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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.02

LFA初試乗! 官能のV10サウンドを聞け!! ストレートでは284kmに!

ショーモデルから大きく変わったフロントデザイン。大きな特徴はカーボンのフレームとボディだ

ショーモデルから大きく変わったフロントデザイン。大きな特徴はカーボンのフレームとボディだ

【本記事は2010年4月にベストカーに掲載された記事となります。】ある意味? 世界中の注目を集めてしまっているトヨタ。今はブランドイメージが失墜しかねない状況に陥っているが、いっぽうで世界の羨望の的となり得るレクサスLFAの発売もカウントダウンに入っている。2月末で日本国内振り分けぶんの165台の予約受注も終了しデリバリーの準備段階に入っているという。その値段3758万円。そんな高価なLFAに試乗することもなく買ってしまうお金持ちが今の日本にも160人以上いることがわかったことも驚きだ。そんな貴重なLFAにいよいよ日本国内で試乗できることとなった。それも一般道ではなくトヨタが静岡県袋井市に構えるヤマハ袋井テストコースで全開試乗が実現したのだ。

80km/h以上でリアからせり出すリアウイングにより300km/hにも達する高速でも安定感がある。40km/hを下回ると戻る設定だ

80km/h以上でリアからせり出すリアウイングにより300km/hにも達する高速でも安定感がある。40km/hを下回ると戻る設定だ

LFAには一昨年の独ニュルブルクリンク24時間レースにドライバーとして参加したため、試験車段階から数回乗車した。昨年秋にやはりニュルとその周辺で生産前提仕様にも試乗させてもらっている。今回はさらに最終に近い仕様で完成度が高められているという。 テストコースに着くとLFAが6~7台。試作初期から昨年のニュルのレース仕様までズラリと並べられている。世界限定たった500台と生産枠が決められているのに試験車両がいったい何台存在するのか。「全部完売しても商売としてはまったく赤字ですから」と棚橋CEは豪快に笑い飛ばす。

開発当初、V10が世界の潮流だった

超豪華なインテリア。ステアリングカーボン。パドルシフトにより、シングルクラッチの6速を操作する

超豪華なインテリア。ステアリングカーボン。パドルシフトにより、シングルクラッチの6速を操作する

いよいよ順番が回ってくる。さすがに560psのハイパワーマシンということで誰でも試乗オーケーというわけにはいかない。しかもまずはIS Fでコースの下見、慣熟走行を義務づけられるほどの念の入れようだ。コックピットに乗り込む。まずシートが昨秋の仕様よりさらに進化していることに気づいた。エンツォ・フェラーリと同じ伊メーカー製の電動バケットシートはホールド性に優れ感触もほどよい。どんな体形の人が乗っても最高の機能性を発揮する特殊な構造とデザインを採用している。眼前に配置されるステアリングは東京モーターショーの「豊田合成」のコーナーにも展示されていたからご覧になった方も多いだろう。150万円はするという中空のフルカーボンにグリップ部を赤いレザーで覆ってある。スポーク部にはメーター表示の切り替えスイッチやクルーズコントロールのスイッチが配される。ホイール下部は平らにカットされ真円ではないが重心はステアリングセンターにあり転舵時の慣性モーメントはゼロに設計されている。ローンチコントロールがあることは知っていたが、作動は禁止されていたのでおとなしくスタートした。4.8LのV10エンジンはスタート時の低速から驚くほどスムーズで以前より静かだ。とてもスーパーカーのエンジンとは思えないほどの扱いやすさ。もちろん2ペダルのイージードライブで、これならAT限定免許のビギナーや女性でも難なく走らせられてしまう。それがいいかは別としてだが。

エンジンは72度のV10で排気量は4805cc。最高出力は560ps/8700rpm

エンジンは72度のV10で排気量は4805cc。最高出力は560ps/8700rpm

なぜ今V10なのか。実はLFAの開発は2000年2月10日から始まっており、その頃はといえばトヨタはV10エンジン搭載の「TS020」でル・マン24時間レース総合2位を獲得。F1世界選手権にも参戦を表明した頃で「V10」は必然だった。同じ頃F1に参戦を始めたBMWもV10を世に出し、ポルシェカレラGTやランボルギーニガヤルドなどスーパーカー=V10の図式が成立した時期となった。トヨタの選択はその時点ではタイムリーなことだった。

乗るたびに性能は向上、市販車は?

