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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.05
オンでもオフでも両方快適!本能の赴くままに!三菱デリカD:5

アウトランダーより約200kg重いことが走りの面では重厚感としっとり感を演出するのにひと役買っている。D:5の走りはひとクラス上の質感を持っている
【本記事は2007年3月にベストカーに掲載された記事となります。】日本のワンボックス史に名前を残す名車デリカ。このデリカブランドは、’94年のデリカスペースギア以降、存在はしていたがほとんど忘れ去られていたような状況になっていた。晩年はほとんど改良を受けず、特別仕様車の対応ですましていたが、今年1月31日に待望のフルモデルチェンジ。今回メーカーが開催する試乗会のほか、クルマを借り出して担当と竹平素信氏で野や山に出かけてみたのだが、なかなかの注目度の高さで、みなさんおおいに気になっていたみたい。特にエスティマ、ステップワゴン、ノア/ヴォクシーといったボックス系ミニバンオーナーの熱い視線を感じながらの休日ドライブとなったのであります。「これまで雑誌などでデリカD:5の写真を見てきたが、本物のほうがだんぜんカッコいい。無骨で厳ついだけかと思ったけど、フロントマスクなんてハマーのようなギラついた感じが凄くいい。強そうだしね」と、デリカD:5を見て感想を述べてくれたのは、ステップワゴンオーナーの山田勝さん。そのほかにも取材中いろいろな人から好意的な意見をいただきました!そのデリカD:5は、デビュー後の10日間で約4500台を受注し、その後も順調に台数を伸ばしている。さて、そのデリカD:5は見た目だけなのか?それとも走っても魅力を備えたミニバンなのか? 竹平素信が多角的に検証する。
2.4Lで非力さを感じたりしないか?

アウトランダーでも定評のある2.4L直4DOHC フラットトルクによりどの回転域からでも気持ちよく加速するのが気持ちいい。ただし、エスティマに比べるとタウンスピードでのキビキビ感はやや劣っている
デリカD:5は全長4730×全幅1795×1870mmの3ナンバーサイズで、ノア/ヴォクシー、ステップワゴンなどよりも大きく、エスティマとほぼ同じクラス。このクラスの主流となっているのが2.4L、直4(日産だけ例外的に2.5L、V6)で、そのパワーは各車表にしたとおり。トヨタはエスティマとアルファードで同じ2.4Lでもエンジン、トランスミッションとも違う。来年早々にデビュー予定の新型アルファードには、エスティマのエンジンと7速CVTがそのまま搭載されることになるはず。面白いのはデリカD:5とエスティマの2.4Lがほとんど同じスペックという点だな。おまけにデリカのGとエスティマのアエラス4WDを比較すると車重まで同じときている。しかし、乗り比べてみると両車違いがあって面白い。低中速域ではその違いが顕著で、トルクはデリカのほうがわずかながら大きいが、CVTのセッティングやアクセルのレスポンスがスポーティに仕上げられていることもあり、低中速でキビキビしているのはエスティマ。タウンスピードで元気に感じるのはエスティマだ。ディーラーでのちょい乗り試乗程度でもキビキビ感がわかる味つけがされている。このあたりはトヨタのうまさを感じるね。いっぽうデリカは、フラットトルクによりどこからでもリニアな加速を見せる。といっても昔ながらの三菱伝統のトルクでグイグイというタイプではなく、回しても気持ちいい。だから高速道路などを走行している時に余裕のある走りが楽しめるのはデリカということになる。アウトランダーと同じエンジンながら約200kgも重いため、アウトランダーのような絶対的な軽快感はないが、遅いと不満が出ることはないので安心してOK。それどころか、アウトランダーでは若干CVTの遅れ感のようなものが気になっていたが、デリカD:5ではそれも解決しているので、レスポンスがよく気持ちいい。ちなみに堅牢そうなため、いかにも重そうに見えるデリカD:5だが、軽快なイメージのエスティマと同じ1770kg。アルファード、エルグランド、エリシオンなどに比べると圧倒的に軽い。それゆえ2.4L、170psで充分に走るのだ。小さくて軽いボディに2.4Lを搭載したステップワゴンのようなクルマも面白い存在だが、デリカD:5の2.4Lはこのクラスのミニバンではかなりバランスがいい。しかし、アクセルを踏み込み、回転を上げていくとエンジン音がちょっとうるさいのが気になった。これはアウトランダーでは感じなかった欠点で改善を望む。それから、キャラクターとして悪くはないが、エスティマのように低速からトルクが立ち上がるスロットルセッティングにしたほうが、誰にでもスポーティでキビキビしているように感じられ、その魅力がわかりやすいと思う。そのいっぽうで、デリカD:5は直4エンジン搭載に割り切ったため、ボンネット内を省スペース化することができ、それにより室内スペースが広くとれたという恩恵もある。この割り切りは評価したい。
背が高くて走りは不安定じゃないの?

