輸入車
更新日:2021.07.12 / 掲載日:2021.07.12

【試乗レポート ルノー カングー】2代目最後の限定車は、日本市場初の「ディーゼル+MT」

カングー リミテッド ディーゼル MT

カングー リミテッド ディーゼル MT

文●岡本幸一郎 写真●ユニット・コンパス

 6月末に発売された「カングー リミテッド ディーゼル MT」は、日本で正規販売されるカングーでは初のディーゼルエンジン搭載車となり、2代目カングーで最後の限定車となる。価格は既存の「ゼン ガソリン MT」の約30万円高となる282万円で、限定販売される400台は、もうかなりソールドアウトに近いという。

2009年より長らく愛されてきた2代目カングー

カングー リミテッド ディーゼル MT

カングー リミテッド ディーゼル MT

 外観はプラックアウトされた前後バンパーやホイールがタフな道具感を演出している。さらに、ドアミラーやホイールのセンターキャップ&ボルトカバーもブラックとされているほか、ボディ同色フロントグリルプレート(ソリッドカラーのみ)や、「LIMITRD」のバッジ、LEDデイタイムランプ、バックソナーなどの専用装備が与えられる。

 遠く離れた日本で、これほどまでに愛されるとは当初は思いもよらなかったカングーだが、初代が本国で登場したのは1997年のこと。4年後の2002年に日本で正規輸入車が販売され、その存在が知られるにつれて、デザインはもちろん必要十分なユーティリティや控えめな価格設定などが効いてじわじわと人気を呼び、日本におけるルノーの売れ筋モデルとなっていった。この初代のデザインやサイズがよかったというファンは少なくなく、いまでも中古車はプチプレミア相場といえる状況になっている。

 続く現行の2代目は2007年に本国で登場、2009年より日本に導入された。スリーサイズは3995mm×1675mm×1810mmと、全長が4mを切り全幅も1.7mを下まわって5ナンバー枠に収まっていたところ、2代目は4035mm×1830mm×1830mmと、全長と全高は微増ながら、全幅が一気に15cmワイドになったのには賛否両論だったものの、いざ売り出されると広さが受けて初代を上まわる勢いで売れた。

 やがてさまざまな仕様の限定車が矢継ぎ早に発売されたのもカングーならでは。2010年にはショートボディでオープントップとした「ビボップ」のような変わりダネもランアップされるなどした。

 2013年にマイナーチェンジを実施し、現在のデザインにフェイスリフトすると、これまた当初は物議をかもしたものの、ほどなく新しいカングーの顔として受け入れられ、好調な販売をつづけた。

カングー初のディーゼルの印象は?

カングー リミテッド ディーゼル MT

カングー リミテッド ディーゼル MT

 今回の限定車には初めてディーゼルが搭載され、しかも6速MTのみが組み合わされたわけだが、カングーはこれまでパワートレインについて何度か大きな節目を迎えてきた。

 初代では75馬力の1.4リッター自然吸気ガソリンエンジン+4速ATからマイナーチェンジで95馬力の1.6リッターに換装されたのち、5速MTが追加されて人気を博した。2代目では同じ1.6リッターのまま105馬力に出力向上が図られたものの、大きくて重たくなった車体に対しては力不足だったのは否めず。やがて2016年に1.2リッターターボ+6速DCTが追加され、さらに一時期は消滅していたMTが復活すると、ファンから大いに歓迎された。

 今回の1.5リッターディーゼルには尿素SCRとDPFが搭載されており、最高出力は116馬力、最大トルクはガソリン車より70Nm大きい260Nmを発生する。車両重量はガソリンのMT車の1430kgに対して90kg重い1520kgだ。

 エンジンを始動してもドアを閉めていればディーゼル特有の音は車内にはあまり侵入してこない。振動も小さめで、レッドゾーンもガソリン車と同じ5250rpmからとなっており、実際にも5000rpm付近まで比較的ストレスなくまわるので、意識しないとディーゼルであることを忘れてしまうほどだ。肝心の動力性能は、加速性能をウリにするトレンディなディーゼルのように際立った瞬発力こそないものの、ガソリン車に比べると全体的にトルクが厚いおかげで車両増も気にならず、MTで市街地を走るのもぜんぜん苦にならない。

 6速MTはディーゼルの出力特性にあわせてギア比が専用に最適化されていることも手伝って、いたって扱いやすい。シフトフィールも節度感があり、ストロークも適度にショートで、スポーツカーのように操るのが楽しい。

そつのない走りと使い勝手

カングー リミテッド ディーゼル MT

カングー リミテッド ディーゼル MT

 基本骨格は2代目メガーヌ等と共通のCプラットフォームをベースとしており、リアサスペンションがビーム式ながらストローク感のある走りを実現しているのもカングーならでは。見てのとおり走りを得意とするパッケージではないにもかかわらず、どんなシチュエーションでも大きな不満を感じることなく走れるそつのなさも、世界中で高く支持されてきたヒケツに違いない。そして同限定車はガソリン車よりも増えた車両重量に対して足まわりが微妙に強化されているからか、あるいはおろしたての新車だったせいか、いくぶんひきしまった現代的な乗り味となっていた。

 日本のいたれりつくせりのミニバンを知る身からすると、パワースライドドアや先進的な運転支援装備が欲しくなるのは否めないが、車内の各所に設けられたユニークなストレージは使い勝手がよさそうで、日本車にはない3人分がほぼ対等の広さに設定されたリアシートは、とくに小育てファミリーには非常に使い勝手がよかったりする。観音開き式のバックドアや660-2866リットルもの広さを誇るラゲッジもカングーの武器だ。

 ちらほら聞こえ始めた次期型の情報によると、3代目はまたしてもガラリと変わるようだが、そうなるとなおのこと、2代目が出て初代がちょっとした絶版人気車となったように、2代目もこの先も異彩を放ちつづけるように思う。中でもトリをつとめた最後の限定車は、とりわけ特別な存在として注目されつづけることだろう。

執筆者プロフィール:岡本幸一郎(おかもと こういちろう)

自動車ジャーナリストの岡本幸一郎氏

自動車ジャーナリストの岡本幸一郎氏

1968年、富山県生まれ。幼少期に早くもクルマに目覚め、学習院大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの企画制作や自動車専門誌の編集に携わったのち1998年にフリーランスへ。軽自動車から高級輸入車まで幅広くニューモデルの情報を網羅し、近年はWEBメディアを中心に寄稿。ドライビングスクール等のインストラクターも務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

カングー リミテッド ディーゼル MT(6速MT)

■全長×全幅×全高:4280×1830×1810mm
■ホイールベース:2700mm
■車両重量:1520kg
■エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
■総排気量:1460cc
■最高出力:116ps/3750rpm
■最大トルク:26.5kgm/2000rpm
■サスペンション前/後:ストラット/トレーリングアーム
■ブレーキ前/後:Vディスク/ディスク
■タイヤ前後:195/65R15
■新車価格:282万円(リミテッド ディーゼル MT)

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グーネットマガジン編集部

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