スパークプラグはエンジンを稼働させるための部品ですが、ハイブリッド車の走行においても重要な役割を担っています。交換の周期は長めであることから、なかにはプラグ交換を行わずに車の乗り換えを行う方も多いでしょう。
しかし、交換時期を過ぎてしまったプラグを使用し続けると始動不良や性能の低下を引き起こしてしまうため注意が必要です。
この記事では、ハイブリッド車のプラグ交換時期の目安や作業手順、ガソリン車との違いなどについて紹介します。
ハイブリッド車のスパークプラグ交換時期とガソリン車との違いを解説
スパークプラグは、エンジンの燃焼室でガソリンと空気の混合気に火花を飛ばして点火する重要な部品です。この点火によって、エンジンは動力を生み出します。
ハイブリッド車の場合は、エンジンとモーターの併用で、エンジン稼働時間が短縮されることと、それに伴うプラグへの負担軽減を背景に「ハイブリッド車はガソリン車よりもスパークプラグが長持ちする」といわれています。
長持ちさせるには、スパークプラグへの負担が少ない運転方法と使用環境であることが重要です。さらに普通車なのか、軽自動車なのかといった違いによってもスパークプラグの寿命は異なります。
ハイブリッド車はエンジン稼働が少ないため長寿命
ハイブリッド車は、発進時や低速走行時などにモーターを使用するため、ガソリン車に比べてエンジンの稼働時間が短いことが特徴です。
これによりスパークプラグへの負担が軽減され、結果的にガソリン車よりもハイブリッド車の方がスパークプラグの寿命が長くなる傾向があります。
ハイブリッド車のスパークプラグ交換の目安は数十万kmという情報もありますが、これはあくまでも目安であるため、実際には車の状態を確認しつつ、適切な時期を見極めることが重要です。
ハイブリッド車の一般的なプラグ交換時期の目安
スパークプラグは、中心電極の素材や構造によって様々な種類があり、それぞれ寿命が異なります。
一般的なレジスタープラグは耐久性が劣るため、走行距離15,000~20,000kmが交換の目安です。
白金・イリジウムプラグは、中心電極に白金・イリジウムを用いており耐久性に優れています。どちらも走行距離の目安は、60,000~100,000kmです。
ハイブリッド車はスパークプラグへの負担が少ないことを理由に、これよりもまだ長寿である可能性もあります。実際には走行距離だけでなく、走行方法や環境も大きく影響しているため、あくまでも目安のひとつと捉えましょう。
軽自動車や負荷がかかる走行時には注意が必要
軽自動車は普通車よりもエンジンの回転数が多く、スパークプラグの動作回数も増えることから、劣化スピードが早いため短めのスパンでの交換が推奨されます。
また、負荷がかかる走行が多い車も、燃焼室温度が上昇しスパークプラグへの負担が大きく、熱価の高いプラグを選んだり、より短いサイクルでの交換が必要になったりするでしょう。
このように、スパークプラグの寿命は単に走行距離だけで決まるものではなく、エンジンの排気量や運転方法・走行環境などによっても大きく左右されます。ハイブリッド車とガソリン車の違いは関係ありません。
交換費用は車種や交換するスパークプラグの種類だけでなく、依頼する業者によっても異なるため、安く抑えるためには複数の業者で見積もりを取ることがおすすめです。
スパークプラグの種類とそれぞれの寿命や特徴
スパークプラグは、中心電極の素材や構造によって様々な種類があり、それぞれ寿命や性能、価格が異なります。
交換頻度は短くないからこそ、満足な車の性能を維持するためには、自分自身が重視するポイントや予算に応じて適切なプラグを選ぶことが重要です。
ここからは、スパークプラグの種類とそれぞれの寿命や特徴について紹介します。
レジスタープラグは、「一般プラグ」とも呼ばれる主流のプラグで、中心電極にニッケル合金が使用されており、内部に電気抵抗器(レジスター)が埋め込まれています。
複数ある種類のなかでも主流で、価格の安さがレジスタープラグの利点です。しかし、耐久性や着火性は他のプラグに劣るため、こまめな交換が必要となります。
レジスタープラグの相場は500円前後と群を抜いて安いですが、他のプラグよりも定期的に交換するため、結果的には高くついてしまうケースもあるでしょう。
白金・イリジウムプラグは、中心電極に白金(イリジウム)が用いられています。白金・イリジウムは融点が高く非常に硬い金属であるため、耐久性に優れ、長期間使用しても摩耗しにくいのが特徴です。
また、中心電極を細く設計できることから、少ない電圧で強力な火花の発生が可能で、燃焼効率も高い傾向です。
しかし、1本あたりの相場は5,000円前後とレジスタープラグに比べて価格が高く、プラグ交換の費用が跳ね上がってしまいます。
高性能ですが、一般的な車両には必要以上の性能となってしまうケースもあるため、よく確認しておきましょう。
