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更新日:2019.08.22 / 掲載日:2019.07.04

メルセデス・ベンツが初の電気自動車「EQC」を発表。価格は1080万円から

メルセデス・ベンツ EQC

文と写真●ユニット・コンパス

 メルセデス・ベンツ日本株式会社は同社初の電気自動車「EQC」を発表。「EQC」は2基のモーターを搭載するSUVタイプの乗用車で、80kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載することで、航続距離400km(WLTCモード)を実現している。「メルセデス・ベンツ オンラインストア」を通じて7月18日午前11時から先着順で商談予約を開始。

EQCの価格は1080万円。バッテリー保証は8年または16万km以内

EQCが搭載するリチウムイオンバッテリーには8年または16万円kmまでの保証が付帯する

 「EQC」の価格は、「EQC 400 4MATIC」が1080万円。そして、日本での発売を記念して設定された特別仕様車「EQC Edition1886」が1200万円で55台の限定販売となる。「Edition1886」という名称は、メルセデスが1886年に世界で初めて誕生させたガソリンエンジン車にちなむものだという。
 なお、EQCの価格には、手厚いサポート体制とサービス「EQケア」が含まれるのも特徴で、新車保証(一般保証修理、定期メンテナンス、24時間ツーリングサポート)は通常3年のところ、5年間または10万kmのいずれか早い方まで無償で提供される。さらに、電気自動車として心配されるバッテリーの劣化についても、8年または16万円kmまで保証。サービス工場の診断機によってモーター駆動用の高電圧バッテリーの残容量が70%に満たない場合に特別保証が適応される。
 さらに、「EQケア」の期間内であれば、希望のメルセデスをレンタルできる「シェアカー・プラス」を5回まで利用する権利が与えられる。

「EQ」はメルセデスにおける電動モビリティを包括するブランド

EQCの開発リーダーであるミヒャエル・ケルツ氏が来日しプレゼンテーションを行った

 メルセデスミー東京にて行われたEQCの発表会。プレゼンテーションに登壇したメルセデスベンツ日本株式会社 代表取締役社長の上野金太郎氏はEQCを導入した背景として、ダイムラー社の電動化戦略について次のように紹介した。
 「EQCは日本におけるメルセデスベンツ初の電気自動車です。ダイムラー社は2016年に中長期戦略CASEを発表しました。CASEは自動車業界の今後の方向性を示すキーワードで、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared&Services(シェア・サービス)、Electric(電動化)の頭文字となります。そしてCASEのE、すなわち電動化を推進するために立ち上げたのが、電動化モデルを包括するブランド『EQ』です。『EQ』とは、Electric Intelligenceを意味しており、電気自動車だけでなく、燃料電池車やプラグインハイブリッドなどの電動モデルに加え、電動化に伴う新技術、インフラ、関連サービスなどを包括しております。現在、ダイムラーのパワートレイン開発は、お客様のニーズや使用用途に応じ、全方位かつ多岐にわたっています。今後は、ガソリンやクリーンディーゼルの開発を進めつつ、さらに電動化を加速させていきます。具体的には、ダイムラー社は2022年までに10モデル以上の電気自動車を発表、2030年までにEQブランドの販売比率を50%以上にしていくとしています。日本においてもEQブランドモデルを順次導入していきます」
 発表会ではEQC開発責任者であるダイムラー社からミヒャエル・ケルツ氏によるプレゼンテーションも行われた。以下は氏のプレゼンテーションを要約した内容となる。

 EQCのエクステリアデザインとインテリアデザイン

EQCのデザインは今後のEQモデルへと受け継がれる

 EQCのエクステリアデザインは、SUVおよびSUC(クーペライクSUV)のレンジに当てはめてデザインされたもの。デザインの過程で重要視されたのは、メルセデス初の電気自動車としてEQブランドのために新しいデザイン語法を生み出すことだったという。その象徴がフロントマスクで、左右のヘッドライトをつなぐように光ファイバーのチューブを用いたデイタイムドライビングライトが配置されている。プロポーションはSUVとSUCの中間で、ルーフラインはリヤに向かって緩やかに降下するラインを描く。そして、クリーンかつシームレスなリヤビューには内部にチューブ状のテールランプを使うことで、ワイド感と先進性を表現した。

