輸入車[2018.08.03 UP]

【試乗レポート・DS DS7クロスバック】合計3500kmもの長距離テストで実力を確かめる

DS7クロスバック グランシック

文●内田俊一 写真●ユニット・コンパス

 DSブランドのフラッグシップを担うDS7クロスバックが日本にも導入が開始された。今回はガソリンとディーゼルの2つのエンジンが設定されたので、早速ガソリンを2000km、ディーゼルを1500kmほど東北方面へテストに連れ出してみた。

テスト車の概要

 今回テストしたガソリンモデルは、上級グレードのグランシックにインスピレーション(インテリアのバリエーション)はオペラを組み合わせたもの。シートにはナッパレザーを使い、部分的にまだら模様を施したアートフィニッシュレザーをドア周りやインパネ周りに配することで、DSが持つアヴァンギャルドなイメージを強調している。

 エンジンは新開発の1.6L4気筒ターボのピュアテック225型。DS3パフォーマンスに搭載された208馬力バージョンをベースに、エギゾーストバルブにも可変タイミング機構を取り入れるとともにフリクションを低減。また、過給圧安定のため排気ウェイストゲートバルブを電動化した。さらにガソリンエンジンでも微粒子フィルタを備え、欧州排気ガス浄化基準6.2をクリア。最高出力225馬力/5,500rpm、最大トルクは30.6kgm/1,900rpmを発揮する。

 そしてディーゼルモデル。グレードはソーシックでインスピレーションはバスティーユと呼ばれるもの。シートはモケットでブロンズを全体のテーマカラーにデザインされている。ソーシックはいまのところディーゼルエンジンのみの設定で、インテリアもこのバスティーユしか選べない。

 搭載されるエンジンはこれまでPSAの多くのモデルにも採用されている2L4気筒ディーゼルターボのBlue HDi180で、最高出力177馬力/3,750rpm、最大トルクは40.8kgm/2,000rpmである。

 どちらも組み合わされるトランスミッションはEAT8と呼ばれる8速オートマチックで、これまで同様アイシンAWと共同開発になるもの。なお、PSAとして8速オートマチックは初採用となる。

 もうひとつ、グランシックとソーシックでの大きな違いはタイヤサイズだ。グランシックには235/45R20(テスト車はEAGLE F1 ASYMMETRIC 3のSUV用)、ソーシックは235/55R18(テスト車はオプションのミシュランLATITUDE TOUR HP M+S)を装着しており、これが乗り心地を含め大きく評価を分ける要因となった。

 なお、どちらにも今回話題となっているDSアクティブスキャンサスペンションは標準装備である。

ガソリンエンジンは新開発の1.6L4気筒ターボ

2L4気筒ディーゼルターボ

グランシックはアヴァンギャルドなインテリアだがその走りは……

DS7クロスバック グランシック

 ゆっくりとDS7クロスバックのドアを開け、室内に乗り込むと、意外と広々としたインパネ周りとともに、シフト周りに配されたパワーウインドウ等のスイッチが目に入る。ここには18世紀に考案されたギョーシェ彫りという金属加工模様が施されている。高級機械式時計の文字盤加工として光を抑えるためにブレゲが使い始めたといわれるものだ。見ている限りでは金属にしか見えず、実際に触れてみて初めて樹脂と気づくほどで、十分に目を楽しませてくれる。

 ひととおりスイッチなどのレイアウトを確認したのち、センタークラスター上部にあるスタート&ストップボタンを長押しするとエンジンは始動。同時にボタンの上からB.R.M.製のアナログ時計が顔を見せる。これはDS7クロスバックのハイライトともいえ、まさに所有欲をくすぐるアイテムだ。ドライビング中もこのアナログ時計が目に入るたびに魅力を感じてしまった。ただし残念ながらグランシックのみの装備でソーシックにはオプションでも設定はない。

インテリアバリエーションはオペラ

 軽くアクセルを踏み込み走り出してみると、Cセグメントとしては驚くほど静粛性が高いことに気付く。エンジン音はおろかロードノイズさえもはるか遠くから聞こえるイメージで、かなり上級なセグメントでもここまで遮音されているクルマは少ないだろう。この要因の一つはサイドシルまで回り込んだドア形状にある。これによりしっかりと遮音され、かつ、サイドシルが汚れなくなるため、乗降時にパンツやスカートのすそを汚さずに済むという大きなメリットも生んでいる。

