車のメンテナンス
更新日:2025.08.06 / 掲載日:2024.04.02
突然の車のバッテリー上がり……対処法や原因、注意点を徹底解説

エンジンがかからない。ライトが点かない。突然のバッテリー上がりに戸惑った経験はありませんか?
とくに最近は、短距離走行や車に乗る頻度が少ない人を中心に、バッテリー上がりのトラブルが増加傾向にあります。なかには、「しばらく待てば自然回復するのでは」と誤解してしまう人もいますが、これは非常に危険です。
そこでこの記事では、バッテリー上がりの症状や前兆、主な原因、直し方などを解説しています。
プロ整備士の視点で、バッテリー上がり時の注意点や対策まで網羅しているので、ぜひ最後までご覧ください。
1. 車のバッテリー上がりとは?症状の見分け方
バッテリーはセルモーターや点火コイル、各種電装品に電力を供給しています。
バッテリーが上がってしまうと、エンジンがかからなくなるだけでなく、走行中にエンジンが止まってしまう恐れもあります。
そのため、車が動かなくなったとき、真っ先に疑うべきなのがバッテリー上がりです。
ここでは、バッテリー上がりの症状と前兆、見分け方について整理していきます。
(1) バッテリー上がりの主な症状
バッテリー上がりが起きると、次のような症状が現れます。
① エンジンがかからない
キーを回してもセルモーターが回らず、「カチカチ」と音がするだけでエンジンが始動しません。「キュル……キュル」と回転が弱くなるのも、バッテリー性能低下のサインです。
② ライトが暗くなる、点かない
正常なバッテリーなら、エンジンをかけなくてもヘッドライトや室内灯が点灯します。これらが暗い、もしくは点かない場合は、バッテリーが弱っている可能性があります。
③ 電装品が使えない
パワーウィンドウやカーナビ、オーディオなどの電装品が作動しなくなった場合も注意が必要です。とくに、リモコンキーが効かない、エアコンの風が弱いなどは電圧不足のサインです。
④ バッテリー警告灯が点灯する

車種によってはメーター内にバッテリー警告灯があります。点灯している場合は、バッテリーか発電機(オルタネーター)に異常があるかもしれません。
(2) バッテリー上がりの前兆の症状
バッテリーが完全に上がってしまう前には、いくつかのサインが現れます。とくに以下のような症状が出たときは、早めにバッテリーの点検を受けることをおすすめします。
エンジンがかかりにくくなる
いつもよりセルモーターの回転が弱く、エンジン始動に時間がかかるときは注意が必要です。回転音が鈍くなる「キュル……キュル」といった感覚があれば、性能低下のサインと考えましょう。
ヘッドライトの明るさが不安定になる
停車中は暗く、走行中に明るくなるといった症状は、充電機能がバッテリーをカバーしている状態です。アイドリング中に照度が落ちるようであれば、バッテリー残量が少ない証拠です。
パワーウィンドウやパワースライドドアの動作が遅くなる
開閉に時間がかかる、スイッチ操作に対する反応が鈍いなど、電圧が不安定なときに現れやすい変化です。左右どちらか片方だけ遅い場合でも油断は禁物です。
アイドリングストップ機能が作動しない
バッテリーの電圧が低いと、安全装置が働いてアイドリングストップが自動的に無効になります。「最近止まらなくなった」と感じたら、バッテリーの劣化を疑ってください。
どれか1つでも当てはまる場合は、突然のバッテリー上がりを防ぐためにも、整備工場で点検を受けておくことをおすすめします。
(3) バッテリー上がりかどうか確認する方法
バッテリーが原因かどうかを判断するには、エンジンの反応と電装品の動作を確認しましょう。
まず、エンジンをかけたときにセルモーターが弱く回る、または音がしない場合は、バッテリー上がりの可能性があります。また、イグニッション電源をONにしても、ヘッドライトやパワーウィンドウなどが反応しないときも電圧不足が疑われます。
電装品を確認する際は、イグニッション電源をONの状態にしてください。プッシュスタート車ではブレーキを踏まずにスタートボタンを2回押す、キー式の車ではキーを2段階回すと電源が入ります。
これらのチェックだけでも、バッテリー上がりかどうかはある程度判断できます。不安なときは、無理に何度も始動を試みず、整備工場やロードサービスに相談しましょう。
