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更新日:2025.09.05 / 掲載日:2021.01.01

車の排気ガス成分と影響|健康被害や環境対策まで解説

自動車は日々の移動に欠かせない存在ですが、エンジンから排出される排気ガスは人体や環境に大きな影響を及ぼします。排気ガスには複数の有害成分が含まれ、呼吸器疾患や地球温暖化の原因にもなっています。

この記事では、車の排気ガス成分や健康・環境への影響、そして削減に向けて私たちができる対策までをわかりやすく解説しましょう。

ぜひ最後まで読んで、日常生活でできる排気ガス対策を考えるきっかけにしていただけたら幸いです。

1. 車の排気ガスについて

マフラーから出ている排気ガス(イメージ)

車から出る排気ガスは、環境や人体に多くの影響を及ぼします。その中身や発生する理由は、意外と知られていないかもしれません。

ここでは、排気ガスの仕組みや含まれる成分、そして車種や燃料による違いについてわかりやすく解説します。

(1) 排気ガスが出る理由

排気ガス(英語:exhaust gas)は、エンジンが燃料を燃やして動力を生み出す際に発生するガスのことです。

ガソリンや軽油などの燃料を燃焼させると、その副産物としてさまざまな気体が発生します。これらが車外に排出されることで、排気ガスとなります。

(2) 排気ガスに含まれる成分

車の排気ガスの成分には、環境や人体に悪影響を与える物質が多く含まれています。主なものとして、以下が挙げられます。

排気ガス成分 発生原因と人体・環境への影響
一酸化炭素(CO) 炭素と酸素の不完全燃焼により発生する無色無臭の有毒ガス。体内で酸素運搬機能を阻害し、中毒症状や最悪の場合死亡リスクあり。
二酸化炭素(CO₂) 燃料の完全燃焼時に発生する主要な温室効果ガス。地球温暖化の原因物質として環境問題の中心となっている。
炭化水素(HC) ガソリンや軽油が燃え切らずに残った有機化合物。大気中で光化学スモッグの原因となり、ぜんそくや気管支炎などの呼吸器系疾患のリスクを高める。
窒素酸化物(NOx) 高温燃焼時に大気中の窒素と酸素が反応して生成される一酸化窒素(NO)や二酸化窒素(NO₂)の総称。呼吸器疾患や酸性雨の原因となる。
二酸化硫黄(SO₂) 軽油内の硫黄成分が燃焼する際に発生する。大気中で硫酸に変化し、酸性雨の原因物質となって森林や水生生物に悪影響を与える。
浮遊粒子状物質(SPM) 主にディーゼル車の黒煙に含まれる粒径10μm以下の微粒子。大気中を長時間漂い、呼吸器系への悪影響が懸念される。
ホルムアルデヒド ガソリンやディーゼルなどの燃料が不完全燃焼した際に生成される有害物質。発がん性を持ち、深刻な健康被害のリスクがある。
ダイオキシン 燃料中の微量塩素が高温燃焼時に発生する物質。環境ホルモン作用や発がん性があり、生態系や人体に長期的な悪影響を及ぼす。
サルフェート(SO₄) 排ガス処理装置の触媒反応で生成される硫酸塩。酸性雨や粒子汚染の原因となり、環境への悪影響が懸念される。

(3) 排気ガスに含まれる成分は車種や使用する燃料の種類で異なる

排気ガスに含まれる成分は、車種や使用する燃料の種類によって異なります。

たとえば、ガソリン車は炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)の排出量が比較的多い傾向にあります。一方で、ディーゼル車は黒煙や浮遊粒子状物質(PM)の排出量が多いことが特徴です。

また、同じ車種でもハイブリッド車やプラグインハイブリッド車(PHV)ではエンジン作動中に排気ガスを出しますが、排出量は一般的なガソリン車に比べて少なく抑えられています。さらに、電気自動車(EV)はモーターだけで走行するため、走行中に排気ガスを一切出しません。このため、環境負荷が低い車として注目されています。ただし、充電に使用する電気が火力発電で作られている場合、発電所から二酸化炭素(CO₂)が排出されるため、EV自体が完全にクリーンとは言えません。

そのため、家庭に太陽光パネルを設置して発電した電力で充電すれば、EVをより環境に優しい車として使えます。

2. 車の排気ガスが与える人体への影響

光化学スモッグが発生している様子(イメージ)

排気ガスには多くの有害物質が含まれ、私たちの健康にさまざまな影響を与えます。

ここでは代表的な3つの影響を解説します。

(1) 光化学スモッグによる影響

排気ガスを吸うと、光化学スモッグによる影響を受ける恐れがあります。

光化学スモッグは、大気中の窒素酸化物(NOx)と炭化水素(HC)が紫外線を受けて化学反応を起こすことで生成される、光化学オキシダントによって発生します。これらの物質の濃度が高まると、光化学スモッグとして現れ、人体に悪影響を与えます。

