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更新日:2021.08.17 / 掲載日:2021.08.12

【試乗レポート VW ゴルフヴァリアント】使い勝手抜群! このワゴンには価値がある

VW ゴルフヴァリアント

VW ゴルフヴァリアント

文●大音安弘 写真●ユニット・コンパス

 8年ぶりにフルモデルチェンジを遂げたVW「ゴルフ」に、早くもステーションワゴン「ヴァリアント」が追加された。しかし、今度のヴァリアントは一味違う。単なるゴルフのワゴン版と思ったら、大違いなのだ。

ゴルフヴァリアントの歴史

VW ゴルフヴァリアント

VW ゴルフヴァリアント

 ゴルフヴァリアントの歴史は、第3世代のゴルフ3よりスタート。万能選手のゴルフに、もっと荷物が積めたなら……と考えたのだろう。ゴルフのセダン版となる「ジェッタ」は、初代となるゴルフ1より設定されているから、ワゴンの投入は、クルマの使われ方や普及など、世相を踏まえたものだったと推測される。

 日本には、95年より導入を開始。当時は、分かり易く「ゴルフワゴン」と名乗り、ゴルフ5より、世界共通のヴァリアントに改めた。これまでのヴァリアントの特徴は、ゴルフの積載能力を高めるべく、ボディをストレッチしたゴルフのロングボディ版である。但し、ホイールベースは共通で、リヤオーバーハングのみを拡大していた。しかしながら、現代の乗用車ニーズは広さに特化され、ファミリーカーの主役も、ミニバンやSUVにシフト。そこで新型ゴルフの開発では、今までのワゴン作りでは、生き残りは難しいと判断したのだろう。そこで新型ヴァリアントは、初となる専用ホイールベースの採用を決断している。下記に、ゴルフ8(新)とゴルフ7(旧)のボディサイズの違いまとめた。

新旧ゴルフのボディサイズ(標準車のカタログ値比較)

 全長(mm)全幅(mm)全高(mm)ホイールベース(mm)
ゴルフ8ヴァリアント(2021年)4640179014852670
ゴルフ8ハッチバック(2021年)4295179014752620
ゴルフ7ヴァリアント(2014年)4575180014852635
ゴルフ7(2013年)4265180014602635

ハッチバックに比べて後席の快適性が高まった

VW ゴルフヴァリアント

VW ゴルフヴァリアント

 従来型となるゴルフ7は、ホイールベースは共通なのに対して、新型となるゴルフ8は、ヴァリアントの方が50mmも長い。しかしながら、新旧ヴァリアントの全長を比べると20mmの差に留められている。これはボディの拡大がラゲッジスペースではなく、後席に重点を置いていることを示すもの。ずばり、新ヴァリアントの魅力は広々とした後席なのだ。

 ヴァリアントの特徴であるラゲッジスペースは、従来型も605L~1620Lと広々としたものだが、新型では611L~最大1642Lまで拡大。しかし、そのサイズは、ボディサイズに対しては控えめ。その分は、後席に充てられる。公表値では後席のレッグルームの最大値は、ゴルフ7ヴァリアント比+38mmとなる941mmまで広がった。数字にすると大した差には思えないが、後席に着座してみると、どちらも適切な姿勢が取れるが、ヴァリアントだと膝と前席との大きなゆとりが生まれる。前席との距離も増し、より視界も広がるので、気分も良い。まるでセダンのようなゆとりある後席空間をヴァリアントは叶えてくれている。ただ数値以上の差を感じるのは、ゴルフ7よりもゴルフ8ハッチバックの方が、ショートホイールベースとなるため。ゴルフ8同士でも、後席の足元スペースには大きな差があるのだ。

バランスの取れた走り。1Lエンジンとのマッチングも良好

VW ゴルフヴァリアント

VW ゴルフヴァリアント

 ホイールベースの差は、ゴルフ8の走りを明確に分ける。

 ゴルフ8ハッチバックは、コンパクトなボディを活かしたキビキビした走り味が強まった。その一方で、ゴルフ7のどっしりした乗り味ではなくなった。よりスポーティさを重視したキャラクターなのだ。ヴァリアントについては、ロングホイールベース化による落ち着いた動きを見せる。お尻だけを長くしたゴルフ7ヴァリアントで感じたアンバランスな感覚はなくなり、走りのバランスが向上。足の動きにも、セダンのようなゆとりが生まれた。

 主力となる1.0Lエンジン車は、リヤサスがトーションビームになるが、車体の動きが緩やかになったことで、大きな不満のなかったハッチバックよりも、さらに印象は良い。1.5Lエンジン車はマルチリンクとなるので、ワインディングなどの路面追従性は抜群だが、それを活かすスポーティさを求めるならば、ハッチバックの方が楽しめる。

 2名乗車で1.0Lエンジン車の「アクティブ」をワインディングで試したが、特に不満はなく、心地よいドライブが楽しめた。やはり、48Vシステムによるマイルドハイブリッド化によるモーターアシストは、かなり効果的。上り坂の発進時でも不満なし乗員や荷物の増加にもしっかりと対応できるだろう。もちろん、如何なるシーンでも俊敏さや力強い加速を求めるならば、1.5Lエンジン車にすべきだが、ヴァリアントの深みのある落ち着いた走りの字ならば、1.0Lエンジンとの相性は良く、ベストな選択だと思う。

現代に相応しいアレンジを図った質実剛健なゴルフの象徴

VW ゴルフヴァリアント

VW ゴルフヴァリアント

 ヴァリアントのグレード構成や装備については、ハッチバックと全く同じ。

 1.0Lエンジン車が、エントリーの「eTSIアクティブベーシック」と装備を強化した「eTSIアクティブ」の2種類。1.5Lエンジン車が、充実装備の「eTSIスタイル」とスポーティな「eTSI Rライン」の2種類となる。大きな違いは、オプションパッケージにハンズフリー対応の電動テールゲートが含まれるくらい。

 価格は、ハッチバックのグレードに対して約14万円プラスとなる。一人もしくは夫婦で使いならば、軽快な走りも楽しめるハッチバックも良いが、ファミリーや趣味にクルマを使うオーナーなら、この14万円がコスパを高めてくれる。後席とラゲッジスペースの広さには、それだけの価値がある。

 ゴルフ版ワゴンの再定義を図った新ヴァリアントだが、これは同時に、ゴルフの再定義でもある。ひょっとすると、ゴルフ1以来の大改革かもしれない。現代に相応しいアレンジを図った質実剛健なゴルフの象徴。それがゴルフ8ヴァリアントなのだ。

執筆者プロフィール:大音安弘(おおおと やすひろ)

自動車ジャーナリストの大音安弘氏

自動車ジャーナリストの大音安弘氏

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

VW ゴルフヴァリアント eTSI アクティブ(7速AT・DSG)

■全長×全幅×全高:4640×1790×1485mm
■ホイールベース:2670mm
■車両重量:1360kg
■エンジン:直3DOHCターボ
■総排気量:999cc
■最高出力:110ps/5500rpm
■最大トルク:20.4kgm/2000-3000rpm
■サスペンション前/後:ストラット/トレーリングアーム
■ブレーキ前/後:Vディスク/ディスク
■タイヤ前後:205/55R16
■新車価格:305万6000円-389万5000円(ゴルフヴァリアント 全グレード)

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グーネットマガジン編集部

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