輸入車
更新日:2021.06.04 / 掲載日:2021.06.04
【いま注目すべきブランドBMW】BMWを象徴するもの【自動車ジャーナリスト九島辰也が解説】
文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス、BMW
いくつかのカーブランドにはそれぞれ象徴となるアイコニックなモデルがある。わかりやすいところで言うと、ポルシェには911、VWにはゴルフというように。メルセデスならEクラスかSクラスあたりだろう。近年このブランドを知った人は、AクラスのようなコンパクトカーかSUVのGLシリーズを挙げるかもしれないが、メーカーとしてのスタンスは変わらない気がする。
BMWらしさを象徴するのが3シリーズ
BMW 3シリーズセダン
それじゃBMWはと言うと、3シリーズが筆頭に上がる。Xシリーズの台頭が目立つが、3シリーズがアイコニックなモデルであることは世界的周知の事実。かつてその最もパワフルなモデル“M3”に憧れたクルマ好きは多かったことだろう。個人的にも学生時代にE21型を、30歳代にE36を所有したことがあるが、どちらも「BMWといえば!」と言う観点で選んだモデルだ。
なので、今もモデルチェンジのたびに試乗する3シリーズの出来栄えには興味がある。枕詞にも使う「BMWの屋台骨」だけに、はずしてはいけない開発陣の努力の跡が見られるからだ。
BMWの最新技術を味わいたいなら7シリーズに注目
BMW 7シリーズ
ただ、最新テクノロジーを搭載するモデルとしては7シリーズが選ばれることが多い。特に安全装備、運転支援システム、デジタルデバイスの進化に関してはそうだ。スポーティなだけでなく、高級ブランドとしてのBMWにとって7シリーズはフラッグシップモデルとなる。ボンドカーとして使われたのもそんなステイタスがマッチしているからだ。
7シリーズはそんなポジションなので、こちらもチェックする必要がある。ちなみに現行型は2015年にリリースされたモデルのマイナーチェンジ版で、次期型がにわかにその姿を現している。先日もカモフラージュしたテスト車両のスパイフォトが出まわっていた。今度はグレードの中に“i7”と名付けられたEVが加わるらしい。12気筒とオサラバしてEVがハイパフォーマンスモデルの地位に付くとか。いずれにしても、スポーティでラグジュアリーな7シリーズは個人的に好みで、いつか所有したいリストの上位にランクインされている。その動向は見逃せない。
スポーティでセンスアップされた8シリーズに大きな魅力を感じる
BMW 8シリーズ グランクーペ
ところが、ここ数年BMWラインナップのヒエラルキーが微妙に変わっているのをご存知だろうか。そう、気になるのは8シリーズの存在。フォーマルな雰囲気を持つ7シリーズとは異なる、よりスポーティでセンスアップされたクルマがそこに並ぶ。
8シリーズには、2ドアクーペ、カブリオレ、4ドアのグランクーペといったボディタイプがあり、それぞれに“M”が用意される。要するに、M8クーペ、M8カブリオレ、M8グランクーペと言うように。M8は全て2000万円オーバー。世界中のクルマ好き富裕層がそのターゲットとなる。
8シリーズの最初のテストドライブはポルトガルだったのを記憶している。クルマは2ドアクーペ。午前中エストリルサーキットで開発者を助手席に乗せ、午後郊外のワインディングへと向かった。ここでBMW好きの方はピンときたかもしれない。エストリルはBMWがボディカラーに使うあの名前。ポルトガルの青い空はまさに“エストリルブルー”のように鮮やかであった。その時の走りはまんまスポーティ。と言うか、かなりエンジンサウンドもワイルドで猛獣のようなマシンといった雰囲気だった。500馬力オーバーのV8エンジンをサーキットで走らせたのだからそんな印象だったのかもしれない。それでも硬すぎない乗り心地はさすがだと思ったのを覚えている。インテリアの仕上がりだけでなく、そこにラグジュアリーさを取り入れていたようだ。
と言うことで、いつか乗りたいリストは現在7シリーズよりも8シリーズが上にきてしまった。8シリーズグランクーペはかなり上位にランクされる。「BMWっぽいな」と思ったのは、2ドアと4ドアでホイールベースを伸ばしただけでなく、全幅も変えているところだ。グランクーペの方が30mm幅が広がっている。タイヤを含めこの辺のセッティングを見直すのが彼ら流だろう。他メーカーならスルーしてしまうところもBMWの技術陣はしっかり見直し、最高のパフォーマンスを出せる準備をしている。
2シリーズ グランクーペは身近な価格でBMW流クーペの世界観を味わえる
BMW 2シリーズ グランクーペ
そんなこんなで、BMWのトップレンジを眺めながら妄想にふけっているが、価格もトップレンジなのは見過ごせない。そこで、もう少しコンパクトなモデルを探してみると、2シリーズグランクーペなるものがあった。私が選考委員をつとめる日本カー・オブ・ザ・イヤーの2020-2021版で10ベストカーにノミネートされたモデルだ。当然のこと個人的にも高く評価している。なんたってこのサイズって昔の3シリーズだからね。走らせて楽しくないわけがない。
それはともかく、皆さんも3シリーズはもちろんBMWのトップレンジをチェックしてください。特にこれからは次期7シリーズに注目。そこにBMWの未来が隠されているのだから楽しみである。
執筆者プロフィール:九島辰也(くしま たつや)
自動車ジャーナリストの九島辰也氏
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。