  • EQCのデザインにおけるポイントと説明されたフロントマスク

  • EQCのデザインはクリーンかつスムーズ

 EQCのMBUXには専用のテレマティクス機能も採用

MBUXを搭載。EQC専用のコマンドや機能も追加されている

 2枚の10.25インチディスプレイを中心としたインフォテインメントシステムは、対話型インターフェイスMBUXを採用することで利便性を追求。 MBUXについてはEQC固有の機能にも対応するようプログラムをチューニング。充電ステーションを探すなどといった機能にも対応している。
 さらに、EQC専用のテレマティクスとして「EQオンラインナビゲーション」を採用。これは、車両のバッテリー残量や道路の勾配、充電ステーション、天候などを考慮してルートを設定するというもので、途中充電が必要な場合にはそれを表示、その際に充電器の利用状況も表示するというもの。
 また、車内の空調を出発前にあらかじめ最適化しておくことでエアコンによるバッテリーの消耗を抑える「出発時刻・プリエントリークライメートコントロール」の設定、充電ステーション情報、エナジーフローや電費といった各種インフォメーションの表示、最大充電電流の設定が可能となっている。

  • EQCのラゲッジスペースは標準状態で約500L

  • EQCのプラットフォームはGLCを基にしている

EQCの航続距離はWLTCモードで400km

EQCは一般的な使用方法であれば350km以上の航続距離があるという

 電気自動車の利便性を決定づける航続距離については、WLTCモードで400km。ミヒャエル・ケルツ氏によれば実際の利用シーンでも350から360km程度とのこと。パウチ式を採用したリチウムイオンバッテリーの容量は80kWhとなっている。

EQCの充電システムは普通充電に加えてCHAdeMO方式による急速充電にも対応

EQCの発表に合わせて公開されたメルセデス製の自宅充電用ウォールユニット「Home」

 充電システムについては、日本仕様では普通充電に加えてCHAdeMO方式による急速充電にも対応。普通充電による充電時間は約13時間、急速充電では約80分というスペック。EQC購入者には、充電サービス「Mercedes me Charge」が提供され、日本全国で約21000基存在する充電サービスの利用が1年間無料となる専用カードが贈られる。
 また、EQCの発表に合わせてメルセデス製の自宅充電用ウォールユニット「Home」も公開された。出力は最大6.0kW(30A)でプラグの形状は「タイプ1」を採用。IP55に準じる防水性能を備え、小型かつ充電ケーブルがユニットに繋がれているのが特徴。なお、同じ「タイプ1」を採用している電気自動車であれば、メルセデス製以外にも対応する。この「Home」は、2019年にEQCを購入したユーザーについては本体を無償提供、設置費用についてもメルセデス・ベンツ日本からサポートが受けられるとのこと。

EQCはパフォーマンスにもこだわり0-100km/h加速は5.1秒

2基のモーターを搭載するEQCの総合最高出力は408馬力で最大トルクは765Nm(78.0kgm)

 EQCはフロントとリヤそれぞれのアクスルにモーターを搭載。総合最高出力は408馬力で最大トルクは765Nm(78.0kgm)。駆動方式は4WDだが、状況に応じて前後モーターの出力をマネジメントしており、0-100km/h加速は5.1秒、最高速度は180km/hで制限される。基本的には前輪をベースにトラクションやパワーが必要な際にはリヤの出力を高めるセッティングだという。また、前後両方のモーターを回生用のオルタネーターとして活用する設計で、これにより回生ブレーキの効果を高めた。これはステアリング裏のパドルによっても4段階にコントロール可能だ。