 しかし、乗り心地に関しては決して褒められたものではない。これは20インチタイヤがオーバースペックであるためだ。大径化により見た目には格好いいのだが、いかんせんバネ下が重くなり少し荒れた路面ではバタバタと振動し、場合によっては少しはね気味になってしまうのだ。これはDSアクティブスキャンサスペンションが作動するドライブモードのコンフォートを選んでも変わらなかった。

 もうひとつこのタイヤの影響でボディ剛性の弱さが露見してしまった。とくにフロア周りで路面のざらつきや振動が足の裏に伝わってきてしまい、せっかく高級感を伝えようとデザインされたインテリアとはちぐはぐな印象を受けてしまった。

 ガソリンエンジンとトランスミッションのマッチングは極めて「普通」だ。パワフルすぎず、かといってアンダーパワーでもなくちょうどいいころ合いの出力特性を備えている。

 高速に乗り入れてみるとタイヤの影響はさらに顕著になる。継ぎ目や段差などでは直接体にそのショックが伝わりがちになるからだ。さらに、重心が少し高めなので、高速コーナーでは跳ねないかと不安を感じることもあった。本来、直進安定性は高いクルマなので、タイヤを変えるだけではるかに良くなるだろう。

すべてにおいてバランスの取れたソーシック

DS7クロスバック ソーシック

 こういった印象を持ちながらディーゼルのソーシックに乗り換えると、まったく別のクルマかと思わせるくらい乗り味が違った。駐車場から段差を超えて一般路に出た瞬間、サスペンションがスっと沈んで、しなやかさを感じさせるのだ。また、18インチになりばね下の重量がはるかに軽くなったことで、乗り心地も大幅に良くなった。

 落ち着いて観察すると本質的には足まわりは硬めで、場合によってはごつごつと突き上げられたり、バタついたりなど路面によっては感じられる。また、ボディ剛性、とくにフロア周りの弱さも感じることから、エンジンは違えどボディそのものは変わっていないということがわかるが、気になる頻度ははるかに少なく、それほどタイヤによる影響が大きいことがわかる。

 こういった印象は18インチにサイズダウンし、かつオプションのM+Sタイヤがもたらしているのだが、同時にモケットシートも影響している。ナッパレザーシートは確かに豪奢でDS独特のウォッチブレスレットをモチーフとした模様などは魅力だが、若干硬めな印象。それと比較しモケットは張りがありながらも柔らかく、しっかりと体をホールドしてくれ、シート全体でもショックを吸収してくれるのだ。

 高速ではこの印象がさらに高まる。多少落ち着きのない動きはするものの、十分に快適な乗り心地を提供してくれる。ここでいちばん驚いたのは、直進安定性だ。グランシックでもある程度感じていたのだが、ソーシックではその印象がさらに強まり、ステアリング操作による修正をほとんど必要としない。その証拠として、きちんとハンドルを握っているにもかかわらず、直線ではクルマ側から「ハンドル操作をしてください」と警告が出るほどだといったらお分かりいただけるだろうか。やはりこのクルマは18インチをベースに設計しているのだろう。

 こちらもエンジンとトランスミッションは違和感なく十分に実用に耐えうるものだ。ガソリンよりもトルクフルなので、街中でも高速でもより乗りやすく感じた。どちらのエンジンも大きな主張はしてこないので、SUVとしてのクルマの性格に合っているといえよう。

先進的な「DSアクティブスキャンサスペンション」だが、過度な期待は禁物

レポーターは農場で有名な岩手県の小岩井を訪れた(写真:内田俊一)

 DS7クロスバックの全グレードに搭載されているDSアクティブスキャンサスペンションは、フロントガラス上部のマルチパーパスカメラが前方5mから25mまでの路面を常時ハイスピードスキャニング。映像解析により路面の10mm以上の凹凸を把握する他、様々なパラメータを駆使し四輪すべての可変ダンパー内のオイルの流れをソレノイドバルブで最適化。フラットな乗り心地を提供するものだ。これはドライブモードのコンフォートを選択することで作動するが、夜間や大雨、雪などの天候では作動せず、またオンオフの切り替えは自動でドライバー自らが行うことはできない。

