輸入車
更新日:2025.10.28 / 掲載日:2025.10.28

【シンガー】911に向けられた深い愛情【九島辰也】

文●九島辰也 写真●シンガー

 先日富士スピードウェイに行ってきました。「CORNES DAY」を取材するためです。そこで発表されるSinger(シンガー)に注目しました。Porsch 911 Carrera Coupe Reimagined by Singerです。

 とその前に、「CORNES DAY」を説明しないとですね。ご存知、超高級輸入車ディーラー、コーンズ・モータース株式会社が主催する顧客向けイベントです。コーンズ・モータースは1964年にロールス・ロイスとベントレー、1976年にフェラーリの正規輸入代理店となった会社として知られています。2011年に自動車事業拡大のため、コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッドから独立し、2013年にはランボルギーニを、2018年にはグループ会社でポルシェの取り扱いを開始しました。

 よって、彼らは現在フェラーリ、ランボルギーニ、ロールス・ロイス、ベントレー、ポルシェの5つのブランドを扱っています。まさにウルトララグジュアリーブランドの巣窟ですね。そのジャンルに足を踏み入れた方は、一度は通る門かもしれません。そして、2024年Singer社とグローバルパートナーシップとなりました。

ポルシェ 911 カレラ クーペ リイマジンド by シンガー

 そのSingerは2009年にカリフォルニアで設立したブランドです。ポルシェ911への深い愛から顧客のために高度なパーソナライズされた一台を提供しています。基本的にベースになるのはタイプ964ですが、手の入れ方はハンパなく、基本設計を生かしながら高性能マシンに仕上げます。

 そんなことができるのは、創業者であるロブ・ディキンソン氏のポルシェ911への強い愛があるからだとか。「CORNES DAY」でのトークショーでは幼い頃からのその想いを熱く語っていました。“Car guy”ではなく、“Car boy”だったとか。

ポルシェ 911 カレラ クーペ リイマジンド by シンガー

 それはともかく、Porsch 911 Carrera Coupe Reimagined by Singerの日本初お披露目を見届けました。コスワースのエンジニアリング協力のもと、4リッターの自然吸気フラット6エンジンを420馬力までスープアップしたものです。ギアボックスは6速マニュアルトランスミッション、後輪駆動となります。

 トピックスはボッシュとの共同開発したシステムにもおよびます。最新世代のABS、トラクションコントロール、スタビリティコントロールなどを搭載します。つまり、ベースは80年代のタイプ964であっても走りは最新。古さはありません。そういえば、フラット6には可変バルブタイミング機構が装着されています。

 インテリアも全てが特別です。高級レザーを使ったそれはまるでメゾン系の高級ブランドをそのままシートやトリムにしたような作り。シンガー独自のレザー加工技術や職人による革の縁の研磨作業などには莫大な時間が有されているそうです。その辺はもはや芸術品と言いたくなるような出来栄えでしょう。

 なんて感じなので、そのディテールを話していくと一冊の分厚い本が出来上がってしまうことになります。なんたって一台一台がビスポークによって仕上がっているのですからそうなります。全部仕様が違うってことです。タイプ964を分解するところから始まり、最新のテクノロジーで組み上げるのですから恐れ入ります。まさにヘリテージと最新テクノロジーの融合ってところです。

ポルシェ 911 カレラ クーペ リイマジンド by シンガー

 今回、そんなシンガーの同乗試乗も体験させてもらいました。クラシック系とカテゴライズされるものと、ハイパフォーマンス版です。後者はシンガーチーフドライバーのマリーノ・フランキッティ氏が運転してくれました。すごい迫力です。エンジン音、排気音もそうですし、加速がとんでもない。驚いたのはブレーキ。パイロン手前でガツンとスピードを落とします。そして、ステアリングをスッと切ると、イン側に鼻先をクイックに向け体勢を整えます。この時の安定感はレーシングカー並み。ブレがありません。こりゃ、運転するのが楽しいことでしょう。ご立派!

 ということで、今回はコーンズ・モータースさんのご配慮で、新型車のお披露目と同乗試乗という希少な体験をさせてもらいました。創業者ロブさんのトークショーも楽しかった。最初はロータスでカーデザインをしていたそうですが、それを辞めてロックバンド活動していたという話がおもしろい。英国人らしい選択肢ですよね。クルマかロックか。思わずロッド・スチュアートを思い出しました。彼はロックかサッカーで迷ったとか。こちらも英国人らしい。共に夢のある話です。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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