輸入車
更新日:2021.01.06 / 掲載日:2021.01.06
TEST REPORT “FERRARI ROMA”【グーワールド コラム/インプレッシ】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2021年2月号の内容です)
問い合わせ:フェラーリ URL:https://www.ferrari.com
フェラーリに“ローマ”という名前のモデルが登場した。直近では“ポルトフィーノ”というクルマがあるが、モデナやマラネロといったフェラーリと直接関係しない街の名前はめずらしい。しかも、首都なのだから相当チカラが入っているのはたしかである。
そんな新型車はひとつのキーワードから成り立っている。それは“La Nuova dolce vita”。直訳すると“新甘い生活”だ。意味は、1960年に公開されたフェデリコ・フェリーニ監督の「甘い生活」を現代的に解釈したという。当時の上級社会の世界観をモチーフにしたのである。
なので、どことなくレトロでいながら新しい。最近のフェラーリデザインとは一線を画す感じだ。丸みを帯びた妖艶なラインがそう思わせる。
プロファイリングは2+2のFRクーペで、一説にはポルトフィーノのクーペ版と囁かれたが新型車といった方が正しい。その70%が専用設計と聞かされれば、そうなるであろう。よってパワーソースは3.9L V8と排気量こそ同じだが、最高出力は20馬力アップの620馬力を発揮する。
また、エクステリア以上にインテリアも個性的で、デジタル化が進んでいる。ステアリング上のスターター用の赤いボタンはタッチ式になった。目の前のメーターもフルデジタルスクリーンだ。
では、走らせるとどうか。印象的なのは乗り心地のよさ。デフォルトでスーッと気持ちのいい乗り味を与える。フラットな乗り心地と静粛性の高いキャビンは、これまでフェラーリが輩出してきたGTカーのなかでいちばんだろう。それでいて、モード切り替えのマネッティーノを“レース”に切り替えると、レーシーなフェラーリに一変する。ステアリングやアクセルに対するレスポンスは素早く、高回転エンジンもしっかり上までまわり、官能的なサウンドを響き渡らせるのだ。また、サイズ感のよさも付け加えておこう。ほぼ同じタイミングで12気筒エンジンのFRフェラーリを走らせたが、都内を走るには正直こちらのほうがスムーズドライブができそうだ。
といったのがローマの簡単な特徴だが、機関的なことよりもデザイン重視でこいつを選ぶのが正解なのだろう。クルマを降りてからもずっと見てしまう。そんな仕上がりの一台である。
デジタル化が進んだインターフェース。フェラーリ社初の量産ハイブリッドモデル“SF90ストラダーレ”と共有するパーツもある。このほかでは助手席と分けるセンターコンソールが特徴的だ。

フロントミッドにエンジンを収めギアボックスをリアのトランスアクスル方式にすることでバランスの良さを際立たせた。素早い身のこなしは◎。

こちらが定評あるフェラーリ製V8ユニット。エンジン・オブ・ザ・イヤーに連続で輝くほどグローバルで高く評価されている。音は最高である。

[Profile]自動車ジャーナリスト 九島辰也
ファッションや旅にも造詣が深い自動車ジャーナリスト。プライベートでは、アメリカ、ドイツ、イギリスと各国のクルマを乗り継いでいる。