輸入車
更新日:2020.12.05 / 掲載日:2020.12.04

ポルシェ特集/孤高のスポーツカーブランドPORSCHEを知る

VISUAL MODEL : PORSCHE 911 CARRERA 4S

写真●ユニット・コンパス 写真●内藤敬仁
(掲載されている内容はグーワールド本誌2021年1月号の内容です)
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。

2019年における世界販売台数28万800台。数字だけで見れば大手メーカーの1/10に満たない規模であるのにも関わらず、誰もがその存在から目を離せない。それがポルシェというブランドの強さだ。ではなぜ、ポルシェがユーザーの憧れで、他メーカーが注目し続けるのか。走行性能と実用性を両立させ、スポーツカーブランドでありながらSUVやセダンを作り、電気自動車の先頭を走る。相反する要素を強靭な意思と卓越したテクノロジーで解決してきた稀代のブランド、ポルシェの今に迫る。

その作り込みの精緻さに、魂あり[最新のPORSCHEは最強である]

文●石井昌道 写真●内藤敬仁、澤田和久、ポルシェ、ユニット・コンパス
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。


世の中に数多く存在するクルマのなかでも、人気、知名度ともにトップクラスとなる911。そして、スポーツカーとしての資質を磨き続けることでクラスのリーダーであり続ける718ケイマン/ボクスター。スポーツカー専門ブランドとしてのプライドがここにある。

常に進化を続けるスポーツカーのアイコン

 半世紀以上もの歴史を誇る911は、SUVの販売比率が高まっている現代でもポルシェの金看板であり最重要モデルであるのは間違いない。2019年にデビューした現行モデルの992型は8代目。「最新のポルシェは最良のポルシェである」というフレーズがよく使われるが、エンジンが空冷から水冷になった996型やボディの大型化が顕著だった991型などが出てきたときには「本当に最良?」と議論が巻き起こることもあった。だが、好みの問題ではなくロジカルな技術的進化は確実に果たしており、誰をも納得させる説得力を持つのが911の常だ。
 現行の992型は、歴代モデルのなかでは前型に対する変化は大きいほうではなく、991型の正常進化版ともいえる。先々代の997型から991型ではホイールベースは100mm延長されたが、今回は同一の2450mm。しかしながら、これまでカレラ4系以上に与えられていたワイドボディがベーシックなカレラから採用され、フロントトレッドは46mm、リアトレッドは39mm拡大(カレラS)。991型では前後が伸びたが、992型では横に拡がったのである。直進時や高速コーナーの安定を求めたのが991型であり、992型は曲がる性能を高めたといえるだろう。さらに新しいプラットフォームは70%をアルミ化するなど大幅な進化を果たしている。
 997型あたりまではノーズが軽いRR特有のウイークポイント、高速直進でチョロチョロとしたり、コーナーではフロントに荷重をかけてあげないと曲がっていかない、などといったところが見受けられたが、最新モデルでは見事に克服。さほど荷重移動を意識せずとも、ステアリングを切り込めばスッと思い通りに曲がっていく様は、古くから911に慣れ親しんできたドライバーを驚かせるはずだ。フロントのワイドトレッド、リアの安定性確保ゆえに積極的に曲げる方向へふれること、そしてリアアクスルステアの完成度の高さなどの相乗効果でハンドリングが大きく進化したのだ。
 ハンドリングといえばミッドシップのほうがポテンシャルが高いのは当然であり、歴代のケイマン/ボクスターも911超えの可能性はあった。しかしながらフラッグシップの911をパフォーマンスで追い越してしまうのはよろしくないという判断なのか、パワートレインやシャシーをあまり盛らずに弟分という立場を貫いてきた過去がある。
 だが、先代モデルではミッドシップらしさを強調したデザインを採用して明確な差別化を図り、速さでヒエラルキーが決まるのではなく、911とはキャラクターの違うスポーツカーへと立場が変わった。現在では911もハンドリングのレベルが飛躍的に高まっているのでミッドシップの718ケイマンなども遠慮なく持てるポテンシャルを発揮。リア・サスペンションの形式の違いもあって、絶対パフォーマンスでは911に分があるだろうが、好ましいバランスのハンドリングで、攻めて走る快感では負けていない。
 かくして911と718ケイマン/ボクスターは、両雄が並び立つポルシェのスポーツカー・ラインとなった。だからこそ、最強なのである。

