輸入車
更新日:2019.09.04 / 掲載日:2019.09.04

ボルボ特集/ボルボが良識ブランドと呼ばれる理由

VISUAL MODEL : V60 CROSS COUNTRY

写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2019年10月号の内容です)
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。

輸入車に数あるプレミアムブランドのなかでも、ボルボほどポジティブなイメージが浸透したブランドもないだろう。高品質でありながらも華美にならない、生活に寄り添う優れた道具。それは、ボルボが生まれた北欧・スウェーデンという国からインスパイアされたイメージでもあり、ボルボを愛してきたユーザーたちの立ち居振る舞い、ライフスタイルが与えてきた影響も大きい。今回は、ボルボが良識ブランドと呼ばれる理由をさまざまな角度から検証し、その魅力に迫る。

ボルボの考える良識未来をステーションワゴンに見る[NEW CAR : V60 SERIES]

VISUAL MODEL : V60 T5 Inscription

文●石井昌道 写真●内藤敬仁、ユニット・コンパス
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。


ボルボにとってブランドのコアとなるのは、いつの時代でもステーションワゴン。ワゴンには、ひとと荷物を安全かつ快適に運ぶという、モビリティの原点があるからだ。最新モデルを検証することで、そこに込められた良識と見識が見えてきた。

基礎体力を鍛えたうえでスタイルも磨き上げた

 ジャーマンスリーに代表されるプレミアム・ブランドの多くは、いわゆる押し出しが強くやや威圧的でもあるが、それに比べるとボルボは穏やかで上品だ。美しくシンプルで機能的な北欧デザインは、たしかな存在感を放ちながらも清らか。広告などでは家族を大切にするイメージが多用されているのもユニークで、プレミアムではあるものの、健全で個々のライフスタイルにあった価値を提供しているところが良識ブランドと言われる所以だろう。
 そんなボルボの基幹モデルと言えるのが、車名の頭にVが付くエステート(ステーションワゴン)だ。VはVersatilityが由来で、意味合いは多用途性、多芸、多才など。源流は1953年のPV445DUETTにまでさかのぼるが、よくある商用バンからの発展型ではなく、もとから高級で快適な多用途車だった。現在のラインアップはV60とV90で、それぞれに地上高を高めたクロスカントリーも用意されている。ちなみにモデル末期となっているV40は、エステートではなくコンパクトハッチバック。次期モデルではこれが是正されるのかどうか、まだ確定情報は入ってきていない。
 新世代ボルボはSPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)とCMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)の2つのプラットフォームを有しているが、V60もV90もSPA。特徴的なのは、エンジン横置きのFFベースながら、フロントアクスルが前出しされたことでフロントオーバーハングが短く、ノーズが長いエンジン縦置きFRのように伸びやかでスタイリッシュなフォルムが実現されていることだ。プレミアム・ブランドの本流はFRにあり、という意見もあるが、少なくともデザインにおいてボルボのそれはひけをとらない。
 驚くべきは走りにおいてもFR系と肩を並べていることだ。しなやかで快適な乗り心地ながら、たしかな操縦安定性があり、ハンドリングは素直。以前のボルボはノーズの重さや強めのダイアゴナルロール(外側前輪が沈み込む)を意識させられたものだが、新世代はそれを感じさせず、バランスのいい乗り味をみせるのだ。ジャーマンスリーはスポーティや俊敏なハンドリングに意欲を見せるが、ボルボは基礎体力こそ高いもののいたずらにそれを追わず、リラックスしてドライビングできるのが特徴でもある。それもまた良識ブランドに相応しい特性だろう。
 エンジンはすべて直列4気筒2Lだが、V90にはディーゼルがあり、V60にはない。ボルボのディーゼルは音・振動やトルク特性、燃費などに優れているが、電動化へのシフトを図っている現在、ラインアップから徐々に消えていく運命にあるようだ。とはいえ、ガソリン・エンジンの進化が著しく、十分なトルクと優れたドライバビリティがあるので問題はないだろう。今後はTwin Engineと呼ばれるプラグイン・ハイブリッドが本命となりそう。V60では比較的に手が届きやすいT6のTwin Engineも用意されている。良識ブランドに相応しい環境対応パワートレーンだが、パフォーマンスも高いので乗れば嬉しい驚きをもたらしてくれるはずだ。


