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更新日:2021.09.14 / 掲載日:2021.09.12

新型ランドクルーザー詳報

ランドクルーザー誕生70周年を迎え、この8月2日に正式発売された新型ランドクルーザー。
14年ぶりのフルモデルチェンジでどう進化したのか?
生まれ変わった新型の魅力を余すことなくお伝えしよう。

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icon TOYOTA 新型ランドクルーザー

●車両本体価格:510万~800万円
●発売日:2021年8月2日
●問い合わせ:0800-700-7700(トヨタ自動車 お客様相談センター)

ラダーフレーム構造を筆頭とした伝統メカニズムに、最新の走行制御技術を組み合わせることで、屈指の悪路走破性能を手に入れた。道なき道を走破できる“ランクル”の強みもしっかりと受け継いでいる。

新型ランドクルーザー、注目ポイントはここ!

その1/ガソリン車に加えてディーゼルターボ車も投入。共に新設計ユニットを搭載

3.5Lツインターボ

3.3L・V6 ツインターボディーゼル

従来型はガソリン車のみの設定だったが、新型はディーゼルターボ車も設定。共にダウンサイジング時代に対応した最新ターボユニットで、低回転域から十分すぎるパワー/トルクを発揮することが特徴。

その2/ラリー参戦も視野にいれた高性能オフロードモデル「GRスポーツ」を新設定

トヨタは2023年以降にダカールラリーへの参戦復帰を検討しており、その参戦車両のベースとなる“GR SPORT”を新設定。E-KDSSや前後デフロックなどの贅沢な走行制御技術のみならず、専用内装が楽しめる特別なモデルとしてかなりの人気を集めるのは確実だろう。

その3/指紋認証タイプのスタートシステムを初採用。セキュリティ面が大幅パワーアップ

世界中で人気を集めるランドクルーザーのオーナーとって、盗難問題は悩みの一つ。そこで新型は指紋認証でオーナーを認識する最新のセキュリティシステムが採用されたほか、スマホアプリでクルマの駐車位置を確認できるマイカーサーチ機能にも対応している。

どんな悪路も走破できるタフな基本設計は健在

 プレスリリースの冒頭に記された「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」の一文が、ランドクルーザーというクルマの本質を見事に言い表している。

 新旧のスペックを見比べてみると、基本構造や数字的にはビッグマイナーチェンジと思えるほど近い。ラダーフレームに前ダブルウィッシュボーン、後ろはリンク式リジッドアクスルを組み合わせたシャシーを採用するほか、全長こそ新型が35mmほど長くなっているが、ホイールベースは共通だ。こういう部分にも世間の流行に左右されない、いかにもランドクルーザーという信念を感じてしまう。

 しかし、新しく変わるべくところはしっかりと変化している。その代表例の一つとなるのがプラットフォームで新規開発のGA-Fに一新された。ガソリンのZX同士で比べると新型は従来型から約200kgも軽量化されている。フレーム周りはもちろん、ボディ周りの骨格や外板も統合的に軽量化され、重心高を下げるとともに重心を後方に移動し、4つの前後輪の接地荷重の均等化も図られている。

 もうひとつ興味深いのがタイヤサイズである。285/50R20を履く従来型に対して新型は265/55R20(ともにZX)。ロープロ/ワイド志向のプレミアム系とは逆行するが、見た目やスペックではなく車重減と合わせたオン&オフロードでの最適化を考えたタイヤチョイスといえよう。

 余談ながら現在のプレミアムSUVではモノコック/4輪独立懸架が一般的。ラダーフレームにリヤリジッドアクスルは旧態依然の印象を受けるかもしれないが、ヘビーデューティ用途での耐久性や大きな伸びストロークを必須とするハードクロカン走行では常識だ。クロカンの基本をしっかりと押さえていることがランドクルーザーの使命の一つだが、新型ではダンパー取り付け位置を変更して伸びストロークを拡大し、大きなギャップでの4輪の接地性向上を図っている。こんなところにも工夫を感じることができる。