Profile
自動車ジャーナリスト

石井昌道
ジャンルを問わず幅広い執筆活動を展開しているモータージャーナリスト。自動運転の分野で政府の戦略的イノベーション創造プログラムにも参加している。

ポルシェ 911 カレラ 4S

 2018年末に992型へと切り替わった911。クーペからスタートしたバリエーションは、カブリオレ、タルガと順当に選択肢を増やし、今年7月にはフラッグシップとなるターボが加わることで、ついにその陣容を完成させた。時代の要請を受け入れながらも、スポーツカーとしての純度を守り続ける911は、ポルシェの魂というべき存在だ。

ポルシェ カレラ4S クーペ(8速AT・PDK) ●全長×全幅×全高:4519×1852×1300mm ●ホイールベース:2450mm ●車両重量:1565kg ●エンジン:水平対向6DOHCターボ●排気量:2981cc ●最高出力:450ps/6500rpm ●最大トルク:54.1kgm/2300-5000rpm ●新車価格帯:1398万円~1835万円(カレラ系クーペのみ)

SUVモデルがビジネス面でポルシェを支えるようになっても、911がポルシェというブランドを象徴することに変わりはない。最新の911を知ることが、ポルシェの理解につながるのだ。

ポルシェ 718 ケイマン

 パワートレインをミッドシップすることで、高い運動性能を持つ718ケイマン。2020年は、専用のスポーツシャシーを与えた「718ケイマンT」を追加。4L自然吸気フラットシックスの「GTS4.0」やスポーツ性能を極めた「GT4」など、成熟したラインアップを誇る。

ポルシェ 718 ケイマン(7速AT・PDK) ●全長×全幅×全高:4385×1800×1295mm ●ホイールベース:2475mm ●車両重量:1390kg ●エンジン:水平対向4DOHCターボ ●排気量:1988cc ●最高出力:300ps/6500rpm ●最大トルク:38.8kgm/1950-4500rpm ●新車価格帯:773万円~1293万円(718ケイマン全グレード)

ドアが増えても、ポルシェ濃度は変わらない[実用性とスポーツ性の融合]

