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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.03

走りの衝撃 “違いがわかる男”日産開発ドライバー鈴木利男が語るGT-RスペックV初試乗記

ノーマルGT-RとスペックVは似て非なるもの

“違いがわかる男”日産開発ドライバー鈴木利男が語るGT-RスペックV初試乗記

“違いがわかる男”日産開発ドライバー鈴木利男が語るGT-RスペックV初試乗記

【本記事は2009年2月にベストカーに掲載された記事となります。】22ページ~、198ページ~では、明らかになったGTIRスペックVの詳細をお伝えしているがここでは核心の部分、走りのパフォーマンスについて最も熟知しているGTIR&GTIRスペックVの開発ドライバー、鈴木利男氏にご登場いただいた。はたしてスペックVの走りは我々の想像を超えるパフォーマンスをもっているのか? さっそく鈴木利男氏による走りのレポートをお伝えしよう。正直、ノーマルGT-RとスペックVは似て非なるものと思っていただきたい。GT-Rで目指した究極の走りを、さらに高めていったのがスペックV。そのためにノーマルGT-Rではコストやメインテナンス性の面であきらめざるを得なかったことが、スペックVでは実現できている。より高いレベルのパフォーマンスを追求したのがスペックVなのだ。スペックVの開発に着手したのは、ノーマルGT-Rの開発にある程度の目処がたった’06年のこと。ノーマルの最終仕上げとスペックVの開発を並行して実施していたということになる。

体感520馬力!! ハイスピード域で威力を発揮する

ハイギアードブーストは20~30psアップした感覚!! 左側のハイギアードブーストスイッチを押してから、ステアリング右側にある大きな円形のスイッチを操作する。上がハイギアードブースト、下がASCD(オートスピードコントロール装置)のスイッチ。ステアリング回りのアルミはスペックV専用色(ノーマルはシルバー)

ハイギアードブーストは20~30psアップした感覚!! 左側のハイギアードブーストスイッチを押してから、ステアリング右側にある大きな円形のスイッチを操作する。上がハイギアードブースト、下がASCD(オートスピードコントロール装置)のスイッチ。ステアリング回りのアルミはスペックV専用色(ノーマルはシルバー)

■体感520馬力!! ハイスピード域で威力を発揮する“シュバババババ!!”一段とターボサウンドが荒々しくサーキットにこだまする。読者の皆さんが、一番気になる「ハイギアードブースト」を作動させた瞬間、GT-RスペックVはその本領を発揮する。インパネセンターパネル、ノーマルGT-Rではサスペンションのモード選択スイッチの部分に設置されたハイギアードブーストのメインスイッチをONにし、ステアリングスポーク部のプッシュスイッチを押せばハイギアードブーストが作動する。

体感で20~30psのパワーアップ

ハイギアードブーストは20~30psアップした感覚!! センターパネル中央の3つのスイッチのうち、中央のスイッチがハイギアードブーストのセットアップスイッチ。ノーマルGT-Rではダンパートロニックの3モード切り替えスイッチとなる

ハイギアードブーストは20~30psアップした感覚!! センターパネル中央の3つのスイッチのうち、中央のスイッチがハイギアードブーストのセットアップスイッチ。ノーマルGT-Rではダンパートロニックの3モード切り替えスイッチとなる

ハイスピードコーナー……、200km/hを超えるような、本当の超ハイスピードコーナーからの立ち上がりからのパンチがノーマルとは段違い。“標準時はギュワァァァァァっ、ギュワァァァァァ“とエンジンが吹けていくのが、コイツを作動させると“シュババババ!! シュババババ!!“とエンジン回転のピックアップが鋭くなり、伸びもシャープになる。日産では2omのトルクアップと発表しているが、ボクの体感では少なく見積もっても20~30psのパワーアップといったところ。脱出速度が速くなり、次のコーナーへのアプローチ速度も高くなる。3000~5000回転あたりでのトルクアップが体感できるはずである。「お、効いているな」と一番はっきりわかるのは5速でリミッターにあたる240~250km/hだが、4速3500rpmからの全開時や4速、5速、6速とシフトアップいく瞬間も明らかにトルクが盛り上がっていて、ノーマルとの違いを体感できる。ただポルシェ911ターボに装着されているスポーツモード(全開時に過給圧が0.2bar、トルクが6.1kgmアップし約10秒間作動)のような過敏なものではなくマイルド。このスイッチは約80秒間しか作動しないが、もっと作動時間を長くしてもいいように思う。

4速から5速のシフトアップしていく加速時にハイギアードブーストを使え!

