車種別仕様・中古車評価・まとめ
更新日:2020.04.06 / 掲載日:2010.02.25
【徹底紹介】アウディ A3
メルセデスやBMWに先駆け、プレミアムCセグメントの市場を築きあげたA3
03年に登場した現行型では、より高い品質感や先進のメカニズムの採用など
魅力がグッと高まった。今年で7年目に突入し、熟成が進んだA3に注目!
プレミアムコンパクトの先駆者として市場をリード

アウディのボトムレンジは、長らくA4の前身の80だった。そう、70年代に存在した50(初代ポロの兄弟)を例外とすれば、Dセグメントより小さいモデルは手がけていなかったのだ。理由はたぶん、グループを形成するVWとの棲み分け。
小型ハッチバックを主力とするVWに対して、アウディは上級のセダン系モデルに特化することで、市場での食い合いを避けていたわけだ。
だが、フェルディナント・ピエヒがグループのトップに君臨した90年代に、様相はガラリと変わる。プラットフォーム戦略の大号令とともに、各ブランドはモデルの拡充と、セールスの増大に大きく舵を切った。
その流れに乗り、アウディ初のCセグメントハッチバックであるA3が96年に誕生する。ご存じのとおり、プラットフォームなどの基本をゴルフシリーズのゴルフIVと共有化しつつ、高級感やスポーティさに明確にフォーカスして開発されたのがA3というクルマだ。
近年、注目度がより高まるプレミアムハッチバックの市場を開拓したのは、このA3だと言っていい。99年に5ドアモデルを追加すると、人気と販売は一段と上昇。約90万台の生涯セールスを記録したのだから、アウディの戦略はズバリ的中した。
そして03年、A3は第2世代へと発展。まず登場したのは、クーペを思わせるフォルムを持つ3ドアで、プレミアム&スポーティの方向性がより明瞭になる。ホイールベースはプラス60mmの2575mmとなり、それに合わせて全長や全幅も拡大。さらに、FSI(直噴ガソリン)や4リンク式リヤサスなどの新メカも話題を呼び、新型はマーケットリーダーにふさわしい存在感を示した。
だが、欧州市場とは違い、日本のハッチバックユーザーはより実用的な5ドアを好む傾向が強い。この時点ではまだ様子見のファンが多く、人気に火がついたのは5ドアモデルを追加してからのことだ。
待望の5ドアの注目点は2つ。まずは「スポーツバック」の新名称を名乗ったことで、アバントの流れを汲むパッケージと、A3本来のスポーティさを融合させて、個性と魅力をさらに高めることに成功した。
で、もう一点は、現行A6で導入されたシングルフレームグリルの採用。押し出し感の向上により、プレミアムコンパクトとしての位置づけが鮮明になった。ちなみに、欧州では3ドアやカブリオレも人気だが、08年モデル以降の日本仕様はスポーツバックのみの設定となっている。
写真●内藤敬仁 文●森野恭行 GooWORLD
お問い合せ●アウディ・コミュニケーションセンター Tel 0120-598-106
Detail