定番モデルへと成長したパナメーラシリーズ

 ポルシェがピュア・スポーツカー以外に進出したのは、2002年デビューのカイエンから。火がつきだしたプレミアムSUVブームにのっかったカタチで「ポルシェよお前もか!」という声も聞かれたが、911乗りがファミリーカーとして増車したり、新規ユーザーを獲得したりと瞬く間に人気者となった。そもそも、意外に思われるかもしれないが911はデイリースポーツカーであり、ポルシェは日常の利便性にも配慮するメーカーだ。あの後席も人が乗るには狭いが、鞄や上着をポンッと置くにはたいへん便利で、東奔西走するビジネスエリートなどから重宝がられているのである。
 SUVのカイエンの大ヒットを受けて、さらにスポーツ性能に期待が持てるセダンの企画が持ち上がるのは当然の流れだろう。そうして2009年にデビューしたのがパナメーラだ。背の高いSUVよりも低全高なモデルを求めるポルシェ・ファンは少なくなく、これまた人気となった。現行の2代目は2016年にデビュー。もともと、ポルシェはスポーツカー・ブランドゆえ機能優先で上質さなどにはそれほどこだわっていなかったが、このクラスには強力なライバルも存在していることから力が入っている。特にインテリアの煌びやかな雰囲気や質感の高さ、デジタライズの先進性などで堂々たるプレミアム・セダンとして極めて上質かつ快適。それでもスポーティであり、ほどよいタイト感などドライバーをその気にさせるのがポルシェらしい。
 スタイリングも正統派セダンではなく、なだらかに後ろ下がりとなるルーフラインやリアフェンダーの膨らみなど、911にも似たシルエットとしてポルシェらしさを強調しているのが他にない個性となっている。2017年にはワゴンタイプのパナメーラ・スポーツツーリスモがデビュー。フロントセクションはセダンと共通だがBピラー以降は新設計とされ、新たなスタイリングが生み出された。ルーフが後方まで伸ばされ、天地の狭いサイドウインドウはセダンよりも横長に。ルーフのリアエンドには可動式のスポイラーが装着されてスポーティさが強調されている。実用重視一辺倒ではなく、見ようによってはセダン以上に個性的で新鮮でもある。
 ラゲッジルームは通常時でセダンに対して20L増の515L。リアシートをアレンジすればセダン比50L増で最大1384Lとなる。
 最近では911でさえ乗り心地が快適ではあるが、パナメーラは当然のようにその上をいく。3チャンバー式エアサスペンションは路面のゴツゴツ感を取り除き、上下動にもいい意味でゆったり感をもたらしているのだ。だが、高速域になればバネレートや車高を変化させるので、操縦安定性も凄まじく高い。ステアリング操作に対するアクションもシャープさと正確性を兼ね備えたもので、さすがはポルシェと唸ってしまうほどだ。
 デイリースポーツカーという概念の911を作り続けてきたポルシェだからこそ、実用性とスポーツ性が高いレベルで融合しているパナメーラ。ブランドの背景を考えれば、その完成度の高さにも納得なのである。

ポルシェ パナメーラ 4 Eハイブリッド スポーツ ツーリスモ

 パナメーラが実現させた、スポーツ性能と快適性の両立を、さらに拡大させたのがスポーツツーリスモ。「4+1シート」コンセプトにより、5人乗りとしたことが特徴で、拡大されたラゲッジルームは最大で1384Lものスペースを誇る。

ポルシェ パナメーラ 4 Eハイブリッド スポーツツーリスモ(8速AT・PDK) ●全長×全幅×全高:5049×1937×1428mm ●ホイールベース:2950mm ●車両重量:2225kg ●エンジン:V6DOHCターボ+モーター ●排気量:2,894cc ●エンジン最高出力:330ps/5400-6400rpm ●エンジン最大トルク:45.9kgm/1800-5000rpm ●モーター最高出力:136ps ●モーター最大トルク:40.8kgm ●新車価格帯:1575万円(4 Eハイブリッド スポーツツーリスモのみ)

ポルシェ パナメーラ GTS

 エグゼクティブのためのスポーツカーがパナメーラ。2020年8月にマイナーチェンジを受け、内外装をリファイン。インフォテインメントシステムをアップデートし、音声コントロールやコネクトサービスを強化した。

ポルシェ パナメーラ GTS(8速AT・PDK) ●全長×全幅×全高:5053×1937×1417mm ●ホイールベース:2950mm ●車両重量:2020kg ●エンジン:V8DOHCターボ ●排気量:3996cc ●最高出力:480ps/6500rpm ●最大トルク:63.2kgm/1800-4000rpm ●新車価格帯:1949万円(GTSのみ)

ポルシェ電動化の今とこれからを探る[いよいよ日本の路上を走り始めるタイカン]

文●ユニット・コンパス 写真●ポルシェ
スポーツカー専門ブランドとして確固たる地位を固めているポルシェは、電動化でどう変化していくのか。 そのヒントとなるのが、初のBEVとして、いよいよ日本でも納車が開始されるタイカンだ。

