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更新日:2024.10.19 / 掲載日:2024.10.19

タキシードを着た怪物【ベントレー コンチネンタル GTスピード】【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ベントレー

 今年6月、日本でお披露目された新型ベントレー コンチネンタルGT スピード。2004年のリリースから四世代目として登場しました。これまで何回も英国クルーにある本社工場に足を運んでいるので、ベントレーは親しみのあるブランドです。独自取材を含め、開発陣にインタビューするため彼の地に足を踏み入れてきました。ただ、今回の新型に関しては情報がないまま試乗することに。その意味ではどう変わったのか興味の募るところです。

ベントレー コンチネンタルGT スピード

 新型はプラットフォームに大きく手が入っています。従来型が使用していたコンポーネンツの約68%を一新したというから大掛かり。もちろん、その大部分はパワートレインとインターフェイスのデジタルプラットフォームでしょう。“新世代”の醍醐味はそこにあります。

 そのパワートレインですが、新型はコンチネンタルGTシリーズ初のプラグインハイブリッドモデルとなります。これまでベンテイガ、フライングスパーにはV6+モーターをラインナップしてきましたが、2ドアでは初めてとなります。しかもベースとなったエンジンは4リッターV8で、それだけで600psを発揮します。そして追加されたモーターの出力は190ps。システム総合出力は782psとなり、最高速度は335km/h、0-100km/h加速は3.2秒を誇ります。これは第二世代のスーパースポーツやコーチビルドのバトュールを上回った数字。つまり、ベントレー史上最高出力のモデルとなりました。

 エクステリアではヘッドライトユニットの造形に目が行きます。これまで親しんできた楕円形をベースに眉のような水平ラインが加わります。2022年のモントレー・カー・ウィークで発表されたベントレー・バトュールを思い起こさせます。グループ会社であるコーチブルダーのマリナーが仕上げた特別なモデルです。価格は2億円後半で、世界限定18台でした。それが発表と同時に完売していたのですから恐れ入ります。

ベントレー コンチネンタルGT スピード

 ただ、個人的にこのヘッドライトはあまり好きではありません。1919年創業のベントレーの歴史から鑑みると不自然に見えます。このブランドはやはり丸型ヘッドライトじゃないと。もちろん、“新世代”とか“革新”とかいう言葉に沿うためにはそうした大胆な戦略が必要なのでしょうが、旧くからベントレーに親しみある我々には違和感があります。それにこんなエピソードがありました。イアン・カラム氏がジャガーのデザイン統括している時の話です。ある時、新型ジャガーXFの登場に合わせインタビューしていると、「従来型は伝統の丸型ヘッドライトに新世代の横のラインを組み合わせました。でもこれが不人気。なので、新型は丸型をやめ横長の目だけにしたんです。そうしたら評判がいい。デザイナーの意図するところと世間の評価が異なるのはしょうがないですね」と。

 なので、今回試乗のタイミングで開発者にインタビューする機会があったので、その意見を直接ぶつけてみました。答えてくれたのはプロジェクトリーダーのダレン氏です。

九島 「長年丸型ヘッドライトのモデルばかりだったベントレーにとって新型のライトはまさに革新的だと思います。ですが、不安はなかったのでしょうか?」

ダレン 「デザインの段階からマーケットに対してアンケートを行ってきました。いろいろな形を見せてその印象を問いました。すると、今回のヘッドライトの評判はかなり高かったんです。何度かそれを行い自信を持ってつくりあげています」

 ということなので、彼らとしては問題はないようです。まさに自信作といったところでしょう。ベントレーユーザーは若返っていますから、新しさを素直に受け入れられるのかもしれませんね。

ベントレー コンチネンタルGT スピード

 では、走らせた印象へ話を移しましょう。

 ステアリングを握ったのはコーンズが運営しているTHE MAGARIGAWA CLUBのサーキットでした。つまり、一般道ではなく、クローズドになります。なので、評価ポイントは乗り心地などではなく、アクセレーションやハンドリング、それとストッピングパワーです。

 その印象を告げると、とにかく速いクルマでした。そもそもトルクもあってパワフルなV8エンジンをモーターでブーストしているのですから速くないはずがありません。ドーンといった加速はベントレーの専売特許でW12を思い出させます。宇宙戦艦ヤマトがワープするように景色が線になって後へ流れる感じ。でもって信頼のブレーキは健在。この巨大で重量のあるボディをグイッと減速させます。なるほどこれは回生に有利かも。開発陣の長年の苦労が回生ブレーキとして役立ちそうです。

 この他にもいろいろ感じたことはありますが、限られたスペースでの試乗だったので、今回はここまでにします。一般道を走ったらまた違った顔が見えるかもしれませんし。いずれにせよ、ベントレーは怪物です。タキシードを着た怪物であることは今回も間違いなさそうです。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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