新車試乗レポート
更新日:2025.10.21 / 掲載日:2025.10.21

【911GTS】ハイブリッドでも911は変わらない【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ポルシェ

 先日ポルシェエクスペリエンスセンターで911GTSに久しぶりに乗りました。前回試乗したのは7月。ポルシェセンター浜田山のイベントの際、軽井沢まで往復したのを覚えています。通称992.2型と呼ばれるもので、最新の技術が積まれます。彼ら流の言い方で“Tハイブリッド”と呼ばれるものですね。一般的なハイブリッドとは少々異なりますが、モーターとバッテリーを搭載しています。

ポルシェ 911 GTS

 その内容はひとまず置いて、試乗前にポルシェの革新的な技術についての話がありました。誕生からこれまでの技術の年表ですが、ポルシェ好きの視点からユニークだったのでそれを皆さんにお知らせしたいと思います。

 まずはオリジナルのナローですが、そこでは1965年のタルガが挙げられていました。発売になったのは67年ですが、その技術を発表したのは65年のフランクフルトショーです。ロールオーバーで首の骨を折って死亡する人が多いことから、その解決策として誕生した手法です。タルガトップがロールバーの役目を果たし、乗員を保護します。

 Gモデル(930)では1974年のターボチャージャーがフィーチャーされています。まだ市販車でターボエンジンが珍しかった時代の産物です。964型では1988年の全輪駆動(カレラ4)とティプトロニック、993型ではアルミニウムLSAシャシー(軽量構造、安定性、機動性)およびツインターボチャージャーがそれに当たります。確かにどれも革新的な技術です。

 で、ここまでが空冷時代。996型に突入すると、1997年の水冷エンジンと2001年のポルシェセラミックコンポジットブレーキが記されました。997型は前期で可変タービンジオメトリ、後期でPDK(ポルシェ・ドッベルクップルング)が登場します。991型前期は2011年のアダプティブエアロダイナミクスとリアアクスルステアリング、2015年には全グレードターボエンジン化となります。

ポルシェ 911

 以上が年表に記されたものですが、これらはダイジェスト版であり、実際には無数の革新的な技術が投入されてきました。ですが、こうやって振り返るとなんか懐かしくも思えます。特に993型、996型、997型はリアルに所有していましたから身近な話題です。カタチは違いますが、993型はタルガだったので、当時その歴史を細かく勉強したのを思い出しました。

 では、ここでGTSのTハイブリッドに話を移しましょう。これは一つの高性能バッテリーと2つのモーターから構成されます。バッテリーは400Vのリチウムイオンバッテリーでフロントアクスル側に置かれます。そして2つのモーターの一つはタービンの駆動用として、もう一つはPDKに統合されたカタチで備え付けられます。これによりモーターが全域で高トルクを補助するとともに、始動機能の役目を果たします。要するにスタータージェネレーターが不要というわけです。

 目玉はタービンの駆動用モーターかもしれません。排気でタービンを動かすのではなく、ゼロスタートからモーターで稼働させるので、ターボロスは皆無。なので、スタートから過給し、出だしが鋭くなります。ちなみに、低回転領域から過給するという面では機械式のスーパーチャージャーも同じですが、そちらはどうしてもフリクションが大きくなります。なので、それを含めてもモーター駆動が最善と言えるでしょう。他のメーカーもこの方式を採用していますから、今後ハイパフォーマンスモデルの間では一般的な技術になるに違いありません。なんたってタービン軸にモーターを仕込むのですからスペース効率が良いし、従来必要だったウエストゲートも不要となります。

ポルシェ 911 GTS

 ところで、今回この話をしたのは、ポルシェのハイブリッドは前述したように一般的に呼ばれるハイブリッドとは異なることを説明したかったからです。こちらは言うなればマイルドハイブリッドで、主役はあくまでも3.6リッターに排気量アップされた水平対向エンジン。そのパワーを生かした設計になります。よって、EV走行モードは存在しません。911シリーズはまだまだ時代に媚びませんから。

 ということで、ハイブリッドになった911なんて興味なし!と言わず、GTSの凄さをご堪能いただきたいと思います。なんたって走行性能は、モーターを積まない992型前期と比べると歴然。前期型はスタートから2.5秒で14.5m走るのに対し、後期型は21.5mと飛躍します。その差は+7m。モーターをまとった911の走りは思いのほか魅力的です。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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