ポルシェの名に恥じない真の電動スポーツカー

 いよいよ日本での納車も間近となったポルシェ初のBEV(電気自動車)タイカン。スポーツカー専門ブランドであるポルシェにとって、タイカンに込められたこだわりとエネルギーは並々ならぬものがある。
 たとえば、停止状態からの全開加速は、そのパフォーマンスのわかりやすさやモーターの特性も相まって話題になりやすいが、じつは全開加速を何度もするとパフォーマンスが低下するケースは少なくない。バッテリーが急速にエネルギーを放出する際に異常発熱するためで、セーフティモードに入ってしまうのだ。しかし、タイカンでは何度繰り返しても大丈夫なように設計されている。それは、ポルシェのスポーツ性能がカタログの飾りではなく、サーキットでも通用する、真の意味でのパフォーマンスであるため。
 事実、ニュルブルクリンクのテストでは、7分42秒という記録を残している。997型の911GT3と同等の記録といえば、その価値がわかるだろう。それらを実現させるために、革新的技術も多数投入された。驚異的に低い空気抵抗値や加速性能と最高速を両立させる2段トランスミッション、ボディのロールをほぼゼロに抑えるダイナミックシャシーコントロールなどなど。
 単なる電動化モデルではなく、電動化を積極的に用いることで、新しいスポーツモデルの地平を目指したのがタイカンというクルマなのだ。
 そしてこれら技術は当然のことながら、今後のポルシェモデルに引き継がれていくことになる。

単純にパワートレインを電動化しただけでなく、次世代のスポーツカー像を目指して開発されたタイカン。

13個の世界初となる革新技術を採用

 自動車のイノベーションを牽引したとして、ドイツの独立科学機関「自動車管理センター」が、タイカンに対してオートモーティブ イノベーションアワード2020を贈呈。タイカンには800Vアーキテクチャーやリアアクスルの2速トランスミッション、265kWに達する高いエネルギー回生システム、0.22のCd値など13個にもおよぶ革新的なテクノロジーが採用されていることを高く評価した。

液晶モニターを多数活用し、インターフェースデザインも新たなものを提案。また、ワイヤレスアップデート機能により、充電や各種機能を向上させられる。

普通充電はAC200V 8kW出力に対応し、約10時間でほぼ空の状態から満充電にすることができる。また、急速充電については、150kWまで対応する。

旅の目的地となる場所に独自の急速充電器を設置

 ポルシェジャパンでは、ゴルフ場やホテルといった、旅の目的地になる場所に急速充電器を設置する、「ポルシェデスティネーション チャージング ステーション」に取り組んでいる。第1号となったのが、箱根の老舗旅館「富士屋ホテル」。

ポルシェの電動化戦略では、911などのスポーツモデルは極力ガソリンエンジンを維持しながら、パナメーラやSUVなどの量販モデルを電動化することで、CO2排出を削減しようとしている。

ポルシェは次期マカンにBEVを設定することを発表。ライプツィヒの工場を拡張し、ガソリン、HV、BEVの異なるパワートレインを同一ラインで生産する。

「N」はニュルブルクリンク仕込みの証[ポルシェ認定タイヤ「N」マークというブランド]

