車種別仕様・中古車評価・まとめ
更新日:2018.11.29 / 掲載日:2014.07.24
【徹底紹介】フォルクスワーゲン ザ・ビートル

中身が劇的に進化した新世代のカブトムシ

王道を行くモデルが多数派を占めるVWのラインアップにおいて、「現代のビートル」が担うのは、ファッション性や遊び心を重視するファンを獲得すること。つまり……累計生産2153万台を誇る偉大な初代ビートルの「精神」はゴルフやポロへと継承され、「カタチ」を引き継ぐモデルとして、まったく新しいビートルが再生されたというわけだ。
でも、ニュービートルが98年に登場したときには、「なんでビートルがFFなの!?」、「合理性の精神はどこへ行った」と、批判する声もあったのはたしか。とはいえ、すぐに新たなファンの獲得に成功し、VWを代表する人気モデルの1台になった。
そうした成功物語をバックボーンに、2011年に世に送り出された後継車は(日本での発売12年)、独自のキャラを一段と明瞭なものとした。そう、それがザ・ビートルだ。
見どころはやはり、オリジナルのビートルをモチーフとして練り直されたスタイル。Aピラーを後退させてノーズを長く見せると同時に、ルーフラインを相対的に低く修正したことがポイントで、全体としてスポーティイメージを強調している。
そこでスリーサイズに注目すれば、前作の「ニュー」に対して全長は140mm、全幅は80mm、ホイールベースは20mm拡大され、全高は逆に5mm低くなった。1.8mを超える全幅(正確には1815mm)は日本では不便を招くこともあるが、ワイド&ローのプロポーションは決まっている。「ニュー」は女性的なイメージだったが、「ザ」は男が乗っても様になるムードを漂わせる。
そして、進化したプラットフォームやパワートレーンも注目の的となる。「ニュー」はゴルフIV世代の車台を使うが、「ザ」のベースはゴルフVIと同世代のもの。メキシコ工場で生産される点に変化はないが、時代に合わせた進化を実践している。
その象徴は、自然吸気SOHCの1.6L&2LからTSI(直噴ターボ)の1.2L&2Lになった心臓であり、6速ATから7&6速DSG(DCT)に変わったトランスミッション。一部モデルにリヤマルチリンクサスが導入されたのもトピックといえる。言うまでもなく、走りとエコの能力は飛躍的進化を遂げた。
文●森野恭行 写真●GooWORLD
お問い合わせ●フォルクスワーゲン カスタマーセンター TEL:0120-993-199
Detail
フォルクスワーゲン ザ・ビートル デザイン レザーパッケージ(6速AT・DSG)
全長×全幅×全高 | 4270×1815×1495mm |
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ホイールベース | 2535mm |
トレッド前/後 | 1580/1545mm |
エンジン | 直4SOHCターボ |
総排気量 | 1197cc |
最高出力 | 105ps/5000rpm |
最大トルク | 17.8kg m/1500-4100rpm |
サスペンション前/後 | ストラット/4リンク |
タイヤサイズ前後 | 215/55R17 |
新車価格
ザ・ビートル デザイン(7速AT・DSG) | 264万9000円 |
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ザ・ビートル デザイン レザーパッケージ(7速AT・DSG) | 343万9000円 |
ザ・ビートル デザイン ターボ(7速AT・DSG) | 361万5000円 |
ザ・ビートルカブリオレ(6速AT・DSG) | 395万8000円 |
HISTORY
2012.06 | ザ・ビートルを発売 大人気だったニュービートルの後継モデルとして、ザ・ビートルが登場。エンジンは105馬力の1.2Lターボを搭載する。 |
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2013.03 | ザ・ビートルカブリオレを発売 6層構造のソフトトップを備えたカブリオレが設定された。開閉時間はわずか10秒。50km/h以下なら走行中でも作動可能。 |
2013.05 | 「フェンダーエディション」を限定発売 ギターやアンプメーカーとして有名な米フェンダー社と共同開発したオーディオシステムを搭載する600台の限定車が登場。 |
2013.10 | 「デザイン レザーパッケージ」を仕様変更 上級グレード「デザイン レザーパッケージ」に純正ナビ「712SDCW」とパークディスタンスコントロールを標準装備。 |
2013.11 | 「レーサー」を限定発売 刺激的なデザインと走りを持つ限定車。専用エクステリア、スポーツシート、19インチホイールを装備。 |
2014.05 | 「ジャーニー」を限定発売 純正ナビ「522SDCW」やETCユニット、LEDポジションランプ付きバイキセノンヘッドライトなどを装備した限定車が登場。 |
VWの品質に相応しい内装と充実の装備内容
ルックス同様にコクピットのムードも大きく変わった。「ニュー」はフロントウインドウが遠く、開放感は高いものの車両感覚がつかみづらかったが、「ザ」はフツーの感覚で運転できるようになった。これは多くの人に歓迎されるポイントだろう。
また、頭上高スペースを拡大することで、後席居住性を高めたのも進化点といえる。2ドアモデルということで、もともとクーペ的な使い方を考えているユーザーが多いだろうが、平均的な体格の人なら大人4人での快適なドライブが楽しめる。
そして、質感も大きく向上した。ソフトパッドの類は使用していないが、樹脂の見た目はしっとりしたもの。VW車らしく各部の建て付けもよく、高いクオリティを表現している。でも、より以上の自慢はファッション性だ。ベースモデルとして設定される「デザイン」も、おしゃれにカラーコーディネートされたインテリアを採用する。モチーフはいうまでもなくオリジナル・ビートルで、レトロな味わいが魅力だ。
上級の「レザーパッケージ」やカブリオレは本革シートが標準で、そこにプレミアム感という魅力もプラスされる。内装色はブラックとベージュの2タイプを設定する。
で、使い勝手を高めたラゲッジも「ザ」の自慢。容量は「ニュー」の214Lから310Lにまで拡大し、積載性全般が大幅に改善された。遊びグルマのイメージが強いが、不満のない実用性も備えているわけだ。
後席は2人掛けで、シートは分割可倒式。310Lの容量を905Lにまで拡大できる。テールゲート開口も「ニュー」より大きくなった。
ダッシュボードやドアトリム上部に加えて、ステアリングスポークもボディ色でコーディネートする。
かわいい丸目は健在。LEDポジションランプが新しいアイキャッチだ。上級グレードはバイキセノンヘッドライトを標準装備。
「レザーパッケージ」は215/55R17タイヤを装着。素の「デザイン」やカブリオレは16インチタイヤが標準だ。ちなみに、ターボは235/45R18タイヤを標準で履く。
ターボとカブリオレには豊かな乗り味のリヤサス

