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更新日:2021.05.25 / 掲載日:2021.04.15
【試乗レポート ルノー メガーヌ R.S.】300馬力はダテじゃない!

新型ルノー メガーヌ R.S.
Sponsored by Renault Japon
文●岡本幸一郎 写真●ユニット・コンパス
メガーヌをベースにルノー・スポールがチューニングを手がけた「メガーヌR.S.」は、量産FF車でニュルブルクリング世界最速の座をかけて、これまでタイムアタックを行なってきたことでも知られる。2021年4月時点では7分40秒というスーパースポーツなみのタイムをマークして宿敵のシビック タイプRを上まわっていることも強調しておこう。
そのメガーヌR.S.がマイナーチェンジで多岐にわたる改良を受けた。外観ではR.S.ロゴや前後の灯火類のデザイン変更、リアシーケンシャルウインカーの採用、インテリアではナパレザー/アルカンタラステアリングの採用や、液晶では少々使いにくかったエアコンコントローラーを独立させてダイヤル式としたり、後席用にUSBポートをふたつ設定するなど見た目でわかる部分に加えて、ACC等の機能を充実させるなどADAS系も進化している。
さらに、1.8リッターの直噴ターボエンジンも、これまで280馬力だったところ、「トロフィー」と同じ300馬力のエンジンが与えられたのも大きい。今回ドライブしたのは、EDCを搭載したシャシースポールだ。
新型ルノー メガーヌ R.S.のリアイメージ
新型ルノー メガーヌ R.S.のエンジン
新旧でのエンジンフィールの違いは明らかだ。ツインスクロールターボの軸受けにセラミックボールベアリングを採用したエンジンは、さらにピックアップがよくなっていることを直感する。加えて3500rpm付近からトップエンドにかけての吹け上がりも、より強力にブーストされて伸びやかに加速していくように感じられた。やはり300psはダテじゃない。
走り系のドライブモードを選択すると、それに応じてアクセルレスポンスが鋭くなるほか、アクティブバルブにより排気音も変わり、アクセルオフでパラパラというような演出も楽しめる。一方で、EDCの制御も進化したようで、半クラッチやシフトチェンジがスムーズになり、扱いやすくなったように感じられた。
また、メガーヌRSといえば、このクラスでは珍しい4輪操舵の「4コントロール」も特徴で、最大で後輪が2.7度まで逆位相、1.0度まで同位相となる。箱根ターンパイクを制限速度内で走る分には必ず逆位相となるわけだが、後輪が切れることで実現する独特の俊敏なハンドリングが気持ちよく、タイトなコーナーになるほど、そのありがたみを実感する。
当初は状況によってはピーキーな動きを見せるきらいもあったが、それも払拭されたように感じられた。やはりおそらくいろいろ進化しているようだ。これらを「ルノー・マルチセンス」で各要素を任意に設定できる「マイセンス」のほか、「スポーツ」、「レース」、「セーブ」とドライブモードを好みに合わせて従来よりも細かくカスタマイズできるようになったのもうれしい。
究極のコーナリングマシン

カーブを走り抜ける新型ルノー メガーヌ R.S.
加えて、ラリー車の技術を応用した、いわゆるダンパー・イン・ダンパーが、大入力時でもセカンダリーが作動してリバウンドや振動を抑制して接地性を確保する「ハイドロリック・コンプレッション・コントロール」や、キングピンを独立して内側にオフセットさせた「ダブルアクシスストラットサスペンション」によるグリップ感とFFとは思えないトラクションの高さにもあらためて感心する。
強力な動力性能を前輪のみで受け止めていながらも暴れる感覚が小さく、ステアリングを通してタイヤが路面をしっかりと捉えている感覚が伝わってくる。同じターンパイクで同機構を搭載した初代メガーヌR.S.を初めてドライブした際にも驚いたものだが、この日もそのときのことを思い出した。

カーブに入る新型ルノー メガーヌ R.S.
グランドツーリングとサーキットの両立を念頭に置いているシャシースポールは、乗り心地の快適性も十分に確保されていて、不快に感じることもない。荒れた路面でも振動を瞬時に収束させてフラットな姿勢を保ってくれる。こうしたメガーヌR.S.ならではの一連のものが効いて、コーナリングでもほとんどロールすることなく、小さな舵角のまま軽やかにターンインし、地を這うようなグリップ感とともに、その舵角を維持したままアクセルオンでグイグイと加速して立ち上がっていける。その感覚は、まさしく文字どおり「オン・ザ・レール」だ。
これまでもメガーヌR.S.に乗るたび感心させられてきたが、2輪駆動でこんな走りができるとは恐れ入る思いを新たにした。FFの可能性の大きさと、ルノー・スポールの技術力の高さをあらためて思い知った次第である。
ルノー メガーヌ R.S.(6速AT・6EDC)
■全長×全幅×全高:4410×1875×1465mm
■ホイールベース:2670mm
■トレッド前/後:1620/1600mm
■車両重量:1480kg
■エンジン:直4DOHCターボ
■総排気量:1798cc
■最高出力:300ps/6000rpm
■最大トルク:42.8kgm/3200rpm
■サスペンション前/後:ストラット/トーションビーム
■ブレーキ前/後:Vディスク/ディスク
■タイヤ前後:245/35R19
執筆者プロフィール:岡本幸一郎(おかもと こういちろう)

自動車ジャーナリストの岡本幸一郎氏
1968年、富山県生まれ。幼少期に早くもクルマに目覚め、学習院大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの企画制作や自動車専門誌の編集に携わったのち1998年にフリーランスへ。軽自動車から高級輸入車まで幅広くニューモデルの情報を網羅し、近年はWEBメディアを中心に寄稿。ドライビングスクール等のインストラクターも務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。