10年 アウディ A3 1.4TFSI Sライン(7速AT・Sトロニック)主要諸元
全長×全幅×全高 | 4290×1765×1430mm |
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ホイールベース | 2575mm |
トレッド前/後 | 1535/1505mm |
車両重量 | 1380kg |
エンジン | 直4DOHCターボ |
総排気量 | 1389cc |
最高出力 | 125ps/5000rpm |
最大トルク | 20.4kg m/1500~4000rpm |
サスペンション前/後 | マクファーソンストラット/4リンク |
ブレーキ前/後 | Vディスク/ディスク |
タイヤサイズ前後 | 205/55R16 |
新車価格
A3スポーツバック 1.4TFSI(7速AT・Sトロニック) | 299万円 |
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A3スポーツバック 1.8TFSI(7速AT・Sトロニック) | 359万円 |
A3スポーツバック 2.0TFSIクワトロ(6速AT・Sトロニック) | 458万円 |
S3スポーツバック(6速AT・Sトロニック) | 535万円 |
HISTORY
2003.09 | プレミアムコンパクト、A3がフルモデルチェンジ デビュー当初は3ドアのみだったA3。エンジンは直噴式の2.0Lが搭載された。 |
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2003.12 | 3.2L V6エンジン搭載車「3.2クワトロ」を設定 250馬力を発生する最上級モデルが登場。クワトロ、DSGが採用されたのもポイント。 |
2004.02 | 1.6Lエンジン搭載車「アトラクション」を設定 最高出力102馬力、最大トルク15.1kg mと必要十分な性能を発揮。ミッションは6速AT。 |
2004.10 | 5ドアモデル「スポーツバック」を設定 シングルフレームグリルを持つ実用性の高い5ドア。2.0L直噴ターボ車の設定も新しい。 |
2005.07 | 3ドアにシングルフレームグリルを採用 5ドアにも「アトラクション」を設定。同時に3ドアのフェイスが5ドアと同じになった。 |
2006.07 | A3スポーツバックを一部改良 「アトラクション」の装備を充実化。また3ドアの導入が中止され、5ドアに一本化された。 |
2007.04 | 新グレード「1.8TFSI」を設定 「2.0FSI」に代わって登場した160馬力の1.8Lターボ。ミッションも6速Sトロニックに。 |
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2007.08 | 一部改良を実施して装備を充実 2.0Lターボ、3.2L車にSラインパッケージを標準化。電動シートなどの装備も充実。 |
2008.09 | マイナーチェンジを実施 内外装デザインをリニューアル。同時に環境性の高い1.4Lターボ搭載車も追加された。 |
2009.02 | 高性能モデルS3を設定 エンジンは256馬力に強化された直噴式2.0Lターボ。内外装の仕様も専用となっている。 |
2009.07 | 一部改良を実施 2.0Lターボ車の燃費がアップ。また1.4Lターボ車にもSラインパッケージが選択可能に。 |
アウディ自慢の高品質と乗員全員が快適に過ごせる居住性を両立

2代目となり、A3のボディは少し大きくなった。だが5.1mの最小回転半径は不変で、取りまわし性は先代と同レベルをキープ。さらに後席ニールームを29mm、ショルダールームを前席で42mm拡大するなど、居住性にも恩恵を見いだせるのだから、多くのファンは納得するはずだ。
そして、アウディ自慢のクオリティにもより磨きがかけられた。それを象徴するのは、しっとりとした樹脂類の質感や、ゲルマンの完璧主義をカタチにしたような建て付けのよさ。プレミアムコンパクトの元祖にふさわしい出来映えと言っていい。
写真はSラインパッケージで、ロゴ入りのスポーツシートやサイドシルプレート、マットアルミニウムデコラティブパネル、ブラックヘッドライニングなどを採用。スポーティさや上級感が一段と強調されている。

情報ディスプレイを中央に配置する4眼式のメーターを採用。2.0TFSIおよび1.4TFSI&1.8TFSIのSラインは、オンボードコンピューターを標準装備する。キャビンは180cmクラスの乗員が前後席で快適にすごせる空間を確保。
1.4TFSIもSラインを選択すればパドルシフトがつく。
Sラインは3スポークの本革巻きステアリングを装備。
分割可倒式シートバックを倒せば、荷室容量は370Lから1120L(FFモデル)に拡大。
オプションのオープンスカイルーフ。前側はスライド&チルト式だ。
ウイングタイプLEDポジショニングライトを09年モデルで導入。バイキセノンヘッドライトとセットで、1.8TFSI以上に標準、1.4TFSIにオプションで設定する。
09年モデルでLEDターンシグナル付きに進化した。
Sラインはスポーツサスと17インチ45タイヤを標準装備。
4輪独立サスのシャシーが生み出す走りは上級モデル並みの上質感

