新車試乗レポート
更新日:2023.05.23 / 掲載日:2023.05.23

【ポルシェ新型カイエン】マイナーチェンジした新型をオーストリアでチェック!

文●九島辰也 写真●ポルシェ

 5月中旬、オーストリアのザルツブルク郊外で行われた新型カイエンの国際試乗会に参加してきた。三世代目のマイナーチェンジとなる。スタンダードモデルの「カイエン」、ハイブリッドの「カイエンE-HYBRID」、それと「カイエンS」のテストドライブとなる。

 そこには昨年日本導入された「カイエンターボGT」はなし。理由は排ガス規制の厳しい国ではクリア出来ず輸出する国が限られるからだ。日本は無理な様子。モーターの無いパワーソースに対する風当たりは強くなるばかりである。なので、電動化は進む。2年後にはカイエンのピュアEVが発表され、さらにカイエンターボGTを超えるパワーのV8+モーターが出現するらしい。ご時世柄トップエンドにハイブリッド車を持ってくる計画だ。

コンセプトはキープしながら、デザインをリファイン

新型カイエン

 さて、新型カイエンだが、売れているモデルだけに大きく手は入らない。というか、2002年の登場からエクステリアデザインはそんな感じだ。それだけ初代モデルのデザインワークに時間をかけたのであろう。ポルシェらしさが見事に表現され、多くのクルマ好きがそれを受け入れたことになる。

新型カイエンクーペ

 とはいえ、新型はヘッドライトユニットやリアコンビネーションランプを筆頭にボンネット、リアディフューザーなどをリデザインした。光る部分に手を入れるのはモデルチェンジの常套手段である。ライトオンの印象がかなり変わるからだ。それに今回はマトリクスLEDが標準装備されたのはニュースだろう。オプションの多いポルシェでは珍しい話だ。

デジタル化を加速させたインテリア

新型カイエン

 インテリアではメータークラスターがフルデジタルになったのに目がいく。これまでセンターに大型タコメーターを配することで伝統の5連メーターを表現していたが、新型はそれがなくなった。もはや「ポルシェ=5連メーター」という意味づけはないという判断だろう。また、オプションだが助手席の目の前にモニターが付けられるようになった。ナビや動画、電話、天気など様々な情報を表示できる。フェラーリもそうだが、この辺は高級車のトレンドだ。

 パワーソースはこれまで通り「カイエン」に3リッターV6ターボ、「カイエンE-HYBRID」に同ユニット+モーター、「カイエンS」に4リッターV8ツインターボが搭載される。最高出力はそれぞれ353ps、470ps、474ps。ちなみにターボGTは659psだそうだから、V8+モーターはそれ以上になると目される。ランボルギーニウルスSの666psを超えてしまう可能性がありそうだ。

足まわりの改良によって乗り心地が良くなった

新型カイエン

 それでは試乗した印象だが、3つのモデルに共通して言えるのは乗り心地がいいこと。特にドライブモードを「コンフォート」にするとそれを感じる。

 試乗後そこを開発陣に問うと、サスペンションシステム全体を見直したようだ。試乗車にはオプションのエアサスが付いてたが、それを3チャンバーから2チャンバーにし、ダンパーを新たに2バルブにしたという。理由は快適性の向上で、それにより高級感をアップさせる目的である。ダンパーを改良したことでエアサスのチャンバーを3つ用意する必要がなくなったらしい。

 とはいえ真骨頂は「スポーツ」と「スポーツ+」モードで、フラップが開きエキゾーストノートの音質が変わる。アイドリングで低くボボボっと唸る感じはたまらない。そしてアクセルに追従するリニアな加速とキレイに吹け上がるエンジンは最高だ。V6がそれを強く味合わせてくれる。減速時のブリッピングは歯切れ良く、大型ローターのブレーキシステムが安心感を与えてくれる。

カイエン E-HYBRID

 それじゃ3つのグレードの棲み分けだが、それはこのクルマに何を求めるか?につきる。軽快なハンドリングはV6が一歩リードだし、EVモードを持つエコ性能の見地からすれば当然ハイブリッドになる。そしてカイエンの迫力ある走りとパワーを体感したいならV8ツンターボってところだ。

 ただ、今後モーター付きのパワーソースがデフォルトになることを鑑みると、内燃機関単体のモデルが魅力的に見えてくる。もちろん価格はそれなりだが、憧れるだけの内容なのは確かだ。

まとめ

自動車ジャーナリストの九島辰也氏

 というのが新型カイエンとのファーストコンタクトだが、印象はかなりよかった。売れているモデルだけに手を入れるのは難しいが、素直に正常進化させたところが好印象となる。となると、気になるのは2年後のピュアEV。タイカンのノウハウを投入したそれもかなり期待できそうだ。業界のスポーツカーブランドを牽引するだけにポルシェの電動化戦略は見逃せない。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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