Profile
自動車ジャーナリスト

石井昌道
レースの参戦経験を持つ自動車ジャーナリスト。日々、国内外で行われるニューモデルのテストドライブへ精力的に赴き、ステアリングを握る。

[V60 T5]落ち着きのなかにも若々しさを表現した室内

 水平基調のインストルメンタルパネルが、ドライバーを取り囲むように配置されたインテリア。流木をイメージした木目のドリフトウッドに代表される北欧テイストを取り入れながら、クローム加飾などによってラグジュアリーテイストを表現している。荷室容量は529Lでクラストップレベル。一方で全幅は先代より15mm狭め、取りまわし性能に配慮した。
2019年 V60 T5 インスクリプション(8速AT) ●全長×全幅×全高:4760×1850×1435mm ●車両重量:1700kg ●エンジン:直4DOHCターボ ●最高出力:254ps /5500rpm ●最大トルク:35.7kgm/1500-4800rpm ●排気量:1968cc ●新車価格帯:499万円~829万円(V60 全グレード)

V60 T6 TWIN ENGINE

 2L直4ターボの「T5」が前輪駆動、Twin Engineを名乗るPHEVモデルが4WDとなる。PHEVは、253馬力の「T6」と318馬力の「T8」をラインアップ。

V60 CROSS COUNTRY

 ラインアップのなかでもっともマッシブなスタイルが与えられたV60。ダイナミックでドライバー中心というキャラクターをデザインでも表現している。

乗る人の笑顔の追求が良識安全を進化させ続ける[NEW CAR : XC SERIES]

VISUAL MODEL : XC60 T5 AWD Inscription

文●石井昌道 写真●内藤敬仁、ユニット・コンパス
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。


ボルボ急成長の原動力となっているのが、SUVのXCシリーズ。数多くのブランドがこのセグメントに集中するなかで、なぜボルボのXCシリーズが支持を集めているのか、その理由を紐解く。

ニーズに対応する一方で社会的責任に向き合う

 世界的にSUVが人気となっているが、ボルボとてそれは同じ。史上最高を記録した昨年の世界販売の約64万台のうち、半数以上をXCシリーズが占めている。
 セダンのS、エステートのV、SUVのXCのうち、大・中・小の90・60・40が新世代商品として出揃っているのはXCだけ。CMAプラットフォームを採用する唯一の車種がXC40であり、XC60とXC90はSPAプラットフォームとなる。欧州プレミアムでは、シリーズでデザイン・テイストを共通化してサイズの違いはあってもイメージは同じということが多いが、ボルボのXCシリーズは興味深いことに個々でテイストを変えてきた。デザイナーいわく、靴にたとえればXC90はエレガントでフォーマルな革靴、XC60はスポーティで上質なスウェードの靴、XC40はプレミアム・スニーカー。小さいほうが若々しくカジュアルになっていくが、サイズによるヒエラルキーがないのが良心的とも言える。自らのライフスタイルに合わせて選択すればいいのだ。
 XC90は新世代ボルボの第一弾として2016年に登場。その堂々たる体躯は狭い日本の都市部では持て余すかもしれないが、それでもこのセグメントとしては好調なセールスを記録している。興味深いのは今年新たにディーゼル車が追加されたことだ。D4よりもパフォーマンスに優れるD5は、最大トルク49kgmでターボラグを解消するパワーパルスも搭載。まもなく全車電動化(マイルドハイブリッド含む)に取り組み、ディーゼルエンジンは開発をしないと表明しているボルボではあるが、現段階で重量級の大型SUVに対するもっとも優れたソリューションは、やはりディーゼルであることは否めない。理想を掲げて未来に突き進みつつも、リアリストでもあるわけだ。
 XC60はボルボのベストセラー。ほどよいサイズとビジネスカジュアルのようなイメージのバランスがいいのだろう。最近のニュースとしてはXC90とともにマイルドハイブリッドの展開が間もなく始まりそうだということ。ガソリンはT、ディーゼルはDが頭に付くのに対してBが付くようになる。
 日本ではジャストサイズのXC40は人気が高く、納車待ちに時間がかかるほど。前述のようにサイズによるヒエラルキーがないばかりか、ブルドッグのようなエクステリアに愛着がわくひとも多いことだろう。CMAのシャシー性能は想像以上に高く、SPAにもひけをとらない。
 ボルボの良識ブランドたる所以のひとつは安全性へのこだわりもある。古くから事故現場に急行して検証を重ね、衝突実験時のダミー人形は男性、女性、子供と用意してすべてのひとに平等な安全性を考慮。また、3点式シートベルトの特許を無償開放したように、収集したデータや研究結果を公表して、交通社会全体に寄与する姿勢にも頭が下がる。
 環境対応と安全性の追求は自動車メーカーが果たすべき社会的責任だが、どこよりも真摯に取り組む姿勢がボルボにはある。だからこそ知的なイメージが高く、良識ブランドたらしめているのだ。