グリーンプラグは、中心電極の先端にV字の溝が設けられていることで火花が飛びやすくなっており、レジスタープラグよりも着火性が高いことが特徴です。
エンジンの始動時やアイドリング、加速するときの安定性が向上しています。
交換頻度の目安はレジスタープラグと変わりありませんが、費用面ではレジスタープラグよりも少し高額です。「なるべく費用は抑えたいけど、レジスタープラグよりも良いものを選びたい」という方に適しています。
ハイブリッド車のプラグ交換の手順
ハイブリッド車は、高圧の電力が流れているため、ガソリン車よりも細心の注意を払って作業する必要があります。
本来は業者に依頼するのがおすすめですが、依頼するとなるとどうしても作業手数料が発生してしまうことから「自分で交換したい」と考える方も多いでしょう。
ここからは、ハイブリッド車のプラグ交換の手順について紹介します。
まずは、ボルトを外してコイルを引き抜きます。
ボンネットを開いて、エンジンカバーが装着されている場合は、工具を使ってクリップやボルトを取り除きエンジンカバーを外して作業を行いましょう。カバーを外すとイグニッションコイルとスパークプラグの両方が確認できます。
なお、コイルは複数個所あるため、コイルを引き抜く際、事前に番号を振っておくと安心です。
ロックがかかっているため、力任せで作業すると破損させてしまいます。作業時には気をつけましょう。
スパークプラグレンチやプラグソケットなどの工具を用いて反時計回りに回転させながら、古いプラグを取り外します。
このとき、斜めに力が加わってしまうと破損の原因になってしまうため、真っすぐ取り外すことを意識しながら作業するよう注意が必要です。
また、必ずしも行う必要はありませんが、気になる方はプラグを抜いた箇所には養生を行って異物混入を予防しておきましょう。
配線も車種ごとに異なり、間違えると点火不良の原因になってしまうことから、作業前の状態を写真に残しておくのもおすすめです。
次に、差し込み時の回転数など、取り扱い説明書に沿って新しいプラグを入れていきます。
このとき、規定トルクで締め付けることを気をつけておかないと、締めすぎによるネジ山の損傷などを招いてしまいます。
また、トルクは弱すぎてもいけません。適切に締められていないと、振動によってプラグが破損してしまう危険性があります。
トルクはきつすぎても緩すぎてもエンジンの正常な稼働を妨げてしまいます。なかには取扱説明書に指定トルク数の指示がかかれていないケースもあるため、メーカーに問い合わせて確認しましょう。
スパークプラグの交換ができたら、イグニッションコイルやカバーなどの交換作業をするにあたって取り外した部品を、外すときと反対の順番に直していきます。
このとき、コイルやカバーなどが汚れているなら、軽くでも拭いて汚れを落としておくのがおすすめです。
ボルトの締め忘れやコネクターの差し忘れなど、工程が抜けてしまわないよう、焦って行わないよう注意が必要です。
また、取り付け作業が完了したら、エンジンを作動して問題ないか確認しておきましょう。
パッキンがずれないように、しっかりと圧着させながらボルトを締め込みます。すべての作業が完了したら、最後にオイル漏れやパッキンのずれがないか確認して終了です。
一つ一つの作業を丁寧に行えるように、プラグ交換を行う際には時間を十分に確保して焦らずに進めることが失敗しないポイントです。
なお、安全に行うためにも、エンジンが冷えている状態で作業します。走行直後は1時間程度、時間をあけてエンジンをよく冷やしましょう。
ハイブリッド車はガソリン車に比べてスパークプラグの寿命が長い傾向にあるため、数万km走行しても「まだ交換の必要はない」という状態であるケースもあります。
スパークプラグを交換しないと起こりうる不調
交換時期を過ぎてしまったスパークプラグを使用し続けると、性能が落ちてしまいエンジンがかかりにくくなったり、パワーダウンしてしまったりします。
スパークプラグの劣化が原因の不調を知っておくことで、交換の必要性が確認できるでしょう。
ここからは、スパークプラグを交換しないと起こりうる不調について紹介します。
本来スパークプラグは空気と燃料が混ざった混合気へ火花を飛ばすことが役割の部品です。強い火花を飛ばすことは、燃焼効率に直結するポイントです。
しかし、スパークプラグが劣化していると、混合気への点火が不安定になり、不完全燃焼を引き起こしやすくなります。車をスムーズに動かせない分、同じ走行距離でもより多くの燃料を消費するようになり、結果的に燃費が悪くなってしまいます。
とくにハイブリッド車ではエンジンの稼働が燃費に大きく影響するため、スパークプラグの劣化による燃費性能の悪化は避けておきたいところでしょう。
アクセルを踏み込んでも、加速するまでに時間がかかってしまうことも不調のひとつです。これは、スパークプラグの火花が弱くなり点火が上手く行われていない状態で、スムーズに動力を発生できていないおそれがあります。