2. 車のバッテリー上がりの対処法|充電・復旧方法
バッテリーが上がってしまった場合は、次の3つの方法のいずれかで対処するのが基本です。
・ジャンピングスタートを使う
・カーバッテリー用の充電器を使う
・ロードサービスを呼んで充電してもらう
なお、バッテリー上がりはしばらく待てば自然に回復すると考えてしまう人もいますが、それは誤解です。
バッテリーが自然回復することはほとんどなく、放置すればむしろ状態が悪化します。必ず適切に対処しましょう。
(1) ジャンピングスタートを使う

バッテリー上がりの応急処置としてよく使われるのが「ジャンピングスタート」です。ほかの車のバッテリーから電力をもらって、自分の車のエンジンを始動させる方法です。
① 事前準備
ジャンピングスタートするには、ブースターケーブルと電力の十分な救援車が必要です。
救援車にハイブリッドカーは使用できません。故障の原因となります。
作業前には、両方の車のエンジンを止め、サイドブレーキをかけてください。感電防止のために、絶縁手袋や保護メガネも着用できると安全です。
② ジャンピングスタートの手順
ジャンピングスタートの手順は以下のとおりです。
1. バッテリーが上がった車に救援車を近づける
2. 救援車のエンジンを停止させたら、バッテリーが上がった車のバッテリーのプラス端子に赤いケーブルを接続する
3. 救援車のバッテリーのプラス端子を、赤いケーブルの反対側に接続する
4. 救援車のバッテリーのマイナス端子に黒いケーブルを接続する
5. バッテリーが上がった車のエンジンの金属部分やバッテリーのマイナス端子に、黒いケーブルの反対側を接続する
6. 救援車のエンジンをかけ、エンジン回転数を2000〜3000rpmでキープして、約5分エンジンを回し続ける
7. バッテリー上がりを起こした車のエンジンを始動させる
8. バッテリー上がりの車に接続した黒いケーブル→救援車に接続した黒いケーブル→救援車に接続した赤いケーブル→バッテリー上がりを起こした車に接続した赤いケーブルの順序で外す
手順を誤ったり、ケーブルの接続順序や接続端子を間違えたりすると、故障の原因につながるため十分気をつけてください。
③ エンジン復旧後にすべきこと
ジャンピングスタートはあくまで応急処置であり、バッテリーの状態が元通りになったわけではありません。劣化が進んでいる場合は、再びバッテリー上がりが起こる可能性があります。
エンジンがかかったあとは、20〜30分ほど走行して最低限の充電をしたうえで、できるだけ早く整備工場で点検や交換を依頼しましょう。
(2) カーバッテリー用の充電器を使う
バッテリー上がりの緊急時対処法として、カーバッテリー用の充電器を使用するという方法も有効です。
カーバッテリー充電器の使い方は以下のとおりです。
1. 車のエンジンを止めてキーを抜き、ボンネットを開けてバッテリーを取り出す(水素ガスが出たり、バッテリー液が漏れたりする恐れがあるため)
2. バッテリーのプラス端子にブースターケーブルの赤いクリップを、マイナス端子に黒いクリップを接続する
3. 充電器のプラグをコンセントに差し込み、充電器のスイッチを「ON」にする
4. 充電器のアンペア数を設定する。アンペア数は、電気容量の10分の1(通常は2〜3A)に設定するとよい
5. 充電器のインジケーターが点灯すれば充電が開始される
6. バッテリー電圧と充電量を確認して、充電量が90%以上になったら電源を切る
7. コンセントをプラグから抜いて、ブースターケーブルを外す
ただし、充電器によって使用手順が異なる場合もあるため、説明書などをしっかり確認するようにしましょう。
また、バッテリー充電器を使用する際には、以下の点に注意してください。
① 開放型・密閉型に対応しているかチェックする
自家用車に使われているバッテリーは、「開放型」と「密閉型(メンテナンスフリー)」の2種類があります。
市販のカーバッテリー充電器の多くは両方に対応していますが、製品によってはどちらか一方にしか対応していないこともあります。使用前に必ず対応可否を確認しましょう。
② 開放型のバッテリーは「液口栓」を外す
開放型バッテリーの上部には「液口栓」と呼ばれるツマミが6つ付いています。
これを付けたまま充電すると、バッテリー内部に水素ガスが溜まりやすくなり、ガスの爆発やバッテリー破裂の原因になります。