[XC60]プレミアム・ミドルクラスSUVの定番モデルに成長

 安全装備をつねにアップデートしているのもボルボの特徴。2019年3月の改良でXC60の「CTA(クロス・トラフィック・アラート)」に衝突回避・被害軽減ブレーキ機能を追加している。ラグジュアリーとカジュアルさが共存するスタイルは60シリーズ共通の個性。全車AWDで、パワートレーンもディーゼルからPHEVまで幅広く用意されている。
2019年 ボルボ XC60 T5 AWD インスクリプション(8速AT) ●全長×全幅×全高:4690×1900×1660mm ●車両重量:1830kg ●エンジン:直4DOHCターボ ●最高出力:254ps /5500rpm ●最大トルク:35.7kgm/1500-4800rpm ●排気量:1968cc ●新車販売価格帯:644万円~924万円(XC60 全グレード)

XC40

 モデル間のヒエラルキーを無くすという戦略はグレードにも適応される。ベーシックグレードのモメンタムでもこのとおりポップで魅力的な仕上がり。

XC90

 フラッグシップとして君臨するXC90は、全長4950×全幅1930×全高1775mmの堂々たる車体の持ち主で、ボルボ車で3列シートを備えるのはこのXC90のみ。身長170cmまでの乗員であれば、3列目でも1列目と同等の安全性を約束する。

SAFETY FUTURE/つねに先をゆく安全対策 そして、これから向かう未来

文●ユニット・コンパス 写真●ボルボ

クルマは我々に移動の自由を提供する一方で、交通事故がもたらす社会的損失は大きな社会の課題だ。その問題に真正面から取り組んでいるボルボの現状と未来を報告する。

交通事故死傷者ゼロを目指すボルボの次の一手

 ボルボには、安全性の高い自動車だというイメージがある。世界初の3点式シートベルト実用化や、それにともなう特許権の開放というエピソードもそのイメージに花を添える。
 1927年の創業以来、ボルボは安全をブランドのコアバリューに添え、独自の事故調査隊による実地調査を踏まえた知見により、安全技術に磨きをかけてきた。一般的に各自動車メーカーは各種アセスメントの結果をターゲットに、自動車の安全装備を開発しているが、リアルワールドでの結果を重視するボルボでは、そういった開発姿勢は行わない。たとえば、現行の衝突試験は男性を模したダミー人形にて行われる。そのため、多くのクルマは、女性がむち打ち症になるリスクが男性よりも高いというのだ。性別や体格に関係なく、すべての乗員に安全性を提供する。事故調査隊による調査は、そのために欠かせないフィールドワークだ。
 2019年3月、ボルボはこれまで培ってきた貴重なデータや研究成果をまとめた論文を一般に向けて公開するデジタルライブラリー「E.V.A.プロジェクト」を発表した。いわば秘伝のタレとも言うべき貴重なデータであるにも関わらず、これらをすべて無償で解放するという。
 その目的は、すべてのひとの安全のため。2008年からボルボは、新型車での死亡者や重傷者をゼロにする「Vision2020」を続けてきたが、広く世の中に安全の知見を広げることで、交通事故による死傷者のない世界を作り上げようとしている。この取り組みは3点式シートベルトの誕生60周年を記念したもの。知識の共有はボルボにとって変わらぬ伝統である。
 そして未来に向けてボルボは、安全への取り組みをさらに加速させている。2020年以降、全車の最高速度を時速180kmに制限すると発表するなど、一部地域での商品力低下も辞さない構えだ。
 クルマが将来においても自由であるために。ボルボの今後に期待だ。