合流時や追い越し車線を走行しているとき、加速がもたつくように感じるなら、スパークプラグの交換時期を過ぎていないか確認しましょう。
なお、ガソリンが劣化していたりエンジン内が汚れていたりする状態でも加速がもたつく症状が出るため「加速不良=スパークプラグの劣化」ではありません。判断が難しいようであれば、症状を整備士に伝えるのがおすすめです。
スパークプラグが劣化していると、スタートボタンを押してもすぐにエンジンがかからず「キュルキュル」と音がするようになります。
故障しているスパークプラグが1つだけの場合は、キュルキュル音の後にエンジンがかかることもありますが、最悪の場合はエンジンが全くかからなくなってしまうおそれもあります。
また、アイドリング中にエンジン音が不安定になったり、不規則な振動を感じたりするアイドリングの不調もスパークプラグの劣化による症状です。
「エンジンがかかるまでの時間が長い」と感じるようであれば、スパークプラグの不調を疑いましょう。
点火が上手くできず、不完全燃焼を起こしてしまうことで、排気ガスが臭くなってしまうこともスパークプラグの不調による症状の1つです。これは、燃え残ったガソリンが排気ガス中に混じってしまうことが原因で、排気ガスからガソリン臭などの異臭がします。
排気ガスには窒素酸化物や一酸化炭素などの有害な物質が含まれており、本来は触媒コンバーターによって無害化されています。しかし、異常があると十分に処理されていないまま排出されている可能性もあり、環境への影響も懸念されるでしょう。
ドライバーは排気ガスの異臭に気付きにくいですが、症状に気付いた際には速やかに点検を受けることが重要です。
スパークプラグの良い状態を維持し続けるためには、適切な時期での交換が必要不可欠です。
スパークプラグの交換にかかる費用と依頼先
スパークプラグの交換にかかる費用は、プラグの種類だけでなく、どこの業者に依頼するかによっても大きく異なります。
スパークプラグの交換は、ディーラーやカー用品店、自動車整備工場など数多くの業者で対応しています。作業手数料も含めた交換費用の目安は、5,000~10,000円程度です。
ディーラーはメンテナンス費用が高い傾向がありますが、交換部品もメーカーの純正品を使用してもらえます。一方でカー用品店や自動車整備工場などでは、純正品は取り寄せになったり対応できなかったりしますが、費用が抑えられることが利点です。
満足なメンテナンスを受けるには、なるべく複数の業者で見積もりを取ってもらい、納得できる価格・接客であった業者を選びましょう。
ハイブリッド車のスパークプラグ寿命を延ばす方法
スパークプラグの交換を行っても、負担の少ない運転方法・適切な環境でなければ、また平均寿命よりも短いスパンでスパークプラグの交換を行わなければいけなくなってしまいます。
どのような点に気をつけておくと良いのか知っておくことは、スパークプラグの寿命に直結するでしょう。
ここからは、ハイブリッド車のスパークプラグの寿命を延ばす方法について、紹介します。
スパークプラグに過度な負担をかけない運転を心がけることは、寿命を延ばすうえでとても重要なポイントです。長時間のアイドリングや急発進・急加速は、スパークプラグの電極を消耗させて、劣化を早める原因になってしまいます。
ハイブリッド車の場合、モーターが発進や低速走行を行うため、エンジンへの負担を自然と軽減できます。しかし、高速道路での過度な加減速や、急な追い越しのような頻繁な負荷のかかる運転はプラグにとっても悪影響です。
ゆるやかなアクセル操作と、一定速度での走行を意識することで、スパークプラグの摩耗を抑え、寿命を延ばすことにつながるでしょう。
エンジンオイルが汚れていると、プラグにも影響を及ぼしてしまうため定期的なエンジンオイルの交換も重要です。
エンジンオイルには、潤滑作用だけでなくエンジン内の汚れをフィルターに運ぶ洗浄作用もあります。
適切な交換が行われていないと、エンジンオイル自体が汚れてしまい、洗浄作用が低下してしまいます。その結果、スパークプラグも例外ではなく寿命を縮めてしまうことになるのです。
エンジンオイルは他のパーツに比べて交換をこまめに行わなくてはいけませんが、これを怠ってしまうと大きな被害につながってしまうため、注意が必要です。
自分の運転スタイルや環境にあったスパークプラグを選ぶことも、寿命を延ばすためのポイントです。
スパークプラグの「熱価」とは、燃焼によって受けた熱を放出する度合いを表したもので、熱価が高いほど放出する熱の度合いが高いことを意味します。
低熱価プラグは熱を溜めやすく街乗りや短距離走行に適しており、高熱価プラグは熱を放出しやすく大型車や高負荷運転に適しています。
メーカー指定の熱価を基準にしながら、自分に合ったスパークプラグを選ぶことが重要です。基本的には、今付いているものと同じ熱価を選んでおくと問題ないでしょう。