必ず液口栓をすべて外してから充電してください。

③ 充電作業は換気のよい安全な場所で
とくに開放型は、充電中に微量ながら水素ガスが発生します。
ガスは引火性が高く、火気のある場所や密閉された空間での作業は非常に危険です。風通しのよい屋外や車庫で行い、近くで喫煙や火を使用しないよう徹底しましょう。
④ 過充電に注意する
電圧や電流の設定を誤ると、過充電によってバッテリーが過熱し、液漏れや破裂などのトラブルが起きるおそれがあります。
とくに密閉型バッテリーは内部にガスが逃げにくいため、充電器の指示通りの設定で、適切な時間だけ充電することが重要です。
(3) ロードサービスを呼んで充電してもらう

バッテリー上がりが発生したとき、もっとも確実で安心な対処法が「ロードサービスの利用」です。
多くの自動車保険には、バッテリー上がり時のジャンピングスタートやバッテリー交換などに対応したロードサービスが付帯しています。もし保険に加入していれば、費用負担なしで救援を受けられるケースも多いため、まずは契約内容を確認してみましょう。
なお、以下の点には注意が必要です。
・保険会社によっては利用回数に制限がある
・自宅での対応は対象外となる場合がある
・バッテリー交換は有料になることもある
これらは保険会社によって異なるため、事前にロードサービスの内容を把握しておくことが大切です。
外出先でのバッテリー上がりや、自分での対処が難しい場合は、無理せずロードサービスに頼ることをおすすめします。
(4) 電気自動車・ハイブリッド車のバッテリー上がりの場合
電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)のバッテリー上がりは、構造が一般的なガソリン車と異なるため、状況に応じた対応が必要です。
① 駆動用バッテリーが上がった場合
EVやHVに搭載されている高電圧の駆動用バッテリーが原因の場合、自宅での作業やDIYでの対処は非常に危険です。
異常を知らせるエラー表示や警告灯が点灯した場合は、直ちにディーラーや専門整備業者に連絡し、指示を仰ぎましょう。
無理に触ろうとすると感電や故障のリスクが高まるため、専門の知識と設備をもつ業者による対応が必須です。
② 補機用バッテリーが上がった場合
エンジンの始動や電装品の作動に使われる補機バッテリー(12V)であれば、通常のガソリン車と同様にジャンピングスタートで復旧が可能です。
ただし、EVやHVではバッテリーの位置や構造が異なるなど、車種によってはアクセスに手間がかかるケースもあります。
作業の前に、必ず車両の取扱説明書を確認し、正しい手順と接続位置を把握してから実施しましょう。
不安がある場合は無理をせず、ディーラーやロードサービスに相談するのが安心です。
3. バッテリー上がりでやってはいけないこと
バッテリー上がりが起きた際にやってしまいがちなのが、何度もエンジンをかけようとする行為です。
これを繰り返すと、バッテリーやセルモーターに負担がかかり、状況がさらに悪化します。
また、「バッテリー上がりはしばらく待つと回復するのでは?」とそのまま様子を見る人もいますが、これは誤解です。バッテリーが自然回復することは基本的にありません。放置してもエンジンはかからず、むしろ電圧がさらに低下する恐れがあります。
バッテリー上がりが自然回復したように見えても、内部では劣化が進行していることもあるため注意が必要です。
4. 車のバッテリー上がりの原因5選|放置や寿命に注意

車のバッテリー上がりには、さまざまな原因があります。
とくに以下の5つは、整備士の現場でも頻繁に見られるものです。思い当たる節がある人は、注意しましょう。
・車の使用頻度が低い
・バッテリーの寿命が近い
・ライト類の消し忘れ
・オルタネーター(発電機)の故障
・ドライブレコーダーによる電力消耗
順にご紹介します。
(1) 車の使用頻度が低い
「最近あまり車に乗っていない」という人は要注意です。
車はエンジンをかけることでオルタネーター(発電機)が作動し、バッテリーに電力を供給します。しかし、数週間放置してしまうと、自然放電でバッテリーの電圧が下がり、上がってしまうことがあります。
とくに以下のようなケースではバッテリー上がりが起きやすくなります。
・長期旅行などで車を数週間放置している
・週末しか車に乗らない