自転車用ヘルメットとの衝突試験を世界で初めて実施

 市街地のような見とおしの悪い交通状況でありがちなのが、自転車との接触事故。ボルボでは、サイクリストがかぶるヘルメットがボンネットに衝突した際に、どのようなことが起きるかを世界で初めて実験。安全アセスメントにはない項目だが、より安全なクルマを開発するべく、この実験で得られたデータを活用していくという。

死亡事故ゼロへの切り札 ドライバーモニター標準化へ

 ボルボの独自調査によれば、交通事故による死傷者をなくすには、「速度超過」、「飲酒運転」、「注意力の低下」という三つの課題を克服する必要があるという。そこでドライバーの状態異常を車両が検知するためのインカーカメラの開発を進めている。異常が検知された場合は、車両が運転に介入するというシステムだ。

速度の出し過ぎを抑制する「ケアキー」を全車に

 ボルボは2021年から全モデルに「ケアキー」を標準装備する予定だ。このキーには速度制限をかけることが可能で、運転経験の浅いドライバーや高齢ドライバーにクルマを貸し出す際などにも役立つとしている。なお、同様の仕組みは90シリーズに「レッドキー」としてすでに導入済みで、オプションとして購入可能となっている。

自動運転車の量産モデルを発表 多重の安全装置を搭載

 ボルボとウーバーの間で共同開発していた自動運転車の量産モデルが、いよいよ生産開始となる。XC90をベースにしたこのモデルは、ウーバーによる自動運転システムを簡単に搭載できる設計となっているのが特徴で、車体各所にセンサーがビルドインされている。ウーバーは2022年までに無人タクシーサービスなどを運用予定だ。

ルーフレールを使って自動運転に必要なセンサー類を装着。これがクルマの目や耳となる。

仮想現実を使った開発環境を実現 新技術の実用化をスピードアップ

専用の施設内でヘッドセットを被った状態で運転。仮想の装備を実車を使い試験できる。

 ヘッドセット「XR-1」は、カメラの映像をリアルタイムでデジタル化し、アプリのコンテンツと重ねて表示するシステム。ボルボがこの技術を導入したのは、今後さらなる高度化が予想される安全装備などのアイデアをすばやく評価するため。たとえばドライバーの注意力を評価するような装備がこれによって早期に実用化するという。

POLESTAR/高級EVブランドとして発進した「ポールスター」ボルボと似て非なるその存在

文●ユニット・コンパス 写真●ポールスター

レースでの活躍でその名を知られたポールスターが、EV専門ブランドとして独立。その最初の市販モデルが、いよいよ一部地域で販売開始となる。

EVに特化することで先鋭化するポールスター

 2019年以降に発売される全モデルの電動化を表明したことで、世界から大きな注目を集めたボルボ。その取り組みをピュアな形で凝縮させたのが、グループ傘下に作られた新ブランド「ポールスター」だ。
 かつてボルボ車を用いたレース活動によってブランドの名声を高めていたポールスターが新たな舞台として選んだのが「電動化専門ブランド」という道だった。2017年6月にブランドを立ち上げると、同年10月には最初のプロダクトとなる「ポールスター1」を発表。2019年中の販売を目指し開発を続けている。
 「ポールスター1」はエンジンにより前輪を、モーターで後輪を駆動するプラグインHV。そのスタイルは2013年に発表されたコンセプトカー「コンセプト・クーペ」のデザインを取り入れたもので、バッテリー搭載による重量増をカバーするべく素材にカーボンを採用している。
 続いて2019年3月には第2弾となる「ポールスター2」も発表。こちらはフルEVで前後に搭載されたモーターが4輪を駆動させる。こちらは2020年から生産を開始し、価格は5万9900ユーロ(約710万円)を予定。通常の販売に加えて、利用期間に応じて料金を支払うサブスクリプション方式も検討されている。
 ボルボと相似形をとりながらも、さらに未来に向けて先鋭化されたブランドとなっているポールスター。日本への導入は未定とのことだが、その美しいスタイルをこの目で見られる日が待ち遠しい。

