新車試乗レポート
更新日:2025.01.06 / 掲載日:2025.01.06
帰ってきた憧れのヴァリアント【VW パサート】【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
VWパサートはクルマ好きであれば誰もが知っているモデルだ。齢五十路以上の人なら一度は購入を考えた人は多いだろう。80年代の話で恐縮だが、学生時代アウディ80に乗っていた立場から言わせてもらうと、特にヴァリアントは憧れの一台だった。ゴルフの兄貴分というポジションは大人だし、たくさん荷物が積める実用性の高さも人気の要因だったと思う。当時の輸入元はヤナセ。そのブランドバリューも手伝って、センスの良い人が乗っているイメージが強かった。
9代目の新型はワゴンボディに専念

そんなパサートは新型で9世代目となる。デビューは1973年だからゴルフの一年前。もはやこのロングセラーモデルはビートルを超える3400万台以上が販売された。
とはいえ、SUVがグローバルで席巻している中、パサートにも変化が起きた。セダンボディがカタログ落ちし、ワゴンボディのみの生産となったのだ。なので、ヴァリアントというネーミングは終わり、単純にパサートに統一。「パサート=ワゴン」という図式となる。この背景はやはりメインマーケットとなるヨーロッパの現状が反映される。セダンマーケットは恐ろしいほどシュリンクしているということだ。
大きく進化したのはパワートレインとインターフェイス

新型パサートはプラットフォームからして新しくなった。これまでのMQBアーキテクチャーの進化版であるMQB evoアーキテクチャーを採用。それに見合った最先端技術を搭載することを可能とした。主に、パワートレインと足回り、それとインターフェイスが大きく進化した。

パワートレインは3種類。1.5リッター直4ターボとモーターを組み合わせた48Vマイルドハイブリッドと2リッター直4ディーゼルターボ、それと1.5リッターeTSIをベースにしたe Hybridのプラグインハイブリッドである。ユニークなのは1.5リッターユニットをミラーサイクルにしているところ。吸気バルブの閉じたり開いたりするタイミングを操作することで燃焼効率を上げるものだ。さらにいえば、気筒休止とコースティングも行う。コースティングはエンジンからの駆動力を切り離すだけでなく、アイドリングストップさせながらその時間も最大限に伸ばす働きをする。

こういった少しでも燃費を良くしたりアクセルレスポンスを早めたりするためにあらゆる技術を用いるのがVW流だ。細かな配慮が彼らの得意分野で、それによりファンを増やしてきた。昨今BEVのマーケットが急ブレーキしたことで風当たりが強いVWではあるが、こうした手法が随所に用いられれば、ブランドの復活もそう難しくないかもしれない。
4.9mのボディを活かした広くて快適な室内空間

ボディサイズはひと回り大きくなり、全長4.9mクラスに突入した。ホイールベースも50mm長くなりリアシートの快適性を高めている。この辺はクラスが上がれば必要になってくるポイントだろう。カーゴルームも同カテゴリーの中では最大級。リアシートを倒した時の最大容量1920リッターは他を圧倒する。積載量でクルマを選ぶ人は多いからこの数値はかなりのメリットとなるに違いない。




グレードは各パワーソースにそれぞれ“エレガンス”と“Rライン”があり、1.5リッターeTSIにだけ“エレガンス・ベーシック”がある。これはエントリーグレードとして一番低いプライスを設定するためのものだ。価格は524万8000円。確かに車格からすればお値打ちである。
軽快なハンドリングと優れた乗り心地

そんなパサートを走らせると実に良い感じ。軽快なハンドリングとリアサスペンションの動きが一体となり、コーナーを駆け抜ける。今回の試乗は箱根だったのでそれが際立った。芦ノ湖スカイラインではふたつくらいボディが小さく感じるほど軽やかなコーナリングをする。
乗り心地もグッド。新アーキテクチャーのDCC proと呼ばれる技術が、細かな減衰圧の調整をし、キャビンをフラットに保つのだ。この技術はグループ内でも上のクラスが採用するもので、かなり開発費にお金がかかっている。その意味ではパサートの高級化が行われたといっても良いだろう。
同じようなクラスのクルマに採用されるエアサスペンションよりもフラットライドの面では数段効果はありそうだ。しかも、試乗車はRラインだったので20インチのタイヤを履いていた。扁平率40のロープロタイヤだ。それであの乗り心地であれば十分だと思う。
見た目も運動性能も合格点

というのが新型パサートとのファーストコンタクト。見た目、運動性能ともに合格点だ。しかも最近ステーションワゴンが気になる身としては興味津々。次回は広報車を数日借りて、遠出してみたいと思う。