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更新日:2020.08.10 / 掲載日:2020.08.10

トヨタ クラウン【ONE MAKE MARKET RESEARCH】

文●工藤貴宏
(掲載されている内容はグー本誌 2020年8月掲載の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2020年7月調べ。


「いつかはクラウン」。そんな名コピーを生んだ、日本を代表する高級サルーンがクラウンだ。今回はその現行型を紹介するとともに、クラウンという存在を振り返ってみよう。

全長×全幅×全高:4910×1800×1455mm ●ホイールベース:2920mm ●トレッド前/後:1550/1550mm ●車両重量:1770kg ●排気量:2487cc ●エンジン:直4DOHC+モーター ●エンジン最高出力:184ps/6000rpm ●エンジン最大トルク:22.5kgm/3800-5400rpm ●モーター最高出力:143ps ●モーター最大トルク:30.6kgm ●サスペンション前後:マルチリンク ●ブレーキ前後:Vディスク ●タイヤ前後:225/45R18 ●中古車参考価格帯:360万円~570万円(18年~20年 ※全グレード)

日本で初めて純国産技術で作られた初代

 クラウンの歴史、それは日本の乗用車の歴史そのものといっていいだろう。初代のデビューは1955年だから、65年も前。自動車黎明期だった当時の日本では、クルマの開発は国外のメーカーと提携してその主要メカニズムを手本とするのが当たり前だった。しかし初代クラウンは、外国の技術に頼らない、日本の技術だけで作られたのだ。
 2018年に発売された現行世代は、そんな初代から数えて15代目。その神髄はどこにあるのだろうか。
 クラウンは今、国産高級セダンマーケットで独り勝ちだ。2019年は年間で3万6125台を販売している。メインユーザー層は年配の男性だが、彼らの多くが「いつかはクラウン」というキャッチフレーズに憧れた世代。これは1983年に登場した7代目クラウンのCMに使われた名コピーだが、これが巧みにサラリーマンの心をつかみ、今なおユーザーの心に刻まれている。
 当時の日本は経済成長が明らかで、サラリーマンの収入は毎年着実に上がる状況。大衆車の「コロナ」から課長になって「マークII」へ乗り換え、さらに部長に出世し「クラウン」を手に入れるのがサラリーマンの夢だったのだ。そして、先の伝説的なフレーズが当時のサラリーマンの記憶に焼き付き、その後のクラウンの地位と人気を確実なものとした。
 ところで、クラウンは保守的なモデルと思われがちだが、じつはそうではない。1971年発売の4代目は奇抜なフロントデザインを採用し、1999年発売の11代目は世界に先駆けてマイルドハイブリッドを設定している。現行モデルはスタイリングの激変が話題となったが、革新はクラウンのDNAのひとつなのだ。

[エクステリア]革新のスポーティフォルム

 現行型クラウンのエクステリアにおける最大のトピックは、スポーティなフォルムを手に入れたことだ。大きく寝かせたリアウインドウを持ち、リアピラーには歴代モデルで初めて小さな窓を組み込んでいる。その結果、従来のクラウンでは考えられない細いリアピラー(Cピラー)となり、スポーティで軽快な雰囲気を得ることになった。

[モデルヒストリー]昭和から令和へー3つの時代を駆け抜けた名車の歩み

 日本のモータリゼーションの発展とともに歩んできたクラウン。そんなクラウンの歴史は、日本のセダンの歴史であり、日本の乗用車の歴史そのものといっていいだろう。各世代のクルマ作りは、時代ごとの社会背景が反映されている。すなわちクラウンは、日本の社会を映す鏡といっていい。3つの年号ごとに振り返ってみよう。

【昭和】日本を代表する存在から「いつかはクラウン」へ

  • 昭和30年~昭和37年に販売された初代クラウン。

  • 昭和49年~昭和54年に販売された5代目クラウン。

 昭和30年代はまだ、庶民にとってクルマは高根の華。企業やタクシー、そして超富裕層に向けての展開だった。昭和40年代に入ると、一般庶民のマイカー購入も増えてきた。そこで1967年(昭和42年)に登場した3代目は、個人ユーザー向けの広告展開も開始された。

【平成】格式高き存在からスポーティ&カジュアルな路線へ

  • 平成3年~平成7年に生産された9代目クラウン。

  • 平成15年~平成20年に生産された12代目クラウン。

 日本の歴史において最も経済に元気があったといわれる平成初期のバブル期には、クラウンが富裕層の生活を象徴する存在に。一方で平成の後半になると時代の変化を受け、従来ながらの「格式」だけにとらわれない、若々しい仕様「アスリート」が登場し人気となる。

【令和】自動車社会の変革期 これからのクラウンは?

