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輸入車[2020.06.01 UP]

【試乗レポート アウディ A8】自動運転「レベル3」の先進機能で高級セダン市場をリードする

アウディ A8 55 TFSIクワトロ

文●工藤貴宏 写真●澤田和久、内藤敬仁

 ライバルとどう差別化するか? アウディ「A8」のまわりにはメルセデス・ベンツ「Sクラス」をはじめとする強力なライバルがあり、成功のガギとなるのがライバル以上の魅力をどう作り出すかといっていい。そういう視点で見ていくと、A8の狙いがよく理解できる。

 A8は初代のデビューから四半世紀がたち4世代目となった。フルモデルチェンジではスタイリングも大きく変わったが、それ以上に世の中を驚かせたのは投入された先進テクノロジーの数々だ。アウディが誇る先進技術を惜しみなく投入し、さながら“先進技術のデパート”である。
 おさらいしておくと、このA8のライバルはメルセデス・ベンツSクラスをはじめ、BMW「7シリーズ」、そしてレクサス「LS」やキャデラック「XT6」など世界中のプレミアムブランドが誇るフラッグシップセダン。各ブランドの象徴ともいえる存在だけに、いずれも最高峰の技術が投入されているのは言うまでもない。しかし、そのなかでも新型のA8はハイテク面において抜きんでた存在といえるだろう。

この記事の目次

量産車世界初となる「ライダー」をはじめ、合計23ものセンサーを搭載
日本では世界に先駆けて2020年4月から自動運転「レベル3」が走行可能に。今後が期待される
48Vシステムを活用してさらなる高性能と安全性を追求
ボディ骨格にはアルミをベースにカーボンやマグネシウムを組み合わせる
4輪操舵システムにより街中でも巨体を感じさせない
パワートレインの味付けはスムーズで上質だが淡白とも感じられる
世界をリードする自動運転技術で勝負を挑んできたA8

量産車世界初となる「ライダー」をはじめ、合計23ものセンサーを搭載

量産車として世界ではじめて自動運転「レベル3」に対応

 ハイライトと言えるのは、最新鋭かつ市販車においては世界最高峰といえる運転補助システムだ。フロント、サイド、リヤに備えた合計12個の超音波センサー、360度を映す4つのカメラ、5つのミリ波レーダー、フロントカメラ、そしてフロントのレーザースキャナーなど最大で合計23個(アシスタンスパッケージ選択時)ものセンサーを搭載。驚くほどの数で、ここだけをみても「世界をリードしてやろう」というアウディの気迫が伝わってくる。
 なかでも世界を驚かせたのは、量産車としては世界初搭載となるレーザースキャナーだ。これは“ライダー”とも呼ばれ、赤外線を投射することで、対象物までの距離やその形状を3次元の立体として把握。道路や先行車の状況など、クルマの前方がどんな状態にあるかを、正確に認識することができるユニットだが、そのコストは数十万円とも噂されている。その採用は自動車業界に衝撃を与えたと言っていいし、驚くべき決断だ。
 その狙いは明確で、量産車世界初の“自動運転”の実現にある。自動運転の段階は一般的に5つに区分されているが、A8がもくろんでいるのは特定の状況下でドライバーが運転操作から解放される「レベル3」。ドライバーやアクセルやブレーキ、そしてハンドルなどの操作をしないだけでなく、前方を中止する必要もないからテレビなど動画の視聴やスマホ操作も可能してくれる。

日本では世界に先駆けて2020年4月から自動運転「レベル3」が走行可能に。今後が期待される

A8にはドライバーが運転操作から解放される自動運転「レベル3」を実現可能なハードウェアが搭載されている(写真:アウディ)

 ただし、残念ながら今はせっかくの宝も封印されている。現時点では世界のどこでもその機能を使うことができないのだ。なぜなら、法規が追い付いていないから。「使える機能ではないのに大きなコストを顧みず搭載した」というのも、よくよく考えてみれば凄い話だ。
 とはいえA8発売後の2020年春には、日本が世界に先駆けて(特別な許可を得た実験ではなく)市販の自動運転車が道路上を走るための法律を整備。その基準を満たしたうえで認可を取得すれば、公道上でレベル3の自動運転をおこなえる段階となっているから期待したい。
 また、自動運転とまではいかなくても、その高いセンシング能力を生かしてハイレベルな自動車速管理(渋滞時も含めドライバーのアクセル/ブレーキ操作を不要とするアダプティブクルーズコントロール)やステアリング操作アシストを実現。実質的にハンドルに手を添えているだけで“ほぼ自動運転”の世界を味わえるのが魅力だ。たとえ自動運転を実現しなくても、ドライバーはA8の高い能力を知ることになるのである。

48Vシステムを活用してさらなる高性能と安全性を追求

電動フルアクティブ制御のサスペンションシステムとセンサーの組み合わせで、側面衝突時の安全性を高めるハイテク技術が採用されている(写真:アウディ)

 そして、世界を驚かせたもう一つのハイテクが、側面衝突に備えたリフトアップ機能だ。これは48Vと高電圧で作動する電動フルアクティブ制御のサスペンションシステムとレーダーやライダーなどのセンシング能力を組み合わせた画期的な側面衝突時の乗員保護機能で、側面からの衝突が予測されるとサスペンションが瞬時に車体を最大約80mm持ち上げる。そのおかげでドア部分ではなくサイドシルなどボディ強度の高い構造箇所で衝撃の大半を受け止めることで、キャビンの変形や乗員にもたらされる衝撃を大幅に吸収するアイデアだ。
 この対策は、もともとサイドシルの高いSUVには必要がなく、サイドシルの低いセダンだからこそ求められるもの。いっぽうで、自車の衝突回避性能がどれだけ高くなったとしても、相手からぶつけられるので避けられない側面衝突から乗員をどうやって保護するかは各メーカーの悩みどころでもある。その衝撃を緩和する先進アイデアの実現はさすがといっていいし、これも現時点ではアウディA8だけが備える仕掛けだ(アシスタンスパッケージ装着車で機能する)。

