新型車比較・ライバル車対決
更新日:2018.11.21 / 掲載日:2017.11.30

夢の先取り大対決! MAZDA CX-8

ユーティリティ拡大を意識した最初のマツダ新世代モデル

 国内展開するマツダSUVの最上級車種として開発されたのがCX-8である。フロントマスクやインパネなどはCX-5と共通したデザインが採用され、全幅や前輪トレッド幅も共通。搭載されるディーゼルターボエンジンも同じ2・2L。単なるCX-5のロングストレッチモデルと考える向きも多いだろう。
 だが、そのスペックを見ていくと、CX-5との違いが多いことに気づく。例えばディーゼルターボエンジンは、重量増に応じて過給圧の増加や急速多段燃焼式の燃料噴射制御などの改良が加えられており、パワースペックが上回る。サスペンションも海外向けのCX-9用をベースにチューニングされ、進化ぶりが楽しみだ。
 そして大きく拡大したキャビンスペースにはサードシートが備わる。CX-8はCX-5に対して全長が355mm、ホイールベースは230mmほど長くなった。その恩恵は主にキャビン空間の拡大に当てられているのだが、そのゆとりの部分をそのままサードシートに当てている。結果、乗車定員は7名になるなど、実用面のメリットは大きい。これがCX-5との決定的な差になっている。
 先代CX-5の登場以降のスカイアクティブ技術や魂動デザインなどが投入された最近のマツダ車は、走りとデザインばかりが先行しているイメージが強かったが、このCX-8は積極的にユーティリティを求めた初めてのモデルでもある。
 それゆえCX-8は、プレマシーやビアンテ、MPVなどの、これまでマツダのファミリー層を支えていたミニバン需要を代替できるか? という点も見所だ。まだラインナップに残っているとはいえ、プレマシーとビアンテは、ともに設計が古く、生産終了も近い。久々に投入されるマツダの3列シート車であるCX-8には、これまでのマツダのミニバンを乗っていた顧客を繋ぎ止めるか、という使命も課せられているのだ。

■主要諸元(XD Lパッケージ2WD)全長×全幅×全高(mm):4900×1840×1730 ●車両重量(kg):1830 ●エンジン:2.2L直4DOHCディーゼルターボ(190PS/45.9kg・m) ●JC08モード燃費:17.6km/L ●燃料タンク容量(L):72[軽油] ●最小回転半径(m):5.8
後ろ73

  • CX-5と同様の最新の魁動デザインで描かれるエクステリア。サイドパネルの抑揚を効かせた表現や、車高を低くとる設計は、最新マツダ車に共通する手法だ。

  • CX-5やアクセラなどにも採用されるSKYACTIV-2.2ディーゼルターボの最新型が搭載される。スペックも190PS/45.9kg・mまでパワーアップされている。

フロント&セカンドシートはサイズも造りも上級モデルにふさわしい仕立てぶり。サードシートはやや窮屈だが、造り自体はさほど悪くない印象だ。

  • 基本的なデザイン&素材はCX-5と共通。Lパッケージ仕様も設定されるなど、最近のマツダ車らしく質感向上にも余念がない。

  • 全長&ホイールベースは拡大しているが、その分サードシートが設けられるため、通常時の荷室スペースは手狭な印象を否めない。

MAZDA CX-8×MAZDA CX-5×TOYOTA ハリアー

  • CX-5の上級仕様という一面も持つCX-8。標準仕様で319万6800円とやや高めの価格設定。また装備&メカニズムの充実も見所で、最近のマツダ車の売りでもある先進安全&運転支援装備も最新型を搭載。

  • 現行型は走りのアップデートに加え内装の質感も向上。ハリアーの独壇場が続いていたプレミアムSUVに強烈なインパクトを与えた。CX-8には設定がない2L&2.5Lガソリン車が選べることも強み。

  • 2013年の登場以来、大きな変更もなく販売されていたが、2017年にようやくマイナーチェンジを実施。内外装の変更に加えて、新たにレクサス系に採用されていた直噴ターボエンジン搭載グレードを設定。

隙の無いキャラを持つCX-8ハリアーに勝る部分も多い

 国内向け最上級SUVとファミリー&レジャー用途向け多用途SUVの二つの側面を持つCX-8だが、その両面ともにCX-5から発展したことを考えれば、同車に対する優位性は論じるまでもない。CX-5のキャビンスペースは、同サイズのSUVと比較すると一回り狭く、4名乗車+荷物の一般的な用途に不足はないにしても、車格相応のゆとりを感じる広さはない。スペース効率の面でCX-8にアドバンテージはないが、延長された全長分だけ、キャビン長は確実に拡大している。
 サードシートが設けられることでプラス2名の優位性もあるが、サードシートは緊急用以上の実用性はない。セカンドシートを前方にセットすると、足元のスペースはぎりぎり。つま先のスペースも狭く、膝を抱えるような着座姿勢になってしまう。3列シートのSUVとしては使えるほうだが、贔屓目に見てもコンパクトなワゴン型ミニバンと同程度だ。そのため、大半のユーザーはサードシートは格納して使うことになるだろう。この状態でもセカンドシートはCX-5より開放的であり、荷室の使い勝手も明らかに上だ。
 ハリアーに対しても多人数乗車対応がアドバンテージになるが、2列シートを基準とするとハリアーのほうが寸法的な余裕も開放感も優れている。ただし、CX-8は全グレードにセカンドキャプテンシート仕様を設定。最上級グレードには前席同様に設えられたセンターコンソールが備わり、高級感も高まる。後席の居心地や見栄えでキャプテンシートの効果は極めて大きい。キャプテンシート仕様でも乗車定員が6名なのは3列シートの強味である。
 高級の演出はハリアーが一枚上手。マツダがその手の演出を嫌っているせいもあるが、比較すればちょっと地味。ただし、細かな造り込みの質感は同等で、シックな雰囲気を好むならCX-8を選ぶユーザーも少なからずいるだろう。