・通勤や買い物で短距離しか走らない
短距離運転では発電量が少なく、十分な充電ができません。定期的に30分以上の走行を心がけると良いでしょう。
(2) バッテリーの寿命が近い
バッテリーは消耗品です。
寿命はおおよそ3〜4年とされており、経年劣化とともに蓄電能力が低下します。
上記でご紹介した、バッテリー上がりの前兆の症状が見られる場合は、バッテリーの交換時期かもしれません。
早めに専門家の意見を求め、必要であれば新しいバッテリーに交換しましょう。
(3) ライト類の消し忘れ
ヘッドライトやルームランプ、ハザードランプの消し忘れも、よくある原因です。
「ちょっとだけ停めるから」とライトをつけたまま離れてしまい、そのままバッテリーを使い切ってしまうケースがよくあります。
とくに夜間やトンネル後は注意が必要です。最近は自動消灯機能付きの車も増えていますが、すべてのランプに対応しているとは限りません。
(4) ドライブレコーダーによる電力消耗
駐車監視機能付きのドライブレコーダーは、エンジン停止中も動作を続けるため、バッテリーをじわじわと消耗します。
とくに、夜間の駐車中などに録画が続いていると、知らぬ間にバッテリーが上がっていることもあります。
心配な場合は、駐車監視機能をオフにするか、外部電源を利用する対策をとりましょう。
(5) オルタネーターの故障
オルタネーター(発電機)の不具合が原因の可能性もあります。
走行中にバッテリーが充電されない状態が続くと、やがてバッテリーが空になり、エンジンがかからなくなります。
「バッテリーを新品にしたのにすぐ上がる」という場合は、バッテリーではなくオルタネーターが原因かもしれません。
警告灯の点灯やエアコン・ライトの異常にも注意しましょう。
5. 車のバッテリー上がりを防ぐための対策
バッテリー上がりは、ちょっとした工夫と日常の意識で対策できます。以下の3つのポイントを実践すれば、急なトラブルを避けやすくなります。
1. 適切な頻度で車を使う
2. 定期的にメンテナンスする
3. 電装品の使い方に注意する
順にご紹介しましょう。
(1) 適切な頻度で車を使う
車のバッテリーは、走行中にオルタネーターから充電される仕組みです。そのため、車にあまり乗らない生活が続くと、バッテリーの電圧が低下しやすくなります。
週に1〜2回、30分以上の運転を目安にエンジンをかけるようにしましょう。
どうしても長期間乗れない場合は、バッテリーのマイナス端子を外すことで自然放電を抑えることもできます。端子を繋ぎ直した際にチェックランプが点灯した場合は、ディーラーにリセットを依頼する必要があります。
(2) 定期的にメンテナンスする
バッテリーの寿命を延ばすためには、点検と補水が重要です。
とくに開放型バッテリーの場合は、液量のチェックと必要に応じた補水が必要になります。液面が極板より下がっていると、劣化が早まり、バッテリー上がりの原因になります。
また、アイドリングストップ車などはバッテリーへの負荷が高いため、早めの点検・交換を検討しましょう。
(3) 電装品の使い方に注意する
ルームランプやハザード、駐車監視型のドライブレコーダーなど、エンジンを止めた後も電力を消費する機器には要注意です。
短時間の停車でも、ライト類はきちんと消す習慣をつけましょう。ドライブレコーダーは外部電源やシガーソケット連動タイプに変更することで、不要な消費を防げます。
6. 車のバッテリーのことでお悩みでしたらグーネットピットにご相談ください
バッテリー上がりは、「車に乗る頻度が少ない」「寿命が近い」「電装品の使い方に問題がある」といった原因から突然起こります。
普段から車を定期的に走らせることや、メンテナンスを怠らないことが、トラブルを防ぐためのポイントです。
万が一バッテリー上がりが発生したときは、この記事で紹介したジャンピングスタートや充電器の使用などを参考に、落ち着いて対処しましょう。
とはいえ、最近「エンジンのかかりが悪い」「ライトが暗く感じる」などの症状がある場合は、バッテリーの劣化が進んでいる可能性があります。そのまま放置すると、ある日突然エンジンがかからなくなる可能性もあるため、早めに整備工場に点検を依頼することをおすすめします。
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