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更新日:2024.06.29 / 掲載日:2024.06.29
V8を選んだベントレー コンチネンタルGT【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ベントレー
6月27日第4世代となる新型ベントレー コンチネンタルGTシリーズが発表されました。その二日前に行われたワールドプレミアに続くお披露目です。目玉は“ウルトラパフォーマンス・ハイブリッド・パワートレイン”。そう、言わずもがなのプラグインハイブリッドモデルとなります。

ベントレーは2030年に新型車のすべてをBEVにすると宣言しています。内燃機関を捨て、ボルボやロータス、ジャガーのような完全なEVカンパニーになるということです。となると、このモデルはその潮流に則って誕生したと考えられます。モーターを搭載することでグラデーション的に完全電動化へ進む道標として……。
ただ、もしそうであれば2025年モデルとして誕生しても2030年型が最終になることとなります。高額な開発費をかけてそんな短いモデルサイクルで新型車をローンチするなんてことがあるのでしょうか? う~ん、完全BEV化はもはや怪しい。ベントレーのようなウルトララグジュアリーモデルがそんな短いスパンで生産終了するなんて考えられませんし、もしそうであれば最初からこの計画は失敗です。まぁ、内燃機関が残るということは、我々クルマ好きからすれば朗報であることは間違いありませんが。
それはともかく、“ウルトラパフォーマンス・ハイブリッド・パワートレイン”ですが、驚くことにベースとなるエンジンはV8となります。ポルシェなどVWグループで共有する4リッターV8ターボに190psのモーターを取り付けました。システム最高出力は782ps、最大トルクは1000Nmを発生させます。これは歴代コンチネンタルGTシリーズの最高スペックだそうです。
さらにいえば、0-100km/h加速は3.2秒を叩き出します。そして最高速度は時速335キロ。世界で最も深いノルウェーのルフルケトンネルでそのタイムをマークしました。その様子をプレゼンテーション中にムービーで流しましたが、なかなか迫力あるものでした。説明の前に本社から来たスタッフが「……under the water」と言っていたからなんのことかと思ったらトンネルのことだったんです。英国人的ユーモアですかね?

V8エンジンがベースであることに驚いたのは、すでにリリースされているフライングスパーとベンテイガのハイブリッドモデルはV6エンジンベースだからです。他のブランドがそうであるように、エンジンのダウンサイジングを前提とした電動化が行われています。もちろん、それはそれで悪くありませんが、唯一エンジンサウンドの面で迫力を欠いていました。W12とV8のサウンドが凄すぎるからなのでしょうか、それだけが気になっていたのは事実です。きっとそこはマーケットからのフィードバックもあったのでしょう。それを踏まえてのV8エンジン採用の気がします。
ちなみに、782psに代表されるこのスペックはコンチネンタルGTシリーズの“スピード”を意味します。彼らは新型シリーズの最上級グレードから発表しました。もちろん、そこには大きなインパクトを狙ったマーケティング的戦略があるのでしょう。パワーもそうですし1000Nmという4桁に突入したトルクもインパクト大です。
最初にパワートレインの話になりましたが、デザインもまた新型のアピールポイントであることをお伝えしましょう。従来型をベースに細部を進化させました。デザイン的にインスパイアされたのは、かつてコーチビルダーのモデルとして登場させたマリナーバカラルとマリナーバトゥール。ヘッドライトユニットはまさにそうで、そこでのデザインを取り入れました。丸型をベースに切長の横方向のラインが印象的です。
それによってこれまで長年丸型4灯ヘッドライトで成立させてきた顔が変わりました。そこは変えるべきデザインだったのかもしれません。そういえば、かつてベントレーのカスタマーアンケートで丸型ヘッドライトがクラシック過ぎるという結果があったと聞きました。特にZ世代なのか若者からそんな声が上がったそうです。もしかしたらその辺も関係するのかも。全体的にモダンな印象になりました。

といった内容で発表された新型コンチネンタルGTシリーズ。まずは2025年第一四半期にGTスピードと屋根開きのGTCスピードが発売になるそうです。価格はほぼ4000万円。スペックからしてなんか凄そうなのは確かですが、ベントレーに何を求めるかでこれが高いのか安いのかが決まる気がします。この価格帯も激戦区ですからね。マーケットがどんな反応するか興味津々です。