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更新日:2025.07.31 / 掲載日:2025.07.31
プレリュードのデザインを石井昌道氏が深掘り!

文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス
2023年のジャパンモビリティショーでコンセプトカーが出展され、もう間もなく発売となるプレリュード。これまで様々な情報が小出しにされてきたが、今回はプレリュードのデザインに対する思いが語られた。
プレリュードという車名に込められた想い

プレリュードには序曲や序章という意味があり、新型はホンダのDNAである操る歓びを体現した次世代のハイブリッドカー(e:HEV)という位置づけ。本格的な電動化時代に向けた序章とも言える。これまでのe:HEVは燃費や快適性に重きが置かれていたが、いよいよ操る歓びに踏み込むというわけだ。だからこそ、実質的にはシビッククーペとも言えるのだが、走りに対するメカニズムの造り込みにも、デザインにも特別な思いが込められ、プレリュードを名乗るようになったのだろう。
グライダーからインスピレーションを受けたスタイリング

デザインコンセプトは“GLIDING CROSS STANCE”で滑空するような高揚感を生むスペシャリティスポーツを体現したという。動力を持たないグライダーは地球の引力や風を味方につけて数百キロを滑空し、ときにはアクロバティックなフライトもみせる。カーボンニュートラルの実現に向かって、その架け橋となるe:HEVのプレリュードに通じることもあって、多くのインスピレーションをグライダーから受けているそうだ。
クリーンでスムーズなのにダイナミックでもあるのがグライダーのデザイン。たしかにプレリュードをみると、余計なデザインエレメントや出しゃばりすぎるキャラクターラインなどは排され、ノイズが少ないクリーンさがまず目をひく。フラッシュサーフェイスのドアハンドルなどもその一貫だ。それでもただクリーンなだけではなく、ダイナミックなサーフェースとなっているのはフロントノーズからフロントフェンダー、リアに駆け上がっていくラインと、リアフェンダーからフロントに向かって駆け上がっていくラインが乗員の位置でクロスする形状とすることで三次元的でダイナミックなサーフェースとなっているからだ。クリーンでシンプルなことで、よりダイナミックさが強調されている。

低くシャープなノーズ、やや前寄りのルーフピーク、滑らかなルーフラインなどでプロポーションはグライダーのように伸びやかだ。さらに、ダイナミックな走りを予感させるようスタンスにもこだわっている。トレッドとホイールベースのアスペクトレシオはホンダの黄金律があり、NSXやS2000、CR-X、CR-Zなどと同等。全高に占めるタイヤ外径の割合にもこだわって大径タイヤと低全高の組み合わせとした。厚みのあるフェンダーも含めて理想のスタンスを実現している。
ヘッドライトはデイタイムランニングライトで翼のような外への広がりを表現し、リアコンビネーションランプは横に長い一文字でワイドスタンスを際立たせている。フロントとリアの中央下部に控えめながらブルーのアクセントがあしらわれているのはハイブリッドスポーツであることを強調。ブレーキキャリパーもブルーだ。リアのPreludeのエンブレムは、もっとも特徴的だった4代目のものをベースに先進性を付加したものだという。
スタイリッシュでありながら実用性も考え抜かれた室内

インテリアもクリーンな印象を受ける。インストルメントパネルは低くて水平基調。ノイズが少なく視界的にドライビングをサポートしてくれる。フェンダーの峰のような盛り上がりは車両感覚が掴みやすそうだ。ステアリングは下部がフラットとなるDシェイプでセンターマーカー付き。面白いのは左右でシートの形状や特性が違うことで、運転席はホールド性重視なのに対して、助手席は乗降性のいい形状で快適性を重視しているそうだ。



スタイリッシュなクーペであるわりには後席の居住性もきちんと確保されているうえに、座面は27°の角度がつけてある。これは荷物が保持しやすい角度で、1人か2人で乗ることが多いクーペならではの配慮だ。ラゲッジルームも想像するよりも広大でハッチバックゲートゆえに出し入れも楽で使い勝手も良さそう。硬派なスポーツカーではなく、スポーツスペシャリティとしてパッケージングもよく考えられている。
個人的には斜め後方からの眺めが気に入っているバックシャンのプレリュード。今秋に街で見かけるのが楽しみだ。