車の最新技術
更新日:2020.12.10 / 掲載日:2020.12.10
新型MIRAIプロトタイプ試乗【ニュースキャッチアップ】

文●ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス、トヨタ
(掲載されている内容はグー本誌 2020年12月発売号掲載の内容です)
トヨタが近々の発売を予定している新型FCV(燃料電池自動車)MIRAIのプロトタイプモデルを試乗。2014年に登場した初代モデルから何が変わったのか、新型のメカニズムを解説する。
水素自動車を本格的に普及させるために
どうすれば温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を減らしながら、暮らしが成り立つのか。
トヨタは、中長期環境ビジョン「トヨタ環境チャレンジ2050」において、2050年までにクルマから排出されるCO2をゼロにすると発表。それを実現させるためのエネルギー源として水素に注目している。水素を燃料とするFCVは、利用段階でCO2を排出しないことに加えて、電気自動車よりも充填時間が短く、航続距離も長くできるからだ。
水素を燃料として利用するには、燃料電池という高度な技術に加えて、インフラ面でも高いハードルが存在する。日本は、国の主導でさまざまな分野で水素の利用を促進しているが、まだその道は半ばである。
では、どうすれば水素社会が発展していくのか。トヨタによれば、ポイントとなるのは、社会が水素を受容することだという。社会全体が水素の有用性を認め、利用したいと思うようになる必要がある。
そこでトヨタは、新型MIRAIの開発にあたって、「こんなクルマが欲しかった」と思わせるようなクルマ作りを目標にした。見てカッコよく、乗って楽しいクルマ。それが新型のコンセプトだ。
水素社会を加速させる憧れの1台となるか。新型MIRAIの挑戦が始まろうとしている。
[CLOSE UP]すべてを刷新して生まれ変わった新型MIRAI

大きな変化はTNGA「GA-L」というレクサス LSやクラウンなどに使われる後輪駆動用プラットフォームを採用したこと。FCスタック(発電装置)を前席下からフード下へと移動し、モーターはフロントからリアへ移動。空いたスペースに水素タンクを追加し航続距離を拡大。新パッケージングにより、前後重量配分は50対50と物理的資質を大きく高めることとなった。


環境車という立ち位置に止まらず、新型ではデザインや走りなど、クルマ本来の魅力を磨き上げている。

トランク下の水素タンクを小型化し、使い勝手を高めた。一方で、センターコンソール下に縦型に水素タンクを追加したことで、全体の容量を増やしている。

新型では、FCシステムのすべてを刷新。体積あたりの出力密度が大きく向上したことで、燃費性能に加えて出力もアップ。さらに騒音対策も徹底された。
水素社会実現に向けての取り組み
CO2排出削減のためには、クルマだけでなく、社会全体での取り組みが不可欠。そこでトヨタは、燃料電池のシステムを使った大型トラックや電車の開発にも乗り出した。水素の需要を増やすことで、全体のコスト削減にもつながるため、今後の展開が期待されるところだ。

国内商用車全体の7割を占める大型トラックをFCVに置き換える走行実験を2022年春ごろから開始。

JR東日本、日立、トヨタによる燃料電池と蓄電池によるHV車両を2022年3月より運行。
環境車であると同時に魅力的な高級車だった
サーキットで行われた試乗会で新型のステアリングを握ることができた。スムーズな加速としなやかなフットワーク、そして高い静粛性は、トヨタ車全体でトップレベルの出来栄え。FCVには、災害時には電源車になるという社会性の高さもある。高級車の新しい形としての定着に期待だ。