発生時には目の刺激や涙、のどの痛み、頭痛などの症状が出ることがあり、とくに子どもや高齢者、呼吸器疾患を持つ人は注意が必要です。

そのため、光化学スモッグ注意報が発令された場合は、屋外での活動を控えるなど、適切な対策をとることが重要です。

(2) 呼吸器系への影響

排気ガスは呼吸器系にも悪影響を与える恐れがあります。なかでも浮遊粒子状物質(SPM)は粒径10μm以下の微粒子で、主にディーゼル車や工場から排出され、大気中を漂います。これらの粒子を吸い込むと気管支や肺の奥まで入り込み、喘息や気管支炎など呼吸器疾患を引き起こす可能性があります。

(3) 発がん性リスク

世界保健機構(WHO)傘下の国際がん研究機構では、ディーゼル車の排気ガスを発がん性がある物質に分類しています。

排気ガスに長期間さらされると、がんを発症するリスクが高まる可能性が指摘されているのです。

3. 車の排気ガスが引き起こす環境問題

自動車は便利な移動手段ですが、排気ガスを排出することで環境問題の一因となっていることも事実です。

ここでは、排気ガスが環境へ与える主な影響を2つご紹介します。

(1) 地球温暖化の原因となる

自動車の排気ガスには二酸化炭素が含まれ、日常的に大量の大気中に排出されています。

二酸化炭素は温室効果ガスのひとつで、大気中に増えることで地球全体の平均気温を上げる原因になります。そのため、排気ガスを吸うことがなくても、地球温暖化というかたちで私たちの暮らしに影響を与えているのです。

温暖化が進むと異常気象や干ばつ、水不足など深刻な問題を招くため、排気ガス環境問題として早急な対策が必要です。

(2) 酸性雨や光化学スモッグを発生させる

排気ガスには二酸化硫黄や窒素酸化物といった有害な物質も含まれており、これらは大気中で強い酸性物質に変化する性質があります。

これらが雨に溶け込むと酸性雨が発生し、森林の枯死や水質の悪化、生態系に悪影響を引き起こします。

さらに、窒素酸化物や炭化水素が紫外線と反応すると、光化学スモッグを引き起こすことになります。これにより人体への悪影響だけでなく、植物や農作物の成長を妨げ、収穫量の低下や品質の悪化を招く恐れもあるのです。

4. 車の排気ガス対策との現状

自動車の排気ガスによる環境問題が深刻化するなか、日本や世界ではさまざまな規制や対策が進められています。

ここでは、日本国内と海外の排気ガス対策について解説します。

(1) 日本国内の排気ガス対策

日本では、排気ガス削減と脱炭素化を目指し、電動化や排ガス規制の強化など多方面で取り組みが進められています。

① グリーン成長戦略と電動車目標

政府は「グリーン成長戦略」で、2035年までに乗用車の新車販売をすべて電動車とする目標を掲げています。

商用車も2040年までに電動車・脱炭素燃料車100%を目指しており、大型車については2020年代に5,000台の先行導入、2030年までに2040年目標の設定を計画しています。

こうした取り組みにより、自動車から排出される温室効果ガスの削減と産業競争力の向上を両立させる方針です。

参照:自動車・蓄電池産業|経済産業省

② 自動車NOx・PM法による規制

「自動車NOx・PM法」では、排気ガスによる大気汚染が深刻な地域を対象に、トラックやディーゼル乗用車の窒素酸化物や粒子状物質の排出基準が厳しく定められています。

これにより、古いディーゼル車の使用制限や排ガス性能に優れた車両への切り替えが進められ、都市部の大気環境改善につながっています。

参照:大気環境・自動車対策|環境省

③ オフロード法による規制

フォークリフトやブルドーザーなど、公道を走らないオフロード車両も「オフロード法」で排ガス規制の対象です。

2006年4月以降に製造・輸入されたオフロード車は、排出ガス基準を満たした基準適合表示がないと国内で使用できません。

これにより、工事現場や物流現場で使用される作業車両からの排気ガス対策も進められています。

参照:オフロード車の排出ガス規制が始まります|環境省・経済産業省・国土交通省

④ CEV補助金とゼロカーボン・ドライブ

EVや燃料電池車などクリーンエネルギー車の普及促進のため、CEV補助金制度が設けられています。CEV補助金とは、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド(PHEV)など環境負荷の少ない自動車を購入する際に国から支給される補助金制度です。