最新デバイスの積極採用で利便&快適性も大幅にプラス

 セオリーに則った基本シャシーの改善によるオフロード性能の向上も見所のひとつだが、ハードクロカン走行時のドライバーの負担軽減も見逃せない。

 油圧により車高をロー/ノーマル/ハイの3段階で制御できる4輪AHCが非設定となったのは残念だが、トルセンLSDをセンターデフに用いたフルタイム4WDシステムや、極低速の悪路踏破の扱いを容易にするクロールコントロール、路面状況に応じて各輪のスリップコントロールを最適化するマルチテレインセレクトは全車に標準装備される。さらに限界踏破性向上の大きな武器となる電動デフロックも充実。センターデフには全車標準。GRスポーツにいたっては前後デフが標準、その他はリヤにOP設定となるが、ZXのみリヤにトルセンLSDも標準採用する。

 駆動系の設定を見比べても、従来型よりも一段高いレベルの踏破性を求めているのが分かるが、マルチテレインセレクトの機能向上も注目ポイント。従来型はL4モードへの設定だったが、新型ではH4モードにも設定。ともにオートモードを新設するとともにL4/H4のそれぞれの走行状況に適した制御モードが設定されている。

 その他のオフロード走行の支援システムとしては従来型から採用されていた車体下路面を含む車体周辺状況を映し出すマルチテレインモニターも改良され、車体透過画像で後輪周辺の拡大表示機能が加わった。従来どおり車体下画像は通過時画像からの合成となるが、ホイールのトレースラインの確認を車内からできることが大きな強味。しかも、ベーシック仕様のGX以外のグレードでOPとして選択することが可能だ。

新エンジンは出力に加え燃費性能も着実に向上

 基本を守りながら堅実なステップアップを図っているシャシーに対して、パワートレーンは一気に世代変更となった。ガソリン/ディーゼルターボともに従来型やランドクルーザープラドとは異なる新型エンジンを採用している。ガソリン車はV8の4・6LNAからV6の3.5Lツインターボへ変更。排気量も気筒数もダウンサイジングしたが、最高出力は30%以上、最大トルクは41%以上も向上している。また、最大トルク発生回転数も拡大した。

 ディーゼルターボはプラドのみにラインナップされていたが、新型ランドクルーザー用は新規開発されたV6の3.3Lツインターボを。最高出力は309PSだが、1600回転から発生する71.4kg・mという圧倒的な最大トルクを誇る。ちなみにプラド用の4気筒ディーゼルとの比較では、最高出力は約51%増、最大トルク約40%増になる。

 トランスミッションは発進時を除いて全域でロックアップを作動させるトルコン/遊星ギヤ式の10速ATを採用。フレックスロックアップ式の6速型ATを採用していた従来型と比すると、これも隔世の感と呼ぶに相応な進化となる。

 なお、シャシー/パワートレーンともにオン&オフロード性能の飛躍的向上はもちろん、燃費の向上にも寄与。従来型との比較では、ガソリン車がWLTCの全モードで18%前後も改善している。ディーゼルターボ車はプラドには及ばないものの、総合モードで9.7km/L、高速モードでは11.3km/Lを達成。二桁燃費が可能となったのは、本格クロカンのランドクルーザーとしてはエポックと言えよう。

上級装備も積極採用。プレミアム感向上も図られた

 その他の機能や装備で注目はトヨタ初となる指紋認証スタートスイッチも大きな見所。世界中で高い人気を持つこともあって、車両盗難はランドクルーザーの泣き所になっている。そこで新型は従来のイモビライザーなどの機能に個人認証という最新テクノロジーを加えることで、セキィリティ面の向上を図っている。GXこそOPになるが、他グレードは標準装着としているのも納得だ。

 なお、トヨタセーフティセンスの基本機能は最新仕様に準じているが、グレードにより内容が異なり、走行車線制御式LKAがVX以上に限定されるなど、グレード選びにおいて細かくチェックする必要がある。

 ナビ/オーディオ対応は全モデルともディスプレイオーディオ(DA)が標準で、ナビはDAの発展キットとしてT-CONNECTナビがOPで用意される。また、ZXとGRスポーツにはOPで後席エンタテイメントシステムも用意。装備面でもSUVの頂点クラスに相応な内容が与えられている。