 では実際に体感してみてどうか。まずノーマルとコンフォートの差はノーマルのほうが硬めで、コンフォートのほうがしなやかというより柔らかめ。段差などを超えるとノーマルのほうが角を感じるが、もちろん不快さはない。その差もスイッチを何度も切り替えることで気づく程度の差異だ。さて、コンフォートモードでDSアクティブスキャンサスペンションが作動している状態とそうでないときの差についてだが、正直そこは感じ取ることができなかった。
 高速道路や荒れた路面などあらゆるシーンで昼と夜とで乗り比べたのだが、ほとんど感知できないレベルなのだ。確かにそこで大きな差があれば昼夜で乗り心地が変わりそれはそれで問題となるのだが。そうはいっても確実に働いているであろう昼間の乗り心地はフラットライドというレベルにまでは残念ながら到達しておらず、ただ柔らかいかなというもので、逆に強い突き上げなどは明確に体に伝わり、また1度でショックが収まらないこともあり、ダンピング不足を感じてしまった。

 高速道路においてその柔らかさは顕著に感じられ、重心の高さと相まって若干の不安も感じたので高速ではノーマルモードをお勧めしたい。

 因みにデフォルトはノーマルで、どのドライブモードに入っていたとしてもエンジンを一度止めると必ずノーマルモードに戻る仕組みだ。コンフォートモードでテストして、一度エンジンをストップさせた後、再び走り始めた時、うっかりノーマルモードのまま気付かずしばらく走り続けることもたびたびあった。そのことを踏まえると、コンフォートは廃止してノーマルモードとDSアクティブスキャンサスペンションの組み合わせのほうが理にかなっているようにも思う。

運転支援システムは充実しているので、あとは細かなチューニングに期待

 近年のクルマは運転支援システムが充実してきているが、それはDS7クロスバックも例外ではなく、DSコネクテッドパイロットと呼ばれる機能が採用されている。これは同一車線において加減速とステアリング操作をサポートし、アクティブクルーズコントロール(以下ACC)とレーンキープアシスト(以下LKA)を統合したものだ。
 また、車線内では中央に限らずドライバー任意のポジションを保持するレーンポジショニングアシスト機能(以下LPA)も備えている。またACCはトラフィックジャムアシストも付加され、一旦停止後先方車両が3秒以内に再発進すればアクセル操作なしで再び前車追従することが可能となっている。もうひとつ、ナイトビジョンもグランシックには装備された。

 このシステムを高速道路と渋滞時に活用してみた結果、基本的な性能は有しているものの、細かい点で気になる部分がいくつか見えてきた。まずACCとLKA、LPAの組み合わせは、緩いコーナー程度であれば十分レーンを読んでステアリングをアシストしてくれる。

 しかし、まずACCに関しては、前車追従時、微妙な減速においてもブレーキを使うため頻繁にストップランプが点灯してしまうのだ。後続車からすればかなり鬱陶しいはずで、こちらとしても気になり、そういうシーンではついつい解除してしまっていた。

 また、LKAに関してはかなり介入が強引で、その傾向は20インチを履いたグランシックのほうが強く、一般道も含め頻繁にステアリングに介入し、そのためよりしっかりとステアリングを握らなければならず、テスト後半はスイッチをオフにして(単独でオフにできる)、高速ではACCとLPAで走行した。18インチのソーシックではこの傾向はほとんど感じなかったことを踏まえると、20インチとLKAとの相性が今一つだったようにも思われる。

 本来こういった機能はドライバーを疲れさせないものであり、何らかの危険回避に有効な手段なのだが、それを解除したくなるというのは本末転倒。特にACCは他のPSAのモデルも同じ傾向なので、ぜひ、早めの対応を期待したい。

居住性は満足

 取りまわしや使い勝手についても触れておこう。デザインを優先したため斜め後方の視認性は決して高いとはいえないが、その分カメラやセンサー類が充実しているため、車線変更や駐車時などで苦労することは少なかった。ただし、ドアミラーに関しては近年多くなったドアから生えるものではなくピラーから生えているものなので、気になる死角が発生し、特に右折時は体を動かして歩行者等の確認が必要である。