フルカーボン製のボディとすることで、重量増を最小限に抑えている「ポールスター1」。

美しいクーペスタイルが魅力。市販価格は2000万円程度になるとされている。

プレミアムファストバックEVとして開発された「ポールスター2」。蓄電容量は78kWhで1回の充電で最大500kmの走行を可能とする。

秘められた力を引き出す後付け可能なソフトウェア「POLESTAR PERFORMANCE SOFTWARE」を試す

文と写真●ユニット・コンパス
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。

施工に必要な時間は1時間ほど。バッジ以外はノーマルと見た目も変わりがない。だが、乗れば確実に変化を感じられるプログラムだ。

よりクルマとの一体感を感じられる味付け

エンジンの出力特性だけでなく、トランスミッションの変速タイミングやステアリングの味付け、一部車種ではトルク配分にまでチューニングによる変更が行われる。

 調律するという音楽用語に由来するチューニングは、クルマが本来持つパフォーマンスを引き出す施策だ。
 ボルボはメーカーでは極めてユニークなことに、メーカー純正のコンピューターチューニングプログラム。「ポールスター・パフォーマンス・ソフトウェア」を販売している。
 舞台は箱根のワインディングで、試乗車はXC90 D5。ノーマルとの大きな違いを感じたのは上り坂の再加速。アクセル操作に対するタイムラグが明らかに少なく、なおかつ希望する速度に達するまでの時間も短い。イメージとクルマとの動きにあるズレが少なくなるため、多くのひとが運転しやすいと感じるはずだ。
 メーカー純正ゆえ、保証や燃費への悪影響もないというのも嬉しい。新車購入時でももちろんいいが、1年ほどノーマルを味わってからチューニングによる変化を楽しむのもいい。中古車にも施工可能だ。

「ポールスター・パフォーマンス・ソフトウェア」を導入すると、ドライビングモードの切り替えに専用のモードが登場。こうした細やかな作り込みはメーカー純正プログラムならではだろう。

V40ではノーマルよりもむしろなめらかで上質な加速フィーリングを体感。加速のつながりがいい印象だ。対応車種は公式HPで公開されており、価格は工賃込みで18万8000円。

VOLVO V40相場徹底分析

VISUAL MODEL : V40 D4 R-DESIGN Polester Edition

文●ユニット・コンパス 写真●内藤敬仁、ユニット・コンパス
※中古車参考価格はすべてグーネット2019年8月調べ

ボルボのエントリーモデルでいて、エレガントなデザインと手頃なボディサイズで、たちまち人気モデルになった現行型V40。登場から6年以上が経過し、中古車市場にはたくさんの物件が流通している。言わば、そろそろ買い時が到来したということ。今回は、現行型V40のヒストリーを振り返りながら、クルマの魅力、中古車動向など、多角的に紹介していこう。

多彩なバリエーションで選ぶ楽しさがあるV40

 2013年2月に発表されたボルボのエントリーモデル「V40」。90年代にも同じ車名を持つクルマが存在したが、新型はショートワゴン風のボディが見どころ。兄貴分のV60よりもひとまわり小型のボディは取りまわし性もよく、新車販売は好調。そのおかげで、良質な中古車が市場に数多く流通することになった。
 V40の大きな魅力のひとつは、ガソリンのほか、クリーンディーゼルが選べること。V40が属するCセグメントは、日本ではディーゼルを設定しないことが多いので、これは大きな強みである。さらに、ボルボの上級モデルとほとんど変わらない安全装備(シティセーフ)が全車標準となり、安全性にこだわったクルマ選びをするひとにもオススメできる。
 気になる中古車価格帯は80万円~380万円と幅広い。5年~6年落ちの物件であれば、100万円以下の予算で探せるのが魅力。低価格ゾーンにある物件も、走行距離は5万km前後に留まるものも少なくないので、比較的安心したクルマ選びができるはず。グレードは、ディーゼル搭載車の割合が多いが、相場が低いのは1.6Lガソリンの「T4」。初期投資を優先するか、ランニングコストを優先するかで悩むところだ。
 そのほか、クロスカントリーやポールスターチューンのスポーツモデルを設定するなど、V40の選択肢はじつに多彩である。はじめての輸入車としてもオススメで、国産車からの乗り換えにもぴったり。このクルマを足がかりに、ボルボの世界に浸ってみるのも一興と言えそうだ。