【ZX】装備&機能が充実する、最上級グレード

 シリーズ最上級グレードとして設定。内装加飾への杢目調パネルの採用など、上級感溢れる内外装が魅力。また、前席パワーシートやハンズフリー機能付きパワーテールゲートなどを標準装着し、利便快適装備も充実。走行メカ関連では走行状況に応じてリニアに減衰力を調整する電子制御ダンパーを、GRスポーツ以外では唯一装備するなど、走りに関しても抜かりない工夫と内容が盛り込まれている。

キャビンを後ろ寄りに配置した伝統のパッケージを踏襲。エンジンフードの中央を凹ませたり、前後バンパーの下側はいなす造形とするなど、オフロード走行を意識した工夫も盛り込まれている。

贅沢な雰囲気を楽しめるだけではなく、インパネ上部をフラットにすることで前方視認性を高めたり、運転席まわりに操作スイッチを集約する実用的なキャビン空間に仕上げている。

シートは本革が標準で、ブラックとニュートラルベージュの2タイプが選択可能。ガソリン車は3列7名、ディーゼル車は2列5名仕様になる。

最新デバイスの採用も積極的。中央のモニターは標準では9インチのディスプレイオーディオだが、この車両はOPで選べる12.3インチT-Connectナビゲーションシステムが装着されている。

従来型の3列シートは左右跳ね上げタイプだったが、新型は床下格納式を採用したことで、格納時は左右幅いっぱいまで荷室スペースを活用することができる。

【GR SPORT】高性能に加えて内装意匠も専用仕立て

 “GR”=オンロードスポーツを想像してしまうが、ランクルの場合は、ランクルらしいオフロードスポーツを意識した内容が盛り込まれる。専用サスチューンに加えて電子制御スタビとも言えるE-KDSSや前後の電動デフロックが標準採用されるなど、走行メカニズムの多くにダカールラリーで得たノウハウと経験が注がれていることが特徴。悪路での速さと踏破性を意識したキャラが与えられるなど、オン&オフロードの走りを見所としている。また、専用装備の室内意匠もポイントの一つ。贅沢なキャビン空間はオーナーの所有欲も大きく満たしてくれるだろう。

GR SPORTはフロントグリルやホイールアーチモール、バンパー形状が異なる専用スタイリングを採用。標準ボディ車よりも精悍な雰囲気が高まっている。

内装もGR専用仕立て。ドアアームレストやステアリング意匠が異なるほか、シートはブラックレザーとレッド/ブラックコンビレザーを選ぶことができる。

【VX】性能とコスパの バランスが光る、標準グレード

一般用途との適合性を求めるオーナードライバー向けに最適な標準設定グレード。安全&運転支援も充実し、パワーテールゲートなどの利便装備もOPで装着することが可能。使い勝手や性能のバランスがいいが、VX以下にはディーゼル車の設定がないのが残念だ。

【AX】ランクルのタフなキャラを最も満喫できる

クロカン志向のユーザー向けのモデル。実用志向の装備設定で、上級グレードに比べて安全&運転支援も多少簡略化されるが、駆動系や悪路踏破支援は申し分がない。アウトドア趣味のツールとして選ぶユーザーにとっては、価格やOP設定も含めて現実的な選択肢になるだろう。

【GX】ガソリン車唯一の2列5名乗り。OPでも選べない装備が多い

 VX/AXと同様にガソリン車のみの設定だが、シート仕様が2列席5名定員になることも違い。マルチテレインモニターや上級オーディオもOPでも設定されないなど、上位グレードとの装備差がやや明快になっている。マニアックなオフロード派または作業用車両用途向けのベーシック仕様に徹したグレードだ。

注目メカニズム&機能

ボディパッケージ

屈指のアプローチ/ディパーチャーアングルに加えて、45度前後の登坂路もこなせるなど、本格オフローダーにふさわしいパッケージを採用。伝統の走破性はしっかりと確保されている。

GA-F プラットフォーム

伝統のラダーフレームは、TNGA技術が注がれたGA-Fパッケージを新採用。従来型に比べると軽量化と低重心化に加えて+20%の剛性アップも達成し、安定性や乗り心地に大きな貢献を果たしている。

