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更新日:2022.03.16 / 掲載日:2022.01.14
ルノー アルカナで新ハイブリッドシステム日本導入へ 22年春予定
ルノーは1月14日、ハイブリッドシステム E-TECH HYBRID(イーテックハイブリッド)を搭載したモデルを、順次日本に導入すると発表した。ルノー アルカナがこのE-TECH HYBRIDを搭載したモデルで、2022年春頃の導入が予定されている。
F1のノウハウを取り入れた新ハイブリッドシステム“E-TECH HYBRID”

自動車の燃費・排ガス規制が厳しくなる中、ハイブリッド技術の開発を目指してきたルノー。それまでのハイブリッド車は、街中での燃費性能には優れているものの、欧州で求められるレスポンスの良いドライブフィールや、高速域での性能に優れているとはいえず、欧州の交通環境には十分ではないと考えられていた。また、大きく、重くなりがちなハイブリッドシステムを、同社の得意とする中・小型車に搭載するためには、コンパクトで軽量なシステムとすることが不可欠。これらの課題を解決するために、ルノーはF1で培ったノウハウを取り入れた新しいハイブリッドシステムを開発。これがE-TECH HYBRIDだ。
E-TECH HYBRIDには、F1を始めとするモータースポーツで使用されるドッグクラッチを採用。軽量化、コンパクト化を果たしたトランスミッションを組み合わせたシステムだ。高い燃費性能はもちろん、モーターとエンジンそれぞれが得意とする領域で性能を発揮することで、街中ではストップアンドゴーをスムーズにこなし、追い越し時や高速道路では力強い加速が得られるなど、従来のパワートレーンを凌ぐドライブフィールを実現している。
LEGOブロックが活躍⁉ハイブリッドシステムの開発

燃費が良く、ドライブフィールに優れたハイブリッド車を実現するためには、エンジンとモーターを繋ぐトランスミッションを、軽量コンパクト化することがカギとなる。そこで活用されたのが、ルノー/アルピーヌがもつF1の技術だった。
F1のトランスミッションには、コンパクトで動力伝達効率に優れたドッグクラッチが使用される。今回このドッグクラッチを使い、従来のクラッチやシンクロナイザーさえも排したコンパクトなトランスミッションが考案された。
このトランスミッションの実現性を検証するために使われたのが、工業用のLEGOブロックだという。ルノーのエンジニアは、LEGOブロックを使ってトランスミッションのモデルを組み上げ、この仕組みが実際に機能するかどうかの検証を実施。同時に、F1のエンジニアと協業して、F1のノウハウを活用した技術開発も進められた。
F1では、2014年から新たにエネルギー回生システムを組み込んだハイブリッドシステムを導入したパワートレーンを使用している。エンジンとふたつのモーターを組み合わせたこのパワーユニットを効率よく、速く走らせるソフトウェア開発のため、F1チームは膨大な走行データをAIを使ってシュミレーションし検証を行う。メンテナンス性、デバックのしやすさ、信頼性を高めた結果、ソフトウェアは徐々にシンプルなものとなり、これは結果的にE-TECH HYBRIDが必要とするものに近くなっていた。さらにルノーのエンジニアは、エンジン効率、ミッション、モーターの分野の経験とノウハウ、そしてF1チームの開発スピードと課題解決の速さなどを、市販車のハイブリッド技術の開発に活かしていった。
全速度域で爽快なドライブフィール ルノーの考えるハイブリッド

こうして、F1のノウハウを取り入れ開発されたルノー独自のハイブリッドシステム E-TECH HYBRID。このハイブリッドシステムは、メインモーターであるE-モーターとHSG(ハイボルテージスターター&ジェネレーター)という2基のモーターと、1.6L 4気筒自然吸気エンジン、そしてこれらを繋ぐトランスミッションのドッグクラッチマルチモードATで構成され、従来のパワートレーンにはないスムーズな変速とダイレクトな加速を両立させる。このエンジンには、アライアンスエンジンのHR16が採用されたが、エンジンマッピング、ピストン、コネクティングロッド、クランクシャフトなど、いくつかのパーツをE-TECH HYBRIDに合わせるため、再開発されている。
エレクトリックモーターは、静かで滑らかな走り出し、市街地でのスムーズなストップアンドゴー、追越し時や高速域での加速ではエンジンを瞬時にアシスト。いっぽう、高速域での力強い走りはエンジンが受け持つ。欧州車ならではのレスポンスの良いドライブフィールが全速度域で楽しめるのが、E-TECH HYBRIDの最大の特徴といえる。
E-TECH HYBRIDシステム概要

■革新的なハイブリッドシステム
2つのモーターとガソリンエンジン、これらを最適に組み合わせるドッグクラッチマルチモードATで構成。
・E-モーター(メインモーター) 36kw / 205N・m
・HSG(ハイボルテージスターター& ジェネレーター) 15kw/50N・m
・1.6L 4気筒自然吸気 エンジン 94ps/148N・m
E-TECH HYBRIDは、150以上の特許を取得
■ドッグクラッチマルチモードAT
ドッグクラッチを使用することで、一般的なクラッチやシンクロナイザーさえも省き、軽量化とコンパクト化を図ったギアボックス ドッグクラッチマルチモードATを使用。モーター、エンジンの動力を切れ目なく、効率よく引き出す。
■F1の技術とノウハウの活用
E-TECH HYBRIの開発において、市販車の開発部門はF1で培われたハイブリッドのハードウェア技術、エネルギーマネジメント分野の経験とノウハウを活用。
■リチウムイオン電池
ルノー アルカナ、ルノー ルーテシア、ルノー キャプチャーには、1.2kWh(230V)のバッテリーを装備。燃費とCO2排出量を大幅に削減し、条件が許せば、市街地走行時の最大80%の時間をフルエレクトリックモードで走行し、最大40%の燃料削減が可能(EU WLTP Urban mode)。
■レスポンスの良さとエネルギーマネジメントの最適化
2つの電気モーターとエンジンに、ドッグクラッチマルチモードATを組み合わせることで、モーターとエンジンを効率良く組み合わせた多彩な運転モードを実現。
・発進:発進時は、エンジンを使用せずにモーターのみで駆動。このため、すぐに力強いトルクを得ることができ、スムーズでレスポンスのよい発進が可能。
・走行状況に応じたパワートレインの最適化:走行状況に応じて、シリーズ、パラレル、エンジン駆動のみと、効率を最適化。エンジン側に4つ、モーター側にに2つあるギアを組み合わせ、状況に応じて最適なモードを自動的に選択し、燃費の低減、排出ガスの削減、レスポンスの良い快適な走りをもたらす。
■エネルギー回生
・減速時のバッテリー回生:車が減速する際に発生する運動エネルギーを回収し、電気に変換してバッテリーを充電。
・Bモード:ギアポジションをB(ブレーキ)位置にすると回生能力が高まり、より多くのエネルギーを回収することが可能。
・回生ブレーキ:ブレーキペダルを踏み込むと、電気アシストブレーキシステムが作動。必要な場合は、ブレーキパッドを介してさらに「機械的」なブレーキが作動。ここでも電気モーターが追加の制動力を発生し、余分なエネルギーを回収してバッテリーを充電。