2013年式 ボルボ V40 D4 Rデザイン ポールスターエディション(8速AT) ●全長×全幅×全高:4370×1800×1440mm ●ホイールベース:2645mm ●トレッド前/後:1545/1535mm ●車両重量:1540kg ●排気量:1968cc ●エンジン:直4DOHCターボ ●最高出力:190ps/4250rpm ●最大トルク:40.8kgm/1750~2500rpm ●サスペンション前/後:ストラット ●ブレーキ前/後:マルチリンク ●タイヤ前後:225/40R18

 V40には、数多くの限定車がリリースされた。そのなかのひとつが、ポールスターチューンのモデル。モータースポーツで培ったパーツを装着し、内外装や足まわりに専用パーツが与えられる。走りを楽しみたいひとにオススメ。

VISUAL MODEL : V40 T5 R-DESIGN

写真は「T5 Rデザイン」。フロントバンパーやシルクメタル仕上げのディフューザー、専用18インチホイールを装着。ダンパーとスプリングも強化され、スポーティな走りが楽しめる。

MODEL HISTORY

[2013.2]新型V40を発表

 2代目V40は、ショートワゴン風の5ドアボディを採用。エンジンは1.6L直4ターボを搭載し、180馬力を発揮。JC08モード燃費は16.2km/Lという低燃費も実現している。「シティセーフ」を全車標準装備するのも大きな魅力だ。

[2013.4]「T5 R-DESIGN」を追加

 専用内外装を採用したスポーティモデルが登場。エンジンは2L直5ターボを搭載し、213馬力という高出力を発揮する。

[2013.6]2014年モデルを発表

 「ヒューマンセーフティ」に、自転車を検知する機能が加わり安全性を強化。「SE」にナビゲーションパッケージが標準化された。

[2013.11]安全性をさらにアップ

 従来パッケージオプションの安全装備10種類をV40シリーズ全車に標準化。これにともない、価格も見直されている。

[2015.7]クリーンディーゼルを追加

 V40に待望のクリーンディーゼルエンジンが設定された。2L直4ターボが搭載され、最高出力は190馬力、最大トルクは40.8kgmを発揮する。8速Tを組み合わせることで、JC08モード燃費は最大21.2km/Lを実現している。

[2015.8]新開発1.5Lターボ「T3」を追加

 従来の1.6L直4ターボ「T4」に代わり、1.5L直4ターボ「T3」が加わった。トランスミッションは6速ATが組み合わされる。

[2016.7]V40をマイナーチェンジ

 エクステリアを一新するマイナーチェンジを実施。新型XC90で導入されたヘッドライト形状など、最新のボルボフェイスに移行した。安全面では「歩行者エアバッグ」が全車標準装備となった。

T字型のポジションランプが特徴の「トールハンマー」デザインが見どころ。フロントグリルデザインも改められた。

INTERIOR/高品質な素材をふんだんに使用

 エントリーモデルに位置付けられるものの、室内はプレミアムブランドにふさわしい高級なつくり。中央に備えられたナビゲーションも見やすく、運転席はどんな体形のひとでもフィットする。衝突回避軽減ブレーキをはじめとする多くの安全装備を盛り込んだ「シティセーフ」が全車に標準装備されるのもうれしい。