文●ユニット・コンパス 写真●ポルシェ

ニューモデルが出るたびにアップするパフォーマンス。それを路面に伝えるタイヤは、ポルシェの最重要パーツのひとつだ。

911へのこだわりから生まれた専用タイヤ

 ポルシェはタイヤにうるさいブランドだ。新車を開発する際に、タイヤメーカーと共同開発を行うケースは数多くある。だが、交換用タイヤについても、自社が承認しているタイヤへの交換を強く推奨しているところはごく少数だ。その裏には、高性能化を続ける自社製品に対しての、ポルシェの責任感がある。
 もともと、スポーツカーメーカーとして、レースに取り組んでいたポルシェは、タイヤの持つ重要性を強く認識していた。さらに、911を開発、熟成させていくなかで、リアエンジン、リアドライブ車の性能は、後輪に多くを左右されるという知見にたどり着く。そこでポルシェは、タイヤメーカーに厳しい性能要求を行う一方で、特別スペックのタイヤを「ポルシェの一部」として扱うことにしたわけだ。
 聖地ニュルブルクリンクの頭文字から付けられた「N」マーク付きのポルシェ承認済みタイヤは、同じ銘柄、同じサイズであっても、市販品とは構造やゴムの素材、そして試験方法が市販品とは異なる特別品。さらに、Nの後に並ぶ英数字によって、対応するモデルまで指定されるというこだわりようである。
 だから、ポルシェの性能を維持するためには、「N」マーク付きのポルシェ承認済みタイヤが必要となってくる。中古車を購入した際にも、ここは忘れずにチェックしたい。ポルシェの味わいかどうかを左右する、大切な要素のひとつだからだ。

リアエンジンでリアタイヤを駆動の主とする911は、特にタイヤに性能の多くを依存する。なお、スタッドレスタイヤについても、認定タイヤが用意されていることは覚えておきたい。

  • ピレリ ピーゼロ
     数多くのスポーツモデルに純正装着されるピレリを代表する高性能タイヤ。正確な操縦性、強力なグリップ、そしてウエットグリップの高さも特徴。

  • ミシュラン パイロットスポーツ 4S
     レースで培った最新の知見と技術を結集したニューモデル。内側と外側で異なるコンパウンドを配合し、あらゆるシーンでの高いグリップを約束。

HISTORY of TARGA 「タルガ」というもうひとつの911道

文●ユニット・コンパス 写真●ポルシェ

911のラインアップにおいて、最もスタイリッシュと紹介されているタルガ。クーペでもカブリオレでもない、独自の魅力を持つモデルの歴史をひも解く。

安全なオープンカーを求める市場の声に応えて

 クーペでもカブリオレでもない、不思議な個性を持つタルガ。911の歴史にそれが初めて登場したのは、1965年のフランクフルトモーターショーであった。
 戦後から50年代にかけて黄金時代を迎えたアメリカ市場では、オープンカーが大流行。あらゆるモデルにオープンモデルが投入されたが、一方でルーフがないことで交通事故の際に死傷者が増大するという社会問題を引き起こした。
 「オープンカーは法律で禁止されるかもしれない」。そんな情報を受けてポルシェは、オープンカーの快適性とクーペモデルに近い安全性の高いニューモデルの開発に取り組む。その結果誕生したのが、固定式セーフティロールバーを備えるタルガであった。タルガという名前は、当時ポルシェが活躍していたレースイベント「タルガ・フローリオ」から付けられた。このネーミングセンスと安全性の高いオープンモデルというコンセプトが受け入れられ、タルガはヒットモデルに。その後、カブリオレの安全性が十分となってからもバリエーションとして生き残った。
 クーペやカブリオレのようなはっきりとしたキャラクターを持たないタルガ。だが、その曖昧な性格が、独自の味、魅力となったのだ。

シリアスなスポーツカーとして受け止められる911において、タルガはファッションアイコンでもある。

  • カブリオレよりもカジュアルにオープンスポーツを楽しめるのが、受け継がれてきたタルガの伝統。

  • 996型の世代ではルーフガラスがスライドし、リアガラスと一体化する方式が採用された。

  • 新型タルガは19秒でルーフを開閉する。オープン状態となってもシルバーのタルガバーが残り、サイドビューにアクセントを与える。

ポルシェのユーズドSUVに乗る

文●ユニット・コンパス
※中古車参考価格、物件相場はグーネット2020年11月調べ。 ※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。