平成30年から販売されている15代目クラウン。

 一般ユーザーのセダン離れが進むなか、その存在意義を求めてよりプレミアムな仕立てとなる一方、躍動的な雰囲気を強調していく。格式の高いセダンというよりは、新時代のオーナーカーの姿を模索。タッチパネルディスプレイなど、時代を先取りするデバイスも積極搭載。

[インテリア]保守的どころか革新的

 クラウンといえば保守的なセダンというイメージを持たれがちだが、実際はそうではない。たとえばインパネは2012年発売の先代がタッチパネル式の車両設定コントローラーを時代に先駆けて搭載したのに続き、現行モデルはダッシュボードに2つの大型ディスプレイを組み込むなどトヨタのなかでも先進的な仕立てとなっている。また、シートがフカフカだったのも過去の話だ。

 先代モデルから、フロントシートの着座位置はスポーティな感覚を求めて低めに設定。ハイブリッドでも、トランク容量はガソリン車とほぼ変わらず実用的な広さだ。

 ディスプレイは奥側が表示専用で8インチ。手前側は操作も兼ねる7インチのタッチパネル式で、ドライバーから手の届きやすい位置にあるのも美点。メーターは目盛りを立体的に浮かび上がらせた表示に先進性を感じる。前席用ドリンクホルダーは底が昇降式で、見た目もスマート。

[メカニズム]ハイブリッドをラインアップ

 パワートレインの主力はハイブリッドで、ガソリンエンジンは2L4気筒ターボだけの設定としている。プラットフォームは刷新されて、トヨタの最新設計となるFR用プラットフォームへと進化。レクサスLSなどと基本設計を共用するものだ。走行性能が大きく引き上げられたのも特筆すべきポイントで、ドイツの過酷なサーキット「ニュルブルクリンク」でも走行テストを実施。

CHASSIS

 車体は全面新設計。ハイブリッドは2タイプあり、エンジンは2.5Lの4気筒と3.5Lの6気筒。前者は燃費重視、後者は良好な燃費でありながら高い動力性能を誇る。

TOYOTA SAFETY SENSE

第2世代の「トヨタ・セーフティ・センス」と呼ぶ先進安全システムを採用。衝突被害軽減ブレーキは夜間の歩行者や昼間の自転車も検知できるように進化している。

コネクティッドでカーライフはこう変わる

 クラウンは全車に通信機能を内蔵。オーナーのスマホとつながって、離れた場所でもスマホ経由でナビゲーションの目的地設定やドアロックの確認などができるほか、緊急時に救急車などの手配をサポートする「緊急通報システム」も利用できる。

[先代モデル]大胆な形状のフロントデザインが話題に

 2012年12月に発表された14代目クラウンは、バンパーにまで飛び出した巨大なグリルの大胆さが話題になった。伝統的な上質タイプの「ロイヤル」シリーズと若さを強調するスポーティな「アスリート」で展開。4気筒エンジンのハイブリッドや、排気量2L4気筒ガソリンターボエンジンが設定されたのもトピックだ。ピンク色の限定車も登場。
中古車参考価格帯:280万円~570万円(12年~18年 ※全グレード)

インパネには2つタッチパネルディスプレイを装備。下側のディスプレイはエアコンの詳細や車両の設定などをコントロールする。室内は大人4人がくつろげる。

[市場データ]根強い高値安定傾向で買い時はもうしばらく先

 左表からもわかるとおり、年式による価格差よりも、グレードによる差のほうが大きい。しかし、いずれも新車時からの値落ちは少なく高値安定傾向が続いている。登場から丸2年以上経過しているが、意外と多走行な物件も目立つ。これらは価格が低めなので要注目。

  • 年式
    デビュー年となる2018年式が最も多く、その次に2019年式が豊富。各年式ごとの相場の差はそれほど大きくない。

  • グレード
    エンジン別に見ると全部で3つに分けられる。最も豊富なのが2.5Lハイブリッド車で、全体の52%を占める。逆に2Lターボが少ない。

  • 走行距離
    デビューから丸2年が経過し、1万km以上の割合がかなり増えてきた。低走行な物件から多走行車まで、ある程度選べる余地がある。

自動車ジャーナリスト工藤貴宏の「トヨタ クラウン GOODとBAD」

【GOOD】クラウンの概念を覆す運転する楽しさ

 最も注目したいポイントは従来のクラウンのイメージを覆す高い運動性能。新設計のプラットフォームは能力が高く、峠道などでは気持ちよく旋回でき、高速道路では安定性が高いので驚くほど運転の疲労が少ない。パワートレインは、力強い加速が魅力の3.5Lハイブリッドがイチオシ。燃費を気にするなら2.5Lハイブリッド、価格重視なら2Lターボ。

【BAD】デザインの大胆変化は意見が分かれるところ

 ハードウェアとしてのクラウンの完成度は高く、これといって指摘するほどのウイークポイントと思えるような部分は見当たらない。ただ、個人的には気にならないが、従来のクラウンのユーザーのなかにはスポーティになったスタイルに対して、かつての威厳を失ったと考える人もいるかもしれない。とはいえ、これは好み次第だろう。

編集部イチオシ!

ハイブリッド RS アドバンス

 ブラック塗装のグリルなどスポーティな外観かつ走行性能も磨いた「RS」シリーズ。「RSアドバンス」は電子制御サスペンションなどを組み合わせた最上級仕様で、すべてのパワートレインが選べる。

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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