが、「さすがプロフェッショナル!」と感心する部分もあれば、「ここは同好会レベルでは?」という粗削りな部分もあり、率直に言えば玉石混交なクルマでした。面白いのは、軽くチューンした1NZ-FEとハイブリッドのマッチングだ。まず、慎重に走り出すと、ベースがPHVだからかなりの速度域まで完全EV走行。車重が軽いからEVレンジでもかなりの俊足で、箱根のワインディングをイイ調子で飛ばすくらいはEVで充分やってのける。アクセルをグッと深く踏み込むと、チューンド1NZ-FEが目を覚ます。普通のプリウスなら、エンジンは音もなくかかるところだが、吸排気系をチューンした1NZはかなり音がワイルド。ドライバーの頭のすぐ後ろでウナリを上げる吸気音がすさまじい。この音に負けじと、パワーフィールもプリウスやアクアとはまったく別なキャラクターだ。中速域に強力なトルクの山を感じつつ、なおかつトップエンドまでイイ感じで伸びる。THSは電気式CVTだから駆動のダイレクト感はいまひとつなのだが、軽さとトルクを利して加速性能はかなりのもの。今回はかぎられたシチュエーションでの試乗だったけど、箱根や筑波サーキットあたりに持っていってもかなり楽しめそうだ。

課外活動で大胆な冒険

トップを閉めたフォルムはベースとなったMR-Sとは一線を画し、精悍でスポーティ

トップを閉めたフォルムはベースとなったMR-Sとは一線を画し、精悍でスポーティ

いっぽうで、省略されちゃった部分もけっこうある。パワステは機能していないし、ブレーキもECB化が精いっぱいで回生まで手が回らなかった。また、凝った外装とは対照的にドアトリムなどは「時間切れ」といった仕上がり。メーターまわりも、タブレット端末を使うというコンセプトはいいが、ソフトは完全には機能していない。しかし、こういう無茶が許されるのが、“課外活動”の楽しいところ。トヨタ本来の業務では許されない大胆な冒険もできるし、多少のアラは「ゴメンナサイ」ですむ。トヨタにかぎらず大企業にはさまざまな制約がある。そんななかで、いかにベンチャー精神を育むか。TEスパイダー800みたいなクルマを生み出すトヨタ技術会は、そういう海賊スピリットに富んだ人にとってじつに魅力的なサークルなんだろうなぁ。

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

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