輸入車
更新日:2020.10.28 / 掲載日:2020.10.22
【試乗レポート アウディ Q3/Q3スポーツバック】より上質に、使いやすさも大幅に向上した
アウディ Q3スポーツバック
文●工藤貴弘 写真●ユニット・コンパス
いまやSUVフルラインナップメーカーとなったアウディ。「Q3」はそんなアウディのコンパクトクロスオーバーSUVで、初代の日本デビューは2012年だった。そして2020年。初代登場から8年が経過し、初のフルモデルチェンジを受けて2代目となった待望の新型が、日本でも販売をスタートした。
何を隠そう、この8年間でQ3の立ち位置は大きく変化している。初代デビュー当初は「アウディ最小のSUV」であり、それまでの同社SUVに比べると価格設定が手頃なこともあり新たなアウディユーザーを多く誘い込む役割を担っていた。しかし、SUVのマーケットが拡大するのに応じ、アウディは「Q2」というさらに小さく価格帯の低いモデルを2017年に投入。「アウディでもっともフレンドリーなSUV」というポジションは、そのQ2に移行したのだ。その結果として新しいQ3におきたのが上級シフトである。
先代モデルに比べて新型は品質感を大幅に高めた
アウディ Q3 35 TDI クワトロ Sライン
ずいぶん立派になった。
それが新型Q3に触れた最初の印象だ。初代モデルに対して全長が105mmも伸びて大型化したというだけでなく、デザイン自体が初代のカジュアルな雰囲気から上級モデルに近い上質さへと格上げされたのが伝わってくる。その格上げは、インテリアでより顕著だ。初代は明らかにコンパクトカーらしい親しみやすさを重視していることが感じられたが、新型では上級モデルと同じテイストとなり、明らかにプレミアム度合いが高まった。多くの購入者がアウディに求めるであろう「いいもの感」は大幅にアップしたと断言できる。
ボディサイズは、全長4490mm、全幅1840mm、全高1610mm。ホイールベースは2680mm(Q3 35 TFSI)
アウディ Q3 フロント
アウディ Q3 サイド
アウディ Q3 リア
後席を中心に室内空間が拡大。ラゲッジ容量はクラストップ水準
室内は居住スペースが拡大し、ファミリーカーとしての実力がアップした
一方で、新型は実用面も大きく高めた。全長やホイールベースが伸びた恩恵で、後席の居住スペースが拡大。リアシートには7段階のリクライニングも備わるから快適性も高く、ファミリーカーとしての実力がアップしているのは見逃せないポイントだ。
さらに、ラゲッジスペースは530Lというクラストップ水準の大容量。この広さは素直にすごいが、さらなる便利な仕掛けにも驚いた。空間が足りない時はリアシートを130mm前方へスライドし、後席に人が座れる状態をキープしたまま荷室の奥行きを増やせるスライド機構を備えているのだ。新型Q3の使い勝手へのこだわりには目を見張るものがある。
クルマが醸す上質感と、実際に使って便利な実用性の両面を引き上げてきたマルチパフォーマー。それが新しいQ3なのだ。
Q3 フロントシート
Q3 リアシート
Q3 ラゲッジルーム
ディーゼルモデルの高い実力は注目に値する
「35 TDI」は直4 2Lディーゼルターボエンジンを搭載
ところでパワーユニットは、「35 TFSI」として4気筒1.5Lガソリンターボエンジンを搭載するほか、「35 TDI」として4気筒2Lディーゼルターボエンジンを設定。ホットトピックはなんといっても後者だろう。日本向けのQ3としてはじめてのディーゼルエンジンで、さらにアウディと言えば駆動方式は「quattro(クワトロ)」と呼ぶ4WDの印象が強いが、驚くことに4WDモデルはディーゼルエンジンしか設定がないという思い切った戦略に出たのだ(異なる組み合わせも導入検討はしているという)。
出力はどちらも150馬力だが、味わいはやはり異なる。ディーゼルは期待どおり低回転域の極太トルク(34.7kgm)が心強くて、発進時のグッと前に出ていく力強さが運転しやすさにつながっている。しかし個性を感じたのは高回転のフィーリングだ。レッドゾーンが4500回転と高めで、アクセルを踏み込んだ時の伸び感のよさが印象的。峠道を走ってみても、気持ちよく走ることができた。
ガソリン車は25.5kgmとディーゼルに比べると最大トルクが低い(とはいえ排気量2.5Lクラスの自然吸気エンジンに相当するので想像以上に力強い)が、高回転のスムーズさやエンジンの繊細な感触はディーゼルエンジンに勝る。排気量1.5Lと聞けば力不足をイメージしそうになるが、動力性能は意外なほどに高かった。
どちらを選ぶかはあくまで好みだが、ディーゼルエンジンの実力は高くて満足できるものだ。ディーゼルエンジン搭載モデルは車両価格が高いものの、燃費がいいだけでなく燃料単価も安いのでランニングコストを抑えられるメリットも見逃せない。
アウディ Q3 35 TDI クワトロ Sライン
■全長×全幅×全高:4495×1840×1610mm
■ホイールベース:2680mm
■車両重量:1700kg
■エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
■総排気量:1968
■最高出力:150ps/3500-4000rpm
■最大トルク:34.7kgm/1750-3000rpm
■サスペンション前/後:ストラット/ウィッシュボーン
■ブレーキ前/後:Vディスク/ディスク
■タイヤ前後:235/55R18
流行のクーペスタイルを採用したQ3スポーツバックも登場
アウディ Q3 スポーツバック 35 TDI クワトロ Sライン
そんな新型アウディQ3には、新たに派生モデルも用意された。それが「アウディQ3スポーツバック」。基本メカニズムをQ3と共用し、デザインを流行のクーペスタイルとしたものだ。リアウインドウが大きく傾斜しているのが特徴である。
両者の違いはBピラーよりも後ろ……と思いきや、なんと全高が45mmも違うのだから驚く。天井の高さからして作り分けられているのだ。文句なしに美しく、Q3とは明らかに異なる躍動感を持っている。
Q3スポーツバック サイド
Q3スポーツバック リア
巧みなパッケージングでスタイルと居住性を両立
Q3スポーツバックの室内空間は、クーペスタイルと思えないほどしっかりと確保されている
しかし、もっと驚いたのはそのパッケージングの巧みさ。身長167cmの筆者が後席に座っても頭上スペースはしっかりと確保されていて、軽快なクーペスタイルとは思えないほど居住性の犠牲がないのだ。もちろん、座面位置を低くして頭上空間を増すなどのごまかしもなく、乗車姿勢もきわめて適正。さらに荷室も、トノカバーより上の空間は実質的に使えなくなってはいるが、そこから下であればQ3と同じく530Lの容量を確保しているのだから実用性はバッチリだ。もちろんシートスライドだって備えている。
美しいクーペスタイルながら使い勝手は高くキープ。そのバランスの良さはきわめてハイレベルと言わざるを得ない。新たな選択肢は、相当に魅力的な選択肢だ。
Q3スポーツバック フロントシート
Q3スポーツバック リアシート
Q3スポーツバック ラゲッジルーム
アウディ Q3 スポーツバック 35 TDI クワトロ Sライン
■全長×全幅×全高:4520×1840×1565mm
■ホイールベース:2680mm
■車両重量:1710kg
■エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
■総排気量:1968
■最高出力:150ps/3500-4000rpm
■最大トルク:34.7kgm/1750-3000rpm
■サスペンション前/後:ストラット/ウィッシュボーン
■ブレーキ前/後:Vディスク/ディスク
■タイヤ前後:235/50R19