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更新日:2026.07.21 / 掲載日:2026.07.21
【849テスタロッサスパイダー】フェラーリサウンドを直接浴びる贅沢な時間【九島辰也】

文●九島辰也 写真●フェラーリ
かつてオープントップモデルは、クーペよりも軟弱な乗り物として扱われていました。魅せるためのクルマで、走りをアピールするものとは別扱い。それはルーフの無い分、ボディ剛性が低くなるからで、スポーツカーの多くはルーフを含めたモノコックボディで剛性を保っていました。まぁ、その構造は今も変わりませんが、今日は補強によってかなり挽回しています。
ここで紹介するフェラーリもそうでしたが、ポルシェは最たるもの。カブリオレがもてはやされるのはカリフォルニア州くらいで、日本やドイツでは「クーペが善」みたいな空気があったと思います。
ですが、その傾向はすでに終焉しています。2000年代に入ってからでしょうか、オープントップの価値が高まっています。フェラーリなどはまずクーペが出てそれからスパイダーですから、お金のある方はスパイダーが出るのをクーペに乗って待っていたりするとか。クーペが買った値段で売れるのですから、そうなるようです。なるほど、お見事な戦術。

なんて話はともかく、フェラーリ849テスタロッサスパイダーのメディア向け国際試乗会に参加してきました。昨年9月にイタリアで発表されたモデルです。クーペ登場時に「テスタロッサ復活!」と話題になったので、ご記憶にある方は多いでしょう。今回はその屋根開き版ということになります。
その意味でフェラーリ849テスタロッサを復習しなくてはなりませんが、このクルマはSF90ストラダーレの後継となります。パワーユニットがそれを物語っていて、4リッターV8ツインターボエンジンと高出力のリチウムイオン電池で動かす3基のモーターが組み合わされます。つまり、ハイブリッド。しかも外部充電ができるプラグインです。

恐ろしいのはそのパワーで、エンジンとモーターを合わせたシステム合計出力は1050馬力になります。レーシングカーでも4桁を超えるマシンは少ないですから、そのすごさをお分かりいただけるでしょう。前輪左右にひとつずつモーターを装着するほか、エンジンとギアボックスの間にもうひとつモーターを備えます。つまり、駆動方式はAWD。エンジン出力は当然リアを駆動させますが、時としてフロントのモーターが介入し、大出力パワーを路面に伝えます。

では、スパイダーのキモとなる屋根はというと、電動格納式リトラクタブルハードトップを採用しました。素材にアルミを使ったり、ルーフ自体をコンパクトにして収納スペースを少なくしたりして、軽量化を図っています。開閉時間はスイッチひとつで約14秒、時速45キロ以下であれば走行中も稼働可能です。もちろん、コックピット周りは入念に補強されました。
ドライブモードの切り替えはお馴染みのマネッティーノとハイブリッドカーならではのeマネッティーノが用意されます。前者は“SPORT”をデフォルトとし、“WET”や“RACE”などから選択。後者は“eDrive”、“Hybrid”、“Performance”、“Qualify”となります。試乗は“Hybrid”をメインに“SPORT”および“RACE”を多用しました。

それでは走った印象ですが、フェラーリのオープントップは風を感じる他にサウンドを楽しめるという付加価値があります。特に“RACE”モードでのエキゾーストサウンドはこの上ない。フェラーリユーザーのみが許されるサウンドを自由自在に楽しむことができるのです。高回転まで引っ張った時の甲高い音は健在。脳天まで刺激されます。そして、早朝ゴルフに出かける時は“eDrive”を活用すればOK。音もなくスッと動き出します。
キャビンへの風の巻き込みに関しては、進化はしていますがそれなりに身体に感じます。フロントからの流れをキレイに整えることでサイドからの進入は少ないのですが、後方からの巻き込みは完全には消せません。風洞実験に長けている彼らだけにかなり手を加えているようですが、正直若干気になる。もちろん、それなりのスピード域で走った時の感想ですが。

走りに関してはパワートレイン各部を精緻に作り込んでいるのがわかりました。ステアリング操作に対するクイックで正確な動き、アクセルペダルに対する瞬間的な加速やブレーキに対する自動的なシフトダウンとストッピングパワーは秀逸です。運転が上手くなったような気になるでしょう。特に好きなのはステアリングに直結したフロントの動き。まるでカートを走らせているように向きを変える様は運転を楽しくします。これだけでもフェラーリに乗る価値はありますね。

乗り心地は驚くほどマイルド。“RACE”モードでも路面からの入力でキャビンが突き上げられることはありません。セミアクティブダンパーが路面をとらえながら上質な乗り味を提供します。これは味わってみないとわかりづらいですが、イメージ以上であることは確か。ロングドライブでも疲れさせない配慮があります。
といったのが今回のテストドライブでした。最後にスペイン領カナリア諸島のリゾートにフェラーリが溶け込むように似合っていたことを付け加えておきましょう。コンサバですが、リゾートにオープントップはステキ過ぎます。
