新車試乗レポート
更新日:2026.06.03 / 掲載日:2026.06.03

ボルボに癒しを求めるならXC90は大いにアリ【工藤貴宏】

文●工藤貴宏 写真●澤田和久

 「そうそうこの感じ。ホッとするなあ」

 ひさしぶりにボルボXC90を運転して、まずそんなことを感じた筆者。運転していて心地よく、妙に落ち着くのです。

 XC90は、ボルボのなかでもっとも車体の大きなモデル。全長は5mに迫る4955mmで、全幅も1960mmと2m目前。3列シートのSUVです。車幅こそ大きいものの、車体の全長は「『トヨタ・アルファード』よりもちょっとだけ小さい」とイメージすればいいでしょう。

かつてのボルボに感じた「優しさ」という個性

ボルボ XC90 ウルトラ T8 AWD プラグインハイブリッド

 何を隠そう、そんなXC90はボルボにおける現行ラインナップのなかでもっとも息の長いモデル。長く作り続けられているのです。

 日本デビューは2016年。当時ボルボはクルマ作りの大転換期を迎えていて、その最初のモデルとなったのが2世代目となるXC90でした。車体は新しい考え方に基づいて完全新設計し、ワイパーの操作方法までガラリと変えるほどクルマ作りを刷新。ワイパー操作に関しては「そこ変える必要あったの?」と突っ込みたくなるのはともかく、ボルボの歴史に新しい1ページを開いたモデルであり、それまでのテイストが薄まったのは事実です。

 しかし、それ以降に登場した新世代モデルに比べるとまだボルボらしさが残っていて、それが冒頭で触れた“落ち着ける感覚”の理由となっているのは疑いようがないでしょう。やっぱりボルボらしいなあ。

ボルボ XC90 ウルトラ T8 AWD プラグインハイブリッド

 そもそも、以前のボルボはとてもおおらかな性格でした。以前というのは具体的にモデルでいえば、「V70」くらいまでですかね。北欧スウェーデンの自動車メーカーながらアメリカへの輸出が多かったこともあってか、どことなくアメ車らしいまったりとした乗り味。それは山道をハイスピードで駆け抜けるような運転にはむかないけれど、高速道路をゆっくり巡航するのは大得意で、長時間のドライブで長距離を走り抜けてもとにかく疲れない。それが伝統だったんですよね。

 このところのボルボはグローバリゼーションの影響を受けてかどれも走りが骨太になり、俊敏性の高い味付けのモデルになってしまった。けれど、XC90は骨太でありつつもかつてのボルボの味を色濃く残す、ボルボらしいボルボなのです。

マイナーチェンジの変更点とパワートレイン構成

ボルボ XC90 ウルトラ T8 AWD プラグインハイブリッド

 さて、そんなXC90は2025年2月にかなり大規模なマイナーチェンジを受けています。まず、デザインはフロントとリヤのデザインを刷新。特にフロントはグッとモダンになり、今どきのボルボのテイストになりましたね。なかなかいいんじゃないですか。

 インテリアはセンターコンソールにカップホルダーを追加するなど地道な実用性の向上もありますが、最大の変化点はセンターディスプレイがこれまでの9インチから11.2インチに拡大されたこと。思えば、2016年にデビューした時はこの他に類を見ない大型ディスプレイが斬新でしたが、10年の間にすっかり“普通のサイズ”になってしまいましたね。システムも刷新され、使いやすく進化しています。

ボルボ XC90 ウルトラ T8 AWD プラグインハイブリッド

 パワートレインは「マイルドハイブリッド」と「プラグインハイブリッド」の2タイプ。駆動方式はどちらも4WDで前者は「B5」、後者は「T8」と呼ばれます。エンジンは両者とも2.0Lの4気筒ターボで、外部充電可能な大型バッテリーに力強いモーターを組み合わせる後者は短距離移動(カタログ値で73km)ならエンジンを掛けずに走れるだけでなく、よりハイパワーで走りもダイナミックというわけ。エンジンだけで233kW(317ps)、そこにフロント32.5kW+リヤ99kWのモーターが加わりますから、かなりの力自慢です。

包み込まれるような優しさにかつてのボルボらしさを感じる

ボルボ XC90 ウルトラ T8 AWD プラグインハイブリッド

 今回試乗したの、そんなプラグインハイブリッドモデルである「ウルトラ T8 AWD プラグインハイブリッド」。アクセルを踏み込めば相当に力強いダッシュを決めるけれど、神髄はそこじゃありません。

 まず、圧倒的な静かさ。エンジンを止めてモーターだけで走っているときはもちろん、エンジンが掛かっていてもそれを感じない。かなり念入りな騒音対策に加えて電子的なノイズキャンセリング機構が効いているのだろうけれど、リラックスして運転していると「エンジンが掛かっていないのか、それとも掛かっているのか」がわからないというのも決して誇張ではない。本当に静粛性が高いのです。こういうのも疲れにくさに結び付いているんでしょうね。

 そして声高にお伝えしたいのは、ドライバーと乗員を包んでくれるような優しさを持っていること。これぞボルボの神髄。どこまでもドライブしたくなる心地よさがあるのですよ。

乗り心地はいいがミニバンの代わりにはならない

ボルボ XC90 ウルトラ T8 AWD プラグインハイブリッド

 ちなみにプラグインハイブリッドモデルには電子制御エアサスペンションが標準装備されていて、乗り心地を穏やかにしてくれる。大きくて重いタイヤ&ホイールゆえか路面の荒れによってはタイヤの上下動をダイレクトに感じるシーンもまれにあるけど、車体のフラット感はかなりいい。そうそう、こういうのがボルボなんだと思わせてくれる。

ボルボ XC90 ウルトラ T8 AWD プラグインハイブリッド

 ひとつだけ注意ポイントをお伝えすると、XC90は3列シートですが、これだけ車体が大きくても国産ミニバンのような3列目の実用性を期待するとちょっと違うということ。

ボルボ XC90 ウルトラ T8 AWD プラグインハイブリッド

 SUVの3列目としては実用的だが、スムーズとは言えない乗降性も含めて「あくまで非日常利用のための3列目」ということは覚えておいてほしいです。ただ、3列目を畳むと現れる広いラゲッジルームなど、2列SUVとしてアレンジした時の使い勝手は相当にいいのもまた事実ですが。

ボルボ XC90 ウルトラ T8 AWD プラグインハイブリッド

今こそXC90を選ぶ価値がある

 というわけで、筆者が思うのは今こそXC90、あえてXC90を選ぶのも大いにアリだということ。

 ボルボはいま、EV(電気自動車)まっしぐらのメーカーだ。もちろんEVもいい。だけど、こうしてエンジンを積んだクルマの味わいもやっぱりいいもの。XC90のようなボルボらしさが濃いモデルを買って、長く乗るのもいいなと思いますよ。

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工藤貴宏(くどう たかひろ)

ライタープロフィール

工藤貴宏(くどう たかひろ)

学生時代のアルバイトから数えると、自動車メディア歴が四半世紀を超えるスポーツカー好きの自動車ライター。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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