新開発サスペンション

  • フロント:ダブルウィッシュボーン式

  • リヤ:トレーリングリンク式

フロントのダブルウィッシュボーン式もリヤのトレーリングリンク式も、前後サスペンションも全面刷新。リヤはショックアブソーバーの適正化により、乗り心地と操縦安定性に大きく貢献している。

E-KDSS

GR SPORTのみに標準装着されるE-KDSS(Electronic-Kinetic Dynamic Suspension System)は、路面や前後輪の駆動状況に応じて、前後のスタビライザーを電子制御するサスペンション制御システム。起伏の続く路面やジャンプ着地後に接地性が高まる効果を持つ。

マルチテレインセレクト/マルチテレインモニター

路面状況に応じて6つの走行モードを設定。モードごとに駆動力やサスペンション&ブレーキ油圧を自動で統合制御し、走破性を高めてくれる。過酷な路面でもタイヤ空転のスタックや駆動力不足による失速を未然に防止してくれる。

マルチテレインモニターは、車両周囲の状況確認を4つのカメラでサポート。ドライバーの死角を確認できるほか、車両下の状況を床下透過映像で確認・表示する映像合成機能も備わっている。

T-Connect ナビゲーションシステム

12.3インチのワイドタッチディスプレイを備えるT-Connectナビゲーションは全グレードにメーカーOPで用意される。スマホ連携やT-Connect対応機能のほか、走行モードや車両状況を表示する機能も備えている。

AVS(アドバンス バリアブル サスペンション)

ショックアブソーバーの減衰力を走行状態に応じた自動で制御してくれるAVSは、オフロード走行でも効果的な走行制御技術。ZXとGR SPORTに標準装着されている。

新型ランドクルーザー/ベストバイは?

高性能ぶりが光るディーゼル車が上級グレード限定というのが残念

 性能面ではガソリン/ディーゼル、実用面では3列席(7名定員)/2列席(5名定員)が悩み所。しかも、3列席仕様が選べるのはGX以外のガソリン車のみで、ディーゼル車とGXは2列席仕様しか設定されていない。パワートレーンとシート仕様の組み合わせが定まっている。

 まだ試乗前なので走行性能は不明だが、公開された内容を見れば今風のSUV志向の影響は少なく、従来型と同様にクロカン4WDを意識したモデルだ。ただしオフロードで本領発揮という伝統は変わらないが、オンロードでも数多の新設計と改良が加えられたことで、より進化していることは容易に想像できる。

 ロングドライブでの燃料代や悪路走行時の取り扱いを考えるとディーゼル車を狙いたいが上級グレード限定になることが残念な部分。さらにランクルの機能性を重視した場合、ディーゼル車は多少割高な印象を感じてしまう。VXにもディーゼル車が設定されれば、選択の自由度が大きく拡大するのだが、このあたりはもったいなくも感じてしまう。

 価格でガソリン車とディーゼル車を比べると、おおよそディーゼル車が30万円高い。ヘビーユーザーなら燃費で元を取れる価格差だ。ただ、ディーゼル車の最低価格は760万円。ガソリン車は510万円から展開し、VXでも630万円である。コスパ優先という面ではガソリンの上級グレードがオススメしやすい。

icon ベストグレードは「VX」

予算が潤沢ならディーゼルのZXやGR SPORTが満足できる選択だが、ランクルの実用性やタフなキャラを求める向きには、コスパと性能のバランスが良いガソリン車の方がオススメ。VXなら性能や運転支援の拡張性も備わっている。

新型ランドクルーザー 購入アドバイス

歴史的な品薄が勃発中。値引き額も大盤振る舞い?

 納期がやばい。今すぐに注文しても「納車は来年どころか再来年になる」という異常事態が発生中! 今後増産に動くはずだが、それでも1年以上の納車待ちは覚悟しなければならない。こういうケースでは通常「値引きは一切できない」などと“超”強気な売り方を展開してくるが、今回のランクルは真逆。発売直後の新型なのに「末期のバーゲンセールかよ!」というくらいの大盤振る舞い中! これまた異常事態なのだ。詳しくは今月の「値引き生情報」を参照して欲しい。

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●文:川島茂夫

提供元:月刊自家用車

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ライタープロフィール

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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