■全長=4.06km ■R35GT-Rラップタイム=1分58秒台(スペックVは正式には未計測)

■全長=4.06km ■R35GT-Rラップタイム=1分58秒台(スペックVは正式には未計測)

ここからは、GT-Rの日本の聖地ともいえる仙台ハイランドレースウェイのコース図を使って説明したい。仙台ハイランドレースウェイは、1周約4km(左回り)、低中速中心のサーキットで、ノーマルGT-Rのラップタイムは1分58秒台(スペックVのタイムは正式には未計測)。ハイギアードブーストは、2、3速を使うタイトコーナーで使ってもあまり意味はない。このコースで効果的なのは、4速から5速のシフトアップしていく加速時。また、ノーマルでは4速から3速へシフトダウンするような場面でハイギアードブーストを使えば、4速のまま立ち上がることができるようになり、シフトによるタイムロスを抑えることができるのだ。

ロールが少なくステアリングの応答性がいい

減衰力固定式のサスペンションによる乗り心地は? 3段階調整式サスペンションから減衰力固定式になったビルシュタインショック。ノーマルから約20%強化されたコイルスプリング

減衰力固定式のサスペンションによる乗り心地は? 3段階調整式サスペンションから減衰力固定式になったビルシュタインショック。ノーマルから約20%強化されたコイルスプリング

また減衰力固定式のビルシュタインショックと約20%バネレートが強化されたスプリング、バネ下を約20%軽減したことにより、2速から3速へ切り返しがあるコーナーで、ステアリングをポンと切った時にロールが少なくステアリングの応答性が抜群にいい!

約500万円のカーボンセラミックブレーキとは!?

カーボンセラミックブレーキはフワッと上質に効く ニッサン・カーボンセラミックローター(NCCB)。フェラーリFXXと同等の性能をもつが、価格は半額。といっても493万5000円

カーボンセラミックブレーキはフワッと上質に効く ニッサン・カーボンセラミックローター(NCCB)。フェラーリFXXと同等の性能をもつが、価格は半額。といっても493万5000円

■約500万円のカーボンセラミックブレーキとは!?まさに吸い付くような絶妙のブレーキタッチとはこのことをいう。ノーマルのスチールローターでもタッチや効き、耐フェード性などを徹底的に追求していったけれど、カーボンセラミックローターでなければ出せない性能というのがある。スチールローターが“ギュゥゥゥゥゥ“と効くのに対し、スペックVのカーボンセラミックローターは“フワッ“と効く感じ。ものすごくよく効くのにタッチはあくまでも滑らかで、高級感を感じさせる。スチールローターは多少のザラツキを感じるのだ。制動距離に関しては、スチールとは比較にならないほど格段にいい。仙台ハイランドのバックストレートのブレーキングでは、ノーマルと同じポイントでブレーキングすると数m余ってしまうほど。100km/hから0km/h停止でカーボンセラミックブレーキのほうが2m制動距離が短い。また、ニュルの北コースを本気で攻める走りをしても、まったくフェードの兆候をみせないのには感服した。ポルシェ911のカーボンセラミックブレーキもすばらしいと感じたが、スペックVのブレーキはそれを上回るものができたと思っている。ただ、ボクは開発ドライバーとして徹底的にクルマをいじめ抜いたけれど、もし自分のクルマだったら、パッド交換やローター交換の費用のことを考えるとビビッちゃうかも。でも、ボクが思いっきり走らせてニュルの北コースでは50~60周、スチールに比べて3倍ももつのだ。オーナーさんが国内のサーキットを走らせるのだったら、ブレーキの耐久性を過剰に心配することはないと思う(保証対象外になりますが……)。またスペックVはサーキット走行が豊富な人だけのクルマではなく、普通の人でもある程度乗りこなせると思う。

ニュルで鍛えた足は乗り心地がよくなっている!?

ニュルブルクリンク北コース、一般道、アウトバーン、仙台ハイランドレースウェイでテストを重ねた……

ニュルブルクリンク北コース、一般道、アウトバーン、仙台ハイランドレースウェイでテストを重ねた……

■ニュルで鍛えた足は乗り心地がよくなっている!?気になっている人も多いと思われるスペックVの乗り心地。バネ、ショックの動きがよくなり、初期モデルと別モノと感じるくらい乗り心地がよくなったノーマルの’09モデルの乗り心地と比べると、路面状態のいい平坦な場所ではスペックVのほうがよく、車速の低い荒れた路面ではノーマルのほうがいい。ノーマルのオーナーがスペックVでサーキットを走ったら、きっとスペックVのほうが軽快で乗り心地がソフトだと感じるはず。なかには、もっとスパルタンでもいいんじゃないかと感じる人も多いと思う。スペックVは、唐突な段差ではドンという突き上げがあり、固さを感じるが、収まりがいいのであまり嫌味は感じない。ニュルの限界域でセットした足回りのまま、市街地で走らせても意外に乗り心地がいいのには驚かされた。アウトバーンのギャップを乗り越える時もバネ下が軽く、入力に対してのサスストロークをあまり感じないので「あ~いいじゃん、コレ」と思ったほど。とにかく収まりがいいのだ。きっと首都高速のギャップを乗り超えた時も同じように感じるだろう。最後に。スペックVのニュルブルクリンクの計測タイムだが……、まだ正式には計測していないのでわかりません。あと、これは書いていいのかわからないけれど……。スペックVはタイヤを含めて、もっともっとレベルが上がる余地がある、と思っている。ノーマルと同様、今後も進化していくことでしょう。

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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