EQCは安全性能についても最高レベルを目指した

EQCでは安全性についても電気自動車ならではの厳しい基準を設定し開発が行われた

 電気自動車ならではの安全対策として、リチウムイオンバッテリーのクラッシュセーフティについて重点的に開発を行ったとミヒャエル・ケルツ氏。単体でのテストに加え、車両に搭載した状態でのクラッシュテストも実施。事故の程度に応じて走行用の高電圧バッテリーを遮断することで、感電しないように作られている。さらにSUVタイプのクルマであることを考慮に入れてラフロードでの走行も視野に入れての開発となった。
 Sクラスに匹敵する内容だという先進安全機能についても解説が行われた。一例として歩行者との衝突を回避するようステアリング操作をサポートする「緊急回避補助アシスト」、先行する車両が障害物を避けて目の前に障害物が突然現れたときや渋滞で低速走行している先行者にも機能する「アクティブ・ブレーキ・アシスト」が紹介され、高い安全性を備えていることがアピールされた。

「本物のメルセデスを電気自動車で実現する」。開発エンジニアによるEQC開発秘話

EQCの開発プロセス

 メルセデスにとって初めての電気自動車ということもあり、ミヒャエル・ケルツ氏からはEQCの開発プロセスについても解説があった。それによれば、ダイムラー社は2009年に電動化モデルの開発検討を開始。2014年に電動化のためにプラットフォーム「EVA1」を策定し、コンセプトデザインである「GLX F CELL CONCEPT」を発表。そして翌年となる2015年4月に取締役会にてプロジェクトが承認され、その後4年間の開発期間を経て2019年6月に欧州市場での発売となったと紹介。
 「開発にあたっては、“本物のメルセデス”をつくるために、最適なスタッフを集めました。これまでEVの試作モデルを手がけてきたエンジニアに加え、スポーティサイドの人材も確保したのです。それは、航続距離と運動性能の両立が大切だったからです。EQCではハンドリングやドライビングフィールも大切にしています。最終的にテストを繰り返し、チューニングを行うことでメルセデスらしいパフォーマンスを確保しました。そして、EQCは生産工程におても特徴があります。GLCに対して85%もの新しい部品を使いながら、同じ工場、同じラインで生産できるのです。ラインに追加されたのは、バッテリーを搭載するプロセスのみです。EQブランドは電気自動車の『EQ』だけでなく、最終的にひとつのファミリーになります。そこには、プラグインHVである『EQ POWER』、48VのマイルドHVシムテムを搭載する『EQ BOOST』も含まれます。すべてのお客様が適切な電動化モデルを選べるようにしていきます」と語った。

メルセデスのブランドアンバサダーに武 豊氏が就任

メルセデスベンツ日本株式会社 代表取締役社長の上野金太郎氏(左)とブランドアンバサダーに就任したジョッキーの武 豊氏(右)

 なお今回の発表会には新たに日本におけるメルセデス・ベンツのブランドアンバサダーとしてジョッキーの武 豊氏が登場した。メルセデスユーザーでもあるという武 豊氏は、「子供の頃からクルマに対する憧れがあり、そのなかでもメルセデスに対しては憧れを抱いていました。運転が好きで、日常的に自分でステアリングを握っています。レースで勝利した際にはクルマのなかで一人でガッツポーズを取ることもあります。EQCはフランス遠征のときにも見かけました。乗ってみたいですね。今年50歳になりましたが、今後ますます挑戦と進化を続け頑張りたい。メルセデスのアンバサダーに選んで頂いたことで、ますます頑張りたいという気持ちが強くなったので、皆さん応援よろしくお願いします」とコメントした。

メルセデスベンツ EQC 400 4MATIC (4WD・モーターによる無段変速)※諸元は欧州参考値

全長×全幅×全高 4761×1884×1623mm
ホイールベース 2873mm
パワートレイン 非同期モーター2基
バッテリー容量 80kWh
車両重量 2495kg
最高出力 408ps
最大トルク 78.0kgm
タイヤ前・後 235/50R20・255/45R20



 

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グーネットマガジン編集部

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