本革/パーフォレーテッドレザーのコンビネーションシートを採用。前後ともにゆとりのある室内空間は、大人5名が快適なロングドライブを約束してくれる。

荷室は、バッグ用のフックとディバイダー機能付き「マルチファンクション2レベルラゲッジフロア」を採用。高い機能性と収納力が自慢のポイント。

写真は「T5 Rデザイン」で、メタリックなパーツが散りばめられる。スポーティさが所有欲をかきたてる。

ENGINE/ガソリン、ディーゼル合わせて4機種設定

 ガソリンは1.5Lターボ「T3」、1.6Lターボ「T4」、2Lターボ「T5」の3機種、これに加えてディーゼルが2Lターボ「D4」と、全4機種のエンジンを設定。また、ディーゼルが追加された2015年7月、「T5」が5気筒から新設計4気筒へと換装されている。また、「T3」は「Drive-E」と呼ばれる軽量なエンジンで燃費性能も優秀だ。

VARIATION

標準モデル/もっともスタンダードなフェイス

 ひと口にV40と言っても、さまざまなスタイルが存在する。スタンダードな仕様は、飽きのこないシンプルなデザインが魅力(写真は後期型)。ガソリン「T4」、「T4 SE」、「T3」やディーゼル「D4」などがこれに該当する。ホイール径は16インチ(SEは17インチ)とジャストサイズで、街乗りならこれがベター。中古車価格も、エアロパーツをまとったRデザインに比べると手頃となっている。

クロスカントリー/ボルボのタフネスさをアピール

 ノーマルと比べて30mm高い全高を持つクロスオーバーがクロスカントリー。前後バンパー形状も専用デザインとなり、4WDシステムを搭載することで、外見だけには留まらない悪路走破性能も備える。立体駐車場にも入庫可能だから、都市部での使い勝手も良好だ。エンジンバリエーションは、当初「T5」のみだったが、「T3」や「D4」なども設定し、V40のもうひとつの顔となっている。

ポールスター/Rデザインをさらにチューニング

 V40のスポーティグレードと言えば 「Rデザイン」だが、これをベースにポールスターのパーツでチューニングを施した限定車もリリースされた。写真は「D4 Rデザイン ポールスターエディション」で、50台限定で登場。最高出力は200馬力に高められ、ステンレス製エキゾースト、専用サスなどが組み込まれている。ほかにも「D4 Rデザイン ポールスターエディション」が発売された。

V40 MARKET DATA

グレード/ディーゼル車の割合が多い

 V40の登場から遅れて投入されたディーゼルエンジンだが、中古車の割合は全エンジンタイプのなかでもっとも多い。次に多いのが、1.6L直4ターボの「T4」。高出力を誇る2L直5ターボ(後に直4ターボ化)の「T5」はやや少なめ。なお「D4」は数は多いものの、相場はやや高めである。

走行距離/3万km未満の低走行車が豊富

 登場から6年以上が経過するが、市場に流通する物件は3万km未満が6割弱を占めており、全体的に低走行車が中心。アフターパーツでカスタムされた個体も少なく、安心したクルマ選びが可能。ただし、一見綺麗な物件も修復歴の有無、記録簿などは必ずチェックしておきたい。

中古車参考価格帯

80万円~380万円(※13年~19年 全グレード)

CLASSIC VOLVO/昔のボルボをいつまでも乗るという願いを実現

940 ESTATE

 ボルボ・カー・ジャパンでは、「クラシックガレージ」と銘打って、往年のボルボをリフレッシュおよび販売するという試みを行っている。そのPRとして、940エステートを試乗する機会があった。このモデルは、ボルボの歴史のなかでもとくに価値あるもので、現在でも多くのオーナーが愛用している。対象車種は100系、200系、700系などかぎられてはいるが、かつての味わいが今でも楽しめるのは嬉しい。
 そんな940エステートだが、一般的な中古車市場では50万円前後の価格から入手可能。距離改ざん車も目立つから、注意して探そう。

中古車参考価格帯:100万円~230万円(※82年~93年 全グレード)

 角ばった箱型は、昔のボルボのトレードマーク。最近の洗練されたデザインもいいが、ボルボの質実剛健さを感じさせるこのフォルムがたまらないと感じるユーザーも少なくない。写真はリフレッシュされた個体なので、内外装やエンジンルームは非常に美しい。

P1800

 ボルボ・アマゾンのシャシーに、美しいクーペ/シューティングブレーク風ボディを架装したのがP1800。丸型ヘッドライトや、流線形のフォルムは、一見するとボルボのイメージとは異なる。今でも価値の高い1台だ。

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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