デリカD:5はデリカ伝統のオフロードでの4WD性能を生かすために最低地上高はSUVやクロスオーバーカーといわれるクルマも真っ青の210mmを誇るが、全高は1870mmとこのクラスでは一番背が高いため、腰高で安定感のない走りとなっているのでは、と気になっている輩も多いと思う。何を隠そうこのワシもそう考えていたのだが、三菱の開発陣はホントがんばったと思う。アウトランダーよりも約200kg重い車重により走りにドッシリ感と重厚感が出た感じ。旧型のスペースギアでは、なんだか全高が高すぎたこともあったが、常に揺れるようなコーナリングでお世辞にもスタビリティが高いとは言えなかった(大げさに言えば振り子電車のような感じかな)。しかし、D:5はボディがシッカリとしていること、スペースギアよりも100mmも全高が下げられたこと、サスペンション、ダンパーがうまく働いていることにより、オンザレール感覚のコーナリングだって可能なのだ。もちろんワインディングをガンガンと攻めるクルマではないが、大きなRのコーナーが続くような高速コーナリングは気持ちよくこなす。D:5のしなやかなハンドリングは秀逸。タイヤがシッカリと踏ん張っているような安心感のある走りが魅力で、ひとクラス上の高級ミニバンといった趣がある。背が高いこともありコーナリング中にはロールするが、セダン系モデルにしか乗ったことのない人でも怖いと感じることはないし、違和感なくドライブできると思うぞ。もちろん、高剛性ボディを実現させた『リブボーンフレーム』と名付けられた骨格フレームが路面からの入力をシッカリと吸収し、ダンパーのサイズも大型化したことにより大きな入力や不規則な入力などに対してもキッチリ減衰している。これらのことにより走りの質感がかなり高められているということも見逃せない。
乗り心地はどうなの?

自在なアレンジが楽しめるD:5の室内。フル乗車するもよし、大きな荷物を積むもよし。使い勝手抜群!
ミニバンの場合運転席、2列目、3列目の乗り心地はまったく違うもの。運転する人、乗せもらう専門などなどミニバンはある意味分業制で好みもまちまちだが、D:5に関して言えば、どこに座っても快適に過ごすことができる。D:5の乗り心地は、前にも述べたとおり、新構造の高剛性フレームの恩恵が大きく、ヘンな突き上げとかがないのでマイルドななかにもビシッと引き締った感じがする。これはライバルに対しても魅力的と言える部分だ。乗り味がジェントルと感じられる要因でもある。「リアサスをマルチリンクにすることにこだわった」と、開発陣はアピールしていたが、これも走り、乗り心地の両面で大成功と言える。特に2列目、3列目の乗り心地の向上にひと役買っている。ミニバンは運転する人よりも乗せられる人が主役という感じがあり、2列目、3列目の居住性、乗り心地が重要なのは言うまでもない。サスペンションの味付け、ダンパーのセッティングなども重要だが、シッカリとしたボディが乗り心地向上には最も大切だというのがD:5に乗るとよくわかる。ひとつ欲を言わせてもらえば、スペース的に割り切った3列目シートなんだから、もう少し座面などシッカリとしたものにしてもらいたかったな。そうすればクラス上のアルファード、エリシオン、エルグランドと本気で渡り合えたと思う。狭いわけはないだろうが、居住性はどうなの?居住性という点では、エンジンのところでも触れたが三菱の割り切りがすばらしいと感じた。その割り切りとは、3列目シートの居住性を高めるために、3列目使用時にはラゲッジはほぼゼロにしてあるというものだ。ユーザーのあれもこれも、というニーズに応えるため、なかなかココまで割り切れないものだが、これにより、広大なスペースの3列目が生まれている。ボディサイズがひとまわり大きいアルファードもビックリの3列目シートだ。そのため、3列目で足を組むこともできるし、ちょっとした荷物なら足下スペースに置くこともできる。荷物を積まなければいけない時は、3列目を分割で跳ね上げるなどで対処すればすむ。三菱のこの英断を讃えたい。ただいまはやりの跳ね上げタイプの3列目シートの操作性はセレナにはちょっと及ばない感じ。
視界はどうなの?

