輸入車
更新日:2025.08.05 / 掲載日:2025.08.05
「アルピーヌ A110」運命の衝動買い!石井昌道が語るリアルなインプレッション

こだわり輸入車を愛用するモータージャーナリストの石井昌道さんが語る[これだ!と思ったクルマこそ、アナタを幸せにしてくれる]
文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2025年9号「人生を豊かにしてくれるパートナー![こだわりの輸入車選び]」記事の内容です)
すでにポルシェ911を所有していたにもかかわらず、アルピーヌ A110の購入を決断した石井氏。購入までのストーリーとオーナーならではのリアルなインプレッションをお届けする。
縁を感じて衝動買いしたフランスのスポーツカー
2015年に久しぶりにル・マン24時間レースの取材に行ったところ、レース前のデモンストレーションで突如としてアルピーヌ・セレブレーションが現れた。アルピーヌ誕生60周年を記念したコンセプトカーで、往年のA110を現代風に蘇らせたスタイルは、文句なしにカッコイイうえに現実的でもあった。
F1やWRC、WECに参戦しながらも本格的なスポーツカーを持っていないルノーは、以前からアルピーヌの復活を目指し、ルノー・デジールなどのコンセプトカーでそれを匂わせていたが、セレブレーションを見て本当にアルピーヌが復活するのだと確信した。
翌2016年12月に一本の電話があった。ルノー本社からで約1年後に発売する予定の、とあるスポーツカーの開発テストに参加しないか?という誘いだった。日本のメーカーの開発テストには何度か行ったことがあるが、海外メーカーは初めて。しかもたぶんル・マンで見たアレだろうから大いに興味がある。語学的な不安はあったが、即答で参加することにしたのだった。
冬でも比較的に暖かいスペイン・バルセロナ近郊に赴くと待っていたのはやはりル・マンで見たアレ。偽装が施されていたが、市販仕様とほぼ同一の新生A110だった。発売まで約1年となって完成度が高まってきた段階で、外部のドライバーにも乗ってもらって意見を聞こうということで、フランス、イギリス、ドイツ、日本からモータージャーナリストを1人ずつ招くことになったのだという。どういう基準だかわからないが、幸運にも白羽の矢が自分に立ったのだ。
もともとルノーおよびアルピーヌは好きだったのでうれしかったが、それ以上に驚いたのがA110のポテンシャルの高さ。エンジンを横置きした小さめのミッドシップカーとしてはリア・サスペンションの懐が素晴らしく深くてコントローラブル。だから回頭性を高めても問題ないというじつにバランスのいいハンドリングの持ち主だったのだ。
開発テストに参加するという、小さくない縁があり、乗り味もデザインも好みにぴったりと合うA110はいつか手に入れたいモデルになった。「発売したら買ってよね」とテストのエンジニアたちから冗談めかして言われてもいたのだが、日本導入から約2年後の2020年に初期限定車のプルミエールでまだ2000㎞しか走っていない出物に出会ってしまった。その頃はポルシェ911(997型)を手に入れてまだ日が浅かったので大いに悩んだが、運命を感じてしまって乗り換えることにした。
付き合い始めてからの発見は、街乗りなどでも軽さを実感できて楽しいことと、乗り心地など含めて苦がないこと。A110はデイリースポーツカーとしても秀逸なのだ。
Profile:モータージャーナリスト 石井昌道
自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。ワンメイク・レース等へ参戦しドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではエコドライブの研究、および一般ドライバーへ普及させる活動も行う。
[石井昌道×ALPINE A110]現代に蘇ったフランスの至宝

1960年代に登場し、ラリーなどのモータースポーツで活躍したアルピーヌ A110が40年ぶりに現代の技術で蘇った。本格的なスポーツカーとしての構造を持ちながらも、サーキットのみならず公道でも心地よい走りを楽しめるバランスのよさが魅力。プルミエールは2018年発売の導入記念モデルで50台の限定。
Favorite points

初代A110のデザインを忠実に踏襲したスタイリングに対して、機能性は現代的。つまり、毎日でも乗れるスポーツカーとして完成している。軽量化を意識していながらディテールにもこだわっているのが、所有欲をくすぐるところ。