  • 全長4900mmのボディサイズは比較する2モデルと比べると明らかに長い。ホイールベースは2930mmとクラス最大級。イメージはCX-5と共通だが、ルーフにはさりげない形状のルーフレールを装着。

  • CX-8と比べると、やや小ぶりな印象を受けるサイドビュー。ショートノーズがよく分かる。ホイールベースは2700mmとCX-8よりもかなり短い。

  • ロングノーズのプロポーションが特徴。全長は4725mmとCX-5を超えるが、ホイールベースは2660mmとCX-5より短い。クーペライクな雰囲気が強い。

  • トレーラーなどを牽引できるトレーラーヒッチが純正ディーラーOPとして設定される。CX-8本体にもトレーラーの横揺れに対応できるアシスト機能が備えられている。

  • Aピラー部を傾けることで、フロントまわりのオーバーハング化を自然に実現。SUVでありながらクーペ風味も巧みに加味している。深みのあるソウルレッドメタリックはCX-5からの採用だ。

  • グレードごとの内外装の違いを明確にするハリアーだが、パワートレーン違いでも細部の意匠が若干異なる。

高いレベルでしのぎを削る余力十分の動力性能

 CX-8とCX-5の車重差は約250kg。この車重に対応するため、最終減速比を約8%下げ、駆動輪でのトルクはほぼ等しくなっている。理屈では各ギヤの守備レンジの加速性能も等しくなるが、その守備レンジは8%分だけ低くなる。速度に対して多少回し気味の設定になっても、基本的な動力性能や変速制御はCX-5と共通と予想される。
 CX-5のディーゼル車はSUVでも悠々とした力強さが特徴であり、とくに高速巡航でのトップギヤの維持能力に優れている。CX-8もその特性を引き継げば、悠々とした高速クルージングが大きな魅力となるはずだ。
 ハリアーは2LNA仕様とターボ仕様、2・5LNAにTHS2&E-Fourのツインモーターを組み合わせたハイブリッドが用意される。CX-8とCX-5に搭載される2・2Lディーゼルターボと比べるには、2LNAでは力不足。2Lターボは方向性がやや異なる。やはり対抗馬になるのは価格的な差は大きくなるがハイブリッドだ。
 ハイブリッドは電動による駆動補助もあり、短時間の加速性能は同クラスのSUVでもトップレベルである。加速レスポンスのよさもあり、加速性能はCX-8以上と言えるだろう。
 ただし、加速性能ほどの余力感が感じられないのが泣き所。また加速度に対するエンジン回転数の変化は大きめであり、エンジン回転変化なくグイグイと加速する、いわゆる力感に乏しい。トルクに余裕がなくダウンシフト頻度の高いCVT車のようだ。
 燃費と動力性能を考えると、CX-8&CX-5のディーゼルターボとハリアーハイブリッドは好勝負だが、パワーフィールは好みが分かれるだろう。余力重視の悠々派ならば、大トルクで安定した回転数で走れるCX-8が良い。

  • 左右対称にデザインされるインパネまわり。目線が集中する場所にはサテンクロームメッキを配するなど、上質感を印象付ける演出もが巧みだ。

  • 7インチセンターディスプレイは、光の乱反射を抑える仕様に変更。設置位置も視認性追求を狙い、ダッシュボード上に移動している。

  • 上質な素材がふんだんに使われるハリアーのインパネまわり。下位グレードのエレガンスでも十分な質感を味わえる。

  • 普段使いではサードシートは格納することが多いだろう。この状態では荷室の奥行きは1150mm(編集部計測値)まで拡大される。ここまで広くなれば不自由することはない。

  • 開口部の広さはクラス相応だが、荷室容量やユーティリティは正直なところ弱点だ。サードシート格納時のCX-8と比べると、明らかに見劣りがする。

  • 通常時は1m、セカンドシート格納時は1.5mほどと、荷室の奥行きは平均レベル。大きな荷物を載せるには工夫が必要だ。

CX-8の登場でプレミアムSUVの勢力図はどう変わる?

 CX-8の主力グレードと目されるXDプロアクティブの価格は353.7万円(FF)。CX-5の同グレードより約53万円も高い。キャビン実用性の向上があったとしても、サードシートの必要性のないユーザーには割高である。 ハリアーHVと同等装備で比較すると20万円以上安い見当。コスパではCX-8である。ただ、「プレミアム」は個人的な趣味嗜好による部分も多く、ドライブフィールも同様。プレミアムを狙うユーザーには同等価格と言ってもいい。 これらのことを考慮するならポスト・ミニバン派がCX-8のメインターゲットとなりそう。やはり、MPVやプレマシーのユーザーがしっくりくるが、価格のハードルが高いのは悩みどころである。

提供元:月刊自家用車



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グーネットマガジン編集部

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