 また、ハザードスイッチがセンタースクリーン下のタッチセンサー右端に配されているのだが、ちょうどステアリングに隠れてしまうため、ブラインドタッチがしにくく、誤操作を招きかねない。安全性にも関わることなので独立した位置に配置してほしい。

 もうひとつ、ダイヤル式のステアリングスイッチについて。使いやすさは十分に備えているのだが、機能が左右逆な印象なのだ。具体的には左のスイッチはメータースクリーン右側にメニューが表示されメーターのレイアウトが変更できるもの。そして右はラジオのチューニングができるものだ。しかし、左のスイッチの下にボリュームボタンがあること、また、左の操作でメーターの右側を見るというちぐはぐな動きを強いられるため、逆の配置が望ましく感じた。

 居住性は適度な包まれ感を持っており、快適な空間が提供されている。そこにDSならではのデザインが各所にちりばめられているので、所有欲を満足させてくれるだろう。また、リアに関しても座面が少し短いことを除けば、座り心地も上々だ。さらにフロアがフラットなので、足元も広々としており快適であった。

ガソリンは満足、ディーゼルはいま一歩の燃費

宮城県の沿岸に位置する気仙沼は、自然に恵まれた景勝地(写真:内田俊一)

 燃費についてだが、グランシックのガソリン、ソーシックのディーゼルを順に記すと、混んだ街中では9km/Lと10.1km/L。空いた郊外路などでは13.1km/Lと13.5km/L。高速道路では13.8km/Lと16.4km/Lだった。街中や郊外路で差があまりつかなかったのはM+Sの走行抵抗が大きかったからだろう。

 この結果を踏まえ、最近商品改良された同セグメントのマツダCX-5のWLTCモードと比較してみよう。同様にガソリン、ディーゼルの順で市街地は10.2km/Lと13.6km/L、郊外は13.4km/Lと16.5km/L、高速では14.6km/Lと18.6km/Lである。もちろん重量や排気量など加味しなければいけないが、ざっくりとこの結果を見る限り、DS7クロスバックのディーゼルに関してはもうひと頑張りしてもらいたいと思う。

ベストチョイスはソーシック

 DS7クロスバックは、多くの強豪の中で、とくにデザイン面において魅力を発揮する1台だ。したがって、かなりの好き嫌いが生じ、だからこそ、とがった1台に仕上がったといえる。マーケティング面においていくつかの比較車両は上がってくるが、多くのユーザーはDS7クロスバックのデザインが気に入ったから買うだろうし、その点で間違いはない。ただし、そこで迷うのはどのエンジン、どのグレードにするかということだ。

 じっくりとDS7クロスバックを長距離試乗してみてのベストチョイスはソーシックとしたい。確かにグランシックのインテリア、とくにオペラは魅力的だ。何よりB.R.M.のアナログ時計は捨てがたく、これだけでグランシックをチョイスしたくなる。しかし、そうすると必然的に20インチタイヤが装着されてしまうため、乗り心地が悪化してしまい、せっかくエレガントなDS7クロスバックに乗っている気分が味わえず、また長距離ドライブでは疲れを誘発しかねないのだ。

 一方ソーシックはモケットシートではあるものの、ブロンズをモチーフとしたカラーでちょっとしたきらびやかな雰囲気で、そのシート自体も前述の通りよくできたもの。そしてもうひとつソーシックでしか選べないオプションがあるのだ。M+Sタイヤとセットオプションになるのだが、プジョー2008や3008に採用されているグリップコントロールだ。基本的にはFFではあるものの、このグリップコントロールの走破性はかなり高いので、魅力的な選択肢になりえるだろう。

 そういったことを踏まえると必然的にソーシック(ディーゼルのみ選択可能)となるのだ。残念ながらB.R.M.のアナログ時計は選べないのだが・・・・。


DS DS7クロスバック グランシック(8速AT)


全長×全幅×全高 4590×1895×1635mm
ホイールベース 2730mm
トレッド前/後 1625/1605mm
車両重量 1570kg
エンジン 直列4気筒DOHCターボ
総排気量 1598cc
最高出力 165ps/5500rpm
最大トルク 30.6kgm/1900rpm
サスペンション前/後 ストラット/マルチリンク
ブレーキ前/後 Vディスク/ディスク
タイヤ前後 235/45R20

販売価格 469万円〜562万円(全グレード)




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