輸入車
更新日:2025.12.09 / 掲載日:2025.12.09

【グレカーレ エッセンツァ】人生に一度、マセラティを【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス、マセラティ

 SUVのラインナップが充実した現在、輸入車における各カテゴリーの主役は決まってきたような気がします。コンパクトSUVではVW T-クロスやT-ロック、メルセデス・ベンツ GLB、BMW X1、MINIカントリーマンあたり、ミッドサイズではメルセデス・ベンツGLC、BMW X3、ボルボ XC60、VW ティグアン、ポルシェ マカンが人気です。クロカン系ではメルセデス・ベンツ Gクラスとランドローバー ディフェンダー、ジープ ラングラー。この辺はテッパンですね。

 こうやって見ると、輸入車の中でドイツ車比率が高いことがわかります。SUVに限らず各カテゴリーで上位を占めるのは彼ら。VWやアウディはかつてのパワーを感じませんが、メルセデスやMINIを含むBMW人気はここ数年不動。2023年のデータでは輸入車のおよそ70%がドイツ車でした。

 それじゃ他の国のSUVはどうなっているかというと、魅力的なモデルは数多くあります。ジープ レネゲード、プジョー 3008と2008、ルノー キャプチャー、同アルカナ、アルファ ロメオ トナーレ、シトロエン C3などです。どれも個性的で、その国のイメージを醸し出します。ジープは広大な土地を想像させますし、アルファ ロメオは機能よりもデザインが先にくるような印象です。フランス車は個性的なデザインと乗り心地でしょうか。

マセラティ グレカーレ エッセンツァ

 そんな中で注目したいモデルがあります。マセラティ・グレカーレです。登場から少し経っていますが、まだまだ新鮮味のある一台と言っていいでしょう。街中でそれほど遭遇する機会はありません。というか、マセラティですからね。売れている売れていないは別。大前提として憧れの対象です。

 マセラティのラインアップは現在グレカーレ以外だとこんな感じです。2ドアクーペのグラントゥーリズモとその屋根開きグランカブリオ、MC20の後継となるMCプーラ、それとMC20をよりサーキット走行向けに進化させたGT2とそのロードバージョンGT2ストラダーレです。この他にもレーシングカー的なものがありますが、リアリティがないのでここでは省きます。

1960年代初頭に活躍したマセラティ バードケージ

 ただ、彼らが堂々とサーキット仕様をラインナップし販売するのには理由があります。それはそもそもマセラティがレーシングカーをメインにしてきたカーメーカーだからです。戦後は市販車が多くなりましたが、彼らのDNAはサーキットに起因しています。戦前のグランプリレースにおける戦歴は輝かしいものばかり。なので、そこを理解するとこのブランドの魅力をより深く感じられます。

 という目線でご覧いただくとグレカーレがSUVでありながらスポーティであることに疑問はなくなります。なんたってそのトップエンドに君臨するトロフェオは最高出力530psの化け物。3リッターV6ツインターボがこの数字を叩き出します。ポルシェ911で比較するならカレラSより50psも高く、カレラGTSより11ps低いだけです。これでこの凄さをわかっていただけるでしょう。MC20と同じネットゥーノユニットです。

 ただ注目はそこではありません。そのスタンダードモデルをさらに買いやすくしたエッセンツァ(ESSENZA)です。この新たなエントリーモデルは、装備を簡素化することで車両価格990万円を実現しました。

 先に530psのトロフェオを説明したのには理由があります。それはこのエントリーモデルが、大出力エンジンを備えるだけのクオリティを持っていることを言いたかったからです。こちらのパワーソースは2リッター直4ターボ+モーターのマイルドハイブリッドで出力は300psにとどまりますが、強靭なパワーを受け止められます。

 よってリアルに走ると余裕を感じます。各部はしっかりしていて、ハンドリングはスムーズ。連続するコーナーでステアリングを右へ左へ激しく動かしてもボディがよれるような動きを見せません。頼り甲斐があります。さすがマセラティ。

 でもってイタリア車らしい華麗なデザインが目を惹きます。印象的なグリル形状やグラマラスなボディラインはイタリアンブランドのこだわりでしょう。背の高いSUVであっても艶を忘れていません。イタリアンデザインには人の目を奪う何かがあります。

 ということで今回はグレカーレの新しいエントリーモデル、エッセンツァに触れてみました。ハイエンドでありながら我々にもなんとか手の届きそうな価格帯だけに注目です。しかも日本限定だそうですからありがたい。人生に一度だけマセラティオーナーになるなんて夢が叶えそうな気がする一台です。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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