【グー連載コラム】永福ランプのマニアック車パトロール隊（2021年7月）

時空を超えたデザインだから!
　住宅街を何気なく歩いていた私は、思わず息が止まった。ミラージュディンゴ前期型が、無造作に止められていたからだ！
　ミラージュディンゴが登場したのは99年。初めて見たときはつい爆笑してしまった。このカタチはいったい何だ!?　冗談なのか!?　と。
　元自動車デザイナー氏との対談では、「なぜこういうとんでもないデザインのクルマが、会議で承認されてしまうんでしょう？」と、率直な疑問をぶつけた。
　答えは、「発売が迫っているから、もうこれでいくしかないといった理由で、こういうものが世に出てしまうことがある」。ちょっと昔の日本は、商品力よりもスケジュールが優先されるような組織風土があったのだという。なるほど。
　とにかくミラージュディンゴは、私にとって「究極の失敗自動車デザイン」である。あまりにもデザインが大失敗すぎてまったく売れず、2年後にはこの個性的な異形丸型マルチリフレクターヘッドランプも廃止され、個性のないフツーの顔に整形されてしまった。
　大失敗で販売大不振のうえに、この顔のミラージュディンゴの販売期間はわずか2年。街で見かける機会は年々少なくなり、逆に私はミラージュディンゴを見かけると、食い入るように見つめるようになった。愛すら感じるようになったのである。その実物が、無造作に目の前に止めてあるとは！　なんたる僥倖！
　思わず駆け寄り抱きしめたくなったが、改めて間近で見るミラージュデンゴは、やっぱり信じられないほど不格好だった。
　グーネットでミラージュディンゴを検索したところ、なんと1台しかヒットしなかった。99年式、走行わずか2.5万kmで、車両本体9.8万円！　写真を見る限り、新車同様のグッドコンディションだ。ひょっとして農家の納屋の奥にでも格納されていたのだろうか、稀少なスーパーカーのように……。

1999年　注目を集めてデビュー
ベースはミラージュながら、高い全高、ヘッドライト、ブリスターフェンダーなどの個性的スタイルで注目された。

1999年　年末に早くもマイチェン
1月にデビューし、12月に早くもマイナーチェンジ。内容はグリルデザインの小変更や、4WDモデルの追加など。

2000年　1.8L仕様を追加
1.5L直4のみだったエンジンに、1.3Lと1.8Lの直4が追加される。1.8Lはエアロパーツも装着された。

2001年　マイチェンで顔変更
横長ヘッドライトに横縞グリルというオーソドックスなフロントデザインへと変更される。装備も充実化された。

2002年　4年で生産終了
フロントフェイス整形の甲斐もなく、国内生産が終了。コルトに跡を譲る。その後も中国では生産されていた。

ミラージュディンゴに強い思い入れを持つ者は、世界に私くらいしかいないかもしれないが、個人的には超絶マニアックな存在。流通台数わずか1台と知れば、ますますその思いは強まる。この世からミラージュディンゴが絶滅しないことを祈る!

（掲載されている内容はグー本誌2021年8月号の内容です）※中古車価格はグーネット 2021年6月調べ。記事中の価格は参考であり、中古車価格を保証するものではありません。