スポーツカー専売メーカーのなかで、いち早くSUVを量産化したのがポルシェ。その人気ぶりは今も続く。ここではマカン、カイエンの中古車事情を探っていく。

[ポルシェ マカン GTS]SUVでも中身はスポーツカー

 中古車になっても、911などの人気モデルは値落ちしにくいポルシェ。20年以上前の911が今でも高値で取引されることはめずらしくない。その一方、SUV系のポルシェは、経年と比例して価格も下がるので、ポルシェオーナーになってみたいファンは注目してほしい。
 まずはミドルクラスのマカン。こちらは2014年に発表され、すでに存在していたカイエンが大きいと感じていた人にも乗りやすいサイズだから、最初に検討したい1台。
 そんなマカンの高性能グレードが「GTS」。2015年の東京モーターショーで初公開され、新たに加わった。「S」と同じ3LV6を搭載するが、360馬力にまで高出力化され、車高を15mmローダウン。走りの性能を追求したグレードである。
 中古車市場では、全体の2割ほど流通するが相場は高め。価格帯の下限が650万円と、やや手が出しにくいゾーンにある。とはいえ、スポーツカーとしての価値を追求するなら、無視できない存在だろう。
中古車参考価格帯:650万円~870万円(16年~20年 ※GTSのみ)

マカンのグレード別中古車物件比率

 マカンには4つのグレードが存在するが、どのモデルもバランスよく流通しているのが特徴だ。そのなかでも多いのがベースグレードで、全体の3割弱。新車時価格が高額なモデルになるほど物件数は減少し、最も高価な「GTS」は2割程度となっている。

「GTS」には、中央部にアルカンターラを用いたスポーツシートやインテリアトリムが特徴。標準グレードよりもより豪華で、サポート性にも優れる。居住性も十分で、後席もしっかり座れる。

  • オートマチックテールゲートなどの便利な装備が充実。荷室容量も広く、実用的なSUVとしても活躍する。

  • 「S」よりも20馬力高い360馬力を誇る3LV6を搭載。これに組み合わされるのは7速PDKである。

[ポルシェ マカン]中古マカンのベストバイ

 最もベーシックなマカンは、中古車市場の3割弱を占める。物件数が豊富で相場も低いため、とりあえずマカンに乗りたい人にはまず最初に検討すべきモデル。エンジンは、237馬力(後に252馬力)を発揮する2L直4ターボを搭載する。価格が300万円台の物件も存在するが、平均価格はおよそ580万円。
中古車参考価格帯:380万円~870万円(14年~20年 ※ベースグレードのみ)

[ポルシェ マカン S]バランスのよい中堅グレード

 340馬力(後に354馬力)を発揮する3LV6ターボを搭載する「S」は、価格と性能がバランスしたグレード。ベースグレードよりも100馬力以上高い出力のため、よりポルシェらしいパワフルな走りが味わえる。中古車はベースグレードに次いで多く、どの年式からでもねらえる。平均価格は610万円。
中古車参考価格帯:470万円~720万円(14年~20年 ※Sのみ)

[ポルシェ マカン ターボ]最もパワフルな上級モデル

 マカンのなかで最強のパワーユニットを持つのが「ターボ」。3.6LV6ターボを搭載し、最高出力は400馬力(後に440馬力)に達する。0-100km/h加速は4.8秒の俊足。物件数は「GTS」よりも多く、流通量の不安もない。ただし相場は高めとなっており、最低でも500万円の予算は用意しておきたい。平均価格は680万円。
中古車参考価格帯:520万円~900万円(14年~20年 ※ターボのみ)

[ポルシェ カイエン S ハイブリッド/S E-ハイブリッド(先代)]ハイブリッドも選べるポルシェ初のSUV

 ポルシェ初のSUVがカイエン。2002年に初代が登場してから、今年で18年目を迎える。今回紹介するのは2010年にモデルチェンジした2代目カイエン。初代よりも洗練されたルックスとなり、高性能SUVとしての存在感をより堅牢なものにした。ホイールベースを40mm延長し、ボディサイズもやや大きくなったことで居住性が向上。スポーティなグランドツアラーとしても魅力を高めている。
 また、この世代よりハイブリッドが登場したことも大きな話題となった。まず最初に登場したのが「Sハイブリッド」で、3LV6スーパーチャージャーに、47馬力のモーターを組み合わせたもの。これによりV8のカイエンS級の動力性能を実現した。2014年には、PHEVの「S E-ハイブリッド」に進化した。10.8kWhのリチウムイオン電池を搭載し、モーターのみで最大36km走行可能なうえ、加速性能も大幅向上。
 物件は「Sハイブリッド」のほうが多く、300万円台の物件も存在。PHEVは物件数が控えめとなる。
中古車参考価格帯:370万円~680万円(10年~17年 ※Sハイブリッド/S E-ハイブリッドのみ)