話を戻すが、トランスミッションはシーケンシャルの6速。シングルの自動クラッチで、Dレンジ選択ならオートシフトの全自動走行が可能。ノーマルモードではゆっくり変速させショックをほぼ解消して滑らかに走る。スポーツモードにすれば1段ギアが高くなり、また減速時シフトダウンするプログラムも入ってくる。ステアリングのパドル操作でマニュアルシフトも可能だ。コーナーを目指しペースを上げ、マニュアル選択をシフトして走ると、レーシングカーのようで楽しい。コーナーをひとつふたつクリアしていくとステアリングの応答ゲインが昨秋より高められていることがわかった。ニュルでのレース参戦でロールケージ補強がハンドリングに好作用することが認められ、その効果の再現をシャシーチューニングで狙い、フロントサブフレームにクロスバーの補強部材が追加されていたのだ。高速でも低速のヘアピンでもステアリングを切り込むとノーズが敏感に反応する。ややオーバースピード気味に進入しても切り増せばアンダーを感じることなくクリアしていける。

中央に配されるメインメーターの左側に各種情報を呼び出せる

中央に配されるメインメーターの左側に各種情報を呼び出せる

通常これほどゲインを高めると動きがナーバスになってテールリバースを誘発しやすくなってしまうが今回の仕様ではリアの接地感も大幅に向上し前後バランスが保たれていた。VDIMが作動し、ヨーを一定に保つコントロールを完璧に制御する。試しに無理な姿勢に持ち込んでも、たちどころに安定姿勢に抑え込んでしまうのはさすがだ。ニュルではVDIMなしではとても走れなかったし、トラブルに見舞われた時もVDIMのおかけで事なきを得ていた。フロントミド、リアトランスアクスルのFRレイアウトのLFAなだけにVDIM解除ではドリフトファンなクルマになると思われがちだが、実はLSDがトルセンで拘束力が弱く、ドリフトコントロールはそれほど容易ではない。さらにVDIMの電制デフロック作用と併せて最大トラクションが発揮できる設定になっておりトータルな速さも損なってしまう。トヨタが常にVDIMをオンにしておくよう勧めるのはそのためだ。かつて鈴鹿で年に1回競われた日本グランプリの覇権を争うため、鈴鹿を模したコースとした袋井テストコースのS字ベントをレーシングカーのような速さで通過。スキッドアウトすることもなく正確なライントレースで駆け上がりホームストレートに戻り出る。約1kmの下りストレートを全開で駆け下りると速度計のデジタル表示はみるみる上がり284km/hを指し示したところでブレーキング。リアフェンダーにオプションとして追加されたリップスポイラーの効果かダウンフォースも増え安定感は圧倒的に高まっていた。欧州へ放たれれば相手はフェラーリやポルシェ、アウディA8、ランボルギーニガヤルドなど錚々たる顔ぶれ。実際彼らのアウトバーンでのアベレージスピードは250km/hは当たり前。そんななかでひとり手に汗を握っているわけにはいかない。ほかの誰よりも涼しい顔で超高速クルージングできるスーパーマシン。LFAが目指しているのはそんな崇高な領域であることがわかった。ところで日本向けはまだ一度も見たことがない右ハンドルとなり(今回試乗車は左ハンドル)、180km/hの速度リミッターが装着されるということだ。まあ、この超高性能を試すならサーキットしかない、ということだが今回ばかりはサーキットでリミッター解除するサービスを展開してくれるだろうことを願う。

世界のスーパースポーツのなかでLFAはどのくらい?

