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更新日:2018.11.26 / 掲載日:2018.04.11

メカニズム進化論 サスペンション編 アクティブ制御への進化

自動車が開発されて以来、様々な形式のサスペンションが考案されてきたが、減衰力をアクティブ制御したり、油圧や空気をスプリング代わりに用いるサスペンションも登場した。

電子制御サスペンションの登場

 サスペンションに電子制御を持ち込み、走行状態、路面の状況に合わせた最適な乗り心地やアジリティ、スタビリティが得られるものも一部のクルマに採用されてきた。
 制御方式は大きく3つに分類される。1つめはショックアブソーバーの減衰力を調整するもの、2つめがスプリングの代わりにエアチャンバーを採用し、走行性や乗り心地を向上させるもの、そして3つめが油圧を用いてサスペンションをアクティブコントロールするものだ。
 1983年、トヨタが最初にこの分野に電子制御を持ち込んだ。TEMS(Toyota Electric Modurated Suspension)と名付けたものを開発し、ソアラに搭載した。減衰力の調整モードはオート、スポーツ、ノーマルの3種類があり、オートモードでは路面の状態、走行状況に合わせて、自動的にハードとソフトの切り替えが行われ、最適な乗り心地と走行安定性が得られた。減衰力調整は2段切り替え式のオリフィスとコントロールロッドを回転させるアクチュエーターによって行われた。

進化を続けたTEMS。AVS、カーナビとの協調も

  • 最初のTEMSの減衰力切り替えアクチュエーター。直流モーターでロータリーバルブを回転させた。ノーマル、スポーツ、オートの3モードが設けられた。

  • TEMSが初めて搭載されたのが高級グランドツアラーのソアラ。サスペンションだけでなく、当時の最先端を行くテクノロジーを満載したクルマだった。

  • TEMSのアクチュエーターはその後、2組の電磁石と永久磁石で構成されるものに進化した。通電状態を切り替えることで、30°ずつ5段階、回転させることができた。

  • 9段階に減衰力が調整されるAVSのロータリーバルブの構造。3か所×2のポートとスリットが設けられ、その回転角度によってオイル通路が変わり、減衰力が変化した。

トヨタAVSの構成パーツ。4輪のショックアブソーバーにアクチュエーターがセットされ、その作動のためのデータを得るためにGセンサー、ステアリングセンサー、車速センサーなどが設けられていた。

 TEMSはその後も進化を続け、ピエゾ素子を用いて路面からのショックを検知する方法を一時取り入れたり、電磁ソレノイドからステップモーターへの変更などが行われた。制御はアンチスクォート、アンチダイブ、アンチロール機能に加え、あおり制御、バネ下制震制御、ごつごつ感制御なども加えられきめ細かいものだった。
 車両安定制御システムVSCの開発に伴って、クルマの挙動に合わせて減衰力を最適なものにリアルタイムで調整できるようになった他、カーナビとの協調も行われるようになった。プレビュー機能の他に段差学習機能まで備え、道路状況や曲率に合わせて最適な減衰力が得られる。TEMSに起源を持つ電子制御ショックアブソーバーは今も多くのトヨタ車に採用されている。
 TEMSと同じような原理を採り入れたショックアブソーバーは他のメーカーでも採用され、1984年、日産が開発したスーパーソニックサスペンションなどがよく知られている。このシステムの大きな特徴は路面と車体の関係を検知する超音波路面ソナーを備えていたことだった。
 このような減衰力制御式ショックアブソーバーは今では多くのメーカー、多くの車種に採用され、スポーティ車、SUV、上級車の必須装備ともなっている。

スバル、日産などが開発。アクティブサスペンション

  • インフィニティQ45に採用された油圧アクティブサスペンション。上下Gセンサー、前後Gセンサー、車高センサー、車速センサーからの情報を基に、4輪のアクチュエーターに送る油圧が制御され最適な姿勢を保つ。

  • 鉄粒子を含んだ化学合成の炭化水素系流体が封入されたマグネティックライド。

  • ピストン内の電磁コイルに送る電流の制御によって流体が繊維状に整列し、粘性が変化する。粘性を連続的に制御することで減衰力の調整が可能になる。

  • ボーズがリサーチしたリニアモーター(電磁式アクチュエーター)を使う方式。電磁力で車体を支え、姿勢を制御するというもの。

  • VWトゥアレグに採用されたエアサスペンション。スプリングの代わりにエアチャンバーを持つが、減衰力調整式のショックアブソーバーが加わる。

 サスペンション全体を電子制御する方式も少数ながら開発され、実用化されてきた。代表的なのはエアサスペンションと油圧サスペンション。
 富士重工(スバル)は1984年に電子制御エアサスペンションを開発し、レオーネに搭載した。エアサスペンションそのものはサスペンション技術のブレークスルーでもなく、戦後の一部のアメリカ車や大型バスで実用化され、乗用車では初代センチュリーがフロントサスペンションに導入していた。しかし、スバルのそれは4輪、すべてにということで国産初、乗用4WDに導入したということでは世界初ということになる。
 エアサスペンションはその後、レガシィにも引き継がれ、また他のメーカーではセルシオ、クラウン、シーマ、セドリックなどの高級車にも採用されていく。 油圧を用いたアクティブサスペンションも開発された。代表的なものは1989年に日産がインフィニティQ45に搭載した油圧アクティブサスペンション。各輪にアクチュエーターを備え、電子制御された高圧ポンプによって、走行状態に応じた最適な車高、減衰特性が与えられた。この種のサスペンションではシトロエンのハイドロニューマチックがパイオニアとして知られているが、日産のそれはエレクトロニクスを介入させ、あらゆる領域できめ細かく制御するものだった。 変わり種も現れた。GMが2004年に開発したのが磁気流体感応技術を応用したマグネティック・ライド・コントロールで、最初にキャデラックのSTSに採用された。
 サスペンションそのものを電磁化する試みも行われた。音響メーカーのボーズが取り組んだもので、スプリングとショックアブソーバーの代わりに直立したリニアモーター(電磁式アクチュエーター)がセットされ、電磁力で走行中の車体を支え、姿勢を制御するというものだ。
 2つの新しいテクノロジーは、サスペンション技術のブレークスルーでもあったが、マグネティックライドはGMの他にアウディなどの一部車種に用いられているだけで、ボーズのそれは未だ実用化に至っていない。

提供元:オートメカニック



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グーネットマガジン編集部

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