新車試乗レポート
更新日:2019.05.23 / 掲載日:2017.11.22

【試乗レポート】日本版eゴルフは熟成モデル!? VW初のピュアEVの実力とは

文と写真●ユニット・コンパス

 「電動化」と「自動運転」、それが現在の自動車の技術的側面における2大テーマである。先日開催された東京モーターショーで各メーカーが自社の行く末をコンセプトカーという形で表現していたが、その多くがこの2大テーマに取り組んだものだった。ユーザーサイドとしては、まだまだ遠い未来の話のように感じているかもしれないが、生き残りをかける各自動車メーカーは真剣で、公開されたロードマップに登場する数字もリアリティが高い。もうすぐそこに、電動化と自動化が近づいてきているのだ。
 ドイツを代表する自動車メーカーであり、グループに多数のブランドを掲げるフォルクスワーゲンは、電動化時代でのナンバー1を目指すべく、2025年までにグループ全体で電動車両を80モデル発売、しかもその内訳としてピュアEVを50モデルにすると発表している。そして、2030年にはすべてのモデルに電動車両を設定するという。

 そんなフォルクスワーゲンが、2017年10月19日にピュアEVモデルである「eゴルフ」を発売した。日本におけるブランド初のEVを看板車種ゴルフで登場させたということで期待はいやが上にも高まる。
 eゴルフは、現行型第7世代をベースに、高出力モーターと駆動用バッテリーを搭載したモデル。設計段階から電動化を見据えたMQBプラットフォームのたまものだ。じつはこのeゴルフ、ワールドプレミアは2013年9月のフランクフルトショーで、今回日本で発売されたのはいわゆるマイナーチェンジを受けたモデルとなる。改良前のモデルについては、ドイツを含め各国ですでに販売されており、日本でも2015年に発売を検討したことがあった。しかし、導入に向け環境を整えている最中に今回の大幅アップデートが決定、その結果2015年段階での導入を見送ったという経緯があったのだとか。ブランドを信用し、購入してくれるユーザーに対して誠実に対応したいと考えての決断だ。あくまでも舞台裏の話にはなってしまうが、それだけVWジャパンがユーザー本位の仕事をしてくれているということをお伝えしたい。

気になる航続可能距離は301km

 結果として、改良後のeゴルフをフォルクスワーゲンブランドの日本で初めて市販されるEVとした判断は正しかったように思う。モーター出力は115馬力から136馬力にパワーアップ、バッテリー容量もセルの改良によって24.2kWhから35.8kWhへと大幅に向上。その結果、航続可能距離はJC08モードで215kmから301kmに伸長し、充電についても200Vおよび急速充電(CHAdeMO)に加えて、将来の3kW(200V/15A)と6kW(200V/30A)規格にも対応することとなったからだ。現在のピュアEVはシティコミューター的な使い方がマッチするとはいえ、実用車の代名詞であるゴルフの名前とイメージを考えれば、1充電あたりの航続距離が長いにこしたことはない。

完成度の高さは「いつものゴルフ」

 電気自動車に対するアプローチとして、スタイルなどで特別感を強調するやり方と、あえて通常のモデルとは変えずに選択肢のひとつであることを暗示するやり方があるが、eゴルフは後者にあたる。もちろん、ディテールにはVWブランドの電動化アイデンティティが与えられているが、それを指摘できるのはかなりのゴルフ通。電動モデルはガソリン車を置き換えるものではなく、ゴルフはどれもゴルフで、パワートレーンはライフスタイルに合わせて選択してほしいという意図がそこにはある。
 事実試乗して改めて実感したのが、ゴルフというクルマの完成度の高さだった。パワートレーンを電動化するということは、出力の特性が大きく変化することに加えて、駆動用バッテリーなどの重量物を搭載するために、クルマの重心にも変化が生じてしまう。それであるのにも関わらず、eゴルフを運転していて、特別なクルマを操っているという違和感はない。ゴルフらしい扱いやすさはそのままに、モーターによる力強くスムーズな加速フィーリングが味わえた。

EVならではの運転の楽しさがある

 パワートレーンだけに焦点を絞ると、加速のスムーズネス、静けさはガソリン車ではけっして味わえないレベルにある。車両重量が1590kgと、似たような装備レベルを持つTSIハイラインの1320kgに比べて200kg以上重く、独特の重厚感があるため、ひとによってはeゴルフの走りに上質さや高級感のようなものを覚えるかもしれない。今回の試乗コースは市街地中心でワインディングのようなシチュエーションを試すことはできなかったが、いい意味で「いつものゴルフ」であり、渋滞対応する追従支援システムやACCといった運転支援装備も充実している。これも改良後のモデルを導入した利点だろう。
 一方で、EVならではの個性として、回生ブレーキレベルの選択によって、アクセルを離すだけで減速効果を発生させることも可能。「D」レンジではブレーキ回生はなく減速は最小限だが、シフトレバーを「D1」、「D2」、「D3」と操作すると減速とブレーキ回生が強化され、「B」レンジではそれが最大化される。「D2」以上のレンジではブレーキランプも点灯するため、ほぼワンペダルでの運転も可能だ。踏み替え操作が減ることでドライバーの疲労も軽減されるし、EVらしい走り味としても楽しい。

 eゴルフの価格は499万円、クリーンエネルギー自動車導入事業補助金によって実質的な負担額は469万円となる。はじめてのピュアEVということもあり、フォルクスワーゲンでは、ユーザー調査の意味合いも含め2017年12月25日までは専用サイトからの販売(2018年以降は通常モデルとして販売予定)となる。

フォルクスワーゲン eゴルフ(1段固定式)
全長×全幅×全高 4265×1800×1480mm
ホイールベース 2635mm
トレッド前/後 1545/1515mm
車両重量 1590kg
モーター最高出力 136ps/3300-11750rpm
最大トルク 29.5kgm/0-3300rpm
一充電走行距離(JC08モード) 301km
サスペンション前/後 ストラット/4リンク
ブレーキ前/後 Vディスク/ディスク
タイヤ前後 205/55R16

販売価格 499万円(eゴルフのみ)

  • 同時にゴルフ GTE(プラグインハイブリッド)も改良を受けた

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グーネットマガジン編集部

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