冒頭で述べたように、ザ・ビートルの母体はゴルフVI世代のプラットフォーム。その証明となるのは、カブリオレとターボに採用されるリヤマルチリンクサスだ。トーションビーム式サスを採用する、ベースのハッチバック車の操縦安定性と乗り心地も十分高いレベルにあるが、高度なリヤサスをおごったカブリオレの走り味はさらに上質な印象だ。乗り心地に関しては車重増もプラス方向に働き、しっとり感と重厚感が光るとても心地いい乗り味を実現している。オープンとしてはボディ剛性も優秀といえる。
TSI(直噴ターボ)の心臓は2タイプ。ターボは211馬力/28.6kgmのパワフルな2L版(先代ゴルフGTIでおなじみ)を搭載し、それ以外のモデルには1.2L版を積む。
DCT(デュアルクラッチトランスミッション)はVWが先鞭をつけた技術で、VWの呼称はDSG。1.2Lは乾式単板クラッチの7速、2Lは湿式多板クラッチの6速を採用する。
快適な乗り心地だがターボの走りは別物

VWが推進するダウンサイジング過給の思想は、すでに日本でも広く浸透している。だから、「ザ・ビートルの心臓は1.2L」といっても、もはや驚く人は少ないだろう。でも、キビキビと市街地を走りまわるだけでなく、高速道路や峠道でもストレスを感じさせない走りを実際に味わうと、「ホントに1.2Lなの!?」とビックリするのでは。105馬力/17.8kgmのスペックから想像するよりも、走りははるかに力強いものだ。
なら、フットワークは?癒し系キャラのザ・ビートルに相応しく、ハンドリングはゆるめにしつけられている。とくに16インチタイヤ装着車はあたりがソフトで、リラックス感に富んだ快適な乗り味を特徴とする。さらに、17インチタイヤを履く「レザーパッケージ」も、乗り味は不快なゴツつきとは無縁。正確性を高めたハンドリングと、十分快適な乗り心地をバランスさせている。
そんなザ・ビートルのシリーズにあって、異質のキャラを持つのがターボだ。こいつは「ビートルのGTI」という位置づけで、ビシッと引き締めたサスに18インチタイヤを組み合わせる。低速域の乗り心地はかなりハードな印象だが、クイック&ダイレクトを特徴とするフットワークはとても刺激的。走り屋指向のファンを虜にするのは間違いない。
伝統のカブリオレは進化した幌を持つ

ビートルで欠かせないのはオープン。当然、「ザ」のカブリオレも大人気だ。ハッチバックとの車重の差は100kgほど。ゆえに加速はやや鈍めとなるが、それでもかったるさを感じるほどではなく、鞭を入れればスポーティな走りも楽しめるだけの実力を備える。入念に仕立てられた幌の開閉に要する時間は約10秒。オープンにすれば、特大の開放感と爽快感が味わえる。