カイエン(先代)のグレード別中古車物件比率

 先代カイエンのグレードは多岐にわたる。最も豊富なのが、V6エンジンを搭載するベースグレード。またターボ系も豊富に流通している。ハイブリッド系の中心は「Sハイブリッド」。また、スポーツグレード「GTS」は全体の2割弱程度と少なめとなっている。

全長4855mm、全幅1940mm、全高1705mm(2015年、S E-ハイブリッド)。車高は高いが、ワイドな全幅のおかげで安定感のあるプロポーションとなる。

パドルシフト付きマルチファンクションスポーツステアリングを装着。リアシートにはオプションでシートベンチレーションを装備することもできる。ゆとりある室内により快適性は高い。

  • スポーツカーのような5連メーターが特徴的。視認性にも優れ、気持ちを盛り上げてくれる。プレミアムな質感にも注目。

  • 大柄なボディのため、荷室もたっぷりとしたゆとりがある。リアシートは折りたためるほか、前後に160mm調整可能となる。

  • 「S E-ハイブリッド」には3LV6スーパーチャージャーを搭載。これに95馬力のモーターが組み合わされ、0-100km/h加速は5.9秒を実現。

[ポルシェ カイエン/カイエン S(先代)]中古車の中心となるベースグレードと「S」

 エントリーモデルのカイエンには3.6LV6、「S」には4.8LV8を搭載する。中古車は前者のほうが中心で、全体の3割弱を占める。価格も200万円台の物件が確認でき、手頃な価格で入手可能になった。なおV6、V8ともに相場の差が少ないため、好みに応じたクルマ選びもできる。
中古車参考価格帯:290万円~720万円(10年~17年 ※ベースグレード、Sのみ)

[ポルシェ カイエン ターボ(先代)]新車時の半額以下で探せる先代ターボ

 4.8LV8ツインターボを搭載するターボ系は、シリーズの花形グレード。当初は500馬力の「ターボ」のみだったが、2013年には550馬力の「ターボS」も加わった。中古車市場にも物件が充実しており、300万円台後半の個体も確認できた。新車時1500万円以上なので破格だ。
中古車参考価格帯:380万円~990万円(10年~17年 ※ターボのみ)

[ポルシェ カイエン GTS(先代)]車高を下げて走りの性能を高めた「GTS」

 2012年4月に発表されたのが「GTS」。カイエンSの4.8LV8をベースに、最高出力を420馬力(後に440馬力)にまで向上させた。PASMや24mm低められたサスペンションにより、走りに磨きをかけている。物件はやや少ないものの、400万円台前半の予算で購入可能となっている。
中古車参考価格帯:430万円~800万円(12年~17年 ※GTSのみ)

初代カイエンならさらにリーズナブルな相場

 2002年に登場した初代カイエンは、現在どのグレードも手頃な値段で購入可能。特にベースグレードであれば100万円以下の予算でもOK。ターボ系は150万円、「GTS」でも100万円台後半の予算から探せる。流通するのは多走行が目立つので、コンディション重視で選びたい。
中古車参考価格帯:90万円~490万円(02年~10年 ※全グレード)

SUVにスポーツカーの要素を加えたカイエンは、その後各メーカーに多大な影響を与えた。登場から18年が経つが、飽きのこないデザインが魅力。室内は時代を感じさせるが、使いやすい。

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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