新車試乗レポート
更新日:2025.07.17 / 掲載日:2025.07.17
ジュニアの魅力は底なし沼⁉︎ これぞアルファ ロメオ流コンパクトSUV【竹岡 圭】

文●竹岡 圭 写真●ユニット・コンパス
アルファロメオから久しぶりのコンパクトモデルが登場しました! とはいえ、時代の流れなのか、かつてのコンパクトハッチバックではなく、コンパクトクロスオーバーSUVの装い。115年の歴史を誇るアルファロメオですが、その歴史に頑なにこだわりすぎることなく、しかし決して迎合しすぎることはなく……、といった姿勢に納得です。
名車の名前を受け継いで登場したコンパクトSUV

ということで、ジュニアという名前は、1960年代に登場した「GT1300ジュニア」を由来にしているんだとか。かつてのGT1300ジュニアは、アルファロメオらしい艶っぽいデザインを持つコンパクトなスポーツカーでしたが、その志を受け継いだデザインとなっています。
そのデザイン、アルファロメオと言えばスクデットと呼ばれる盾グリルが特徴的ですが、今回は2種類パターンがあるんです。マイルドハイブリッドエンジン車は「alfaRomeo」のアルファベットロゴが斜めに配されたもの、対してBEVモデルは、アルファロメオのヘビの舌がコンセントプラグになったようなプログレッソ・デザインが採用されています。
そして、今回試乗した発売を記念した限定車、マイルドハイブリッドモデルの「ジュニア イブリダ スペチアーレ」は、BEVと同じプログレッソ・デザインが採用されており、特別感を醸し出しています。
兄弟車とはキャラクターの異なるスポーティな味付け

パワートレインは、直列3気筒1.2Lターボエンジン×16kWのモーターを内蔵した新開発のeDCT×48Vバッテリーといった構成。エンジンは熱効率を高めるミラーサイクル方式が採用されるなど、燃費とパワフルさが考慮されたものとなっています。従って、発進時やトロトロ渋滞などの低速域はモーターのみで走行することも可能です。
実はこのパワートレインは、プラットフォームを同じくする兄弟車となる、フィアット600と同じ構成。ところが乗ってみると、見た目だけじゃなく、中身の性格も違いがあるのがよくわかりました。
わかりやすく言うと、フィアット600はマイルドで滑らか。フィアット500がパーソナルモデルとしたら、600はファミリーカーとしても使われるという立ち位置を、よく理解したセッティングとなっているのですが、アルファロメオのコンパクトモデルは、基礎がきちんとしているスポーツカーだからこそ、ジャジャ馬な顔がチラホラ垣間見えて楽しい、という性格が根底にあるんですよね。ジュニアもそのアルファロメオの伝統的な性格?を、しっかり受け継いだものとなっていました。
クワドリフォリオ登場に期待してしまう走りの楽しさ

とはいえ、今回はSUVということもあり、そこまでじゃじゃ馬感は表には出ていませんので、逆に初めてお付き合いされる方は安心していただけると思います。でもスポーツカーの面はしっかり顔を出しておりまして、ドライブモードのDNAで、D(ダイナミック)を選択すると、元気よくキビキビと走ることもできます。そのせいか、eDCTのダウンシフトで、シフトショックが少々大きめとなり、なんとなく上屋がバタバタと動くように感じられる方もいらっしゃるかもしれません。とはいえツインクラッチですから、不快なほどの振動というわけではないのですけれどね。
コーナリングは大きなクセもなく、気持ちよくクリアできるといった印象ですし、入門編のアルファロメオとしては、声を大にしてオススメできちゃいます。その分、元来のアルファロメオ好きの方は、もう少しジャジャ馬な性格が表に出てきてもいいのに…、と物足りなく思う方もいらっしゃるかもしれません。個人的には、クアドリフォリオモデルなど出していただいて、そちらはパンチを利かせてもいいかも! なんて思ってしまいました。



というのも、それだけのベース性能の高さが感じられましたし、今回はGを感じる身体を受け止めてくれるシートがめちゃくちゃよかったのです。サベルト製のスポーツシートは見た目にもオシャレですし、サポート力も抜群でした。ちなみにこれは発売記念限定車「ジュニア イブリダ スペチアーレ」に装着されているもので、他にも、太さもちょうどよくしっかりと握りやすいレザー&アルカンターラステアリングホイールや、サンルーフ、マットブラック&レッドインサートボディキット等が備えられています。
そのおかげもあるのか、インテリアの質感はメチャクチャ高く、運転席に座ってその空間に包まれているだけでも、やっぱりアルファロメオだなぁとウットリすること請け合いです。センターディスプレイのサイズと、エアコン吹き出し口との位置関係等々、ややイマドキではないところはありますが、そこもデザイン重視で! というところが、またアルファロメオだからね、と納得できてしまうのも不思議な魅力。街中+たまにはロングドライブ、というのにピッタリなボディサイズの入門編アルファロメオは、一度はまるとなかなか抜け出せない沼へ誘ってくれるかもしれません。