また、太陽光や風力など再生可能エネルギーで発電した電力を用いて走行時のCO₂排出量をゼロにする「ゼロカーボン・ドライブ」も推進中です。

参照:CEV 補助金(車両)のご案内|次世代自動車振興センター
参照:ゼロカーボン・ドライブとは?|環境省

(2) 世界の排気ガス規制対策

海外でも排気ガス削減や電動化を進めるため、各国が厳格な規制や支援策を導入しています。

電動化等の目標
英国2035年販売目標
EV・FCV:100%
※ガソリン車およびディーゼル車の新車販売禁止の時期を2030年→2035年に後ろ倒し
EU2035年以降
テールパイプベースでCO2排出100%減(=EV・FCV:100%)
アメリカ2030年販売目標
EV・PHV・FCV:50%→大統領令が廃止
カリフォルニア州・ニューヨーク州:2035年EV・PHV・FCV100%
カナダ2035年販売目標
EV・PHV・FCV:100%
日本2035年販売目標
電動車(EV・PHV・FCV・HEV):100%
中国2027年販売目標
新エネ車(EV・PHV・FCV):45%
タイ2030年生産目標
ZEV:30%
参照:自動車をとりまく国内外の情勢と自動車政策の方向性 p.5|経済産業省

① EUのEuro 7規制と販売制限方針

EUでは、自動車の排気ガス規制をさらに厳しくする「Euro 7」規制が導入予定です。

この規制では、従来より排ガス基準値が強化されるほか、タイヤやブレーキの摩耗によって発生する粉じんも新たに規制対象となります。

ただし、自動車業界からは「技術面やコスト面で負担が大きい」といった声もあり、環境対策と産業競争力の両立が課題となっています。

参照:欧州自動車工業会、EV販売の減速受け、CO2排出基準規則の見直しの前倒しを提言|JETRO

② アメリカの排ガス規制と電動化政策の見直し

アメリカでは、2027年以降の乗用車や小型トラック(ライトビークル)、中型・大型車両の温室効果ガス(GHG)排出基準について、環境保護庁(EPA)が再検討を進めています。

バイデン前政権下で制定された規制では、2032年までに厳しいCO₂排出削減目標が設定されていましたが、現政権は「消費者の負担や産業競争力への影響が大きい」として見直しを表明しました。

そのため、アメリカでは現時点で規制強化の流れが鈍化しており、今後どのような排ガス規制や電動化目標が定まるか注目されています。

参照:米環境保護庁、ライトビークル、中・大型車の排出基準を再検討|JETRO

③ 中国の排ガス規制とEV普及政策

中国では2023年7月から「国6B」規制が施行され、窒素酸化物や粒子状物質、揮発性有機化合物などの排出量基準が厳格化されています。

加えて、EV購入時の補助金支給や購入税免除などの政策が進められ、2027年までに新車販売に占めるEVなど新エネルギー車比率を45%にする目標が掲げられています。

参照:7月1日から自動車排出ガス規制「国6b」を実施|JETRO
参照:自動車をとりまく国内外の情勢と自動車政策の方向性 p.5|経済産業省

5. わたしたちにできる 排気ガス削減・対策方法

電気自動車を充電している様子(イメージ)

私たちが日常生活で選ぶ移動手段や運転方法も、排気ガス削減には大きな影響を与えます。

ここでは、無理なく続けられる具体的な排気ガス対策を3つ紹介します。今日から実践できる内容を確認していきましょう。

(1) 車の使用頻度を減らす

車の利用回数を減らすことは、二酸化炭素(CO₂)の削減に直結します。

たとえば、近所への買い物や通勤には徒歩や自転車を利用するのがおすすめです。公共交通機関の活用も効果的です。

こうした小さな積み重ねが、環境保護につながります。

(2) エコドライブを心がける

車を運転するときは、エコドライブを意識すると燃料消費と排気ガスの排出を抑えられます。

そのためには、急加速や急ブレーキを避け、車間距離に余裕を持った運転がポイントです。また、アイドリングストップや不要な荷物を降ろすことも効果的で、燃費向上と環境負荷軽減の両方に役立ちます。

(3) 電気自動車へ乗り換える

車の買い替えを考えているなら、排気ガスを出さない電気自動車(EV)も選択肢のひとつです。

EVは走行中にCO₂や排気ガスを排出せず、地球温暖化対策として注目されています。

さらに、走行音が静かでエンジンオイル交換などのメンテナンスコストも少なく済むなど、多くのメリットがあります。

6. 車に関することはグーネットピットにお任せください

排気ガスは、私たちの生活や環境に大きな影響を与える存在です。車を利用する以上、その仕組みや影響を理解し、日々の生活の中で削減につながる行動を意識することが大切です。

また、適切なメンテナンスは排気ガスをクリーンに保ち、車本来の性能を維持するうえでも重要です。整備工場で定期点検を受けることで、愛車を良好な状態に保ち、環境負荷の軽減にもつながります。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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