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ベンツ Vクラス(W639) のブレーキ修理作業を行いました。
元々別な作業（板金）で入庫していた車両でしたが、工場内で車の移動している時にブレーキに違和感を感じました。
違和感の内容はブレーキが深い、でした。ペダルが必要以上に奥に入っていく感じです。

気になったので点検をしてみたところ片側のパッドだけ偏摩耗をしていました。その原因を探るため分解をしていくと…ブレーキのキャリパースライドピンが固着してしまっており正常にブレーキが作動していませんでした。

フロントブレーキは通常、片側にピストンがあり、キャリパーを支えるピンが動くことで両方のパッドでブレーキディスクを押さえてブレーキが利きます。ここが固着してしまうとキャリパーが動かなくなってしまい、片側（ピストン側）のパッドのみでブレーキをかけることになってしまいます。そして、片側の摩耗が進んでしまうことでブレーキを利かせるためにペダルを多く踏まなくてはならなくなり、ブレーキが深くなります。

キャリパーを分解してみると片側のスライドピンがサビで完全に固着してしまっていました。車検整備の際にブレーキをきちんと点検・整備して、給油（グリスアップ）していれば、ブーツが破れて水分が入ったりしない限りはこのようなトラブルはなかなか起こりません。また、車検整備の際にパッドの偏摩耗に早く気づいていれば完全に固着する前に気づけた可能性もありました。（なお、車検はほかの工場で実施した車両でした）

他の整備士の仕事に文句を言ってもブレーキが直るわけではないので作業を進めていきます。まずは固着しているスライドピンを取らなくてはどうしようもありません。取り外せなかったり、スライドピンの入る部分が痛んだり変形していた場合、キャリパーアッセンブリーの交換となります。なお、この車両のブレーキはブレンボー社のブレーキが使用されており、キャリパーアッセンの価格は８万円OVERでした。

キャリパーを車両から取り外し完全に固着しているスライドピンを取り外していきます。力任せにひたすら叩いたり、ガスで炙ったりして取ってもキャリパー側を痛めてしまったら元も子もないので、焦らず慎重に作業を行い四苦八苦の末、スライドピンの摘出に成功しました。幸いなことにキャリパー側の損傷はほぼありませんでしたのでスライドピン穴用のブラシで清掃を行い再使用いたしました。

スライドピンはサビが酷かったため交換です。
スライドピンとブーツ・グリスなどがセットになった純正品を使用しました。

スライドピンをグリスをしっかりと塗って組み付けました。
パッドも偏摩耗をしてしまっていたため新品に交換しました。

あとはキャリパーを切り離したのでエア抜きを丁寧に行って作業完了です。ブレーキの利きも元通りになりました。
他の作業で入庫したお車でしたが大事に至る前にブレーキの不具合に気が付けて修理できました。車検整備や定期点検の大事さを改めて感じるとともに、違和感を見て見ぬふりをしたり、放置しないことの大切さも感じる一例でした。

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担当：杉浦 肇

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