輸入車
更新日:2021.07.05 / 掲載日:2021.07.05
FERRARI PORTOFINO M【グーワールド コラム/インプレッション】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2021年8月号の内容です)
問い合わせ:フェラーリ・ジャパン URL:https://www.ferrari.com
※ナンバープレートは、はめ込み合成です。

フェラーリという会社は特殊である。普通の自動車メーカーとは違う発想でクルマを仕上げている。簡単に言ってしまうと、一台一台、非常に手がこんでいる。もちろん、それは日本やドイツの大量生産メーカーとはスケールが異なるのだから当然と言えばそうだろう。一台あたりの価格も大きく差がある。
新型ポルトフィーノMを走らせると、そのことを強く感じた。このクルマは単なるポルトフィーノのマイナーチェンジ版ではなく、自身のアイデンティティが色濃く出ている。
変わったのは20馬力アップされたエンジンと一段ギアが増えたトランスミッションだが、最終的な仕上がりはそんな細かい話ではない。クルマ全体のテイストが変わり、まったくの新しいモデルに思えた。具体的には街中の走りがこれまで以上にスムーズになった。低速での発進や渋滞時のノロノロ運転時もギクシャクすることなく、終始滑らかに動いてくれる。際立ったのはAUTOモードの変速タイミングで、アクセルワークに対し、一段一段キッチリ加速しながらシフトアップしていくのが気持ちいい。これまでのAUTOモードはなるべく早く高いギアへ入れようとしていたが、それがないのだ。これなら普段使いでパドルを動かす必要性は低いだろう。
5段階に増えたマネッティーノ(ドライブモード)も見逃せない。サーキットに持ち込めば相当速く走れるもそうだし、雨の日はWETモードで安心感を得られる。つまり、ハードトップでの屋根の開閉を含め、実用範囲の広さが増したということだ。GTカーとしての魅力は倍増といったところだろう。
というのがポルトフィーノMの第一印象である。イタリア語の“Modificata”を意味する”M”が付いただけと軽くみたら損をする。ただ、インターフェースはローマよりも一世代前となる。スターターは赤いボタンだ。が、このほうがフェラーリらしさを強く感じたのが正直なところ。久しぶりにワクワクしたテストドライブであった。
Profile
自動車ジャーナリスト
九島辰也
ファッションや旅にも造詣が深い自動車ジャーナリスト。プライベートでは、アメリカ、ドイツ、イギリスと各国のクルマを乗り継いでいる。

新車価格:2737万円

600馬力だったポルトフィーノを620馬力にパワーアップした“M”。それでいて今回はヨーロッパの厳しい排ガス規制をクリアするなどの措置も行われたのはニュースだ。

コックピットは従来と大きく変わらない。新世代のローマはデジタル計器になるが、そこは前のまま。黄色いメーターが心躍らせる。