ボディ骨格にはアルミをベースにカーボンやマグネシウムを組み合わせる

 アウディスペースフレーム構造(ASF)はさらに進化。適材適所に素材を使い分けることで、高剛性、高強度を両立させている(写真:アウディ)

 アウディスペースフレーム構造(ASF)と呼ぶ、アルミを中心とした初代からの伝統的な車体構造ももちろん受け継がれている。ボディにおけるアルミ素材の比率は58%で、さらにはカーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)やマグネシウムなど多くの素材を組み合わせて頑丈かつ軽量なボディを実現。そんなこだわりの車体つくりもあって、A8の挙動はライバルとは一線を画するものだ。運転感覚に車体の大きさや重さを感じにくいのである。ひとことで言うと“軽快”。重量級の大型セダンなのに軽快という表現は一般的に考えれば当てはまらないのだが、軽やかな身のこなしはまるで小さなスポーツカーのような感覚。何を隠そう、これも初代から受け継がれている伝統だ。

4輪操舵システムにより街中でも巨体を感じさせない

 街中を走っていると、驚くほど小まわりが利くことに驚く。そこに一役買っているのがオプションの「ダイナミックオールホイールステアリング」と呼ぶ4輪操舵システムで、リヤタイヤが最大で5度曲がるのだ。リヤタイヤが曲がる様子は外から見ていてもはっきりわかるほどで、このおかげでSクラスや7シリーズよりも40〜50cmも短い5.3mという最小回転半径を実現している。その違いや取りまわしの良さは駐車場やUターンではっきりと体感できるので、ぜひ装着をおススメできる。また、コーナリングでの軽やかな挙動にも効いているのだろう。タイトコーナーではフロントタイヤと逆に切れてクイックな挙動を作り、中速域以上はフロントタイヤと同じ方向を向いて安定性を高める。

パワートレインの味付けはスムーズで上質だが淡白とも感じられる

55 TFSI クワトロは3.0LのV6ターボで340馬力/51.0kgmというスペック

 パワートレインは「60 TFSI クワトロ」が4.0LのV8ターボで最高出力460馬力、最大トルクは67.3kgm。いっぽうで今回試乗した「55 TFSI クワトロ」は3.0LのV6ターボで340馬力/51.0kgmというスペック。“60”に比べると“55”は見劣りするものの、とはいえ出力的にはかなりのもの。“60”の強烈な全開加速に対し、“55”は滑らかだけど気が付けばかなりの速度になっているという印象の加速フィールだ。
 昨今のアウディは「Sモデル」や「RSモデル」を除けば、パワートレインの味付けはダイナミックさよりも機械としての完成度を感じさせるもの。「55 TFSI クワトロ」も同じで、1370rpmという低い回転域から極太の最大トルクを発生することで実用的としつつ、高回転での盛り上がりや官能性は持ち合わせていない。俊足でありつつも猛烈な加速感や盛り上がりはなく、リニアかつ滑らかに速度が増していくのだ。あくまで存在を声高に主張するのではなく、縁の下の力持ちに徹しているといっていい。走りを楽しむなら少し不満が残るが、道具と考えればきわめて理にかなった特性に仕上げてあると断言できる。
 だからその評価は、A8とどう接するかで大きく変わるはず。もしも移動のための完成度の高いセダンと考えれば最善のパートナーとなるだろうし、スポーティなドライバビリティを求めるなら物足りないと感じるかもしれない。おそらく、ハイエンドセダンを購入する多くのユーザーにとっては前者だろう。

世界をリードする自動運転技術で勝負を挑んできたA8

 冒頭で触れたように、このクラスは世界の頂点を極めるサルーンである。王者であるSクラスは伝統と格式、そして圧倒的な豪華装備や世界最高峰の先進安全装備が自慢。最大のライバルである7シリーズはサーキットでも通用する優れた走行性能を誇り、とことん走る歓びにこだわり続ける。いっぽうで新しいA8は世界をリードする自動運転技術で勝負を挑んできたというわけだ。
 軽快なハンドリングを楽しむとともに、安全性能が高く、自動車の近未来を味わえる。それが新しいA8の世界観といえるだろう。なかでも先進性を実感したいなら、A8はライバルと比べても魅力的な選択肢となる。

 

アウディ A8 55 TFSI クワトロ(8速AT)データ

■全長×全幅×全高:5170×1945×1470mm
■ホイールベース:3000mm
■トレッド前/後:1635/1625mm
■車両重量:2040kg
■エンジン:V6DOHCターボ
■総排気量:2994cc
■最高出力:340ps/6400rpm
■最大トルク:51.0kgm/1370-4500rpm
■サスペンション前後:ウィッシュボーン
■ブレーキ前後:Vディスク
■タイヤ前/後:255/45R19

グーネット編集部

ライタープロフィール

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クルマの楽しさを幅広いユーザーに伝えるため、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど 様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。 みなさんの中古車・新車購入の手助けになれればと考えています。

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