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更新日:2023.06.17 / 掲載日:2023.06.17

【マセラティ グレカーレ】グレードごとの個性を確かめるテストドライブ

文●九島辰也 写真●マセラティ

 マセラティの最新SUVグレカーレに再び乗りました。以前は都内でのテストドライブだったので一般道と首都高速中心でしたが、今回は御殿場周辺。3つのグレードすべてを一台ずつじっくり時間をかけて走り回りました。東名高速、箱根のワインディング、山中湖周辺を富士スピードウェイホテルを拠点にして。クルマの特性を知るにはとてもいい時間だったと思います。

グレカーレ トロフィオ

 グレカーレをおさらいすると、GT、モデナ、トロフィオの3つのグレードからなります。モデナはイタリアのエミリア=ロマーニャ州にあるマセラティが本社を置く街の名です。

 プラットフォームはアルファロメオ・ステルヴィオとも共有する“ジョルジオ”を採用。高剛性で軽量を実現しつつ、次世代パワートレインとなるバッテリー類を積むスペースを確保します。それとホイールベースの伸縮にも柔軟に対応し、幅広いモデルレンジに適合するのもポイントでしょう。グループ全体で活用することを鑑みてつくられたプラットフォームです。その分お金も時間もかかっていますね。

 パワートレインはGTとモデナに2リッター直4ターボ+モーターの48Vマイルドハイブリッドを搭載します。パワーはGTが300ps、モデナが330ps。最上級のトロフィオは3リッターV6ツインターボの530psです。勘のいい方はお分かりでしょうが、このV6ユニットはMC20と共有します。あちらの630psをコンピュータープログラムの書き換えで530psにデチューンしています。それとドライサンプ式も通常のオイル循環方式に替えているのが違い。それでも530psのSUVはトップクラスですよね。レンジローバーの上級グレードあたりに匹敵します。

上海オートショー2023に展示されたグレカーレ・フォルゴーレのメカニズム

 ちなみに、今後グレカーレにはフル電動モデルが追加される予定になっているのをご存知でしょうか。今年4月の上海モーターショーで発表されたグレカーレ・フォルゴーレがそれです。2030年の完全BEV化に向けて、グラントゥーリズモ・フォルゴーレと共に牽引していく役目を果たします。フォルゴーレ(Folgore)とはイタリア語で“雷”のことを意味します。

 以上を踏まえ試乗した印象に話を移します。GT、モデナ、トロフィオの順にステアリングを握りました。

 GTに乗ってまず感じたのはすべての操作系がスムーズに動き気持ちいいフィーリングを残すこと。以前の試乗ではまだ走行距離が300キロくらいのおろしたて車両だったので、各部の動きがしっくりこなかったのを記憶しています。エンジンの回りは渋く、“走る、曲がる、止まる”の動作に一体感が欠けているように感じました。ですが、今回は違います。ステアリング、アクセル、ブレーキにそれぞれイタリア車らしいフィーリングがあり、ボディがそれにしっかり追従します。今の時代慣らし運転が軽視されますが、やはり重要ですね。潤滑油を含めた機械部分を時間をかけてじっくり躾けるのがカギになります。

 よって印象はグッと良くなりました。フロントが4気筒ユニットなので鼻先は軽く、フットワークは軽快です。コーナーではタイヤの接地性がいいのかリアがしっかり粘るのも好印象でした。ドライブモードは“GT”がデフォルトとなり、“コンフォート”と“スポーツ”が用意されますが、“GT”でかなりスポーティに走れます。タイヤはブリヂストンのポテンザで前後255/45R20。もしかしたらこのクルマは19インチで走らせた方がよりドライブフィールが強く感じられ、乗り心地も良くなるかもしれません。個人的にはその方が好みかも。

グレカーレ モデナ

 次に乗ったモデナは内装がアップグレードされていました。ダッシュパネルがレザーで覆われていて、GTにグレードアップした装備を載せた感じです。ハードウェアではパワーが30ps上がっているのもそうですが、サスペンションが減衰力固定コイルサスから減衰力調整コイルサスに代わっているのが大きな違いに思えます。 “コンフォート”では伸び側のストロークが増えたのか道路の繋ぎ目で入力が低減したような気がしました。GTより快適さが増した感じです。タイヤはピレリのPゼロでサイズは前255/40R21、後295/35R21でした。

 最後に乗ったトロフィオは結論から言って別物です。とにかくパワフルで大排気量エンジンを動かしているようです。それでいてV6らしくアクセルのレスポンスはよくターボラグもほぼ無いままリニアに吹け上がります。ハンドリングは乗るまでは直4に軍配が上がると思っていましたが互角。ワインディングでは右に左にキレイにトレースします。乗り心地はこのモデルだけエアサスだったので少々テイストが変わりますが、そこは潔くスポーティに振ってありました。よって“コンフォート”でもそこまで快適ではありません。そこはレーシングカーメーカーであったマセラティテイストに仕上げられています。

 といったのがそれぞれの印象ですが総じてグレカーレはスポーティに味付けられています。足を動かしてドライバーを楽しませるといった方向です。もしかしたら90年代までのマセラティに近いかもしれませんね。レーシーなブランドであることを思い起こしたテストドライブでした。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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