NEWウィッシュは驚くほど安いか？

【本記事は2009年5月にベストカーに掲載された記事となります。】このところ次期型プリウスの話題で持ちきりながら、私はウィッシュに相当驚いている。まず強烈に安いでしょ！スペックや装備を見たら、ひとつだけでも6万～8万円値上げしたって不思議じゃないアイテムがずら～っと揃う。なんせ姿勢制御装置VSCと、3列目シートまでカバーするサイド＆カーテンエアバッグ、CVT（従来型は安価な4速AT）、エンジンだってバルブマチックに格上げされてます。花粉除去モード付きオートエアコンなんかも付く。で、価格はわずか3万4000円アップの184万円（1.8X）ときた。どうなってんの？実車を見て意外だったのが車格感。これまでウィッシュといえば存在感薄め。まぁ「カローラ級ですね」と思えば間違いなかろう。クルマ好きからすれば、ややもの足りない車格だったように思う。しかし！ 新しいウィッシュが走っているのを見たら、エスティマに匹敵する存在感だったりして。大きく感じるデザイン手法を採用したのだろうけれど、2ランクくらい上の車種になったイメージ。それでいて車重は1.8Lだと1340kgしかない。「1.5L級の燃費じゃね？」を実現できたのも軽いせいです。

■インテリアの質感はエスティマ級！閑話休題。早速試乗といきたい。運転席に座って「おお！」なのがインテリアの質感。シャシーこそキャリーオーバーながら、インテリアについちゃ全面的に見直されている。これまた「エスティマ級のクォリティを持ってますね」と評価したって大ゲサじゃなかろう。少なくとも従来型ウィッシュと同じ金額のクルマにゃ見えぬ。絶対的なスペースこそ従来型と変わってないものの、運転席＆助手席シートの背もたれを薄くした効果が出ているらしく、若干ながら居住性も改善されている。Dレンジをセレクトして走り出すと「ホントに1.8Lなの？」。低い回転域からキッチリとトルクが出ているうえ、CVTとの相性がいいのだろう。まったくストレスなく走ってくれます。アクセルを深く踏み込むと多少燃焼音が大きくなるけれど、省燃費エンジン特有の乾いた音質のため私は気にならず。「気持ちいいエンジンサウンド」とまではいえませんけど……。絶対的な動力性能だって文句なし。1.8Lで144psも出てるのだから当然か（従来型は132psでした）。

■2Lよりも1.8Lがお薦め1.8Lのミニバンで16.0km／Lという10・15モード燃費も強力だ。燃費自慢のストリームさえ14.8km／Lなのだから。「アイドリング以外の領域をスロットル使わず制御する」（ディーゼルエンジンに匹敵する熱効率を実現する、といわれている）バルブマチック＋CVTを組み合わせているためなのだろうが、こいつにアイドルストップを組み合わせたらコンパクトカーに匹敵する実用燃費だって不可能じゃないと思う。トヨタの独走に待ったをかけるメーカーは出てこないのか？ちなみに158ps、2L（こちらもバルブマチック）のハンドル握ってみたら、いちだんとトルクフル。これでもライバルの1.8L車を凌ぐ10・15モード15.2km／L！ 素晴らしい。ただ42万円の価格差を考えると、装備の違い（大物はクルーズコントロール、HIDライトくらい？）など考慮しても1.8Lの魅力大。というか1.8Lめちゃくちゃ安いのだ。1.8Lを選び、後づけのHIDやアルミホイールなどで楽しめばいいと思う。差額でナビなんかもつけられます。

■注文は乗り心地の質感だけ試乗会場には『2.0Z』についている「ダイナミックスポーツモード」の味見ができるコースも設定されていたので試してみた。ウェットの定常円旋回を標準モードで走ると、普通にアンダーステア出て、普通にVSCが稼働。続いてセンターコンソールにあるスイッチを押して「スポーツ」で走る。このモード、2つの制御が加わるそうな。アンダー出たら内側輪にブレーキかけ、クルマを曲げようとする挙動を出すことと、CVTでエンジン回転を高めにキープ。アクセル戻した時のタックインを利用する、というもの。なるほどアンダーが顔を出し始めると、クルマ自体「曲がってやるもんね！」みたいな気合いを感じる。同乗していた黒沢元治師匠は「コントロールがリニアじゃないな。抜けてみたり入ってみたり」と辛口評価だったけれど、既存のシステムを使っての制御ということなど考えれば上々でしょう。なかでもエンジン回転を高めにキープし、アクセルオフ時の挙動変化を出そうという狙いは素敵です。続いてワインディングロード風のテストコースを走ってみたが、けっこうスポーティ。以上、ほとんど文句なしの仕上がりの新型ウィッシュに、ひとつだけ注文をつけるなら「乗り心地の質感を追求してほしい」であります。ここまでカンペキに仕上げたのなら、乗り心地の質感でも欧州車を目指したらどうか。現状は「標準より少しよくできたトヨタ車」というレベル。これでダンパーにテネコを使うプレマシーや、ショーワを使うストリームくらいの滑らかな乗り心地が実現できれば100点でしょう！ 日本だけじゃなく世界中で絶賛されるMPV（マルチパッセンジャーヴィークル）になると思う。【結論】開発者によると、ベースグレードの1.8Xは15万円くらい上がる装備内容を持ちながら3万4000円アップに抑えたとのこと。しかもエコカー新税制で、7万7600円減税（1.8X）。「ライバルはストリームではなく新しいプリウスですね」（開発者）というほどで、新型プリウス205万円ショックは自社内での競争も生んでいる。

ウィッシュはそんなに安くない by遠藤徹4月2日に発売したトヨタの新型ウイッシュは「安い」と評判になっているという。しかし日頃販売店を馬車馬のように取材して回っている記者にとっては素直に受け入れることができない。旧型の在庫一掃セールでネッツ店の営業マンの多くは「今度の新型ウイッシュは確かにクォリティアップし、よくなっている。しかし代わり映えのしないスタイリングで（グレードによっては）10万円以上も高くなるうえに5万円引きのワンプライス販売となる。現行モデルを今買えば40万円以上も安くできるので絶対に買い得だ」と言って売りさばいていた。「新型はS-VSC、SRSサイド＆カーテンシールドエアバッグを全車に標準装備するなどして装備を充実させながら184万円からの価格設定だから安い」と評している関係者が多いらしい。この数字だけを見れば確かにうなづけないことはない。ただ前モデルとの値引き差が35万円もあるのが現実なのだから、安い高いは実質的な価格で比較して論じる冷徹な目も必要だと思うのだがどうだろうか。

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