プラットフォームの基本はゴルフシリーズのゴルフVと共通のもの。FFにもリヤ独立式サス(4リンク式)を採用し、電動パワステを導入したのが見どころだ。で、Sラインは15mmローダウンの専用スポーツサスを採用。現行モデルの上級仕様には、TTで好評の電制サス(マグネティックライド)もオプション設定されている。
そして、アウディと言えばクワトロ。横置きFFのA3は、ハルデックスカップリングを核とする電制オンデマンド式を採用する。搭載するのはトップパフォーマーの3.2&S3、09年モデルからの2.0TFSIだ。全天候型の速さとセーフティを追求するなら、クワトロに注目したい。
ENGINE
直噴ガソリンターボのTFSIを積極的に採用して、エンジンのダウンサイジングを図った。1.4L版は軽量コンパクト設計と2L並みの高トルクを両立させている。
TRANSMISSION
07年モデルでDSGからSトロニックに名称変更したミッションは、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)の先駆け。1.4TFSI&現行1.8TFSI用は7速だ。
SAFETY
現行モデルは後席サイドエアバッグを加えた8エアバッグを標準装備。キャビンの変形を防ぐ衝突安全ボディとの合わせ技で、すべての乗員をしっかりとガードする。
低排気量+ターボによる走りは想像以上の洗練度

3ドアオンリーの構成の初期型は、アウディの走りの変革期に存在したモデル。速度感応式パワステ(サーボトロニック)の設定は低速域で軽すぎ、高速域で渋くなる人工的な感触で、スポーツサスのセッティングもハードすぎる印象があった。
だが、スポーツバックを追加する頃には、シャシーバランスの大幅な改善を実現。そして、彫りの深いノーズラインや新造形のリヤコンビランプを与えられた現行モデルでは一段と熟成が進み、アウディらしい上質な走りをものにしている。
今回試乗したのは1.4TFSIのSライン。おろしたての新車のためサスのストローク感がまだ渋く、乗り心地は全般的に突っ張った印象だったものの、操縦安定性のまとまりはハイレベル。高速走行ではビシッと安定した姿勢を崩さず、峠道ではダイレクト感が際立つ正確なハンドリングを楽しませてくれた。
そして、パワーユニットの完成度も高い。いくら最新の直噴ターボと言っても、1.4Lの排気量からはゆとりや上質感は期待しづらいが、コイツはいい意味で想像を裏切ってくれるのだ。わずか1200回転でもぐずらず、太いトルクと自然なレスポンスを生み出すから、知らずに乗ったら2Lクラスの自然吸気ユニットと信じる人も少なくはないだろう。
そこでは7速Sトロニックとの巧妙な連携プレーも光っている。ワイドなトータルギヤ比と、クロスした各段のギヤ比、そしてDCTならではのとぎれのない変速フィールがカギで、心地いい走り味と高効率を両立させることに成功している。
乾式単板クラッチを使う7速タイプは、当初は微速時の加減速でのギクシャク感を消し切れていなかったが、10年モデルのA3は冷間時に少しクセをのぞかせる程度。洗練度をより高めた点にも注目したい。
そもそも1.4TFSIは、ファミリーユースでも満足のゆとりと快適性を備えていたが、その魅力はさらにレベルアップした印象。1000回転台前半で発生するこもり音を除けば、静粛性も十分に優秀だ。
BODY VARIATION
3ドア
Cピラーを強く傾斜させたフォルムはクーペ的。しかし、後席の広さはスポーツバックと遜色はなく、実用性も兼備する。端正なマスクを持つ写真のモデルは前期型。06年モデルで、3ドアもシングルフレームグリルを採用した。
S3
Sラインパッケージとの明瞭な識別点は、クロームの縦バーが目を引く専用グリル。225/40R18タイヤ、専用サス(10年モデルはマグネティックライドを標準化)、大容量ブレーキを採用するなど、走りの装備もより充実!
用途や求める性能に合わせたグレード選びが大切
デビュー7年目に突入したアウディA3。プレミアムブランドながら、気軽に使えるハッチバックというコンセプトは日本でも多くのユーザーに受け入れられ、中古車も豊富に存在する。
さて、クルマ探しのキモとなるのがグレード選び。まず3ドアと5ドアの選択だが、日常の幅広いシーンで活躍してくれるのは、やはり後者。3ドアは、パーソナルカー的な性格が強い。
豊富に用意されるエンジンも、モデルライフ中盤から、低排気量+過給器付きという新世代のものにシフトしている。相場の垣根はここにあり、リーズナブルに乗りたい人は前者、パフォーマンスと環境性能の両立を求める人は後者をチョイスしたい。予算と求める性能によって、選ぶべきグレードは決まってくるはず。なお、後期型の物件も増えているが、価格はまだまだ高い。
AUDI APPROVED AUTOMOBILE
アウディ専任メカニックによる納車前100項目点検を実施し、すべての項目にパスした車両だけが手元に届けられる認定中古車制度。走行距離にかかわらず1年間の保証が付くほか、24時間緊急サポートなどのサービスも充実する。
ベーシックな1.4TFSIでも満足感は高い