ているので非常に視界が広く安心
デリカD:5をドライブしてすばらしいと思った点はいくつかあるが、視界のよさはそのなかでもかなり上位に入る。このクルマは見た目どおり四角いクルマだ。それゆえ、ボディサイズを把握しやすい。ボディの四隅を把握しやすいのだ。そのいっぽうで四角いクルマの弊害として、Aピラーが立ったように感じられそれが視界に入ってしまうというのがあるが、D:5はAピラーに傾斜がつけられているので、視界の妨げになったりしない。そしてフロントウィンドウが、下側まで伸びているため、ボディの近いところまで見えやすく、運転していて安心感につながる。上から下まで見渡せるという感じなのだ。これはディーラーで座ってみるだけでもわかるのでぜひお試しあれ。これは取り回しのよさにもつながる。・燃費はどうなの?今回高速と箱根~富士五湖周辺を一般道、高速をミックスさせ406.3kmを走行。その漢に使用したガソリンは50.3L。つまりトータル燃費は8.07km/L。D:5の10・15モード燃費は10.4km/Lだから、達成率は77.7%。平均的達成率でまずまずの成績といえるだろう。ちなみにエスティマ2.4アエラス(FF)は、ほぼ同じコースを走行してトータル燃費は10.2km/L。10・15モード燃費の達成率は、82.2%。FFモデルと4WDの違いはあるといっても、トヨタの実燃費と10・15モード燃費の差の小ささは驚異的。このあたりはデリカもまったく歯が立たず(編集部)。・自慢の4WDの実力はどうなのD:5の4WDシステムはアウトランダーでも定評のある電制4WDで、ダイヤル式のスイッチにより2WD(FF)と4WDオート、4WDロックを自在に切り替えることができる優れもの。一般的にオンロードでは、ヘビーウェットや雪道など、特殊な条件下でないかぎり2WDモードでの走りとなるが、これが素直なハンドリングでゴキゲンなのだ。4WDオートモードでは前後輪のトルク配分を前後85対15を基本に最大40対60までコントロールすることができるのが強みで、深い雪道などでも充分な走破性を見せてくれた。雪道での走りについての詳細は、囲みに譲るが、誰もが安心して走ることができる点がすばらしい。そしてこの電制4WDには全グレードにアクティブスタビリティコントロール(ASC)が標準装備されるので、非常に心強い存在となる。
いいクルマ作ったね!