さて、今度は世界のスーパースポーツのなかで、LFAはいったいどのくらいなのか? 5項目にわたって徹底比較しよう。●ハンドリング フロントミドシップにリアトランスアクスルレイアウトでFRのLFAは前後重量配分が48:52となっていて理想的なパッケージングのひとつであることに間違いない。ドライサンプにして低くマウントされたエンジンにより重心も低い。加えてカーボンシャシーで軽量かつ高剛性である。 だが問題はサスペンションのセッティング。カヤバ製ダンパーは摺動部にダイヤモンドコーティングを施すなど超スペシャルな仕様。シャシー下部にはブレースバーを追加配置し剛性に徹底的に対応している。だが残念ながら、まだ他を圧倒するハンドリングレベルにあるとはいい難い。 しなやかなロードホールディングにともなう安定、安心感が不足気味で「意のまま操る感」が乏しい。GT-Rはダルなステアフィールとタイヤのスティックスリップ振動で質感に欠けるが他を寄せつけない速さで説得している。430はミドシップで動きは軽快だが、しなやかさが足りない。フラットな路面ではいいがアンジュレーションの大きな路面では接地感が落ちる。ガヤルド、ポルシェ、SLSはそのクラスとしてはパーフェクトに近い。●エンジンフィール(官能度) LFAのエンジンはスロットルバルブの動き、つまりドライバーのアクセル踏み込み量や速度を感知してプレマッピングしたロジック制御で燃料噴射を行なう。その結果アクセルに連動した鋭いレスポンスが可能。 4.8Lもありながら9000rpmという高回転の常用を可能とし560psもの最高出力を発揮している。静かでスムーズである点は恐らく抜きん出ているといえるだろう。 GT-Rは回転フィール自体はハンドリング同様ダルなものだが、速さで有無をいわさない。430はV8ながら官能的なサウンドを身上としており魅力的。ガヤルドのV10は音色がレースカーそのものでトルクのピックアップもよく扱いやすい。ポルシェもターボパワー&トルクで爆発的な勢いを感じさせる。直噴ターボで新世代を築いたといえる。SLSはAMG得意の6.3LV8でAMGらしい強大なトルクと優れたピックアップレスポンスで圧倒される。●動力性能 LFAのパワーウエイトレシオ(PW比)はわずか2.6kg/ps。これで0~100km/h加速は3.7秒以下、最高速度325km/h以上の公称値。各車求めてみるとほぼ数値的には拮抗していることがわかる。 この似かよった性能のなかで、いかにそれを引き出しやすく安定して発揮できるのか。LFAは2ペダルでイージードライブが可能。VDIMで電子制御しているため無用なホイルスピンは抑制され誰でも公表値を簡単に引き出すことができる。ある意味各車同様だがGT-Rやガヤルドなど4WD勢はさらに全天候性を併せ持つ。RRのポルシェも駆動輪に荷重が掛かりトラクションがいい。FRでトラクションに苦労しそうなのはLFAとSLSだがSLSは荷重が大きくエンジンの低速トルクのピックアップが優れているのでスタートダッシュはより強力だった。●デザイン LFAの全体的なデザインは魅力的だと思う。低くシャープなノーズ。ロングノーズ、ショートデッキとしては綺麗なまとまりだ。ただ細かなディテールを見ると無理な部分が見え隠れする。ボンネットフード前端の隙間がバランスを崩してしまっている感じを受けるし、フロント両サイドの開口部デザインも恣意的な感じ。GT-Rもデザインはぎこちないが迫力はある。 430の官能的な美しさは所有する歓びが得られそうだしガヤルドも好き嫌いがはっきり出そうだが迫力は第一級だ。ポルシェ911の普遍的なデザインはもはや云々する次元のものではないだろう。ガルウイングドアを復活させたSLSは懐古主義と斬新さを融合。●先進性(先進技術) じつはLFAに最も不足しているのが「先進性」という部分。エンジニアたちも20世紀技術の集大成です、というように突出した新技術というものはない。 カーボンコンポジットのボディはある意味先進的で、従来のカーボンモノコックとは一線を画している。一体整形の型から起こすのではなくテーラーメード的に局部材をコンポジットし接着剤によってモノコックを形成している。部分部分にはアルミのリベットも追加しておりストリップボディは継ぎはぎだらけでリベットも目立ち美しくないのだ。 このあたりはポルシェカレラGTやエンツオフェラーリの美的センスを見習ってほしい所だ。トランスミッションはシーケンシャルだが最近流行りのDCTではなくエクセディ製のシングルクラッチ。SLSやポルシェPDKはツインクラッチでオイルの分割など果敢にチャレンジして耐久性もある。●総合評価 LFAはどうか? さすがにこのクラス、レベルが高くて簡単には甲乙つけ難い。あえていえば、のレベルだが、やはりスーパーカー作りに対する経験値、キャリアがモノをいう部分が多々あるといえる。多少出来が悪くとも独特なオーラで魅了するフェラーリ。ポルシェのユーザーを決して裏切らない実直なクルマ作りはどのポルシェにも脈々と受け継がれており欧州のユーザーは心から信頼している。そんなマーケットに切り込み、存在感を示すには突出した何かが必要なはず。 GT-Rはニュルでの速さを前面に押し出しアピールした。メルセデスはすべてを知っている。技術もある。知識もある。それをどこまで持ち出すかがポイントだ。SLSはかなり本気で持ち出してきた。だがまだすべてではない。とりあえずニュルでGT-Rのタイムは破ったという。このあとどこまで突き放して相手を屈服させるのか。戦意を喪失させてはマーケットが縮小してしまうことを知ってもいるメルセデスは三味線を弾く余裕があるわけだ。はたしてLFAは世界で存在感を示せるのか。これからがトヨタのスーパーカー物語の第一歩になる。

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

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