コンパクトカー本来の経済性を重視する人には、価格もリーズナブルな1.4TFSIがピッタリ。試乗インプレで紹介したのはSラインだが、コイツはスポーティな走りやルックスにこだわる人のためのチョイスで、本命は標準サス+16インチのノーマルモデルだ。乗り心地はしなやか、ロードノイズも小さめだから、快適なアウディライフを満喫することができるだろう。
で、スポーティさと余裕をより高い次元で追求したいのなら1.8TFSI。全天候型の高性能と安心感を求める人には、2.0TFSIクワトロがオススメだ。ちなみに、開放感あふれるオープンスカイルーフは、ムードを重視する人には魅力あるアイテムとなる。だが、ルーフの重量増は、操縦安定性の面ではマイナス要素となるので、フットワークにこだわる人にはオススメではない。
マーケットデータ
グレード
2.0FSI | 31% |
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2.0TFSI | 23% |
アトラクション | 13% |
1.8TFSI | 12% |
1.4TFSI | 11% |
3.2 | 10% |
1.4Lから3.2L、さらに高性能版の「S」など、多くのエンジンを用意してきたA3。ボディも3ドアと5ドアが存在するが、物件数は5ドアの方が圧倒的に多い。エンジンは、「1.8TFSI」が登場する07年まで主流の「2.0FSI」が目立つ。また5ドアと同時に出た「2.0TFSI」も多い。
ボディカラー
シルバー | 32% |
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ブラック | 31% |
ホワイト | 14% |
ブルー | 13% |
レッド | 10% |
ブランドカラーでもあるシルバーがもっとも多く存在する。しかし、カジュアルなハッチバックということもあり、ホワイト、ブルー、レッドの物件も目立つ。そのほか、少数だがイエローやオレンジなど、個性的なカラーも存在。物件数も豊富なので、ある程度選べる状況にある。
年式
2004年 | 9% |
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2005年 | 21% |
2006年 | 14% |
2007年 | 19% |
2008年 | 16% |
2009年 | 21% |
実用的な5ドアが登場する04年後半以降の物件が多い傾向にあるが、各年式でまんべんなく存在する。マイチェン後の09年モデルが、さっそく市場に存在しているのにも注目したい。価格をみると、05年以前(3ドアが多い)で150万前後、以降で220万円前後と、相場の境がある。
走行距離
~5000km | 13% |
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5000km~1万km | 20% |
1万km~2万km | 23% |
2万km~3万km | 14% |
3万km~4万km | 13% |
4万km~ | 17% |
1万km未満の低走行車も存在するが、まだまだ価格は高い。逆に走行距離にこだわらなければ、リーズナブルな価格でA3が手に入る。物件数が多いので、走行距離と価格に、自分なりの折り合いをつけて探すことができる。物件数のコアゾーンは1万~2万kmで、230万円が相場だ。