輸入車
更新日:2020.06.23 / 掲載日:2020.04.20

【試乗レポート ポルシェ 911】992型へと進化した911。これぞポルシェの神髄だ

文●石井昌道 写真●内藤敬仁、澤田和久
 いまではカイエンやマカンなどのSUVが人気で販売の大半を占めるようになり、ハイパフォーマンスBEVのタイカンが話題になるポルシェではあるが、やはり主役は911。1964年の登場時から水平対向6気筒エンジンをリアに搭載するRR(もしくはRRベースのAWD)というスタイルを守り続け、2019年のフルモデルチェンジで8代目となった。

991型からシャシー能力をさらに高め、リヤエンジン・リヤドライブの走りを追求

 RRにはメリットとデメリットが明白にある。重量物であるエンジンをリアエンドに配置しているということは、アクセルを踏み込んで加速するときに、駆動輪の後輪に強く荷重がかかり、トラクション性能ではこれ以上ないぐらいに有利。その一方で直進安定性では、フロントにエンジンを搭載していることで落ち着きが増すこと、コーナリング性能ではミドシップのほうがバランスに優れるなど、RRは不利であることは否めない。
 だが、そのネガを類い稀なエンジニアリング能力で克服してきたのが911のヒストリーそのものなのだ。先代の991型ではホイールベースが延長されて安定性が大いに高まり、現行992型では前後トレッドが拡がり操縦性のポテンシャルが高められた。くわえてPDCC(ポルシェ・ダイナミックシャシー・コントロールシステム)やPTV Plus(ポルシェ・トルク・ベクタリングプラス)、リアアクスルステアリングなどといったハイテクも高度に使いこなすことによって、いまではネガを感じさせないどころか文句をつけようがない完璧な躾のシャシー性能を誇るにいたっている。

まるでプレミアムサルーンのような快適な乗り心地に驚く

 最初の日本導入モデルとなったカレラ4Sに初試乗したときにまず驚いたのは、街中を普通に流して走らせるだけでも只者ではないと伺いしれたことだった。スポーツカーだからといって身構える必要はまったくなく、よくできたプレミアムサルーンのように快適で、望外なほどに運転しやすい。免許取り立ての初心者や運転が苦手な人でも、アイポイントの低さにさえ慣れてしまえば、むしろ他のクルマよりも運転が楽で、上手になったと錯覚するかもしれない。それは、操作に対する反応がじつに正確で、いわゆるドライバビリティが優れているからだ。
 乗り心地も抜群にいいのだが、サスペンションがソフトというわけではない。スポーツカーらしく引き締まってはいるのだが、圧倒的なボディ剛性の高さとスムーズなサスペンションのストロークによって、たとえ路面の凹凸からの入力が大きくても角張った感触がなく、まろやかでしっとりとしたテイストにしているから不快感がまったくないのである。
 高速道路では、一昔前では考えられなかったぐらいに直進安定性がいい。911は速度が高まるほどにフロントの軽さが仇となって真っ直ぐ走らせるのが難しくなっていくのが以前の常識だったが、いまではその影響は見事に消されている。そこに優れたスポーツカーらしいフラットライド感が加わって、高速ロングツーリングも得意科目になっているのだ。

RRならではの強烈なトラクションはそのままに、扱いやすいハンドリング特性になった

 ハイライトはワインディングロードでのハンドリングだ。ノーズの軽いRRは、しっかりとフロントタイヤに荷重をかけないと曲がりづらいというのが以前の常識だったが、992ではそんな感覚はなく、ステアリング操作に対して正確かつ素直でドライバーの思い通りにコーナリングラインを描いていける。ロールやピッチングは少ないが、前後左右のどこのタイヤに荷重がかかっているかがわかりやすくグリップを引き出しやすい。だから自信を持ってコーナーを攻めていけるのだ。タイトコーナーではリアアクスルステアリングが効いて俊敏にまわり込み、そこからアクセルを踏み込めばリアエンジン車ならではの強烈なトラクションが味わえるのは911ならでは。四肢動物が後ろ足で地面を蹴っていく感覚が野性的で病みつきになるのだ。AWDのカレラ4Sはリアタイヤが滑りそうになると瞬時にフロントへ駆動配分するので安定性が損なわれることはない。文句のいいようがないシャシー性能だ。
 一方RRのカレラSでは、フロントがスッと沈み込んでシャープな回頭性をより強調した味付けになっている。安定志向のカレラ4Sよりも軽快なハンドリングでドライバーを楽しませてくれる。ただし、車両安定装置を解除して振り回すにはそれなりのスキルが要求されそうだ。

運転支援技術も大きく進化し、だれにでもオススメできるスポーツカーになった

 エンジンは先代991型の後期からNAではなくターボとなった。そこは好みが分かれるところで、素直で高回転域が気持ちいいNAが好きなファンも多いが、それでもさすがはポルシェでターボであっても水平対向6気筒らしいエモーショナルな回転上昇感やサウンドは健在だ。トップエンドのわずかなところでの違いはあるが、ターボは中間加速が頼もしいなどのメリットが多く、だれもが納得いく仕上がりになっている。
 最新のインフォテイメントシステムなどを採用して現代的に大きく変身したインテリア、コネクテッドや先進運転支援システムなども充実した911。硬派なスポーツカー乗り以外にもオススメできるモデルだ。


ポルシェ 911カレラ4S(8速AT・PDK)

全長×全幅×全高 4519×1852×1300mm
ホイールベース 2450mm
車両重量 1640kg
エンジン 水平対向6DOHCターボ
総排気量 2981cc
最高出力 450ps/6500rpm
最大トルク 54.0kgm/2300-5000rpm
サスペンション前/後 ストラット/マルチリンク
タイヤ前・後 245/35ZR20・305/30ZR20



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グーネットマガジン編集部

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