デリカD:5の高剛性ボディが安定感のある走りを実現させる大きな要因となっている ほ乳類の肋骨のようにボディフレームの結合部の断面を確保することによって生まれた骨格構造。これによりボディ剛性は飛躍的に向上し、走りの質感アップ、乗り心地の向上に大きく貢献している。もちろん衝突安全性の高さにもつながるデリカD:5のセールスポイントとなっている
スペースギア時代まではパジェロ譲りの強力な走破性を誇る縦置きエンジンベースのフルオートフルタイム4WDで、その力強さ=漢の4WDというイメージでカルトな人気を誇ったので、その当時のファンは電制4WDを頼りないと感じるかもしれないが、それは大きな間違い。かつての無骨なまでの力強さはないが、オン/オフともに洗練されたスムーズな走りは魅力的。そして誰でも簡単に本格的な走りが楽しめる。コイツの走りはホントにゴキゲンだぜ!2.4Lクラスのボックスタイプミニバンでは、アルファードとエルグランドがフルタイム4WDなのを除けば電制4WDが主流。そのなかでもナンバーワンのポテンシャルと扱いやすさを兼ね備えているのがD:5だと断言できる。これはデリカD:5の開発陣が、アウトランダーでいい経験をし、勉強してきたことをD:5を開発する上でキッチリと生かしていることの証明だ。5月にはFFモデルが登場するということだが、デリカの魅力を堪能するためには、少々価格差があっても4WDを選びたい。電制4WDの価格差は22万~25万円程度となるはずでできるだけ安く買いたいという人には大きな出費となるが、無理してでも4WDを買おう! 4WDは雪道だけでなく、ウェットでの発進、コーナリング時に絶大なる効果を発揮。安全装備としても使えるのだ。デリカD:5は期待した以上のできだった。エンジンの音の問題、スロットル特性、サードシートの質感など注文はあるが誰にでもお薦めできる1台だ。価格は261万4500円から341万2500円となっているが、基本装備を抑えた277万2000円のGを購入し、好きなパーツでドレスアップするという楽しみ方もできる。運転して楽しめたし、2列目、3列目シートに乗せてもらっても充分に満足できた。見た目のカッコよさ、存在感もバッチリ。大人気でメジャーなエスティマには食指は動かない、いう輩にはデリカD:5がピッタリ。三菱はホントにいいミニバンを作ったと思うぞ。
テリー伊藤さんはD:5と初対面で何思う!?
05年の東京モーターショーでコンセプトモデルが出展され、「この会場でナンバーワンだ!」としたデリカD:5。私にとってこのクルマの期待度は、莫大だった。だからこそ少しガッカリしてしまった部分がある。フロントマスクは、ショーモデルと比べて少し大人しくなってしまった。まるで就職のために髪を切る若者みたいな感じだ。さらに3列目シートは跳ね上げ式を採用したためか、アームレストが付いてなく、座り心地もイマイチ。そしてCMがいけない。ファミリー感を出しすぎている。デリカはミニバン界でも特殊なポジションにおり、「タフさ」という大きな武器を持っているのになぜそれを徹底的に前面に押し出さないんだ!しかーし! 今のデリカD:5は言うなれば田舎から東京に出てきて、右も左もわからずキョロキョロしているだけの女の子なのである。多くの女の子が街に出て、多くの視線に曝されることで美人になっていくように、デリカD:5もこれからどんどん綺麗になっていくはずだ。フロントマスクは私の進言で設定したという「バンパープロテクター」を装着すれば武骨になるはずだし、3列目シートも「豪華仕様」を設定すれば解決する。シフトノブは武骨さがあっていい感じだし、運転席のシートは固くて私好みだった。そう、デリカD:5これからのクルマ、磨けば光る宝石なのだ。三菱よ、そして三菱ファンよ、デリカD:5がこれからどう変わっていくか。どう美しくなっていくかは、君たちにかかっている。私も応援するぞ!
竹平素信はデリカD:5で雪道を走って大はしゃぎ!

デリカには電気毛布がオプションで設定されている。このあたりの気配りがうれしい。編集部イチハラは決して遭難したのを救助されたわけでなく、気持ちよく眠っているだけ
今年は雪が少ないが、この先雪が降ってもデリカD:5があれば怖いものなし。そう思えるほど雪道での走破性抜群。雪道大好きのワシ、竹ちゃんマンもゴキゲンだ。バンザイ! ワシは単純に雪道で楽しいクルマが好きなんじゃ! デリカD:5の4WDシステムは、アウトランダーと同じ3モード付きの電制4WDだから素性のよさは認識しているが、約200kg重い車重とのマッチング、重心の高いD:5ではどう味付けされているのかに注目してみたが、アウトランダー同様に、まったく気を遣うことなく深い雪道だって走れる。基本的に4WDロックモードは付いているが、それを使うケースはほとんどなく、もっぱら4WDモードでの走行でほとんどの雪道は対応できる。D:5の4WDモードはトルクスプリット4WDで、フロントタイヤの滑りを感知してリアに駆動が配分される。トルクスプリット4WDと聞くと非力な4WDに感じるかもしれないが、D:5の場合通常状態でもリアに15%の駆動力がかかっているので、雪道でのコーナリング中のレスポンスがよく、アンダーが少ない。それから常に4輪に駆動力がかかっているので、下り道などで減速する時もエンジンブレーキが4輪にかかり、車体が不安定な動きをすることもないので安心感がある。雪道は加速する、曲がるよりも止まるほうが難しくシビアだから、非常にありがたい。ゴキゲン4WDだ!編集部イチハラはデリカD:5の粋なオプションで心底癒されてグッスリ……最高ッス!本能の赴くままに野に山に出かけたくなるクルマだから、室内でいかに快適に過ごせるかがとても重要になってくるが、D:5なら心配無用